2010年08月15日

そして最終日。

<ベジャール・ガラ>、最終日に行ってまいりました。楽しかった〜。今日もいい公演でした。感想をサクッといきます。じっかり考えようと思うと手が止まってしまって、結局何も書けなくなってしまうので、、。

「ギリシャ」の後藤さんは、初日よりも安定して、序盤からいい感じ。ハサピコの木村さんは、冒頭から登場(♪)。いつもの場所にいることが、すごく嬉しい。あの辺りは松下さんや岡崎さんもいるので、ついつい見てしまいます。しかし、反対側には平野さんや氷室さん。目が足りない…。今回の「ギリシャ」で印象的だったのは永田雄大さん。ときどきスッと目が行くようになった。いい表情をしているときって、伸びてきている時期なんじゃないか、と。初日、パ・ド・ドゥの平野さんの表情がちょっと気になったんですが、今日は席が遠かったので気にならず。木村さんの踊りが冴え渡っていました。最終日までお預け状態だったので、「やっと見られた〜」という感慨一入。美しく力強い踊りと、予測不可能な表情に、心鷲掴みです。ハサピコでは、いつもより熱かったような気がします。腰を抱いた手を振り払われる場面でも、いつも以上に飛び退いていました。そんなにすっ飛ばされなくても(笑♪)。今、東バで心身ともに一番充実しているのは、木村さんではないかと思いました(単なるファン心理か?)。

小出さんのヴァリエーション6は初役でしょうか? 「ギリシャ」のパ・ド・ドゥでも感じたんですが、小出さんの踊りがまろやかになったような気がします。明確な踊りはそのままに。実は、小出さんだけでなく、女性陣の踊りに少し変化を感じました。まろやかになったというか、艶が出たというか、メリハリが効いているというか。なんて言うんでしょう、女性らしいたくましさみたいなものが美しかったんです。上手く言えてないな、、、すみません…。今回は、「ギリシャ」のハサピコ、「ドン・ジョ」のヴァリエーション5を踊った奈良さんがすごくよかったです。また一つ階段を上った感有り。もちろん、乾さん、西村さん、佐伯さんも相変わらず素敵だし、田中さんもさらにキラキラ。井脇さんと高村さんのコンビは最高♪ 2人がちゃんと2人で踊っていました。そうそう、森志織さんがいい表情をしていたのが印象的。「可愛い、可愛い」と思っていた志織さんですが、違う側面も見えてきたかも。最近じゃあもう、ちょっとした貫禄すら感じます。二階堂さんは、背が高いというよりも、脚が長い。彼女も楽しそうな、いい顔して踊ってました。

今日の「ボレロ」が一番よかったです〜。席が遠かったからか、舞台全体を一つの絵としてみることができました。一つの絵としてみながら、細部も印象的に飛び込んでくるという、目と心で見ることができた感じ。東バのリズムとニコラのメロディの距離も、日を追う毎に縮まったような気がします。
今回の公演では、東バの男性陣のリズムが格段に力強くなったように感じました。特に最終日の今日は、正直、終盤はリズムに圧倒された。男らしくパワフルで、しかも一糸乱れぬ様は圧巻でした。
ニコラのメロディは、音の取り方というか、ところどころ「溜め」が気になりました。それは、「“溜め”が気持ち良い」というものではなく、次の音を待っているような、「一瞬の間」のようにも感じました。ん〜、だから悪いというわけではないんですが、ちょっと気になったんですよね。

ニコラって、いい人なんだろうな〜と思いました。カーテンコールが素敵な人は、きっと素敵なダンサーだと思うんです。3日間、カーテンコールでニコラの両脇を務めた平野さんと松下さんは、力強く握るニコラの手、肩を抱く熱い腕を直に感じることができて、きっといい経験ができたのではないかと思います。


そういえば、<ベジャール・ガラ>と『ドン・キ』はプログラムが別なんですね。このくらい公演時期が近いと、1冊のこともあったような気がするんだけど。
あ、手ぬぐいは当たりませんでした。欲しかったな〜。
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2010年08月01日

『エトワール・ガラ2010』Aプロつづき(8/28、8/29)

『エトワール・ガラ2010』Aプロの感想の続きです。今回はAプロを2回見に行きました(8/28、8/29)。見終わってみれば、Bプロのほうを2回にすればよかったかな〜と思ったんですが、Aプロには『人魚姫』が入っていたので、そちらを優先したわけです。既にちょこっと感想を書いたものは省略します〜。

『エトワール・ガラ2010』Aプロ〜その1〜

Aプロは、マチューにとってはちょっとだけ分が悪かったような気がします。マチューのパフォーマンスが悪かったという意味ではなく。もともと「カルメン」は、シアラヴォラありきの演目だったのではないかと思うんです。マチューのホセは素敵だったけど。シアラヴォラが降板してアバニャートに変更したとき、アバニャートとマチューにとって最適な演目に変えてもよかったんじゃないかなぁ、と。アバニャートのカルメンも素敵だったけど、2人の間に生まれる官能的な空気はちょっと薄かったような気がします。
そして、『三銃士』。これはマチューが悪いんじゃなくて、ルイ13世という役に奥行きがなかったような気が…。短縮版だから仕方がないとは思うんですが、、、。一緒に踊る機会の多かったアンヌ王妃やリシュリュー(枢機卿)が、非常にわかりやすい設定があったので、よりそう感じてしまったのかもしれません。唐突感のあるヴァリエーションといい、ちょっと分が悪い。いやぁ、でも、立ってるだけでキラキラの王子様だったので、存在感はありました。
マチューは確かに見た目王子様キャラだけど、私はBプロの「プルースト」からのパ・ド・ドゥが一番よかったと思いました。私の見方が偏ってるのか? 悪いことばかり書きましたが、マチューを批判しているのではないです、決して。

「スカルラッティ・パ・ド・ドゥ」はバレエフェスでルテステュ&マルティネスが踊った演目。衣裳が違いましたが、プログラムに衣裳デザインはアニエス・ルテステュと書いてあったので、今回の衣裳もきっと彼女のデザインなんだろうな、と。映画のフィルムを貼り合わせたような衣裳で、素敵でした。女性は肩を出したチューブトップで、スラリと長身のドロテにとても似合っていました。ダンサーによって細部の調整までするのが、ルテステュのこだわりというか、私が彼女を好きなところでもあります。やはり、ダンサーも衣裳も殺したくないですもんね。
無音で始まり、スローモーションのようなゆったりとしたアダージオ、一転して軽やかなヴァリエーション、そしてまた無音で終わっていく。ジョゼらしい、エレガントで正確さが美しいパ・ド・ドゥだな、と。ゆったりと踊るドロテの柔らかで美しいラインを堪能。ジョシュア・オファルトのヴァリエーションもブラボー。マチアスといい彼といい、本当に踊りが軽い。マネージュの高さが印象的でした。
今回、この「スカルラッティ・パ・ド・ドゥ」を見ながら、男性が振付ける女性のヴァリエーションって、その人が女性をどう見ているかが表れるのかなぁと思ったりしました。その人の思う理想の女性像が表れたりするんじゃないか、と。小気味よくてエレガントなヴァリエーション。ついついルテステュを思い出してしまいました。もちろん、すべての作品がそうだというわけではありません。もしかしたら、そういうこともあるのかもしれないな〜と思ったんです。

世界初演となったイリ振付のソロ作品、「フェリーツェへの手紙」。寺神戸亮さんによるバロック・ヴァイオリンの生演奏で上演されました。カフカが恋人のフェリーツェへ宛てて書いた500通にも及ぶ手紙を集めた「フェリーツェへの手紙」にインスパイアを受けて作った作品だそうです。カフカは彼女と2度の婚約を交わしながら、ついに結婚は叶わなかったんだそうです。小道具として手紙をたくさん使った作品。待ちわびた彼女からの手紙は(たぶん)、赤い紙。しかし、最後に手に取った赤い手紙からは、ハラハラと赤い紙切れがこぼれ落ちます。彼の病(結核)を連想させ、また心が粉々に壊れてしまうのを感じさせて、切ない。イリが激しく踊ると、その赤い紙が足元で舞い上がるのが綺麗でした。

『三銃士』は上演時間75分の結構な大作です。『エトワール・ガラ』のおしゃれな雰囲気からは少し遠ざったような気もしますが、こういうお楽しみも有りってことで、よかったんじゃないか、と。場面転換や音楽などは、ちょっと急ごしらえな感じもしました。まあ、物語を縮小しているので、細切れで場面転換が多いのは仕方がなかったのかもしれません。これを実現させたペッシュには最大の敬意を払いたい。
作品自体には改善の余地ありだと思いますが(その機会があるかどうかはわからないけど)、それを考えなければ、とっても楽しかったです。だって、あれだけのメンバーがあんなに楽しそうに演じてくれているんですから!

