2010年04月25日

『ザ・カブキ』初日、その2。

『ザ・カブキ』初日の感想の続きです。でも、1幕辺りで力尽きた、、、。全部書いてから、とか思ってるとそのまま放置してしまうことが多いので、無理矢理UPです。

東京バレエ団『ザ・カブキ』2010年4月24日(土)15:00 Bunkamuraオーチャードホール

大星由良之介:柄本弾
直義:森川茉央
塩冶判官:長瀬直義
顔世御前:二階堂由依
力弥:青木淳一
高師直:松下裕次
判内:氷室友
勘平:宮本祐宜
おかる:佐伯知香
現代の勘平:井上良太
現代のおかる:河合眞里
石堂:谷口真幸
薬師寺:梅澤紘貴
定九郎:小笠原亮
遊女:吉川留衣
与市兵衛:永田雄大
おかや:田中結子
お才:井脇幸江
ヴァリエーション1:小笠原亮
ヴァリエーション2:宮本祐宜

初めて見たときには度肝を抜かれた冒頭の「現代の東京」。今では妙に好きな場面です。ここ最近は氷室さんが踊っていたソロは、今日は高橋さん(氷室さんが伴内なので)。しかも初役だったようです。格好良かった〜♪ ところが、後ろで岡崎さんもいい動きをしているので、どちらも見たくて困ってしまいました。しかも、なんと群舞に木村さんがいたので、それに気付いてからはほとんど木村さんしか見てなかったかも(苦笑)。というか、なんで木村さんがそんなところにいるのー!! 一生懸命、空キーボード打ってましたよ(♪)。

というわけで、見たいところがたくさんあって、弾さんの由良之助に行き着くまで時間がかかってしまいました、、(スマン)。まあ、そりゃあ高岸大将ほど幕開きからドカっと居座ってはいなかったのかも。いや、それよりもやはり、周りが忙しかったのか…。弾さんの踊りは結構好きです。伸びやかで甘さがあり、爪先や指先もどんどん綺麗になっていると思います。気になるのは、軸足が甘いかな〜というくらいかな〜。そして、なかなかいい顔つきしてきたなぁ、と。彼はどこか空虚さを抱えているんだけど、それが何なのか、何故なのか、自分でもよくわかっていないし、わかっていないこともわかっていない、というような感じの若者像と言いますか、実に弾さんらしかったのではないか、と。

「兜改め」では、ほとんどが初役。とは言え、長瀬さんも松下さんも宮本さんも既に場数を踏んでいるので、不安はなかったです。その「兜改め」の場面で、予想外に存在感を発揮していたのが二階堂さんの顔世御前だったかも。そのスタイルの美しさだけでなく、踊りも堂に入っているように見えたし、思わず目で追ってしまいました。
師直の松下さんは、とにかく踊りがキレる。袴捌きもバッサバッサと鮮やかで、気持ちが良かった。そして、ネト〜っとしたいやらしい目つきが上手い。いやはや、悪〜い人でした。木村さんと松下さんって、まったく違う個性のようだけど、「タムタム」に続き役が重なるというのが面白いなぁ、と(だからと言って、木村さんがパックを踊れるかと言ったら違うんだけど)。
長瀬さんの塩冶判官もすごくよかったです〜。首藤さんと平野さんしか見てないけど、これまでで一番艶めかしかったんじゃないだろうか。ウェットな色気と、ピュアな永遠の青年っぽさが共存した、独特の雰囲気を持った人だなぁ、と。入り込んだ役作りもすごく好きです。悲しげな目がとても印象的。そして、あんなに艶めかしい切腹の場面は初めてでしたよ〜。由良之助の到着を力弥に尋ねるときの、切迫した表情の艶めかしいこと。平野さんは自慢の目力で、わりと男っぽい塩冶判官なんですが、長瀬さんは女性より色っぽいんじゃないかと思うほど、本当に匂い立つような塩冶判官でした。
そして、宮本さんの勘平も、いろいろな表情を見せてくれてよかった。おかるとの逢瀬でにこやかな宮本さん、おかるの故郷に落ちてションボリしてる宮本さんなど、いろいろ楽しかったです。

力弥の青木さんも初々しくて可愛かったし、現代の勘平の井上さんもハマってたな〜。素肌にスカジャン(笑)も似合ってました。河合さんも可愛い。石堂と薬師寺は谷口さんと梅澤さん。何故か野辺さんと宮本さんが印象的だったなぁと思い出したりして、、。