リアブコ、イリ、オファルトの三銃士が最高に楽しい。やんちゃでロマンチストなイリ、誠実そうなリアブコ、ちょっとクールなオファルト。実際のキャラクターはよく知らないんですが(すみません…)、それぞれ素敵でした。でもやっぱり、なんとも楽しそうなイリを、ついつい見てしまいました(♪)。エイマンはダルタニャンのイメージにピッタリ。そして、何と言っても踊りが冴え渡ってますよね〜。天性の軽さの持ち主だな、と。ミレディーと官能的なパ・ド・ドゥを踊るエイマンもよかった。オブラスツォーワがとにかく可愛い。男装した姿もまた可愛かったです。コンスタンスって毒殺されちゃうのね、、。見る前に物語を勉強しておけばよかったと、ちょっと後悔しました。ペッシュのリシュリューは美味しい役だし、ジロのミレディーもパワフルで美しかったです。


『エトワール・ガラ2010』Aプログラム
2010年7月28日(水)19:00/29日(木)19:00
Bunkamuraオーチャードホール

【第1部】
「シルヴィア」第1幕より
振付:J.ノイマイヤー
音楽:L.ドリーブ
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

ローラン・プティの「カルメン」よりパ・ド・ドゥ
振付:R.プティ
音楽:G.ビゼー
エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ

「天井桟敷の人々」よりスカルラッティ・パ・ド・ドゥ
振付:J.マルティネス
音楽:D.スカルラッティ
ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト

「フェリーツェへの手紙」≪世界初演≫
振付:J.ブベニチェク
音楽:H.I.F.フォン・ビーバー、O.ブベニチェク
イリ・ブベニチェク

「人魚姫」第1幕より
振付:J.ノイマイヤー
音楽:L.アウアーバッハ
シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

ローラン・プティの「アルルの女」よりパ・ド・ドゥ
振付:R.プティ
音楽:G.ビゼー
エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

【第2部】
「三銃士」≪世界初演≫
振付:P.ラコット
音楽:M.ルグラン

ミレディー(謎の女):マリ=アニエス・ジロ
リシュリュー(枢機卿):バンジャマン・ペッシュ
コンスタンス:エフゲーニャ・オブラスツォーワ
ダルタニャン:マチアス・エイマン
アンヌ王妃:ドロテ・ジルベール
ルイ13世(国王):マチュー・ガニオ
三銃士
 アトス:イリ・ブベニチェク
 アラミス:ジョシュア・オファルト
 ポルトス:アレクサンドル・リアブコ
枢機卿銃士
 キャスパー・ヘス、鈴木彰紀、平牧仁、大石治人、三好祐樹、野口俊丞
街の女:アステアー紗良
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2010年07月29日

『エトワール・ガラ2010』Aプロ(7/28)

昨日は『エトワール・ガラ2010』初日(Aプロ)に行ってまいりました。楽しかったですよ〜♪ やる方も見る方も手探り、みたいだった1回目から、すっかり人気のガラ公演になった感のあるエトワール・ガラ。継続してくれたら嬉しいなぁとは思ったけど、本当に3回も続くとは思いませんでした。これからも是非、続けてほしいな、と。オーチャードでなければもっと嬉しいんだけど、もうオーチャードのイメージが定着しているような気がするので、このままでもいいかな、なんて。まあ、諦めの心境といいますか。

第1部はガラ(65分)、第2部は『三銃士』(75分)の二部構成で、終演予定は21:40でした。初日の昨日はカーテンコールが終わったのが21:50頃だったので、ほぼ予定どおりというところでしょうか。第1部はどの演目もよかったし、『三銃士』も楽しかったです。場面転換や音楽の繋ぎなどは急ごしらえな感じがしなくはなかったけど、あれだけのメンバーがあれだけの踊りを見せてくれれば、そりゃあやっぱり楽しいです。そして、本人たちが楽しそうだったのがよかったなぁ、と。


シルヴィア・アッツォーニがやはり素晴らしかったです〜。というか、大好きなんです、彼女が。フロンドの髪を下ろして勇ましい出で立ちで登場した彼女を見ただけで、妙に感極まってしまった(笑)。華奢で、いつまでも少女のような雰囲気を残しているアッツォーニ。ところが、ノイマイヤー版『シルヴィア』のシルヴィアでは、なんとも勇ましく、格好良い。キリアンのコンテも格好良かったし、ノイマイヤーのアブストラクト・バレエも絶品だし、物語バレエの最高の紡ぎ手でもある。なんでも踊れるんだなぁ、と。
クリーム色のオーバーオール(っていうのか?)を着たリアブコのアミンタも素敵。爽やかで純真、それでいて逞しい肉体美と、目を奪われる美しい踊りでした。徐々にアミンタに興味を持ち惹かれていくシルヴィア。次第にほのかな官能を帯びてくるのが美しい、相変わらず息もピッタリな2人の素晴らしいパフォーマンスでした。背景幕にはグリーンの照明、頭上に三日月、そしてブルーの照明を浴びた一本木。舞台も美しかったです。
楽しみにしていた『人魚姫』は、1幕から人魚姫と王子のパ・ド・ドゥでした。リアブコの王子はカンパニーの公演では見られなかったので、とっても貴重! アッツォーニはメイクから衣裳、あの髪型まで、完璧に人魚姫の扮装で踊ってくれました。場面は海の底、嵐がおさまったあとの、人魚姫が王子を救うパ・ド・ドゥです。久々に聞いたアウエルバッハの音楽にも感激でした。王子が両腕を同じ方向に伸ばしてストップモーション。人魚姫がゆっくりを振り向き王子に近づいていく美しいシーンが、音楽も含め大好きです。も一度見たいなぁ、『人魚姫』。せめてCD出してくれ〜、、。

アバニャートはカルメンも『アルルの女』のヴィヴェットも、どちらも綺麗〜♪ 彼女の一見器用そうだけど、もしかしたら不器用そうな感じが好きなんです(どういうこっちゃ、、)。器用になんでも踊れるというのは、ある意味ダンサーとしての不器用さでもあるのではないかと感じることもあるんですが、それでもいつもちゃんと彼女らしさを感じさせてくれるところが、好きなところなんです。マチューのホセはちょっと印象が薄め(すみません…)。私的にはアバニャートに注目して見てしまいました。そういえば、短いヴァージョンでしたよね? ホセのソロもあるヴァージョンだとよかったのになぁ、と。

もう一つアバニャートが踊った『アルルの女』では、ペッシュのフレデリがよかった。なんといってもラストのソロですよね〜。アルルの女の幻影にとりつかれ、徐々に狂気に陥っていくフレデリ。次第に強度を増すソロはそのまま上り詰め、ついに窓から身を投げるラストへと一直線に突き抜けます。圧巻の幕切れ。これはペッシュの当たり役なんじゃないかな〜。キレのある踊りと狂気に囚われていく様は見事でした。自分が主催者の公演で、自分の最高の見せ場も用意しているのが、ペッシュの好きなところです。


しまった、時間切れです〜。今日もAプロを見に行くのでこの辺で。今日は雨ですね。止まないかな〜、、。
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2010年07月01日

ロイヤル最終日『ロミオとジュリエット』(6/29)