氷室さんの伴内もすごくよかった。軽妙で、ちょっと色気がある。狂言回し的な役割も軽やかにこなしていたし、場面転換の間に幕の前に氷室さんの伴内が出てくると、スパイスが効いて引き締まる感じがしました。ん〜でも、効き過ぎないというか、いい塩梅のスパイス加減というか。氷室さんって、印象に残る役作りをするような気がします。派手さはないかもしれないけど、必ずポッと印象に残るんです。

「城明け渡し」の場面では、床に転がった血判状がまったく見えず…。オーチャードの舞台は高いからなぁ、、、。ドミノ式に血判を押すところでは、ややウェーブが乱れたようにも見えました。

猪が相変わらず可愛い〜♪(今回の中身は岡崎さんだそうです)。勘平が切腹した場面では、ちゃんと猪もストップモーションで前足上げて止まってるんですよ〜。そしてゆっくり後ずさり。今回もやっぱり可愛すぎました。
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2010年04月24日

『ザ・カブキ』初日!

というわけで、無理矢理ラ・シルの感想をねじ込みましたが、今度はちゃんとカブキの感想を。と言っても、とりあえず由良之助と顔世御前だけ〜、、、。

『ザ・カブキ』初日は初役が満載です。注目はやはり新・由良之助と新・顔世御前だと思うんですが、東バ好きの私としては、それ以外の初役もとても楽しみにしていました。初役と言っても、弾さんと二階堂さん以外は既に活躍している中堅ダンサーたちですので、ほとんど不安はなく、もうただただ楽しみ。松下さんの師直も、長瀬さんの塩冶判官も、宮本さんの勘平も、小笠原さんの定九郎も、伴内の氷室さんも、そして吉川さんの遊女も、加えて井上さんの現代の勘平などなど、みんなとってもよかったです。

実に18年振りとなった新・由良之助の誕生。しかも、柄本弾さんは海外公演でもまだ踊っていないはずなので、正真正銘の初役デビューです。ベジャールが残してくれた、東京バレエ団にとって大事な作品『ザ・カブキ』で、18年振りの由良之助の誕生をこの目で目撃できるという、貴重な舞台でした。今年の1月に『ラ・シルフィード』でジェイムズに抜擢された弾さんの、更なる大役への挑戦だったわけですが、素晴らしいデビューだったと思います。
いや〜、とにかく「よくやった!」というか、期待を裏切りませんでした。ジェイムズを踊ったとき、どこか今どきの香を漂わせていた弾さんなので、現代の若者として登場する由良之助にはピッタリの風情。しかしそれだけでなく、内にほんのりと力強さを秘めた青年でした。ええ、「ほんのり」です。それは決して悪口ではなくて(笑)。彼自身の揺らぎと、現代の青年としての由良之助の揺らぎが重なるようでした。タイムスリップした若者に、徐々に由良之助がシンクロしていく。血判状のあたりから表情が変わりはじめ、彼が物語の中心を背負っていくのが感じられました。とても若い、初々しい弾さんの由良之助ですが、どこか頼りがいがあるように感じたんです。それは「頼りがい」というよりは、やはり「期待」だったのかもしれません。まだ揺らぎはあるものの、物語の中心を背負うに足る空気を持っている弾さんに、何か期待感を感じずにはいられませんでした。
1幕最後の8分間あるという由良之助のソロも、とてもよかったと思います。終盤のキレはもう一歩だったものの、スタミナを切らさずに踊りきった。実は、終盤はもっと苦しそうな顔をして踊るんじゃないかと思ってたんですよ。ところが、ラストまできちんと持っていった。成長する男だな〜、と。何もない舞台で、身体一つで踊る8分間。舞台を支配する、初々しい力がありました。

新・由良之助の誕生させどきって、難しかったと思うんですよね〜。高岸さんや後藤さんがバリバリ踊っているうちはそんな必要はなくても、いつか必ず入れ替わりは訪れるわけで。弾さんがアンダースタディについたのは2008年。それ以前にも何人もいたのかもしれません。どこで誰を正式に抜擢するか。しかも、おいそれと失敗はできない。そしてこれは私の気持ちですが、できれば由良之助はコロコロと変えないでほしい。今日の弾さんは、まだ課題はあったと思うんですが、未来を感じさせるいいデビューだったと思います。

顔世御前の二階堂由依さんもよかったです。スラリと長身で、とにかく脚が長い。面長なので、白塗りのメイクも似合ってました。あの長い脚で踊られると、それだけでもう迫力。でも、実は脚よりも、手の表情が美しくて印象的でした。踊りは思っていたよりも安定感がありとてもよかったし、何よりも彼女には人を惹きつける雰囲気があるように思いました。あのスタイルのせいなのかどうかはわかりませんが、「兜改め」の場面では思わず目が行ってしまった。控えめだけど、清廉な美しさがありました。
例えば討ち入りの直前、四十七士を迎え入れる音楽の中、波に押し流されていく場面などでは、音楽の力に呑み込まれてしまいそうで、「頑張れ〜」と思うところもありました。その辺は、これから経験が物を言うのではないか、と。かと言って物足りなかったわけではなく、初々しい中にも不思議と肝の据わった落ち着きがあり、いい顔世に育つのではないかという期待感も抱きました。
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2010年04月15日

モスクワ音楽劇場バレエ『エスメラルダ』4月14日

14日、国立モスクワ音楽劇場バレエの『エスメラルダ』初日に行ってまいりました。とっても楽しかったです〜♪ 予想通りの楽しさと、予想外の感動があり、満足度は期待以上の舞台でした。流石その評判に違わぬ、なんともドラマチックなブルメイステル版。主演、ソリストはもちろん、群舞の一人一人にも名前があり背景があるんじゃないかと思うほど、全員が誇りと使命を持って生き生きと演じている、そんなエネルギッシュな舞台でした。なんて言うんでしょう、古き良きドラマチックと言いますか、現代的な洗練とは違う、上質で濃厚なドラマ性。

リバイバルに伴い最創作されたという衣裳・装置も豪華で立派だったし、作品の世界観にとても合っていたのではないかと思います。初演時の美術のデッサンが残っていたようだし、振付も当時のまま残っているとプログラムでフィーリンが語っているので、かなりブルメイステルのオリジナルに近い形で再現されているんじゃないでしょうか。

装置も素敵だったんですが、緞帳が上がると出現する中幕がとてもよかったです。一つは、ノートルダム寺院の塔の回廊の欄干(左右に彫像)から、セーヌ川を見下ろしたもの。もう一つは、暗幕いっぱいに描かれた円形のステンドグラス。ノートルダム寺院のステンドグラスが正確に描かれていたようです。しかも最終場、欄干の中幕が上がると、まったく同じ装置が現れたんです。あれには感激しました。

予想通り楽しかったと書いたのは、『オープニング・ガラ』でも印象的だったエネルギッシュな群舞と、ブルメイステルのドラマチックな舞台。レドフスカヤの衰えない踊りと存在感。それ以上に印象的だった渾身のエスメラルダ像。彼女だけでなく、フロロもフェビュスもフルール・ド・リスも、そしてカジモトもグドゥラ(エスメラルダの母)も、みんなとてもよかった。

予想外だったのは、物語がアンハッピーエンドだったこと。そして、報われない愛の物語だったことです。お恥かしながら、『エスメラルダ』のストーリーをちゃんと知らなかったんです、、、。開演前にプログラムを読んで愕然としました。「あ、あれ、救いがない…」と。続きがあるのかと思って、思わずページをめくってしまうほど(苦笑)。さらに、舞台が始まるとすっかりカジモドに感情移入してしまい、胸が掻きむしられる思いでした、、、。自分を連れ去ろうとしたカジモドの釈放を懇願するエスメラルダ。きっと、カジモドの中に今まで起こったことのない感情が生まれたに違いありません。しかし、カジモドの姿を見て逃げ出すエスメラルダ。舞台にカジモドが一人、自らの醜さを嘆く姿で1幕は終わります。そして2幕、フェビュス殺しで捕らえられるエスメラルダ。本当の犯人がフロロであることを知ったカジモドが、フロロへの忠誠と(幼い頃フロロに拾われたらしい)エスメラルダへの愛のために、そのあまりに恐ろしい事実に恐れおののく姿で幕が下ります。さらに3幕、ノートルダム寺院の塔からフロロを突き落とすカジモド。雄叫びを上げるカジモドを残し、幕が下ります。最初からヤバイなとは思ったんですが、もう幕が進むにつれどんどんカジモドに傾いていく自分。こういう設定に弱いんですよ〜、、、。報われないのはカジモドだけでなく、エスメラルダもフロロもその愛が報われないまま命を落としていきます。