行ってまいりました〜。ロイヤル最終日の『ロミオとジュリエット』、吉田都さんのロイヤルとの最後の舞台です。舞台はもちろん素晴らしかったんですが、初めて見る盛大なカーテンコールも感動的なものがありました。ああいう退団公演って、初めてだったんです。フェリの引退公演は見ましたが、カンパニーが総出で、退団するダンサーを見送るカーテンコールというのは初めてでした。紙吹雪と紙テープ、NBSのお約束の「大成功おめでとう」看板と、「SAYONARA」電光掲示板。そして、その日の舞台に登場しなかったダンサーたちも私服で登場して、舞台は人で埋め尽くされていました。次々に花束を持って登場する関係者たち。もちろん、ジョナサン・コープの姿も。都さんが上手で抱き合った女性はモニカ・メイスンだったのかしら?(違ったらすみません…)。抱えきれなくなった花束が、次々に都さんの足元に積まれていきました。そして、絶え間なく降りしきる紙吹雪、、、。胸がいっぱいな様子で観客やステージ上の仲間たちに挨拶をする都さんは、今まで見たことがないような素の彼女で、泣き出しそうになると急に幼い感じになったりもして、純粋で、キラキラしてました。泣いてはいたけど、なんとも晴れやかな笑顔をしていた都さんが印象的でした。都さんを立てつつ、最後まできちんとエスコートしていたマックレーも印象的。マックレーの綺麗なブロンドの髪にいつの間にか降り積もっていた紙吹雪が、彼がお辞儀をする度にキラキラとこぼれるのが、なんだか可愛かったです。ステージ上のダンサーたちがデジカメ片手に、パシャパシャと写真を撮っているのも面白かった。

都さんは、まだまだまだまだ、まだまだ全っ然踊れて、退団だなんて勿体無いと思ってしまいました。もちろん、引退ではないので、これからも踊ってくれるのはわかっています。来年にはバーミンガム・ロイヤルの日本公演にゲスト出演するし(これもサヨナラ公演だけど…)。でも、ロイヤルの舞台ではもう見ることができないというのは、やはり勿体無いというか、寂しいよなぁ…、と。仕方のないことなんですけどね、、。

英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』全3幕
2010年6月29日(火)18:30 東京文化会館

ジュリエット:吉田都
ロミオ:スティーヴン・マックレー
マキューシオ:ブライアン・マロニー
ティボルト:トーマス・ホワイトヘッド
ベンヴォーリオ:セルゲイ・ポルーニン
パリス:ヨハネス・ステパネク
キャピュレット公:ギャリー・エイヴィス
キャピュレット夫人:ジェネシア・ロサート
エスカラス(ヴェローナ大公):ベネット・ガートサイド
ロザライン:タラ=ブリギット・バフナニ
乳母:クリステン・マクナリー
僧ロレンス:アラステア・マリオット
モンタギュー公:アラステア・マリオット
モンタギュー夫人:ローラ・マッカロク
ジュリエットの友人:
   リャーン・コープ、べサニー・キーティング、イオーナ・ルーツ、
   エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク、サビーナ・ウエストコム

3人の娼婦:
   ラウラ・モレーラ、ヘレン・クロウフォード、フランチェスカ・フィルピ
マンドリン・ダンス:ホセ・マルティン、
   ポール・ケイ、蔵健太、ミハイル・ストイコ
   アンドレイ・ウスペンスキー、ジェームズ・ウィルキー
舞踏会の客、街人たち:英国ロイヤル・バレエ団

指揮:ボリス・グルージン
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団



都さんのジュリエットが可愛い! お人形と戯れる場面では、本当にまだ幼い子どものよう。無邪気な仕種はとても自然で、身体中から溢れる純真さがキラキラしてました。仕種だけでなく、生き生きと輝く瞳や、更には口の開け方までが子どもっぽくて、びっくり。口の開け方が子どもっぽいって、意味不明ですかね、、(笑)。でも、どうとは上手く言えないんですが、口の表情まで印象的だったんですよね。
初めてパリスにエスコートされると、不安そうに乳母のほうを振り返ります。パリスが肩に手を置くと、その視線を自分の肩に置かれたパリスの手に向ける。初めて接した男の人に戸惑うけれども、拒絶ではありません。それに対して、ロミオとの一夜を過ごした後の拒絶っぷりはスゴイ。好きな男の人以外には触れられたくないという。ん〜、だって、好きな人がいるのに他の人と結婚するなんて、少女としては考えられないよねぇ、やっぱり。

全身から溢れる初々しさ、瑞々しさは最後まで変わりませんでした。子どもだったジュリエットが、恋を知り女の子になる。しかし、愛を知って大人の女性になるという過程は、なかったような気がします。都さんのジュリエットは、少女のまま軽やかに旅立って行ったという印象でした。「軽やかに」と感じたのは、彼女の踊りそのものや、随所で見せる笑顔が印象的だったから。
パリスとの結婚を拒絶し、僧ロレンスの元へ走る直前、ベッドに腰かけてじっと前を見据える場面。きっとあの場面が好きだという方は多いと思うんですが、私もやはり大好きな場面なわけです。部屋に一人になり、どうしていいかわからずに苦しんでいたジュリエットは、やがてゆっくりとベッドに向かい、腰を下ろして正面を見据えます。始めは苦しみを浮かべていたジュリエットの顔が、次第に、本当にゆっくりと、しかし確かに晴れやかに澄んでいくのがわかるんです。そして、何かを確信したかのように微笑みを浮かべます。「何を迷う必要があるのだろう。自分はロミオを愛しているじゃないか。それ以外に真実があるだろうか」とでも言いたげに。純真で、真っ直ぐなジュリエット。
そして、幕切れ。短剣で自らを刺し、ロミオの手を握って息絶えるジュリエット。その表情は笑っていました。悲惨な結末といえばそうだけど、都さんのあの笑顔に救われたような気もしました。『ロミオとジュリエット』といえば悲劇なわけだけど、最後の最後、ジュリエットは幸福だったかもしれないと思うのは、奇麗事でしょうか。1幕で、ジュリエットの登場シーンに印象的に置かれていた鳥籠。しかし彼女は「籠の鳥」として生きることではなく、自らの意思で人生を切り開くことを選んだんです。籠を飛び出し、軽やかに飛び立った。都さんの小鳥のような軽やかな踊りとジュリエットの生が、まるで重なるようでした。

軽やかに、鮮烈に、その短い生を駆け抜けたジュリエット。汚れを知らない清らかな魂のまま、ただロミオを愛しているという記憶だけを胸に、その人生に幕を下ろしたようでした。清らかな魂なんて、やっぱり奇麗事ですかね、、。でも、都さんのジュリエットを見ていたら、そんなものも存在するんじゃないかと思えてなりませんでした。
何も、死を美化しているわけではないんです。ただ、ジュリエットがあれほど清らかなままに短い生を終えたことで、より一層切なさは増すように思われました。

とりあえず、都さんの感想だけ、、。
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2010年06月29日

『うたかたの恋』(6/23)ちょこっと。

世間はとっくに『ロミジュリ』で盛り上がっていますが、私はやっと今日の最終日を見に行きます(まだ西宮がありますが)。初めて見る都さんのジュリエット。ただでさえ楽しみな上に、ロイヤルとの最後の公演ということで、ちょっとだけいつもと違う気分になっています。どんな公演になるんでしょう。

『ロミジュリ』の前に、先週の『うたかたの恋』の2日目の印象を書いておかなければな、と。初日に衝撃を受けてチケットを追加購入した『うたかたの恋』、2日目のキャストはヨハン・コボーとリャーン・ベンジャミンでした。
コボーのルドルフが、予想通りというかなんというか、やはりとてもマッドでした。アコスタのルドルフが、環境が彼を狂気に陥れたのだとしたら、コボーのルドルフは、環境が加速させたにせよ、狂気の種は彼の中に深く根付いていたのだと思わせるものがありました。アコスタの中に強く感じたのは、愛されなかった少年の心、他人に理解されない孤独。それ故、人間味があり、狩猟小屋での薫るような悲劇性もより高かったような気がします。しかも、相手が最後まで恋に恋するロホのマリーだったので、それは残酷で美しい、背筋が凍るのと同時にウットリするような場面でした。甲斐甲斐しくルドルフに寄りそうマリーの母性さえ、少女の憧れの産物でしかないようなロホのマリー。それは決して偽物というわけではなく、本人ですらそれが本物かどうかなんてわかっていなかったのではないか、と。モルヒネを打つルドルフを、舞台の中央で半身を起こして見つめるロホの、ウットリとした眼差しが忘れられません。

もちろん、コボーのルドルフが人間味がなかったというわけではなりません。ただ、心を蝕まれた人間が、ある一線を越えてしまってから、モンスターのようになっていくのが恐ろしかった。常人には理解し得ない、共感さえ許さない、向こう側へ行ってしまったようなコボーのルドルフ。そして、ある意味モンスターだったかもしれないのがリャーン・ベンジャミンのマリー・ヴェッツェラ。ロホほどの官能性はないにしろ、どこか暗い陰のあるベンジャミンのマリーは、良い意味で何を考えているのかわからない恐ろしさがありました。彼女は狂気に陥ってはいなかったけど、最初のパ・ド・ドゥからルドルフとの力関係は拮抗しているように見えました。初日は、ロホの柔らかな肉体と少女の官能が、ルドルフを支配していくように見えた。最後の狩猟小屋の場面でも、ルドルフの狂気に負けないくらい、暗い死の陰を背負っていたような気がします。
ロホほどのドカンという衝撃はないにしろ(私がロホ好きというのもあると思いますが)、ベンジャミンも踊り、演技ともに流石と思わせるものがありました。

あ〜、もっとコボーのルドルフのことを書きたかったんですけど、時間切れ(書く日は来るだろうか、、、)。そろそろ出かけます。
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2010年06月23日

『うたかたの恋』初日(6/22)

昨日はロイヤルの『うたかたの恋』初日の公演に行ってまいりました。日本での上演は23年ぶりとのことなので、当然、全幕で見るのは始めて(ルドルフとステファニーのパ・ド・ドゥだけ、小林紀子バレエ・シアターで見たことがあります)。あまりに強烈(に好み)だったので、久しぶりに会場でリピーター券を購入。今日も見に行くことにしました。これを好みだと言ったら、人間性を疑われるような気もするが、、、。
ドラマチックな作品は数多くあれど、『うたかたの恋』は「演劇的」なんてものは通り越していたような気がします。演劇的という言葉だけでは、あの舞台を表現しきれない。マクミランの、人間を覗き込む眼差しの恐ろしさを感じずにはいられませんでした。あそこに渦巻いていたものは何だったんだろうと、しばし思いをめぐらせる舞台でした。
もう、前奏からして暗い…。あんなに暗く陰鬱な前奏で始まる作品、今まであっただろうか、、。

まるでそれが必然だったかのように、死に突き進んでいく2人の姿が、痛々しくも恐ろしかった。死の意思を確認した後、マイヤーリングの狩猟小屋での2人は特に印象的でした。互いに互いしか理解し合える相手がいない。互いだけが唯一の味方で世界の全てであるとでも言いたげに、まるで子どものように心を寄り添わせ離れない2人。死に向かう人間を純粋だと言ったら間違いでしょうか。そこには恐ろしく純粋で、しかし恐ろしく重々しい空気が漂っていました。
死に至るまでの最後の場面を純粋に感じさせたのは、ロホのマリー・ヴェッツェラの描き方かもしれません。2幕では官能的だったロホのマリーは、3幕では憑き物が落ちたように純粋な少女だったんです。それがマクミランの演出なのか、ロホの演出なのかはわかりませんが(後者のような気もする)、その魔性から天使へという描き方がとてもよかった。
2幕のパ・ド・ドゥでのロホの官能性は、とにかくすごかった。それは17歳のマリーの、幼いままの無邪気な官能性。あんな官能性が表現できるのか、と。マリーという役には、ロホの少しポッチャリとした身体つきが合っていたと思います。柔らかな胸、温かい身体。ロホの透き通るような白い肌は、冷たさを感じさせません。
ルドルフが主役のこの舞台で、そのアコスタは当然ながら、やはりロホのマリーが特別な存在感を確立しているのがすごかった。彼女なくしてはルドルフの物語は成り立たなかったのではないかと思うほど。
しかし本当にルドルフの背中を見ていたのは、ラリッシュ伯爵夫人だけだったのかもしれません。彼の後姿に気付いていた彼女だけが、本当にルドルフを愛していたのかもしれない。とくに終盤の献身的な姿は心打たれるものがありました。モルヒネを打ち、朦朧と椅子に身をもたせたルドルフを前に、ラリッシュ夫人に「出て行け」と激怒するエリザベート。エリザベートの服に必死に掴みかかったラリッシュ夫人は、自分の身を訴えるのではなく、「お願いだからルドルフのほうを向いてくれ」と訴えているようで切なかった。自分ではルドルフを救えないと思ったラリッシュ夫人は、部屋の外で待っていたマリーを招き入れ、自分はそっと姿を消していきます。それが、彼女がこの舞台で見せる最後の姿…。あまりに切ない後姿でした。
ルドルフのアコスタも、とってもよかったですー。アコスタは初めて見たんですが、とてもいいダンサーでした。なんていうか、大人だなぁと思ったというか。踊りもサポート/リフトも文句ないし、徐々に追い詰められていくルドルフを繊細かつパワフルに表現していくのも見事。しかも、時折り見せる幼い子どものような表情に泣かされた、、、。あの大きな身体の、外見はどう見ても大人のアコスタの中に、小さな少年がうずくまって泣いているのが見えるようでした。

ミッツィ・カスパーのラウラ・モレーラ、ブラットフィッシュのリカルド・セルヴェラ、ステファニー王女のイオーナ・ルーツ、“ベイ”ミドルトン大佐のギャリー・エイヴィスなど、脇を固めるダンサーたちも皆とってもよかったです(まとめちゃってすみません、、)。ブラットフィッシュのセルヴェラが可愛い。きっとコーラスもよかっただろうなぁ、と。最後にルドルフがブラットフィッシュを抱きしめる場面もよかったです。きっと本当に可愛がっていたんだろうなと思うと、2人の間にも他人にはわからない関係が築けていたのが窺えるようで切なくもあり、、、。

ルドルフに、オーストリア=ハンガリー帝国からのハンガリーの分離を述べ立てるハンガリーの高官たちが面白かった。場面転換の役割もありつつ、執拗にルドルフにまとわり付き耳打ちする姿は、狙っているかどうかはわからないけど、ちょっと笑える。口ひげを付けて、眉間にしわを寄せた蔵健太さんが素敵でした(そしてちょっと面白い)。
同じく日本人の高田茜さんが、2幕の娼婦の中にいたと思います。東洋人らしい幼さがちょっとエロくもあり、とても可愛らしかったです。

フランツ・ヨーゼフ(ルドルフの父)の愛人であり、舞台女優であったカタリーナ・シュラットが、ピアノの独奏に合わせて歌う場面があります。聴き入る登場人物たち。様々な思いが交錯する、印象的な場面でした。

英国ロイヤルバレエ団『うたかたの恋』全3幕
2010年6月22日(火)18:30 東京文化会館

ルドルフ:カルロス・アコスタ
(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子)

男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ:タマラ・ロホ
(ルドルフの愛人)

ステファニー王女:イオーナ・ルーツ
(ルドルフの妻)

オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ:クリストファー・サウンダース
(ルドルフの父)

エリザベート皇后:クリステン・マクナリー
(ルドルフの母)

伯爵夫人マリー・ラリッシュ:マーラ・ガレアッツィ
(皇后付きの女官、ルドルフの元愛人)

男爵夫人ヘレナ・ヴェッツェラ:エリザベス・マクゴリアン
(マリー・ヴェッツェラの母)

ブラットフィッシュ:リカルド・セルヴェラ
(ルドルフの個人付き御者、人気者の芸人)

ゾフィー大公妃:ウルスラ・ハジェリ
(フランツ・ヨーゼフの母)

ミッツィ・カスパー:ラウラ・モレーラ
(ルドルフの馴染みの高級娼婦)

ベイミードルトン大佐:ギャリー・エイヴィス
(エリザベートの愛人)

四人のハンガリー高官:
ベネット・ガートサイド、ヴァレリー・ヒリストフ、蔵健太、トーマス・ホワイトヘッド
(ルドルフの友人)

カタリーナ・シュラット:エリザベス・シコラ
(独唱)