そしてもう一つ、母と娘の物語が描かれていることも知らず、思わず落涙してしまいました。親子の再会を果たした直後、息絶える母親。レドフスカヤのエスメラルダの、もうこの世には愛も未練もなくなってしまったという、諦めにも似た表情が忘れられません。プロローグ、行き倒れた母を覗き込みそっと肩を撫で、傍らにうずくまって眠った幼いエスメラルダの姿を思い出してしまいました。すみません、母娘ものにも弱いんですよ、、、。

というわけで、予想外のアンハッピーエンドに多少の動揺はありましたが、それも含め、期待以上に楽しめた『エスメラルダ』でした!

スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念 国立モスクワ音楽劇場バレエ
ブルメイステル版『エスメラルダ』
2010年4月14日(水)19:00 Bunkamuraオーチャードホール

音楽:チェーザレ・プーニ/レイゴリト・グリエール/セルゲイ・ワシレンコ
台本:ワシリー・チホミーロフ/ウラジーミル・ブルメイステル
原作:ビクトル・ユゴー「ノートルダム・ド・パリ」
振付・演出:ウラジーミル・ブルメイステル〔1950年〕
美術:アレクサンダー・ルーシン
リバイバル版演出:セルゲイ・フィーリン〔2009年〕

指揮:アントン・グリシャニン
管弦楽:国立モスクワ音楽劇場管弦楽団

エスメラルダ:ナターリヤ・レドフスカヤ
フェビュス:セミョーン・チュージン
クロード・フロロ:ウラジミール・キリーロフ
カジモド:アントン・ドマショーフ
グドゥラ:インナ・ギンケーヴィチ
フルール・ド・リス:マリーヤ・セメニャチェンコ
ジプシー:イリーナ・ベラヴィナ
将校:セルゲイ・クジミン、ロマン・マレンコ
道化:デニス・アキンフェーエフ、デニス・ペルコフスキー、アレクセイ・ポポーフ
王:ドミトリー・ロマネンコ、セルゲイ・マヌイロフ、イリーヤ・ウルーソフ
シェンシェリ:アンナ・ヴォロンコーワ
ヴァリエーション1:マリア・クラマレンコ
ヴァリエーション2:エリカ・ミキルチチェワ
ヴァリエーション3:アンナ・アルナウートワ
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2010年04月14日

国立モスクワ音楽劇場バレエ『オープニング・ガラ』4月13日

昨日、モスクワ音楽劇場バレエの『オープニング・ガラ』に行ってまいりました。前日にフィーリンの降板が発表されるというショックもありましたが、心のどこかで覚悟している部分もあったので、それほど同様はしなかったかも。どうやらフィーリンはバジルを踊る予定だったみたいですね。カーテンコールに登場したフィーリンは、ちょっとだけポチャッとしたかな?という印象(笑)。でも、相変わらず素敵でしたよ〜。すっかり芸術監督の顔になっていましたが。

公演はとっても楽しかったですー♪ やっぱりロシアバレエもいいなぁと思ってしまった。何故か音楽劇場バレエの公演って、ワクワクするんですよね。昨日も見に行く前からもうワクワク。なんていうか、アットホームな雰囲気とプロ意識とがいいバランスで融合しているような気がします。
どれも楽しかったんだけど、『石の花』とか『ワルプルギスの夜』とか、群舞ものが最高でしたね〜♪

前半は『パキータ』【30分】、休憩20分を挟んで後半はガラ【70分】って、ちょっとバランスが悪いよな〜と思う部分もあったんですが、まあ、ダンサーたちの衣裳チェンジや終演時間などを考えると、それしかなかったんだろうなぁ、と。
背景幕などは使わず、背後のスクリーンに背景を映したり照明で色を入れたりして対応していました。完全暗転しないのはなんでだったんだろう? ダンサーたちがワラワラと出入りするのが見えてました。いや、別にいいんですけどね。

『パキータ』のマリーヤ・セメニャチェンコは、長身のスラリとしたダンサー。足が長くて細い! なんとなくポワントが不安定な感じもありましたが、華もあり、いいダンサーだったと思います。彼女は後半で踊ったソロ「悲しみの鳥」のほうがよかったかも。スタイルがいいのでレオタード姿が美しく、細い身体全身で悲しみの情感を表現していました。もしかしたらオデットがいいんじゃないか、と。セミョーン・チュージンとだと、長身なのが気になっちゃうんだけど、『白鳥』はスミレフスキーと踊るようだし。
フィーリンおすすめのセミョーン・チュージン。なるほど、いいダンサーでした〜。昨日見たダンチェンコの男性陣の中では、それほど背は高くないんだけど、いかにも踊れそうなキュッと締まったいい身体。フワフワのブロンドも可愛い。なんと言っても印象的なのは、爪先。美しいっていうか、強靭! 爪先でバランスをとったときの、柔らかいのに床を離さない強靭さが印象的でした。でも、空中で打ちつける爪先はフンワリ軽やか。『白鳥』でどんな演技を見せてくれるか楽しみです。
レドフスカヤは、チュージンと「ジゼル」、ミハイル・プーホフと「ワルプルギスの夜」を踊ってくれました。やっぱり好きだ〜、レドフスカヤ。若いダンサーたちの誰にも負けないパッションがある。パワフルだけど下品さは一切なく、女性らしくキュートで、見ている側が元気になれる踊り手です。ジゼルの軽いこと! 自身の踊りも体重を感じさせないし、リフトされても本当に宙を舞うように軽い。一瞬、サポートの手がなくても舞えるんじゃないかと思うほどでした。

「ワルプルギスの夜」が最高でした〜。ソリストたちも、パワフルで生き生きとした群舞も、とってもよかった。たくましい身体つきのミハイル・プーホフは、易々とレドフスカヤをリフト。レドフスカヤが小柄だとはいえ、あの迷いのなさはすごい。DANZAのフィーリンのインタビューによるとお2人は夫婦のようで、納得のパートナーシップ。前回の日本公演のとき、レドフスカヤとプーホフの『くるみ』を見たんですが、あのときよりもすっかり貫禄が出ていました(プーホフね)。しかし、リフトばかりで踊らないので、肝心の踊りのほうの成長を確認できなかったのが残念。ところで、前回『くるみ』を踊ったときは夫婦だったのかしら。
「ワルプルギス」では、プーホフ以外の男性2人のソロがあったんですが、パーンみたいな役のほうの彼がよかったです。ちょうどこの前、岩田守弘さんが「ミューズの晩餐」で踊ってくれたソロ。たぶんキャスト表に載っていた名前は、もう一人のゼレンスキー似の彼だと思うんですよね〜(顎が)。プログラムを買っていないので、パーンの彼の名前がわからないんですよ。『エスメラルダ』のプログラム付きS席というのを買ってしまったので、今日の会場でチェックだわ。

「石の花」は群舞のみの演目。そういうのもいいですよね〜。カンパニーの良さを見せたいというフィーリンの意気込みを感じました。赤やピンクを基調とした、とってもカラフルな民族衣装を着た群舞の、陽気で温かい、パワフルな踊りが最高でした。

日本人のお2人も、とってもよかったですよ〜。私が知らないだけで、日本にもいいダンサーがいっぱいいるんだなぁと思ってしまいました(って、当たり前か…)。海外のバレエ団の公演ばかり見に行ってしまって、逆に日本人のダンサーは限られた人たちしか見なくなってしまってるんですよね。日本のバレエ団の公演を、地方まで見に行くことはほとんどないし。

スミレフスキーと「グラン・パ・クラシック」を踊った金子扶生さんは、安定したテクニックと清楚な華やかさの持ち主。「グラン・パ・クラシック」を涼やかに踊ってみせました。ベテランのスミレフスキーを相手に堂々たる舞台姿。スミレフスキーがまた、女性を引き立たせるいい踊り手なんですよね〜。ヴァリエーションでのポワントの見せ場では、床に吸い付くような安定感のあるポワントにビックリ。見ていて気持ちよかったです。

ガリーナ・イスマカーエワと「ゼンツァーノの花祭り」を踊った奥田康祐さんは、すらりと伸びた身体に、まだあどけなさを感じさせるお顔立ち。おっとりとした品のある佇まいで、ふんわりとした踊りが魅力的。パートナーのイスマカーエワは、小柄で元気な踊り。とっても可愛らしいパ・ド・ドゥでした。