アルフレート・グリュンフェルト:ポール・ストバート
(ピアノ独奏)

エドゥアルド・ターフェ伯爵:アラステア・マリオット
(オーストリア=ハンガリー帝国の首相)

ホイオス伯爵:エリック・アンダーウッド
(ルドルフの友人)

ルイーズ公女:エマ=ジェーン・マグワイア
(ステファニーの妹)

コーブルグ公フィリップ:デヴィッド・ピカリング
(ルイーズの夫、ルドルフの友人)

ギーゼラ公女:サイアン・マーフィー
(ルドルフの姉)

ヴァレリー公女:フランチェスカ・フィルピ
(ルドルフの妹)

ヴァレリー公女の子供時代:リャーン・コープ

マリー・ヴェッツェラの子供時代:タマラ・ロホ

ロシュック:ミハイル・ストイコ
(ルドルフの従者)

ラリッシュ伯爵:ヨハネス・ステパネク

その他、来客、メイド、娼婦、紳士、使用人、侍女など:英国ロイヤル・バレエ団

指揮:バリー・ワーズワース
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
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2010年06月20日

英国ロイヤルバレエ団『リーズの結婚』6月19日マチネ

ロイヤル日本公演の幕開け、『リーズの結婚』マチネの公演に行ってまいりました。

英国ロイヤルバレエ団『リーズの結婚』全2幕
2010年6月19日(土)13:00 東京文化会館

振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フェルディナン・エロール
編曲:ジョン・ランチベリー
美術・衣裳:オズバート・ランカスター

シモーヌ(裕福な農家の未亡人):フィリップ・モーズリー
リーズ(その娘):ロベルタ・マルケス
コーラス(若い農夫、リーズの恋人):スティーブン・マックレー
トーマス(金持ちのぶどう園主):ギャリー・エイヴィス
アラン(その息子):ルドヴィック・オンディヴィエラ

おんどり:ミハイル・ストイコ
めんどり:リャーン・コープ、イオーナ・ルーツ、エマ=ジェーン・マグワイア、ロマニー・パジャク
リーズの友人:タラ=ブリギット・バフナニ、クライレ・カルベルト、
フランチェスカ・フィルピ、ナタリー・ハリソン、ローラ・マッカロク、
ピエトラ・メロ=ピットマン、サイアン・マーフィー、サマンサ・レイン

村の公証人:トーマス・ホワイトヘッド
公証人の書記:ミハイル・ストイコ

その他、村人達、穫り入れをする人たち、馬丁たち:英国ロイヤル・バレエ団

指揮:ダニエル・キャップス
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団


とっても楽しかったです〜。リーズとコーラス、2人の恋人を中心とした、ドタバタ有りの他愛のない幸福なコメディ。難しいことは何も考えずに、ただただ楽しく見ることができました。しかも本物のポニー(名前はマイケル・オーウェンくん)も出てくるし、もう最高でした♪(馬、好きなんですよ〜)。

『リーズの結婚』を全幕で見るのは初めてでした。話はとっても簡単。リーズとコーラスは相思相愛の恋人同士。でも、リーズの母親シモーヌ(演じるのは男性)は、金持ちの息子アランと結婚させたい。いろいろあるけど、最後はめでたしめでたし、と。私的に後味がよかったのは、アランの描き方かもしれません。例えば、この間のモスクワ音楽劇場バレエの『エスメラルダ』みたいに、「カジモト〜、、、(泣)」な状態にはならなかったというか。『コッペリア』のコッペリウスの描き方とか。報われない思いをする者の描き方によっては、感情移入してしまう場合もあるんですが、アランならまた次の可愛い子に夢中になるかな〜、なんて。本人がメゲてない姿が可愛らしかったし、最後に大事な大事な赤い傘を捜しに戻ってくるところもよかったです。
コメディの度合いにしろ、アランの扱いにしろ、やり過ぎない調度良さが英国の、あるいはアシュトンの品の良さなのかな〜と思いました。

中幕や装置も牧歌的で可愛い。装置は豪華なんだけど、決してリアルではなくて、紙に書いたイラストをそのまま装置にしたような、漫画的なタッチが作品に合っていました。

何故か(?)毎回のようにロベルタ・マルケスの日のチケットを取っている私。前々回は『シンデレラ』、前回は『眠り』だったんですが、これはキャスト変更で見られませんでした。結果的に5年ぶりのマルケス。今日もとっても可愛かったです♪ 最初に彼女を見たとき、プロフィールの写真と実際のイメージが少し違うな〜と思いました。マルケスはブラジル出身。小柄で健康的な肌をした、よく踊れる感じの身体をしています。今回の場合は役柄もあるかもしれないけど、踊りも元気で小気味がいい。序盤は少しトウシューズの音が気になったり、跳躍はフワッと軽やかというほどではなかったけど、ポワントは安定感があってバランスも余裕だし、ポーズも美しい。細かなステップもうるさくない。

そして、とにかく晴れやかで可愛いんですよ〜。ちょっと幼さを残したマルケスのリーズは、素直で元気で、何事にもメゲないところが可愛い。お母さんにお尻をペンペンされても、一人ぼっちで仕事を言いつかっても、コーラスと引き離されても、とにかくメゲない。その屈託のない明るさは、見ているこちらが底から元気がわいてくるようです。
そして印象的だったのは、その瑞々しさです。元々とても綺麗なお顔立ちをしたマルケスですが、さらに華もプリンシパルとしての貫禄も増して、しかもその瑞々しさは失われていないんです。初めて見たときから既に5年が経っています。プロフィールを読む限り、キャリアもそれなりにあるはずなのに、とてもフレッシュなんですよね〜。同じくフレッシュなスティーヴン・マックレーと2人、なんとも可愛らしいカップルでした。マックレーも、こうしてロイヤルの中で見ると、やはり小柄なんだな〜と実感。小柄なマルケスとマックレーは身長差も踊りの息も合っていたし、とてもいい雰囲気でした。

マックレーを見るのは、おそらく2007年に東バに客演した『真夏の夜の夢』以来。あの頃はまだソリストだったんですよね。いやぁ、もうすっかりプリンシパルの佇まいでした! テクニックは安定しているし、すべてが軽やかで柔らか。回転系もよかったけど、バネのある跳躍が印象的。脚のラインが美しいんです。少し暗い眼差しが好きなところなんですが、今日は能天気なコーラスを好演していました。

マルケスのキュートなコメディエンヌっぷりが、なんだかとてもよかったんですよね〜。下品になるほどやり過ぎない。爆笑というほどではないけど、妙に可笑しくて可愛い、心くすぐる演技でした。コーラスが隠れて見ているとは知らずに、結婚生活を想像(妄想?)するリーズ。手で大きなお腹を表現して、「子どもは3人欲しい!」。「悪いことしたらお尻ペンペンだわ!」と一人で楽しそう。たまらずに飛び出してくるコーラス。「私ったら…もう最悪」と、自分にゲンナリするリーズ。コーラスのマックレーが、またいいんですよね〜。そんなリーズが可愛くて(ちょっと面白いし)仕方ないという感じで、わりと包容力もある。本当、いいカップルだったな〜、と。

男性のフィリップ・モーズリーが演じるシモーヌも面白かったです。気靴を履いたステップはブラボーでした。ちょっとお馬鹿なアランも可愛い。まさか1幕最後の嵐のシーンで宙吊りになるとは思わなかったけど(笑)。2幕の最後もアランだし、幕切れはどちらもアランが締めていたのが印象的でした。『リーズ』は初めてだったので、おんどりとめんどりの踊りも見るのは初めて。冒頭に出てくるんですね〜。夜明けの暗がりの中、小屋と思しき場所で静かに待機している姿が、なんとも可笑しくて可愛いかったです。
動物といえば、真っ白いポニーのマイケルくんです。バレエの舞台に本物の動物が出てくると、ワクワクするんですよね〜。しかも馬、好きなんですよ〜。車を引いて登場。リーズとシモーヌを乗せて引っ張っていきます。さらに幕前を通過して、麦畑まで2人を運んだら任務終了。とっても大人しくてお行儀がよくて、いい仕事してました。はぁ、可愛かった♪ マルケスがマイケルくんのお尻をちょっと撫でたんですよね。そういう決まりなのか、マルケスのアドリブなのかはわからないんですが、ちょっと印象的でした。
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2010年05月20日

東京バレエ団『オネーギン』5月15日

神奈川でもう1回公演がありますが、その前に少しでも感想を書いておこうかな、と。東京バレエ団『オネーギン』2日目の公演は、19年越しの悲願となった友佳理さんのタチヤーナということもあり、カーテンコールはスタンディングオベーションで迎えられました。もちろん、友佳理さんだけでなく、この日の舞台を作り上げたすべての人たちに向けられた拍手だったと思います。私としても、友佳理さんと、そして何よりオネーギンの木村さんには思い入れがあるので、特別な舞台になったことは言うまでもありません。思い出すとちょっと胸が熱くなる。数日後には神奈川県民ホールでもう一度2人の『オネーギン』が見られますが、この日の舞台は忘れられないものになるだろうと思います。

東京バレエ団『オネーギン』全3幕
2010年5月15日(土)18:00 東京文化会館

ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
振付指導:リード・アンダーソン、ジェーン・ボーン
コピーライト:ディータ・グラーフェ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト

◆主な配役◆
オネーギン:木村和夫
レンスキー:井上良太
ラーリナ夫人:矢島まい
タチヤーナ:斎藤友佳理
オリガ:高村順子
乳母:坂井直子
グレーミン公爵:平野玲

親類、田舎の人々、サンクトペテルブルクの貴族たち:
チャイコフスキー記念東京バレエ団

指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


緞帳が上がり、「E.O.」の幕の向こうに友佳理さんのタチヤーナが見えた瞬間、ついに始まるかと思うと身震いするような感覚に襲われました。まるで呼吸をするように自然に物語に溶け込み、その中で彼女ならではの存在感を際立たせる友佳理さん。この日もタチヤーナそのものでした。いや、これが正解のタチヤーナかどうかということではなく、友佳理さんのタチヤーナそのもの(こういう言い方が正しいのなら)。彼女が本当に愛情を込めてこの役を生きているのが感じられる、そんなタチヤーナでした。

初日の吉岡さんよりも「夢見がち度」は控えめ。吉岡さんが読んでいるのは恋愛小説だったかもしれないけど、友佳理さんが読んでいたのはもう少し小難しい本かもしれない。ええ、難しい本ではなく、小難しい本というくらい。周りの少女たちとは少し違う雰囲気を持った、知的で思慮深い少女。本を読みながらも、時おり視線を上げて思いをめぐらせる、自分の世界を持っている少女でした。知的さとトリッキーさが調度良い具合だったかも。まったく空気が読めないわけではないから、なおさらオネーギンをイライラさせるのかもしれません。

印象的だったのは、オリガと少女たちの踊りが始まる場面で、後ろのベンチに移動したときの友佳理さんです。友佳理さんはすぐには腰をかけず、こちらに背を向けて木立を見上げていたんです。本を胸に抱き、ゆっくりと周囲を見渡していたタチヤーナは、空や木や大地をその身に感じ、胸いっぱいにロシアの空気を吸い込んでいるようでした。それはまるで、友佳理さん自身が、この『オネーギン』の舞台の空気を胸いっぱいに満たしている姿に重なるようで、胸に迫るものがありました。ベンチに腰を下ろしてもすぐに本を開かず、何か思いに耽っている様子のタチヤーナ。一体、タチヤーナの中でどんな素敵な物語が展開しているんだろう、と。あのとき、友佳理さんが抱きしめていた本は、『オネーギン』だったのかもしれない…、なんて考えてしまいました。

オリガの高村さんが、またしても驚異的な可愛さ! 本当に不思議な人だ〜。無邪気で、ひたすらな明るさが心優しいというか。無邪気さゆえに人を傷つけ、悲劇を招いてしまうという陰すらも感じさせないほどの可愛さ。だからこそ、なおさら彼女に降りかかった運命が痛々しく切ない、、、。
そして、これまた純朴な田舎の青年、井上さんのレンスキーとピッタリでした。やっぱりちょっと、高村さんのオリガのほうが少しだけ年上の恋人には見えてしまいましたが、それはそれで微笑ましい。井上さんの弟的なキャラが、なんかいいなぁ、と。長瀬さんと違って陰がないので、ひたすら純朴な彼がオネーギンにからかわれて、自分でも理解しきれないままに運命を狂わせていく様が切なかったです。

井上さんの踊りはとっても丁寧で柔らか。踊りも気持ち良いし、その心意気も気持ちが良い。なんとなく、以前に比べて東バの男性陣の踊りは、丁寧できめ細やかになったような気がします。着地音もみんな気を遣っているのがわかる。そして、意外とサポートができるという気もする。今回の井上さんも、よく考えたらまともなパ・ド・ドゥはほとんど披露したことがないんですよね。『シルヴィア』で山羊を踊ったくらいじゃないでしょうか。おそらく、高村さんの助けも大きかったとは思います。フワッとリフトするのが上手だなぁと感じたのは、フワッとリフトされる高村さんの上手さもあるんじゃないか、と。表情など、演技の部分ではまだ少し固いかな〜と思う部分もあったんですが(前日の長瀬さんが濃いから〜笑)、とてもいいレンスキーだったと思います。


そして木村さんのオネーギン。う〜ん、なんて書いていいのかわからない…。まず、素朴な美しい色合いの場面に、不自然なくらい黒い衣裳で登場するオネーギン。あの黒の意味が一番際立っていたのは木村さんだったと思います。異世界から来た客人という、風景に交わらない違和感。全身真っ黒な衣裳で背中から登場する木村さんのオネーギンが、その後姿だけで異様な存在感を放っているのが印象的でした。

上から人を見下すような、傲慢な態度が隠し切れない高岸さんや、端っから退屈してやる気のない風情の後藤さんと違い、表向きは体裁を繕っていて、控えめな印象。タチヤーナの読んでいる本を見たときも、「プッ」と小馬鹿にしたような態度ではなく、「はいはい、なるほど、そうくるよね」という程度。
でも、高岸さんのように嫌味な態度を表に出せるっていうのは、ある意味、まだ自分に自信があると思うんですよね。彼にとっては退屈に映る田舎の人々を、ストレートに退屈だと思っている。木村さんのオネーギンは、もうちょっと屈折しているような気がします。彼にとって、人生に飽き飽きしているというのは仮面であって、それは弱い自分を隠すための仮面なのではないか、と。彼が本当にウンザリして絶望しているのは、そんな自分自身なのではないか…。彼は弱い人間であるがゆえに、決してそれを人に悟られてはならない。何より自分自身をも誤魔化している彼は、完璧な仮面をかぶり、冴え冴えと冷たい、、、。そう思えてなりませんでした。
1幕1場、最初の2人のパ・ド・ドゥの最後に、タチヤーナを顔をスッと指で上げるところで、高岸さんは自分でこちらを向かせておいて、既に心と目は明後日の方向をむいていました。木村さんは友佳理さんのタチヤーナの顔を覗き込んでから、スッと顔を逸らせていた。彼はあのとき、たった一度でもタチヤーナを瞳をまともに見ているんですよね。もしかした、タチヤーナの瞳に何か見透かされるのではないかと、無意識のうちに感じたのではないでしょうか。
なーんて、なんでもかんでも木村さんを「心に穴の空いた人」扱いするのは、私の悪い癖ですかね〜(苦笑)。

それにしても美しかった〜。表向きは礼節を守りながらも、周りの人たちにも出来事にも、関心も興味もない。あからさまに悪い人ではないけど、立ち入る隙のない佇まいは冴え冴えと冷たい。スラリとした長身に黒い衣裳が美しく、無駄のないエレガントな振る舞いと、どことなく陰のあるニヒルな様子が都会的でもあり、ちょっと頭でっかちな夢見る少女が一瞬で恋するのに説得力があります。
そして、踊りも綺麗なんですよー♪ 調子は万全だった様子。美しい踊りに憂いを乗せた最初のソロも素晴らしかったです。

ベッドに横になっても寝付けないタチヤーナ。枕をギュッギュッと丸めて、落ち着かない様子でそれを抱きしめる様子が上手い。鏡のパ・ド・ドゥは、すべてが完璧にスムーズとはいかなかったけど、全体の仕上がりはとてもよかったと思います。タチヤーナの夢の中のオネーギンは、甘く優しい、しかも少女の夢に相応しい、少しだけ妖しい魅力のある男性です。タチヤーナにそっと耳打ちする木村さんが怪しい(笑)。

それにしても、やはり友佳理さんは上手いと思ってしまった。複雑な振付やアクロバティックなリフトの中でもドラマチックさを失わない。それどころか、後半になるとますます踊りに、というか身体中に感情が溢れてくる。それは、ちょっとした首の角度だったり腕の表情だったりするんですが、それが計算されたものなのか、それとも既に無意識なのか、考えるのも馬鹿らしくなるくらいどんどん引き込まれてしまいます。ラスト、万感の思いでオネーギンの足元に崩れ落ちるタチヤーナ。ゆっくりと後退りし、鏡の向こうへ姿を消すオネーギン。あんな満面の笑顔で立ち去るとは〜(♪)。はぁ〜、素敵でした。

目覚めると、一気に手紙を書き上げるタチヤーナ。オネーギンに渡してくれるように乳母にお願いすると、「でも、お嬢様、、」と言いたげな乳母を、「いいから。ね、いいから、、。」と押し戻す友佳理さんのタチヤーナが可愛い。ああいう、ちょっとした仕種の少女らしさが本当に上手いなと思いました。

続く〜(かも…)。
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2010年05月15日

東京バレエ団『オネーギン』初日(5/14)

東京バレエ団『オネーギン』初日の公演に行ってまいりました(5/14)。前日に同じキャストでゲネプロを見たとはいえ、やはり初日の幕が開くのはドキドキしました。好きなバレエ団の全幕初演の舞台は、いつも特別なドキドキ感があります。しかも今回は『オネーギン』。「E.O.」の幕の向こうにユルゲン・ローゼの世界が広がった瞬間、「あぁ、始まった」という高揚感と、不思議と落ち着いた感慨に襲われました。始まってしまえば、あとはもう東京バレエ団の『オネーギン』の世界に身を委ねるだけ。前日に見て、その完成度の高さはわかっていたので、わりと雑念なく楽しむことができました。それが良いか悪いかは別として、たまにはこういう企画もいいなと思いました。

初日に気になった細部の調整はきちんと図られていたと思います。ところどころ初日のほうがよかったところもあったけど、それはちょっとした踊りの部分で、各人の調子の問題もあるから仕方がない、という程度の話。終幕に向けてグーっと物語を持って行ってくれたのは、やはり本番の舞台でした。会場の熱気も違いますしね〜。吉岡さんと高岸さんに関して言えば、やはり本番のこの日にすべてを高めて持ってきたんだなという感じでした。


オネーギンが最初にタチヤーナをリフトするところが、とても好きなんですが(後ろからスッと持ち上げるところです)、もう吉岡さんが絶品! タチヤーナの心のざわめきが聞こえてくるようでした。あの瞬間だけで泣きそうになった…。音楽と振付と踊り手と、見事に結晶した瞬間とでも言いますか、すべてが結晶してすべてが消え去り、タチヤーナの心が浮かび上がる瞬間でした。
吉岡さんが本当に美しかった〜。黒髪を結わいた、内気で大人しい少女の1幕。内に情熱を秘めた夢見る少女は、本のページを開けばすぐに物語の世界に入っていくことができる感情豊かな少女でもあります。体育座り(って言いますよね?)をして本を読む姿、ベッドに寄りかかりオネーギンを思う様子、机に座って頬杖をつき、オネーギンへの恋文を頭の中に走らせる姿。どんな姿も可愛らしく、ウットリでした。

高岸さんは、自身の踊りになると不安な部分もあったんですが、サポートやリフトは流石。慇懃無礼に振舞う1幕よりも、2幕でタチヤーナに苛立つ姿や、退屈しのぎに(というか苛立ち紛れに)レンスキーをからかう姿のほうがよかった。もうね〜、小さなことで小さくイライラしてるんですよ。小さいな〜(笑)、と(褒めてます)。今のオネーギンにはタチヤーナの美しさや強さは見えないのだと思います。さぞかし「空気の読めない夢見る乙女チック」に映っただろうな、と。実際そうでもあるし、そうではないとも言えるわけですが。手紙の遣り取りが見ていてもハラハラします。手紙を返そうとするオネーギンの意がわからず、「ええ、私が書いた手紙よ」と頷くタチヤーナ。それでもつき返すオネーギン、「いいえ、違うわ。それはあなたのものよ」と言うタチヤーナ。空気の読めなさに苛立つオネーギンと、事態を飲み込めず困惑するタチヤーナ、、、。泣いている彼女の手の平に手紙を破って握らせるオネーギンには、微塵も「申し訳ない…」などという気持ちはありません。あぁ、清々しいほどに、今は駄目になている人…。

長瀬さんのレンスキーも最高♪ いかにも長瀬さんのレンスキー。決闘前の嘆きのソロも、長瀬さんらしいナルシスティックな部分とナイーブな様子が相まって素晴らしかったです。長瀬さんらしすぎて大丈夫か?(笑)と思ったりもしたんですが、長瀬さんのレンスキーだけが2日間キャスティングされていることからも考えて、きちんと評価されてのことだろう、と。オネーギンとオリガが踊る様子を見てアワアワしている姿から、スッと意を決したときの移り変わりがよかったです。ああいうところの、ちょっとした暗さ(褒めてます)が好き。それにしても、手袋(って言うんですか?)でオネーギンをはたくときの威勢のよさ。そして、対するオネーギンの気持ちの良いはたかれっぷり。この場面に限らす、オネーギンもタチヤーナも、レンスキーもオリガも、みんな見事な演技で緊張感のある場面をいくつも作り上げていました。

オリガの小出さんが可愛い〜♪ 無邪気で愛らしくて女の子っぽくて、とっても魅力的な少女。悪気なくオネーギンと一緒にレンスキーをからかってしまいます。決闘という事態になってから、つまりレンスキーを失うかもしれないとわかってから、急に少女から少しだけ女性になるのがいい。それにしても、あんなに雰囲気の違う踊り手の吉岡さんと小出さんが、本当に姉妹のように見えてくるから不思議。しかも、すごくいい姉妹なんですよね〜。
『シルヴィア』で舞台復帰、『ザ・カブキ』で完全復帰を果たした小出さんですが、この『オネーギン』でさらに超完全復帰をしたような印象でした。やっぱり小出さんはすごいなぁ、と。実は、出産をして、もしかして戻ってこなかったらどうしようと不安になったこともありました。でも、やはり彼女は舞台で踊るべき人なんだなと、何より彼女自身がそれを捨てることは選ばない人なんだな、と。何故か私は、彼女が『田園の出来事』で見事にギエムと渡り合ったときのことを思い出していました。

いや〜、武尊さんのグレーミン公爵が本当にいいんですよ〜。今からあんなに老け役が似合っちゃって大丈夫かってくらい、素敵。自身の踊りはほとんどない役なんですが、少し心配だったサポートもまったく問題ありませんでした。とにかく優しい。少し年の離れた愛しい妻を、なんて優しく愛しているのだろう、と。「グレーミンと結婚して正解だったよ」と思わせることができれば、グレーミンとしては成功だと思うんですよね。手紙のパ・ド・ドゥの直前、「行かないで」と懇願するタチヤーナとグレーミンの場面も素敵。ヒシっと抱きついたタチヤーナを、少し間を置いてからゆっくりと抱きしめるのがいいんですよ〜。タチヤーナが情熱的にキスをすると、「光栄の至り」とでも言いたげに控えめにウットリとするのが印象的でした。
『マラーホフの贈り物』で吉岡さんと武尊さんが踊る「春」が、さらに楽しみになりました。

1幕の田舎の人々。コサック風のダンスを繰り広げる男性陣は、高橋、氷室、松下、宮本、小笠原、中川、青木、岡崎という、ちょっと小柄のかなり踊れるメンバーで固めていました。最初に勢いよく飛び出してくるのは高橋さん。『ジゼル』の村人たちを思い出しましたよ〜。こういうところは高橋さんが演じてくれると、本当に締まる。
最初のオリガと少女たちの踊りは、やはり正面から見るものなんだな〜と思ってしまいました。前日のゲネプロでは2階のサイド席から見たので、全然印象が違いました。
確かどの場面でも、吉川さんと宮本さんが組んで踊っていたんですが、この2人の組み合わせが妙に好きなんですよね〜♪ ベジャールの『くるみ割り人形』の2幕の冒頭でも組んでいたことがあって、そのときから好きなのかもしれません。西村さんと松下さんのペアもすごくよかったです。


東京バレエ団『オネーギン』全3幕
2010年5月14日(金)19:00 東京文化会館

ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
振付指導:リード・アンダーソン、ジェーン・ボーン
コピーライト:ディータ・グラーフェ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト

◆主な配役◆
オネーギン:高岸直樹
レンスキー:長瀬直義
ラーリナ夫人:矢島まい
タチヤーナ:吉岡美佳
オリガ:小出領子
乳母:坂井直子
グレーミン公爵:柄本武尊

親類、田舎の人々、サンクトペテルブルクの貴族たち:
チャイコフスキー記念東京バレエ団

指揮: ジェームズ・タグル
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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2010年04月26日

『ザ・カブキ』2日目〜。

次回の祭典ラインナップが発表されたので、そちらを先に書いてしまいましたが、今日は『ザ・カブキ』の2日目でした。何人かの初役と、水香さんの日本初披露などもありましたが、概ねベテラン勢の今日がファースト・キャストです。初役満載の初日も、驚くほどフレッシュで鮮やかな舞台が素晴らしかったけど、今日の舞台はやっぱりすごかった。「ファースト・キャストは伊達じゃない!」と思わせる舞台でした。それぞれのキャラが際立っているし、その彼らが演じれば場面の意味や登場人物の関係性や感情など、すべてが際立つ。そして、なんと言っても場の緊張感が違う。いや、昨日のフレッシュな空気感もすごくよかったんですよ〜。これほど違う2つの舞台を見ることができて、楽しむことができて、幸せだな〜、と。

水香さんの顔世御前が思ったよりよかったです。スタイルの良さでは二階堂さんも水香さんも甲乙つけ難いといったところですが、流石に終盤の凄みは水香さんのほうがありました。いや、私的には二階堂さんの終始楚々とした佇まいも好きだったんですが。個性もキャリアも違いますからね〜。二階堂さんは今の彼女に表現できる顔世を、最善の方法で演じたと思います。そういう意味では度胸があるな、と。もちろん、彼女はただ一生懸命だったのだと思いますが、それにしても立派な舞台姿でした。で、水香さんですが、特に後半がよかったと思います。丸いお顔はそれほど気にならなかったんだけど、でもたぶん、笑わない表情のほうがよかったと思う。笑うと素の彼女が垣間見えてしまって、ちょっと現実に引き戻されるような気がしました。コケティッシュさが現代的過ぎるというか。なので、「兜改め」のにこやかな場面よりも、師直に言い寄られるところから後がよかったな、と。「雪の別れ」では、普段あまり見たことがないような目をしていました。力強くも静かな、訴えかける目。う〜ん、上手く言えないんだけど、大きな目が印象的な水香さんの、いつもの目じゃなかったんですよね。ちゃんと顔世になっていたんじゃないかな、と。友佳理さんや吉岡さんの顔世のように、そこにいるだけで目が離せないという凄まじい存在感には及ばないかもしれないけど、ちゃんと凄みがありました。

後藤さんの由良之助はハマリ役。今日もやっぱりよかったです。冒頭、若者のリーダー然とした佇まいと、どこかナイーブな青年像。絶対的なリーダーではなくて、頭一つ出たくらいのリーダー感が持ち味だと思うんだけど、周りが若返ってくるとどんどんリーダー度が増してしまうような気もする。刀に触れた瞬間からタイムスリップしていく様子が、非常にわかりやすいのも流石です。行きつ戻りつしながら、徐々に物語にシンクロしていくのがわかりやすい。1幕ラストのソロでは、やはり終盤いっぱいいっぱいになってくるのが、後藤さんだな〜と。いえ、これは悪口ではないです。
討ち入りの場面では、もっと何かが降りてくるときもあるんですが、今日もよかったですよ〜。太鼓を打ち鳴らしながら前進してくるところで、真っ直ぐに前を見つめる目がいい。初日の弾さんは太鼓の辺りを見ていたようで、下を向いていたのが勿体無かったなぁ、と。
師直の首をはねた後、涅槃の場面での透き通りっぷりはすごかった。あぁもう、向こう側に行っているんだなぁ、という。

なんでしょうね〜、もう師直ばっかり見ちゃうんですよね〜(♪)。でも、そういえば師直って出番少ないですよね、、、。1幕の前半だけ…。やっぱり脚が美しい。そして踊りが軽い。いや、重厚なんだけど、軽いんです。正反対のものなはずなのに、同居している。袴ごとスッ、フワッと跳び上がるのが格好良かったです。
木村さんの師直と平野さんの塩冶判官の「殿中松の間」の緊迫感がすごい。説明がなくても伝わる、2人の間の緊張感。そしてあの、怒りに震える平野さんの目。刀を向けられた木村さんの「オヨヨヨヨ〜」が憎たらしくらいに面白い(褒めてます)。

凄まじい気合で演じきる平野さんの切腹シーンは、私の中では名演の一つ。平野さんが最も色気を発するのは、塩冶判官だと思うんですよね〜。それはウェットな色気ではなく、青年っぽい涼やかさを残した色気。見開いた力強い目に、ポンと入れた赤が美しいです。そして、由良之助に囁く横顔が色っぽい。今日の平野さんは、刀を横に引くとき、気合で開いた口元が笑っているように見えました。笑ったのか、鬼気迫りすぎてまるで笑っているように見えたのか、いずれにしても目が釘付けでした。

すみません、力尽きたので後は簡単に、、、。

「現代の東京」、冒頭のソロは氷室さんじゃありませんでした。若手だったみたいだけど、誰かわからなかった…(気になる〜)。定九郎の松下さんはやっぱり格好良い。師直もいいけど、定九郎を踊らないのは勿体無いと思ってしまうほど。直義の武尊さんは、踊りはやや硬かったけど、重みのある存在感はよかった。
初日の塩冶判官といい、今日の勘平といい、長瀬さんがすごくいい。また一つステージが上がった感がありました。長瀬さんの個性でもあるナルシスト的な部分と進化した色気が、いい感じに溶け合ってきたような気がします。
前に見たときは、お人形みたいで可愛いな〜♪と思った小出さんのおかる。今回は格段に色っぽくなっていて、とてもよかった。小出さんと長瀬さんの「おかる、勘平」は、正に逢瀬という感じでした。初日の場合、宮本さんが可愛いからな〜(褒めてます)。
同じくどちらかといえば可愛い感じがするのが、初日の氷室さんの伴内と小笠原さんの定九郎。高橋さんの伴内、松下さんの定九郎は、どちらかといえば格好良い。高橋さんの伴内はいいですよね〜、やっぱり。もう伴内は高橋さんに染み込んでるよな、と。
井上さんの力弥もよかったです〜♪(レンスキー、楽しみだな〜)

初日は、籠に揺られて売られていくおかると、間際に駆けつけた勘平の手が、一瞬触れたんですよね。今日は間に合わなかった。2人の手は虚しく空中に伸ばされたまま、触れることはありませんでした。どちらの演出もいいなぁと思ってしまった。

討ち入りの場面はやっぱり心躍るというか、何度見ても感動的。男性ダンサーがあれだけの人数で踊るって、圧巻の景色だよな〜、と。討ち入りから涅槃まで息も吐かせない展開と、黛さんの音楽もすごい。涅槃の場面では、初日よりも込み上げるものがありました。

新・由良之助の弾さんもす〜ごくよかったし、やっぱり後藤さんにもまだまだずっと踊ってほしいと思ったし、そんな2日間でした。今後しばらくは後藤・柄本の2本柱でいくんでしょうか。高岸さんはもう踊らないのかなぁ。もう1度みたいな〜。
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