「ロマンス」は、庶民のような簡素で暗い色の服を着た男女の踊り。女性の元を男性が去って行ったようです。立ち尽くす男性に、すがりつくように踊る女性の後姿が切ない。とても雰囲気のある素敵なパ・ド・ドゥでした。他の演目とガラリと空気が違ったのもよかった。

最後の「ドン・キホーテ」は、バジルを3人の男性が演じる特別バージョン。日本公演に参加するのが今回が初めてというキトリのナターリヤ・ソーモワは、どちらかというと儚げで可憐な雰囲気を想像していたら、結構パワフルに踊るダンサーでした。身体を目いっぱい使った大きな踊りが印象的。華やかで、堂々たる貫禄の佇まいでした。パワフルだったのは、もしかしたらキトリだったからかもしれません。彼女がどんなオデットを踊るのか、『白鳥』がとっても楽しみになりました。グラン・フェッテはすべてシングルながら、そのスピードと一定の高さに上げた足、真っ直ぐに前進してくる姿が格好良かった。バランスの見せ場は短めにしていたけど、反ってドラマチックさが増してよかったのかもしれません。スミレフスキーがソーモワを上に放り投げて、2回転くらいして下りてきた彼女をそのままフィッシュダイブというのがすごかったです(下手な説明ですみません…)。


今日はこれから『エスメラルダ』を見に行きます。『オープニング・ガラ』であれだけ群舞の面白さをみせてくれたので、全幕が楽しみです。

スタニスラフスキー&ネミロヴィチ=ダンチェンコ記念 国立モスクワ音楽劇場バレエ
『オープニング・ガラ』
2010年4月13日(火)19:00 Bunkamuraオーチャードホール

【第1部】

『パキータ』
音楽:レオン・ミンクス 振付:マリウス・プティパ
改訂振付:ミハイル・ラヴロフスキー 演出:セルゲイ・フィーリン
マリーヤ・セメニャチェンコ、セミョーン・チュージン
ドミトリー・ハムジン、セルゲイ・クジミン
マリヤ・クラマレンコ、アンナ・ヴォロンコーワ、アンナ・ハムジナ、エリカ・ミキルチチェワ
国立モスクワ音楽劇場バレエ団コール・ド・バレエ
指揮:アントン・グリシャニン

【第2部】

『石の花』より
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ 振付:ユーリー・グリゴローヴィチ
国立モスクワ音楽劇場バレエ団コール・ド・バレエ
指揮:フェリックス・コロボフ

『グラン・パ・クラシック』
音楽:ダニエル・オベール 振付:ヴィクトル・グゾフスキー
金子扶生、ゲオルギー・スミレフスキ
指揮:アントン・グリシャニン

『ジゼル』
音楽:アドルフ・アダン 振付:マリウス・プティパ
ナターリヤ・レドフスカヤ、セミョーン・チュージン
指揮:アントン・グリシャニン

『ロマンス』
音楽:ゲオルギー・スヴィリードフ 振付:ドミトリー・ブリャンツェフ
イリーナ・ベラヴィナ、ロマン・マレンコ
指揮:フェリックス・コロボフ

『ゼンツァーノの花祭り』
音楽:エドゥアード・ヘルステッド 振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
ガリーナ・イスマカーエワ、奥村康祐
指揮:アントン・グリシャニン

『悲しみの鳥』
音楽:モーリス・ラヴェル 振付:カシヤン・ゴレイゾフスキー
マリーヤ・セメニャチェンコ
ピアノ:アンナ・マリシェワ

オペラ『ファウスト』より「ワルプルギスの夜」抜粋
音楽:シャルル・グノー 振付:ミハイル・ラヴロフスキー
ナターリヤ・レドフスカヤ、ミハイル・プーホフ、ドミトリー・ハムジン
国立モスクワ音楽劇場バレエ団コール・ド・バレエ
指揮:フェリックス・コロボフ

『ドン・キホーテ』
音楽:レオン・ミンクス 振付:アレクサンドル・ゴールスキー
ナターリヤ・ソーモワ
ゲオルギー・スミレフスキ、セミョーン・チュージン、セルゲイ・クジミン
指揮:フェリックス・コロボフ
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2010年03月20日

『ジゼル』2日目(ジルベール&エイマン)

パリ・オペ『ジゼル』、2日目の公演に行ってまいりました。今日は一番若いペア、ドロテ・ジルベールとマチアス・エイマンです。いや〜、若い2人に素敵な舞台を見せてもらいました。決して未熟という意味ではなく、とにかく若い、なんとも瑞々しい舞台。それは、ただフレッシュなだけの舞台ではなく、若い2人が目指す高みが見えるというか、その真剣で志の高い舞台姿は感動的ですらありました。


1幕のドロテは予想通りの可愛さでとてもよかったんですが、驚いたのは2幕です。健康的な彼女に2幕のジゼルはどうかな〜と思っていたんですが、1幕の元気な女の子と同一人物とは思えないほどの静を表現していました。

余談ですが、小出さんや水香さんのジゼル・デビューを見たときも、「予想外に2幕が良い」と思ったんですよね。なんだろう、若いダンサー、あるいは役デビューの『ジゼル』を見ていると、1幕の難しさを感じるような気がします。いや、もちろんどちらも難しいとは思うんですが、私が勝手に『ジゼル』は2幕が難しいと思い込んでいたのかもしれません。若いダンサーが若いジゼルを演じるのって、反って難しいのかもしれない。初日のルテステュにしろ、吉岡美佳さんや斎藤友佳理さんにしろ(いつも例えが東バですみません…)、年齢を重ねた踊り手のほうが、1幕のジゼルの幼さや無垢さを表現できているような気がするんです。逆に若いドロテや小出さんのジゼルのほうが、大人っぽ見えるという不思議。


で、ドロテですが、1幕では素直で初心なとても可愛い女の子。あの、真っ直ぐに育った感じの素直さがすごくよかった。彼女の元来の生き生きとした魅力が出ていて、身体の弱いという感じは控えめだったかも。

そして驚いた2幕。上でも書きましたが、1幕の元気な少女と同一人物とは思えないほど、静のジゼル。踊りはゆったりと柔らかで、人間的な温かさを残したウィリでした。何よりすごかったのは、足音が一切しなかったことです。両足で着地するときには、流石にストンと音がしていましたが、それ以外ではほとんど足音をさせていませんでした。足音がしないことが全てではないけど、あそこまで無音なのはすごい。舞台を無音で走る姿に、ゾクッとするほどでした。ウィリとなって最初に踊る場面でも、その生気のなさが人ならざる精霊の雰囲気を醸し出していてよかった。


そしてマチアス・エイマンですよ〜。なんてエレガントで柔らかい踊り! ちょっとした跳躍がいちいち高い(褒めてます)。滞空時間の長い跳躍は、スローモーションのようにゆっくりと下りてきます。着地ってこんなに時間かかったっけ〜と、真面目に思うほど。超連続のアントルシャシス(っていうのかな)も凄すぎました。美しい爪先は言うまでもなく、とにかくジャンプが高いんですよ〜。そんなに人ってふんわり高く跳べるのかっていうくらい、それこそトランポリンでも使ってるみたいに跳ぶんです。

高圧的な威厳まではないけれども、育ちが良いのは一目瞭然という1幕のエイマン。ジゼルのことはとても好きそう。若い2人の熱々ウットリな雰囲気に、やや照れくささを感じる私(笑)。若さと、ちょっと幼さを感じさせるアルブレヒトなだけに、その後の後悔がより痛々しい。浅はかだった自分の、あるいは若さゆえの過ちを唐突に見せ付けられたような痛々しさというか。倒れたジゼルの足元にしがみついて泣く様が印象的。


なんと言っても2人とも、2幕で目を見張るような踊りを見せてくれました。まったくポワントの音をさせないドロテ。緩やかで柔らかい踊りは、体重を感じさせません。ウィリとなって踊る場面や、連続のジュテで袖に消える場面など、力強い踊りでも決して「元気」とは違う、人ならざる空気を醸し出します。後ろ向きで下手に退場するときのパ・ド・ブレのスピードもすごかった。そして、エイマンの美しい爪先、柔らかな着地、全てにエレガントな踊り。跳躍は信じられないくらい高く、何度も会場から感嘆の声が漏れるほど。

ただ、私が彼らに感心したのは、その技術の高さではなく、技術の高さをも駆使して『ジゼル』の2幕の幻想性、精神性を表現しようとしていたことです。確かに彼らの踊りはすごかったし、それだけでも見る価値はあったかも。でも、それは決して技術の誇示ではなく、『ジゼル』という作品を表現するための、自分たちが目指す高みへ到達するための手段だったのだと思います。少なくとも私には、技術だけの誇示には映らなかったな〜、と。
posted by uno at 03:04| Comment(2) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする