2010年12月20日

『M』を少し。

『M』、美しい海の幕開きと幕切れが素晴らしかったです。海に始まり、海に帰るのは覚えていたんですが、こんなに美しかったとは。『バレエ・フォー・ライフ』の幕開き&幕切れも、比類ない美しさだと思っているんですが、『M』もそれに負けないくらい美しいです。純粋に構成・演出の美しさもあるんですが、それだけでなく、そこに漂う心も込みの美しさです。亡き者を偲ぶ、だけどその前向きさが優しくて美しい、『バレエ・フォー・ライフ』の幕開き。それに対して『M』は、どこか白昼夢のような、ほんの少しの怖さを孕んでいます。意志を持っているかのように揺れる波のまにまを、老婆に手を引かれた少年が歩く、真昼の白昼夢。海の女性たちが歌う童謡の、無機質に揃った声。彼女たちの甲高い笑い声は、どこか遠くから聞こえてくるよう、、。不思議で、何故だかわからないけど少し怖い夢のような、あるいは少年の夢想を垣間見るような場面です。あれは、ミシマ少年の見ている夢だったのでしょうか、、、。女性たちの海は、『ザ・カブキ』のラストシーンと重なりました。浄化された魂となって、一人、また一人と昇天していく四十七士たち。彼女たちもまた、人間の魂を預かって昇っていく泡のように見えたんです。四十七士と海の女性たち、その存在は対極かもしれないけど、なんとなく2つのシーンが重なって思い出されました。

真っ暗闇の中に響く、朗々とした男性の声。やがて海の女性たちの姿が静かに現れます。波の音が響く…。青緑色の衣裳を着て、童子のような前髪をしたヘアスタイルの女性たち。とても不思議なスタイルなんだけど、それが冒頭の世界観を演出する手助けにもなっているような気がします。海のセンターを務めたのは矢島まいさん。とても美しかったです。彼女の少し個性的な美しさが活きていたなぁ、と。矢島さんはすごく好きなんですよね〜。彼女のオデットが見てみたいと、常々思ってるんですが、、。
ミシマ少年の切腹シーン。ピアノ伴奏によるワーグナー「トリスタンとイゾルデ 愛の死」が流れる中、楯の会の制服の男性群舞が登場します。そして、それに混じって海の女性たちが現れる。こちら側とあちら側が重なるような瞬間です。
最後、ピョンと起き上がったミシマ少年が、桜の花びらが絨毯のように敷き詰められた舞台を、冒頭と同じように元気に飛び跳ねます。やがて海が舞台を満たし、再びミシマ少年は祖母に手を引かれ歩いていく。散った桜の花びらが水面をいっぱいに満たしているような、美しい海のラストでした。
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とりあえず本当に雑感。

東京バレエ団『M』、2日目の公演が終了しました。幕が下りても、会場を出ても、そして今も、予想以上に余韻が続いております。5年前にも見ているんだけど、情けないことにほとんど忘れてました、、。いや、大雑把なことは覚えてるし、見ればいろいろ思い出したけど、改めて思ったのは「こんなにいい作品だったんだ〜」ということです。美しくて鮮やかで、そして哀しくて優しい。『ザ・カブキ』も見る度にいい作品だなぁと思うんですが、『M』もしみじみといい。日本がテーマという意味では『ザ・カブキ』と並べられるかもしれないけど、視線的には『くるみ割り人形』(ベジャール版)に近いなぁ、と。一人の少年に向けられる、限りない優しさ。ベジャールの愛情の深さに改めて心打たれます。
それにしても『M』は、「間」のバレエだなぁ、と。作品全体を心地良い緊張感で結ぶ「間」。その美しい「間」が、この作品のぴんと張り詰めて澄んだ空気に繋がっているのかもしれません。

十市さんは本当に素敵でした。まずもって、7年のブランクがあるとは思えない踊り。そりゃあ、初演の1993年や、現役で踊っていた頃に比べたら、変化はあるのだろうと思います。現役で踊り続けているダンサーだって、それだけ月日が流れれば肉体的な衰えは避けられないはず。それなのに、7年のブランクがある十市さんがあれだけ踊れるって、どんだけすごいんだ、と。おそらく、基礎的なレッスンは日課的にやっていたのだろうとは思いますが、それにしたって驚異的なことだと思います。現役のダンサーと一緒に踊っても違和感がないなんて。ザンレールの着地が毎回寸分違わず綺麗な5番に納まる様子に、惚れ惚れしました。
場が進むにつれ、十市さんの顔が若返っていくような気がしました。最初こそ、あぁやっぱり今の十市さんだなと思ったんですが(当たり前ですが)、その印象が次第に消えていったんです。涼やかな顔立ちが生き生きと輝きはじめ、年齢不詳な精悍さを増していった。肉体的には辛くなるはずなのに、その顔はどんどん若返っていくのが印象的でした。

自決した三島少年を、そっと肩を押して横たえる場面で、十市さんが何とも言えない表情をしていたのが忘れられません。もちろん、自ら命を絶った詩人を見送るわけですから、物語的にも感情を揺さぶられる場面ではあります。でもなんだか、そこにはシの感情だけでなく、十市さんの感情も入っていたのではないかと思えてなりませんでした。もうすぐ物語が終わる。この舞台が終わってしまうという思いが、、、。もちろん、これは私の勝手な想像ですが。
これまでに、いくつかの引退公演を見ました。でも私にとっては、今回の十市さんの引退公演のほうが胸に迫るものがありました。舞台を見ている回数は、圧倒的に少ないのにも関わらず、です。それは、十市さんのベジャールに対する思いが少なからず私にも理解できるからかもしれません(おこがましいですが、、)。もちろん、これが引退公演だからといって、十市さんがバレエやベジャールさんとお別れをするわけではありません。私にしても同じこと。それでも、もう一度ベジャール作品を踊るという喜びと、同時にベジャールの作品を踊るのはこれが最後という思いは、一体如何ばかりであろうかと思うと、複雑な思いが込み上げずにはいられませんでした。

初演キャストのイチ、ニ、サン、シを見るのは、おそらくこれが最後だろうと思います。なんかもう、このキャストで見られたら、これが最後でもいいかもしれないと一瞬思ってしまいました。でも、「いやそうじゃない」と、思い直しました。確かに、これはこれで最後です。このメンバーのこの『M』は、私の中で終わりました。次に『M』を見るときは、それは新しい『M』です。もちろん、ベジャールの意志を引き継いだ『M』。私はそれを楽しみに待ちたいと思いました。なーんて、案外もう一回くらいイチ、ニ、サンは見られたりして。そうなってくれたら、そんなに嬉しいことはないんですけどね、、(結局やっぱりもう一回見たいと思っている…)。
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2010年11月25日

BBL『80分間世界一周』【西宮】(11/19)

先週の金曜日(19日)、BBL『80分間世界一周』兵庫公演を見てまいりました。言うまでもなく、楽しかったです〜。ベジャールの作品、特に全幕もの(オムニバス的ではあるけれども)は、とにかく途中から「終わらないでー」と思わずにはいられません。『80分間世界一周』も、しばらく見ることはないんだろうなぁ、、、。

西宮のキャストは東京のファースト・キャストと同じ。唯一違ったのが、セネガルのソロです。東京のリズ・ロペスではなく、アランナ・アーキバルドが踊りました。

<イントロダクション>
無音のまま、静かに幕が上がると、レッスンの準備をしているメレンダ=旅人と、こちらに背を向けて立っているジル。ベジャールの声が響きます。あぁ、これから旅が始まるんだなぁと思う瞬間。レッスンの始まり、一つの作品の始まりは、いつでも旅の始まりのようなものなのかもしれない、と思ったり。「春の祭典」冒頭の男性群舞のリハーサル。この日ジルは、誰の手直しもすることはありませんでした。

<セネガル>
東京公演でちょっと気になっていたアランナ・アーキバルドがセネガルを踊りました(東京は3日間ともリズ・ロペス)。ルードラ出身のアーキバルドは、1992年生まれの18歳! 若い〜。もうすーごく可愛かったです♪ 出身地は書いてなかったんですが、彼女も少し肌が褐色っぽかったので、セネガルのソロを踊っても違和感はありませんでした。ちょっとポチャッとしていたロペスに比べ、アーキバルドはスレンダー。アフリカンなリズム感(韻を踏みたかったわけではありません)はロペスのほうがあったかもしれません。ちょっと上品なセネガルではありましたが、いきなり異国の女神が光臨したかのごとく雰囲気はアーキバルドのほうがありました。とにかくピッチピチの若い女神(♪)。可愛かった〜。
そのセネガルの女性と男性が腰を絡めるシーンがあるんですが、ルヴランが気合入りすぎで面白かった。「フォーッ!!」という雄叫びが聞こえてきました。周囲の男性陣もちょっと素で笑ってたような気がする(笑)。

<サハラ>
<エジプト>
鮮やかの緑のハーレムパンツに、同じくマントを羽織ったジュリアンが登場すると、空気が変わります。思わず「きたー!」と心の中で叫んでしまう。羽織っていたマントを取り、丁寧に折りたたんでメレンダに渡します。きちんと整えてから渡すのが、なんか面白いなぁと思ってしまうのは、私だけでしょうか。ジュリアンのエジプトは、陶酔感のあるソロ。音楽の含めそういう空気のある場面だとは思うんですが、あの陶酔感の一番の要因は、やはりジュリアンの存在ではないか、と。ずっと見ていたくなる場面です。

<ギリシャ>
イワノワのギリシャにあまり母性を感じないと言い続けてきたわけですが、この日は少し感じることができました。何が違ったのかはわかりません。でも、あぁこれなのかもしれないと思えたような気がするんです。「少し感じた」、それでいいんじゃないか、と。ここに登場する女性は、幼い頃の母の記憶なのではないかと思いました。まだ若く、美しく、母であり理想の女性でもある、その人。自分が幼ければ、当然母親の母親歴も短いわけで、その母性はまだ芽生えたばかりで、若さや美しさとない交ぜになった薫るような母性だったのかもしれない。しかも、ベジャールの中ではその姿で記憶が止まっているんですよね、、。
ギリシャの最後だったと思うんですが、レッスンウェア姿のダンサーたちが出てきて、スローモーションで踊る場面があります。旅人は舞台の下手に横たわっていて、波の音が響いている。あれは、スタジオのざわめきが彼に見せた、波間の夢だったのではないでしょうか。

<ヴェネチア>
ジルが「ヴェネチア!」と叫ぶと、ヴェネチアのシーンが始まるんですが、そのジルの声がやっぱり素敵なんですよね〜。大きな道化はムルドッコ、小さな道化はコジョカルだと思います。戯れる2人の道化と旅人。そして、カラフルなレオタードを着た男性たちの明るい踊り。ヴェネチアは本当に楽しいです。
一転してロスのソロは、魅惑的な陰を持った踊り。大っきな道化と小っちゃな道化が見守っているのが、やっぱり面白い。ちょっと不思議な動きも、ロスが踊ると変じゃない。それどころが、あぁベジャールっぽいな〜と思います。
「恋する兵士」では、ソロの那須野さんはもちろんだけど、楽しそうにしている周囲の面々もついつい見てしまいます。ここでも楽しげなルヴランが気になる(♪)。シャルキナどこにいても何をしてても可愛い。今回でシャルキナのイメージが少し変わりました。これまでも可愛いとは思ってたけど、普段はちょっとクールな女の子なのかな思ってたんです。でも、素の彼女はどこか無邪気で、とても可愛らしい振る舞いをするんだな〜、と。『アリア』のカーテンコールでジルを呼びに行くシャルキナが、なんだか妙に可愛いんですよね。あと、「恋する兵士」の場面でシャルキナが着ている緑のレオタードが可愛い。

<ウィーン>
ルヴレのウィーンは素敵です〜。以前の勢いは少しなくなったとは思いますが、あの大人の男の軽やかな余裕は、まだ誰にも負けません。脂っ気も少し抜けちゃったけど、やっぱり若い子たちに比べると脂っぽい。ティエルヘルムも、「メフィスト・ワルツ」もあってすっかり好きになったので、見ていて楽しかったです。
最後、紫の衣裳を着たダンサーもレッスンウェアのダンサーも、全員が並んで踊る群舞の場面が好きです。

<パルジファル>
シャルキナは、可愛い中にも凄みがついたなぁ、と。シャコンが彼女をフワッと頭上高くリフトするところで、いつもこちらまでフワッとします。そして、リフトしたままスーッと移動する。まるで全然重たくなどないように見えるのがすごい。
旅人の前にあった小さなスクリーンを畳むと、その向こうにジルが立っています。いつからスタンバっていたのか全然わからないんですよね〜。退場するときに、スクリーンを片付けていくのがちょっと面白いです。

<インド>
<アレポ>
2組のカップルが、同じ振付を同時進行で踊る場面。軽快で小気味いいパ・ド・ドゥは、見ていて気持ちが良いです。結構難しそうなパ・ド・ドゥに思えるんですが、彼らは簡単に踊っているように見えるのがすごいな、と。やはりロシャを見てしまう私。

<中国>
<北極>
ペンギンの中身が男性陣かと思うと、なんか可笑しい(笑)。あんな可愛らしい動きができるのね、と。一人がコケルと、それにつまずいて次から次へと転んでいくペンギンたち。全員が転んだところで、サッと一斉に顔を旅人のほうへ向けるのが、また可愛い。お別れのとき、「撫でて撫でて〜」とでも言うように、一人ずつ旅人のもとへ寄ってくるのが可愛くも切ない。

<サンフランシスコ>
旅人が踊るタップはどれくらい練習したもんなんだろうか? 詳しくないのでよくわからないんですが、かなり様になっていると思うんだけど。東京で3日間連続で踊ったアロザレーナは、最終日には流石にお疲れか?という気もしたんですが、この日は疲れも見えず。相変わらず格好良かったです。よどみなく柔らかな踊りが美しい。

<パ・ド・シス>
『眠り』の音楽で6人が華やかに登場します。すぐに緩やかな音楽に変わり、優しい時間が流れる。レッスンウェア姿の6人が仲良く戯れるように踊る、フィナーレの前の穏やかな一瞬です。この、怒涛のフィナーレの前に訪れる、フワッと時間が緩むような場面が結構好き。シャルキナとルヴレのカップルが、なんか可愛いんですよね〜。地べたに座り、砂に指で文字を書くようにして、見つめ合っては何かを書きあう2人が可愛い。シャルキナとルヴレって、あまりペアで何かを踊るのを見たことがないような気がするんですが、案外いいかもしれません。
結局、西宮のキャスト表もロシャのところがクノブロックになったままでした。

<アンデス>
6人+旅人の時間に飛び込んでくるのが、クピンスキーのアンデス。クピンスキーが「ヘイ!」と呼びかけるだけで、なんか面白い(褒めてます)。細くて長い手足が印象的なソロ。クピンスキーを好きなのは、踊っている彼自身が楽しそうだというのもあると思います。それってすごく大事なことなのではないか、と。

<ブラジル>
何度見ても楽しい、そして終わるのが寂しい場面です。この日は席が近かったせいか、ダンサーたちのかけ声が聞こえました。ルヴレが気合のかけ声を出していたのも格好良かった。東京で見ていたときには聞こえなかっただけなのか、ラストの『80分間』だから気合が入っていたのか。どちらかはわからないんですが、かなり気合を入れて踊っている様子が伝わってきて、見ているほうもテンションが上がりました。

カーテンコールでペンギンが出てくるという演出が可愛い。ペンギンに導かれて、ダンサーたちは緩やかな列を作り、舞台袖へと消えていきます。一度はお別れを告げたペンギンに導かれ、手に手を取り、肩に肩を抱き、こちらに背を向けて歩いていくダンサーたち。この先、彼らにはこうして手を取り同じ方向を向いて歩いていってほしいと思わずにはいられないラストでした。
因みに、カーテンコールにコジョカルの姿がなかったようなので、ペンギンの中身はコジョカルだと思います。

モーリス・ベジャール・バレエ団『80分間世界一周』
2010年11月19日(金)19:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

I. イントロダクション
男性全員
旅人 :マルコ・メレンダ
パ・ド・ドゥ :ダリア・イワノワ、ダヴィッド・クピンスキー

II. セネガル
ソロ :アランナ・アーキバルド

III. サハラ
パ・ド・シス :
ジュアン・プリド、ヴァランタン・ルヴラン、ホアン・サンチェス、
ダニエル・サラビア・オケンド、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ

IV. エジプト
ジュリアン・ファヴロー

V. ギリシャ
女性全員
マヌーラ・ムウ :ダリア・イワノワ

VI. ヴェネツィア
七つの色 :
大貫真幹、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ、ヘベルス・リアスコス
ローレンス・ダグラス・リグ、ダニエル・サラビア・オケンド、ヴァランタン・ルヴラン
ライト :エリザベット・ロス
恋する兵士 :那須野圭右

VII. ウィーン
美しく青きドナウ :キャサリーン・ティエルヘルム、ドメニコ・ルヴレ、カンパニー全員
エジプト王タモス :ジル・ロマン

VIII. パルジファル
カテリーナ・シャルキナ、オスカー・シャコン

IX. インド
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ヴァランタン・ルヴラン
男性全員

X. アレポ
ルイザ・ディアス=ゴンザレス、ポール・クノブロック
ダリア・イワノワ、フェリペ・ロシャ

XI. 中国 
ソロ :オアナ・コジョカル
パ・ド・ドゥ :エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー

XII. 北極
男性全員

XIII. サンフランシスコ
タップ・ダンス :
ダリア・イワノワ、カテリーナ・シャルキナ、リザ・カノ、女性全員
ハムレット(デューク・エリントン) :ジュリオ・アロザレーナ

XIV. パ・ド・シス
エリザベット・ロス、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
ジュリアン・ファヴロー、ドメニコ・ルヴレ、フェリペ・ロシャ

XV. アンデス
ソロ :ダヴィッド・クピンスキー

XVI. ブラジルバトゥカーダ :
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ダヴィッド・クピンスキー
フェリペ・ロシャ、オスカー・シャコン、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー、カンパニー全員


【演奏】
パーカッション:チェリ・オシュタテール&ジャン=ブリュノ・メイエ(シティ・パーカッション)
キーボード&トランペット:イリア・シュコルニク
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2010年11月18日

BBL『アリア/火の鳥/3人のソナタ』2日目(11/14)

東京公演の最終日、BBL『アリア/火の鳥/3人のソナタ』の2日目の公演に行ってまいりました。恒例の「SAYONARA」と「See You Again」(これ、前からありましたっけ?)の電光掲示板と、大量のキラキラ紙吹雪。最後の幕が下り切る間際、こっそり握っていた紙吹雪をぱらっとばら撒いたジュリアンがお茶目でした。
この日も「メフィスト・ワルツ」を上演してくれました。クピンスキーが火の鳥だったので、休憩を挟んで「メフィスト・ワルツ」「アリア」の順で上演されました。やっぱり一番ワクワクしたな〜。この胸躍る感じ、これこそがベジャール作品を見る醍醐味の一つではないかと思いました。ガッと胸掴まれて夢中で見ているときの高揚感は、何ものにも代え難い喜びです。

「3人のソナタ」は、ジャン=ポール・サルトルの『出口なし』からインスピレーションを得て創られた作品だそうです。3人がいるのは、死んだ直後の出口のない部屋らしい。最初、まだ彼らは自分が死んだことに気が付いていないのかもしれません。何故ここにいるのか、ここがどこなのか、わからないことによる焦り。いや、心のどこかで感じているからこその焦りなのかも。途中でドアが開くんですが、3人ともそこから出ようとはしません。出られないというのもあるけど、出られないのを知っているから出ないのではないでしょうか。出口のない部屋、それは生きていれば終わることのない他人との関わりを表しているのかなぁ、と。生きていれば必ずと言っていいほど他者との関わりは生まれるし、それがなければ生きていくのは困難です。でも、本当に他者と理解し合えるなんてことはないし、理解し合おうとすれば非常に膨大なエネルギーを要する。生きている限り終わらないかと思うと、ときどき途方に暮れることもあります。3人の関係は変化し、終わることなく続いていきます。それはまるで、出口を探しているようでした。始まらなければ終わらないですから、出口を見つける為には関わりを続けなければならない。でも、出口なんてないんですよね、、。ドアの向こうは、それらからの開放を表しているのかもしれないけど、やはりそこへ行くことなどできないのかもしれない。もしかしたら、扉の向こうにはまた別の部屋があるだけなのかも、、、。最後には、「振り出しに戻る」という感じで、3人は再び3箇所の椅子に腰掛けます。ただ、出だしとは座る位置が違うのが面白い。とまぁ、これは私が勝手に感じたことで、作品やベジャールの意図とは違うかもしれませんが。原作を読んでいればもっと楽しめたのかなぁと思ったりもしたんですが、それがなくても十二分に惹きつけられるのは、ベジャールのすごさだろうな、と。
3人の生み出す様々な関係が途切れることなく展開され、約30分間の作品中、緊張の糸が緩むことはありません。緊張感のある面白い作品でした。2キャストありましたが、どちらもとてもよかったです。グッと若返った感のある2日目のキャスト、ジュリアン−ゴンザレス−イワノワは、美しくてスタイリッシュ。黒のスーツを着たジュリアンがとにかく素敵。濃厚で、作品がよりシャープに感じられたのは初日のルヴレ−シャルキナ−ロス。2人の女性、シャルキナとロス間に年齢差があったのも、面白かったのかも。

「火の鳥」はクピンスキー。パルチザンの衣裳が似合わない(笑)。「もう絶対に後で脱ぐよね、その衣裳」というくらい浮いてます。土臭いリーダーではなく、性別をも超越したような美しい火の鳥でした。いや、超越していたのは性別ではなく人間か?という気がしなくもない。スレンダーな身体と長い手足。決して隆々ではなく、綺麗についた筋肉。そこから繰り出されるのは、柔らかさと俊敏さの同居した踊り。ブルーの瞳と揺れるブロンドの髪とくれば、王子が似合いそうなものなのに、そうはさせないのはあの目です。ときには狂気と紙一重、ときには猟奇的に輝くあの目が、クピンスキーがまとうピリピリとした空気を生み出しています。前回の日本公演のときの自分の感想を読み返してみたら、クピンスキーのことを「猟奇的」「取って食いそう」と書いてました。2年前から取って食いそうだったんですね、彼は。“あの”クピンスキーが若干お疲れか?と思わせたのは、それだけ火の鳥はシンドイということでしょうか。しかし、次の「メフィスト・ワルツ」では、お疲れの色は一切なく。
パルチザンのメンバーが少し変わりました。ヒゲのムルドッコと、ボワっと前髪を立てている(立っちゃってるのかな?)プリドを確認。ヴァリエーションは変わらず、サンチェス、メレンダ、タルタグリョーネ。
闘いに倒れたリーダー。横たわり、息も絶え絶えにもがく姿も、クピンスキーだと妙に色気があるな、と。背後からフェニックスが登場。決して大柄ではないけど、シャコンの存在感は大きい。手で顔を隠して登場し、スーッ表情が見えただけで高揚感を覚えます。着地が柔らかで音がしない。シャコンは前回の日本公演では踊らなかったんですよね。今のシャコンで「バレエ・フォー・ライフ」が見たいな〜と思いました。

休憩を挟んで「メフィスト・ワルツ」。リストの「愛の夢」に乗って、ストレッチャーを押して登場するメフィスト=クピンスキー。黒尽くめの衣裳に白い手袋。ブロンドの髪を逆立てています。ストレッチャーには女性の死体=ティエルヘルムが横たわっています。助手が2人(ムルドッコとプリドだったかな?)。ティエルヘルムにキスをし、その身体に頬ずりをするクピンスキー。しかも、頬ずりしつつこちらに向けた視線が妖しすぎる…(♪)。彼女の腕を持ち上げる。手を放すとポトリと落ちそうになります。それを誤魔化すかのように、自分の腕をサッと絡ませるクピンスキー。彼女の身体をゆっくりとストレッチャーの上に立たせます。メフィストの言いなりに動くティエルヘルムの身体が、柔らかくてとても綺麗でした。彼女をストレッチャーから下ろし、舞台の中央に立たせる。そこから音楽は「メフィスト・ワルツ」へ。メフィストが死体を蘇らせ、メフィストと死体のパ・ド・ドゥが始まります。しかも、軽快な前奏に合わせて魔法をかけるような仕種をしたクピンスキーは、おもむろにシャツのボタンを三つほど外して踊り始めるんですが、そのボタンを外すときの顔(笑)。イッちゃってるな〜、本当(褒めてます)。手袋を外すときも同様。クピンスキーがとにかく最高なんですが、ティエルヘルムもすごく上手いんだなと思いました。意志がなさそうでいて、実は密かな意志を感じる身体。言いなりになっているようだけど、気付かれないように相手の様子を窺っているような目の動き。彼女は意志がないんじゃなくて、それを隠しているように見えるのが面白いんです。だからこそ、最後の立場の逆転もいい味を出してくる。ティエルヘルムの身体(存在感)は、どちらかというと楚々としていて脂っ気がないんだけど、それが不思議な色気を醸し出しているような気がします。ロスもちょっとそういう感じなんですよね。いわゆる色気のある身体ではないけど、不思議なエロスがある。
作品はどことなく切なさを感じさせます。コッペリウスとコッペリアだったり、フランケンシュタインと人造人間だったり、そういった物語を思い起こさせました。ミッチイ、アトム、ピノキオ…。命のないものに命を吹き込む物語がやがて漂着する切なさ。そう感じたのは、最初と中盤に「愛の夢」が使われていたからかもしれません。
この作品をクピンスキーとティエルヘルムで復活上演させたジルもすごいなと思ってしまいました。
しかしなんと言っても、猟奇的でさえあるクピンスキーのメフィストが最高。この一言に尽きます。
過去の作品だとわかっていても、このダンサーのために振付けたんじゃないか、そう思わせることができたら最高ですよね。ジルが踊っている写真が見たくていろいろ探したんですが、世界バレエフェスティバルの写真集の中に白黒の写真を1枚見つけることができただけでした。ジルの目も結構危なかったです(笑)。

ジルの「アリア」。2回目のほうが楽しめました。初日で少し様子がわかったので、落ち着いて見ることができたというのもあると思います。意欲作だというのはわかったし(当たり前か、、)、ダンサーたちがジルの要求に応えて懸命に表現している姿にも感じるものがありました。最初はちょっと難解な作品かな〜と思ったんですが、むしろジルの表現はとても真っ直ぐだなという気がしてきました。一見難解に思えたり、初日に消化不良に感じたのは、音楽が関係しているかもしれない。いや、音楽が良くなかったという意味ではないんです。音楽はとても面白いと思いました。ただ、わかりやすい音楽でわかりやすく盛り上げてはくれないんですよね。ワーッと迫ってくるというよりは、フムフムと感心しながら見てしまうというか(もちろん、ワーッとくるところもあります)。さらに、「ここでこう来てほしい」というこちらの期待とは違う方向へ行くこともあります。例えば、アロザレーナとタルタグリョーネのパ・ド・ドゥのラスト、群舞の男女がザーッと舞台に侵入してきます。このパ・ド・ドゥは音楽も格好良いし、非常に緊迫感のあるすごくいい場面なんです。赤いワンピースの使い方も印象的だし。そこへ群舞がザーッと入ってくると、私としては力強い群舞で盛り上がりのある場面を期待してしまうんですが、実際には音楽はフッと止み、無音の中(確か)ダンサーたちがゆっくりと崩れていく場面が展開されるんです。いや、それがジルのやり方なわけだから、それが悪いと言いたいんではないんです。ただ、単純な私はワーッときたらそのままドワーッと盛り上がりたくなってしまうんですよね。
出だしは結構好きでした。舞台中央に腰かけたジュリアンの背後に、ピッタリと寄り添うアロザレーナ。影のようなアロザレーナが、ゆっくりとジュリアンから分離していきます。でも、アロザレーナが「彼」でジュリアンが「他者」なんですよね。それを知らずに見ていたら、ジュリアンが「彼」でアロザレーナが「他者」だと思ったかもしれません。「自らの内なる魔物」(プログラムより)こそ、彼自身だということでしょうか。
ブランコに揺られて登場する、セクシーな3人のアリアドネたち。アロザレーナの弾くピアノに合わせて(もちろん実際には弾いてません)、最初にロスが、続いてイワノワと2人で、最後はシャルキナも加わって3人で踊ります。アリアドネたちの踊りもとてもよかった。しかしなんと言っても、アロザレーナが弾いていたピアノが自転車になっていて、実際にペダルをこいで移動したときには感激しましたよ〜。
群舞になると音楽がミニマルだったり現代的だったりして、群舞でドワーッと盛り上がれなかったことに、私は消化不良を感じたのかもしれません。ジルの振付ける動きは嫌いではなかったです。

モーリス・ベジャール・バレエ団『アリア/火の鳥/3人のソナタ』
2010年11月14日(日)15:00 東京文化会館

「3人のソナタ」
ジャン=ポール・サルトル「出口なし」に基づく
振付:モーリス・ベジャール 
音楽:ベラ・バルトーク (2台のピアノとパーカッションのためのソナタ第1楽章、第2楽章)

ジュリアン・ファヴロー
ルイザ・ディアス=ゴンザレス
ダリア・イワノワ

「火の鳥」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

火の鳥:ダヴィッド・クピンスキー
フェニックス:オスカー・シャコン
パルチザン:
シモナ・タルタグリョーネ、フロランス・ルルー=コルノ、リザ・カノ、ホアン・サンチェス
マルコ・メレンダ、アンジェロ・ムルドッコ、ホアン・プリド、エクトール・ナヴァロ
小さな鳥たち:
アドリアン・シセロン、ローレンス・ダグラス・リグ、ヘベルス・リアスコス
ファブリス・ガララーギュ、サンドリン・モニク・カッシーニ、オアナ・コジョカル
キアラ・パペリーニ、コジマ・ムノス

「メフィスト・ワルツ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:フランツ・リスト

ダヴィッド・クピンスキー、キャサリーン・ティエルヘルム

「アリア」
振付、演出:ジル・ロマン
音楽:J.S.バッハ、ナイン・インチ・ネイルズ、メルポネム、イヌイットの歌から抜粋
オリジナル音楽:チェリ・オシュタテール&ジャン=ブリュノ・メイエ(シティ・パーカッション)

彼:フリオ・アロザレーナ
他者:ジュリアン・ファヴロー
アリアドネたち: エリザベット・ロス、ダリア・イワノワ、カテリーナ・シャルキナ
若い娘:シモナ・タルタグリョーネ
闘牛士:ヴァランタン・ルヴラン
若者たち:
マルコ・メレンダ、ホアン・サンチェス、ヴァランタン・ルヴラン、ホアン・プリド
ガブリエル・アレナス・ルイーズ、アドリアン・シセロン、大貫真幹
ファブリス・ガララーギュ、ヘベルス・リアスコス、シモナ・タルタグリョーネ、リザ・カノ
オアナ・コジョカル、サンドリン・モニク・カッシーニ、ポリーヌ・ヴォワザール
フロランス・ルルー=コルノ、コジマ・ムノス、キアラ・パペリーニ
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2010年11月14日

『80分間世界一周』3日目(11/10)

今日は『アリア/火の鳥/3人のソナタ』の2日目の公演に行ってまいりました。今日も「メフィスト・ワルツ」を上演してくれました〜。今日は「火の鳥」がクピンスキーだったので、休憩を挟んで「メフィスト・ワルツ」でした。20分休憩を挟んでも、結構大変だと思うけどなぁ、、、。ツアー最終地の岩国でも「メフィスト・ワルツ」を上演してくれることを願って止みません。今日もとっても楽しかったんですが、先に『80分間世界一周』の最終日の感想を。


『80分間世界一周』、3日目にして少しキャストが変わりました。こちらがセカンドキャストだと思われます。で、結構私はBBLのセカンド・キャストが好きなわけです。いや、ファーストもセカンドもどちらも同じくらい好き、というのが正しいかも。

旅人を踊ったマルコ・メレンダは、今回初めて見るダンサーでした。旅人は映像ではエティエンヌ・ベシャールが演じていたので、彼がいない今、見るのはちょっと辛いなぁと思っていました。エティエンヌは前回の公演で私の好きな役どころを踊っていたというのもあって、ちょっと好きだったんですよね。でも、今回メレンダが踊ってくれて本当によかった。旅人役に少年のようなダンサーを使うのは、それがベジャールの中の少年だからではないかと思います。『くるみ割り人形』でも『海』でも、ベジャールはいつも少年ビムでした。メレンダも、小柄で少年っぽさを残したダンサーです(たぶん22歳くらい)。黒髪と印象的な瞳、華奢な胸。でも、良い意味でエティエンヌとは違ったんですよね。いつもの私だったら、メソメソした気持ちで見ていたと思うんですが、メレンダは明るかった。それに、実年齢も若く、華奢で少年っぽさを感じさせるダンサーだけど、本当はとても大人っぽいということがわかったんです。少年っぽさと、少年の持つ男っぽさが絶妙だった。いつもだったら「あの孤独が」とか「心に開いた穴が」とか言い出して、共鳴して涙を流すことで救われていたようなところのある私ですが、メレンダは違いました。あの真っ直ぐで明るい、真新しい男らしさは、不思議と頼りがいがあり、軽やかに旅に連れて行ってくれた。こういう救われ方もあるんだなぁ、と。踊りもとても軽やか。ジャンプは滞空時間が長く、小柄だけど踊りは小ささを感じさせませんでした。

「マヌーラ・ムウ」はリザ・カノ。彼女も初見です。彼女もとても綺麗でよかったけど、やっぱり母性というのとは違うかな〜、と。そこにこだわりすぎなのかな、、、。胸締めつけらるような懐かしさと、裸足で踊る力強い母性をグッと感じたいところなんですが、そこを除けばリザ・カノもイワノワもとても美しくて本当によかったんですが。どちらもよかったけど、流石にイワノワの踊りがクリアで無駄がなく、美しかったな〜、と。プログラムによると、イワノワは1987年生まれ。わ、若い! 23歳だったんだ。大人っぽいな〜。というか、プロフィールに「『バクチV』のシヴァを踊っている」って書いてあるけど、それはないでしょう(笑)、と。いや、なんか想像したら格好良さそうだけどさ。

ウィーンの「美しく青きドナウ」はフロランス・ルルー=コルノとポール・クノブロック。ルルー=コルノがとってもよかったです〜♪ 彼女は前回の日本公演で初めて見ました。短い髪と覚えやすい顔立ちで、印象に残っていたダンサーです。パートナーのクノブロックをウットリと恋しそうに見つめる表情がなんとも素敵。なんて胸躍る、ワクワクした瞳をするんだろう、と。弾む心が伝わってくるような、軽やかで楽しげな一挙手一投足にウットリと見入ってしまいました。踊っている彼女自身がとても楽しそうなのも印象的。「踊ることが楽しい!幸せ!」という気持ちに溢れていて、見ているこちらが笑顔になるような存在感でした。本当、可愛かった〜。クノブロックを見る余裕がなかった、すまん。彼もスマートで(佇まいが)とてもいいダンサーでした。

結局、3日間ともパ・ド・シスのキャストはフェリペ・ロシャのところがクノブロックになったままでした。フィナーレのブラジルもクノブロックになってるけど、ヴァリエーションを踊ったのはロシャでした。水色パンツで、背中でロボットマイムするヴァリ(こんな説明ですみません、、)。そういえば、『アリア』プロではロシャの出番がなかったなぁ、と。ちょっと寂しい。


モーリス・ベジャール・バレエ団『80分間世界一周』
2010年11月10日(水)19:00 東京文化会館

I. イントロダクション
男性全員
旅人 :マルコ・メレンダ

II. セネガル
ソロ :リズ・ロペス
パ・ド・ドゥ :ダリア・イワノワ、ダヴィッド・クピンスキー

III. サハラ
パ・ド・シス :
ジュアン・プリド、ヴァランタン・ルヴラン、ホアン・サンチェス
ダニエル・サラビア・オケンド、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ

IV. エジプト
ジュリアン・ファヴロー

V. ギリシャ
女性全員
マヌーラ・ムウ :リザ・カノ

VI. ヴェネツィア
七つの色 :
大貫真幹、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ、ウィンテン・ギリアムス
ローレンス・ダグラス・リグ、ダニエル・サラビア・オケンド、ヴァランタン・ルヴラン
ライト :エリザベット・ロス
恋する兵士 :那須野圭右

VII. ウィーン
美しく青きドナウ :フロランス・ルルー=コルノ、ポール・クノブロック、カンパニー全員
エジプト王タモス :ジル・ロマン

VIII. パルジファル
カテリーナ・シャルキナ、オスカー・シャコン

IX. インド
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ヴァランタン・ルヴラン
男性全員

X. アレポ
ルイザ・ディアス=ゴンザレス、ポール・クノブロック
マーシャ・アントワネット・ロドリゲス、フェリペ・ロシャ

XI. 中国 
ソロ :オアナ・コジョカル
パ・ド・ドゥ :エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー

XII. 北極
男性全員

XIII. サンフランシスコ
タップ・ダンス :ダリア・イワノワ、カテリーナ・シャルキナ、リザ・カノ、女性全員
ハムレット(デューク・エリントン) :ジュリオ・アロザレーナ

XIV. パ・ド・シス
エリザベット・ロス、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
ジュリアン・ファヴロー、ドメニコ・ルヴレ、ポール・クノブロック

XV. アンデス
ソロ :ダヴィッド・クピンスキー

XVI. ブラジル
バトゥカーダ :
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ダヴィッド・クピンスキー
フェリペ・ロシャ、オスカー・シャコン、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー、カンパニー全員

【演奏】
パーカッション:チェリ・オシュタテール&ジャン=ブリュノ・メイエ(シティ・パーカッション)
キーボード&トランペット:イリア・シュコルニク
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2010年11月10日

「80分間世界一周」初日・2日目

「80分間世界一周」、2日目までの公演が終了しました。東京は今日が最終日。3日目にして、キャストが少し変わりました。新しいダンサーが多くて、まだ全員は覚えられない、、、。男性陣はわかるようになってきたんですが、女性陣が厳しい。女性のソロが少ないですからね〜。<響演>で「春の祭典」のリーダーを踊っていたフェリペ・ロシャが好きになってきました。とにかく大きくて、とても優しそうで、ちょっと可愛い。終盤のパ・ド・シスのキャストが、2日間ともポール・クノブロックになっているんですが、2日間ともロシャでした。大きいからというのもあると思うけど、とにかくジュテが高くて大迫力。アレポのパ・ド・ドゥも踊っているけど、是非ソロが見てみたいなぁ、と。前回も来ていた、とっても小柄なオアナ・コジョカルも可愛い。女性陣で唯一前髪を下ろしているダンサーです。どこにいても笑顔が素敵。小さな道化に入っているのは彼女だろうか。カーテンコールのペンギンも彼女かなぁ、と。

<イントロダクション>
舞台は、打ちっぱなしのコンクリートのスタジオ。カバンからバレエシューズを出し、レッスンの準備をしているマルコ・メレンダ=旅人。旅支度をしているようにも見えます。思い思いのレッスンウェアで男性陣が一人、また一人と登場してくる。それぞれにストレッチをしたり、振りをさらったりしています。「春の祭典」、男性群舞の冒頭のリハーサルが始まります。背後のパネルが上がり、パーカッション奏者たちが姿を現すと、音楽は「春の祭典」から一気にパーカッションの力強い演奏に変わります。

<セネガル>
アフリカンなソロを踊ったリズ・ロペスですが、プログラムに載っていないのでちょっと気になっています。今、ズアナバールが抜けてしまうと、他に褐色の肌の女性ダンサーっていないんですね。以前は、ズアナバール以外にも誰かしらいたような気がするんだけど。ルードラの生徒の中から助っ人という感じでしょうか。映像のズアナバールがあまりに格好良いので、流石に分が悪いなとは思いましたが、彼女も可愛かったです。
イワノワとクピンスキーのパ・ド・ドゥ。トウシューズを片方だけ脱いで踊るイワノワの、脱いでもなお美しい形をした爪先。クピンスキーが登場すると、なんかニヤッとしてしまう(笑)。

<サハラ>
繰り返すパーカッションのリズムで踊る、男性6人の踊り。下手から登場したセネガルのリズ・ロペスがスタジオの扉へと消えていく。入れ替わりで、緑のマントを羽織ったジュリアンが扉に立つと、強烈な存在感を放ちます。

<エジプト>
鮮やかな緑のハーレムパンツのジュリアン・ファブローによるソロ。美しすぎる〜。本当に綺麗な上半身。そして、本当に綺麗なダンサーだな、と。

<ギリシャ>
BBLの「ギリシャの踊り」は様々なブルーのレオタード(スカートつき)。女性たちの明るさが美しい、爽やかな群舞。旅人のメレンダが加わり、中央でソロを踊ります。本家の「ギリシャの踊り」、見てみたいな〜。
旅人が「マヌーラ・ムウ!」と呼びかける。続くイワノワのソロは、ハジダキス作曲の「私のお母さん(マヌーラ・ムウ)」。白いドレスで裸足で踊るイワノワはとても美しかったけど、母性とは違ったかもしれません。

<ヴェネチア>
カラフルなレオタードを着た男性陣7人と、2人の道化が登場する、明るい場面。道化もキャスト表に載せてほしいところ。大きな道化(男性)は、ヒゲが見えたのでアンジェロ・ムルドッコかな、と。小さな道化(女性)は、小さいからコジョカルかな〜と思ったんですが、わかりません。旅人と2人の道化が戯れる姿が、なんとも可愛らしくて和む。7人の男性陣も溌剌としていて、元気になる場面です。大貫さんも活躍。彼の踊りは柔らかくて張りがあっていいですね〜。ヘベルス・リアスコスはとにかく笑顔が可愛くて好き。いかにもイギリス人ぽいな〜という雰囲気のローレンス・ダグラス・リグは、プログラムを見たらイギリス出身でした。
明るい雰囲気から一転して、「ライト」ではロスが重厚なソロを踊ります。上手に旅人。下手の奥では2人の道化が、床に肘を着き、踊りの行方をジッと見つめています。ときどき小さな道化が大きな道化の背中に乗る。天井から光の差す薄暗い舞台で、道化が見つめる中、ロスが踊る。不思議で魅力的な場面でした。
「恋する兵士」は那須野さん。レオタード姿の群舞が周りを囲む中、踊ります。笑顔で泣けてくる、「恋する兵士」は不思議な作品です。

<ウィーン>
背後に青空を描いたスクリーンが下りてくる。ルヴレとティエルヘルムの大人っぽいパ・ド・ドゥがとっても素敵。ルヴレは伸ばした髪を結んでいました。それだけなんだけど、なんか格好良い〜(♪)。ティエルヘルムは初見。大人っぽい雰囲気で、素敵なダンサーでした。他の踊りも見てみたい。ルヴレとティエルヘルムはブルーの衣裳。群舞は紫です。そこへ、レオタード姿の群舞も混じってくる。そして、それらを蹴散らすのが、お馴染みのジルのソロ「エジプト王タモス」。もうずっとこのままなんじゃないかと思ってしまうほど、変わらないジルのキレのある踊り。ジルは随所に登場するけど、踊るのはここだけなんです、、。もっと踊ってほしいです〜。

<パルジファル>
スクリーンの前で踊るシャルキナとシャコン。その影が大きくスクリーンに投影されます。下手には、小さなスクリーンと、そこに影を映す旅人。あれは、旅人が小さなスクリーンの前で見ている幻想でしょうか。
シャルキナとシャコンのパ・ド・ドゥが素晴らしかった。2人ともすごく綺麗で、踊りもシャープで説得力がある。パートナーシップもよかった。2日目、ちょっとシャコンが転んだような?

<インド>
男性群舞。ベジャールらしいインドの場面にワクワク。3人がソロを踊ります。ヴァランタン・ルヴランにソロがあって嬉しかった。彼は辞めなかった人なので、頑張ってほしいなと思ってるんです。ガブリエル・アレナス・ルイーズは繊細そうなイメージだったんですが、良い意味で期待を裏切ってくれました。コントロールの利いた大きな踊りは、結構印象に残ります。

<アレポ>
イワノワと踊っても身長が十分に足りるロシャが頼もしい。ゴンザレスも可愛かった。

<中国>
場面はスタジオ。レッスンウェアでソロを踊るコジョカル。踊りは軽やかで、表情もチャーミング。やっぱりコジョカルは可愛いなぁ、と。
銅鑼の音とともに、背後のパネルが開いて、赤い衣裳のロスとジュリアンが登場。舞台の照明も全体的に赤。銅鑼の音とともに登場する2人は、なんかもう圧倒的。

<北極>
ペンギン登場。か、可愛い〜(♪)。先頭の一人がコケると、それにつまずいて次々とコケるペンギンたち。なんていうかもう、哀愁…。去り際、一人ずつ旅人に挨拶に来て頭を撫でてもらうのが、可愛いんだけど、なんかだか寂しくて、、。

<サンフランシスコ>
女性陣の群舞とメレンダのタップに続き、ジュリオ・アロザレーナの「ハムレット」。アロザレーナが格好良い〜♪ 滑らかで綺麗な踊り。手が大きい(指が長い)のが、すごく活きてます。踊っているときも格好良いけど、フッと脱力したときの手がまた素敵。

<パ・ド・シス>
フィナーレの前の、フッと和やかな時間。レッスンウェアで踊る6人は、なんとも楽しげ。レッスンの後、スタジオに残って練習してるうちに、ときどきふざけたりして、、、。そんな空気感がありました。遊び疲れて仰向けに寝転がったダンサーたち。ジルが通りがかると、そんな彼らを見てスッと肩をすくめて通り過ぎていきます。

<アンデス>
クピンスキーのソロを挟んで、いよいよフィナーレへ。

<ブラジル>
要のダンサーたちは色のあるレオタード。群舞は白のレオタード。色レオタードのダンサーたちが、次々にソロを踊り継いでいきます。最後に旅人とロスとジュリアンも登場。パーカッションの激しいリズムで全員が踊る大団円を迎えます。フィナーレは映像で見るよりも迫力があってよかった。


時間がないので(今日も出かける)、急いで書きました。とりあえず、、、。後でところどころ後悔するかもしれないけど〜。


モーリス・ベジャール・バレエ団『80分間世界一周』
2010年11月8日(月)19:00 東京文化会館
2010年11月9日(火)19:00 東京文化会館

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posted by uno at 15:18| Comment(4) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月09日

『80分間世界一周』初日

行ってまいりました〜。『80分間世界一周』初日。とっても楽しかったです〜♪ 序盤こそフムフムと落ち着いて見ていたものの、途中からグワーっと持って行かれました。ヴェネチアの辺りからかな〜。ロスのソロ(「ライト」)から、「恋する兵士」になる頃には、ギュッと胸を掴まれていました。「恋する兵士」はいいですね〜。笑顔で泣けてくる、不思議な作品です。ドンの映像を見てるからかなぁ、、。それがなくても泣ける作品なのかどうか、もうわからなくなっちゃってますが。
ラスト直前の幸福なパ・ド・シスから、一気に怒涛のフィナーレへ。フィナーレの直前に、あのフワッとした時間が訪れるのが、すごくいいんですよね〜。『バレエ・フォー・ライフ』でもありますよね、あのフワッとする瞬間。終わりが訪れるのかと思うと、切なくなる瞬間でもあります。

舞台は打ちっぱなしのコンクリートのスタジオ。思い思いのレッスンウェアを着た男性たちが、「春の祭典」の冒頭のリハーサルとしているところから始まります。そこから一気に舞台はセネガルへ、そして世界一周へ、、、、。でも結局、舞台は一度もスタジオの外へは出なかったのかもしれません。打ちっぱなしの壁と、随所で登場するレッスンウェア姿のダンサーたちがそれを物語っているような気がします(それだけが意図ではないと思うけど)。そうやってベジャールは、ダンスを通して世界中を、あらゆる人間の感情の中を旅していたのかもしれません。もちろん、実際に世界中を旅していたベジャールですが、ベジャールの中の少年は、そうしていつでもあらゆる世界を旅することができたのではないでしょうか。旅人役に、比較的小柄で少年っぽさのあるダンサーを起用するのは、それがベジャールの中の少年だからなのかもしれないと思いました。オシャレな半ズボンのスーツを着て飛び跳ねるベジャール少年の、あのモノクロの映像を思い出しました。

個々の場面やダンサーについても書きたかったんですが、今日も出かけなければならないので、この辺で。「エジプト」の美しすぎるジュリアンも素敵だけど、レッスンウェアで楽しそうにしている姿も印象的でした。ロスの「ライト」のソロがすごくよかった。大っきな道化と小っちゃな道化が見つめているのが、なんだか不思議な雰囲気を醸し出していて好きな場面でした。那須野さんは随所で格好良かったし、ルヴランにソロ(インド)があったのも嬉しかった。七三分けでナヨっとした印象の(ごめん、、)ガブリエル・アレナス・ルイーズが、すーごい踊れるということがわかった。そして、やっとルヴレが見られた〜♪(<響演>には出ていなかったので) 伸ばした髪を結んでました(♪)。デバルにもっと活躍してほしかった、、。セネガルのソロを踊ったリズ・ロペスがプログラムに載っていないので、ちょっと気になります。
posted by uno at 16:13| Comment(2) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月08日

<奇跡の響演>2日目

<奇跡の響演>2日目の公演に行ってまいりました。奮発して両日S席で見てきました。そんなに稼ぎの良い人間ではないので、他の事をものすごい我慢してます(苦笑)。「春の祭典」の女性群舞は、上から見た方が綺麗なんですよね〜。植物や花に見えるんです。しかし、BBLのダンサーは間近に見ると迫力があるなぁ、と。<響演>2公演が終わり、岩国が終わったらまたしばらく彼らを見られないのかと思うと、まだ本公演も始まっていないのに既に寂しくなっております…。

2日目の「ペトルーシュカ」は長瀬&佐伯組。平野さんが怪我で降板のため、木村さんが友人を両日踊りました。2人との年齢差が気になっていたんですが、思いのほか気にならなくてビックリ。石巻で佐伯ジゼルと後藤ヒラリオンを見たときには、ちょっと笑えるくらい怪しかったので(後藤さんが)、木村さんならさぞかし…と楽しみに、いや心配していたんですが、案外大丈夫だったのでガッカリ、いやホッとしました。
長瀬さんの青年はいいですね〜♪ 初役のときは見逃しているので、初めて見たんですが、予想通りハマってました。線が細いのが気になることもある長瀬さんですが、この青年役ならそれが良い方向に働くかもしれない。長瀬さんのいいところは、踊っている本人が楽しそうなところではないか、と。この作品が踊りたい、踊れることが幸せ、そういう気持ちがバシバシと伝わってくる。彼の存在が踊る喜びに満たされているのを見ることで、その快感を少しだけお裾分けしてもらっているような感じがするんです。とにかく、イッちゃった目がすごい。迷宮から帰ってきたときの目が、尋常じゃなかったです〜。完全に、焦点が合っていない。あれ、どうやってやるんだろう、と思ってしまいました。
2日目もとっても楽しそうな木村さん♪ かなり弾けて思いっきり踊っていたけど、踊りはすべて綺麗です。終盤、群舞を背負って先頭で踊るところが、やっぱり素敵だよな〜、と。ソロもパ・ド・ドゥも素敵だけど、あの瞬間も最も輝く場面の一つです。
一つだけ、2日間ともヒヤヒヤした場面が、、。後半、群舞が舞台をグルリと囲んで座り、真ん中で踊るダンサーにかけ声をかける場面があるんですが、そのかけ声が何度も途切れそうになり、ヒヤヒヤしてしまいました(苦笑)。やっぱり、日本人はああいうの苦手なのかな〜、と。頑張ってくれてる人もいたんですけどね〜。その囲みの場面で、上手の端(一番舞台寄り)に友人の木村さんが座ります。その隣に松下さん。木村さんの絡みに、松下さんが本当によく応えてくれるんですよ〜。感激しました。

2日目もやはり「愛が私に語りかけるもの」に陶酔…。久々のBBLの面々や、念願の演目の一つということもあって、初日は最初の第4楽章で感極まったんですが、2日目は第6楽章でヒタヒタと押し寄せるような感動に襲われました。次々に登場するダンサーたちは、肌色のレオタードを着ただけの出で立ち。男性はショートパンツのみ。男女とも、ところどころ穴が開いていて、肌が見えるようになっています。装飾を一切排除したダンサーたちは、その存在だけで美しく、生きていれば誰でもが経験するであろう人との交わりを、美しく狂おしく表現する様は、非常に感動的でした。
ジュリアンの美しい上半身は、なんていうか、説得力があるなと思いました。とても多くのことを語るかと思えば、語ることなんて何も必要がないというくらい、ただその存在が美しかったり。舞台に横たわるだけで、ただその背中や胸がそこにあるだけで、なんとも詩情がありました。ジュリアンがひざまずいて胸を反らせ、その胸にロスが手を置いてポワントで踊るところが好きでした。

「春の祭典」、前半の男性パートの迫力に、息が吐けませんでした。もうだって、頑張らないと圧倒されてしまいそうなほど、イスラエル・フィルの演奏は迫力があって、混合キャストの群舞が負けじと迫ってくる。一筋の光に向かって一列に退場していくまで、本当に緊張の連続でした。その、一筋の光に向かって袖に消えていく場面に、いつも以上にドラマを感じました。光の方向に何かを見つける。「おい、あれを見ろ」と。最初に一人が偵察に行って、「大丈夫だ、みんな行くぞ」みたいな。それがわかりやすくて面白かった。先頭を切って進んでいくのが、2人の若い男の一人。初日は那須野さん、2日目は同じ位置に松下さんでした。先頭の若者が回転したとき、汗が下向きの放射線状にバッと飛び散るのが照明に光って見えるのが、すごく好きなんです。
クピンスキーのリーダーが面白かった〜(褒めてます)。生贄をイジメる姿が、妙に生き生きとして見える(笑)。相棒の武尊さんもよかったんだけど、相手がクピンスキーでは分が悪いな、と。身体の柔らかいクピンスキーに対して、武尊はそれほど柔らかい印象の人ではないし。もっと伸び伸びと踊れればよかったな〜と、ちょっと歯がゆかったです。松下さんがすごくよかった。彼は伸び伸びと本領を発揮してましたね〜♪ 流石だな、と。その相棒のマルコ・メレンダは、今回初めて見るダンサー。小柄で、松下さんとのバランスもよかったかも。私的に、目が気になるダンサーなんですよね〜。「愛が私に〜」、「春の祭典」と見ているうちに、メレンダが「80分間世界一周」の旅人を踊ってくれたら嬉しいな〜と思うようになっていたんですが、さっき発表された「80分間」初日のキャストを見たら、メレンダが旅人になっていたのですごく嬉しかった。映像ではエティエンヌ・ベシャールが踊っていて、ベシャールは「ヘヴン・フォー・エヴリワン」を踊っているダンサーなので、私にとっては大事な位置なんです。いや、旅人は誰が見ても大事な位置なわけですが。
オスカー・シャコンの生贄がすごくよかったです。男性の生贄は、弱い者が選ばれます。確かにシャコンの生贄はそうやって選ばれたんだけど、彼の持つ身体的な美しさとダンサーとしての輝き、そういう抗えない魅力と、生贄の弱さが入り混じったような、独特の存在感がありました。その周りとは違う異質性が、彼の生贄としての存在感なのかもしれないと思いました。
井脇さんの生贄が、少し変わったような気がしました。凛とした美しさや、女性たちのリーダーのような存在感に加え、内から湧き起こる強さがあった。隙のない、清潔感のある美しさから、生命としての野性味が出たというか。井脇さんも、まだ新しいステージがあるのかもしれないと思って、ちょっとワクワクしました。一時は第一線から離れた井脇さんですが、最近はほとんどの公演に出てくれるようになったので、本当に嬉しいです。まだまだ踊り続けてほしい。


<奇跡の響演>
2010年11月4日(木)19:00 東京文化会館

振付:モーリス・ベジャール

『ペトルーシュカ』
東京バレエ団
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

青年:長瀬直義
若い娘:佐伯知香
友人:木村和夫
魔術師:柄本武尊
3つの影: 高橋竜太、氷室友、小笠原亮
4人の男: 松下裕次、梅澤紘貴、井上良太、岡崎隼也
4人の若い娘:高村順子、森志織、村上美香、吉川留衣


『愛が私に語りかけるもの』
モーリス・ベジャール・バレエ団
音楽:グスタフ・マーラー(「交響曲第3番」より第4,5,6楽章)

彼:ジュリアン・ファヴロー
彼女:エリザベット・ロス
子ども:大貫真幹
子どもたち:ローレンス・ダグラス・リグ、ウィンテン・ギリアムス、ヘベルス・リアスコス、
ダニエル・サラビア・オケンド、エクトール・ナヴァロ、アドリアン・シセロン
オアナ・コジョカル、フロランス・ルルー=コルノ、キアラ・パペリーニ、
ジャスミン・カマロタ、コジマ・ムノス
大人たち: ダリア・イワノワ、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ヴァランタン・ルヴラン
マルコ・メレンダ、キャサリーン・ティエルヘルム、那須野圭右
ダヴィッド・クピンスキー、ルイザ・ディアス=ゴンザレス、ティエリー・デバル、
ポール・クノブロック、ポリーヌ・ヴォワザール、オスカー・シャコン


『春の祭典』
モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

生贄:オスカー・シャコン
2人のリーダー:デヴィッド・クピンスキー、柄本武尊
2人の若い男:松下裕次、マルコ・メレンダ
生贄:井脇幸江
4人の若い娘:
キャサリーン・ティエルヘルム、フロランス・ルルー=コルノ、小出領子、吉川留衣


指揮:ズービン・メータ
演奏:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:ラハヴ・シャニ(「ペトルーシュカ」)
メゾ・ソプラノ:藤村実穂子(「愛が私に語りかけるもの」)
合唱:栗友会合唱団(「愛が私に語りかけるもの」)
児童合唱:東京少年少女合唱隊(「愛が私に語りかけるもの」)
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2010年11月04日

<奇跡の響演>初日!

行ってまいりました、<奇跡の響演>。幸せでした〜。なんかもう、感激がいっぱいあって、何から書いていいのやら、という感じです。
BBLのメンバーが本当に日本に来てるんだなぁというのを実感。もう間もなく本公演が始まるのかと思うと、ワクワクしました(もちろん、明日の<響演>も楽しみですが)。2年ぶりの懐かしい顔がいっぱい。ジュリアン、本物だ〜♪(当たり前)とか、シャコン、4年ぶり〜(泣)、とか。わかっていはいたけど、実際に目にしてみると、初めて見るメンバーが想像以上に多いことに驚いた部分もあります。一瞬、寂しさに襲われたけど、みんないいダンサーだったので、すぐに気にならなくなりました。きっと、この後に続く本公演で、もっといろいろな表情を見せてくれて、そうしたらどんどん好きになるだろうと思うと、ワクワクしました。
「春の祭典」で若い娘を踊っていたキャサリン・ティエルヘルムは、この間届いたDVD(「ベジャール・バレエ パリ・オペラ座へ」)で、急遽の代役で「ウェーベルン第5番」を踊っていたダンサーですよね。彼女も素敵だったし、リーダーを踊っていたフェリペ・ロシャも可愛かった(最後、ちょっと間違えた?)。いや、可愛いという柄ではないんですが(笑)、なんか可愛かったんですよ。
高岸さんのリーダーのパワフルさに笑った♪ おそらく、いや間違いなく今日の公演の中で最年長ですよね? 若者たちに引けを取らないどころか、群舞にいても目立つ、目立つ。迫力あるわ〜。それは、日本の観客が高岸さんを知っているからなかなぁ? いやぁ、それにしても高岸さんの「春の祭典」は貴重でした。相棒のフェリペ・ロシャは比較的しっかりした体格の、褐色の肌をしたダンサー。カーテンコールなどを見ていると、年上の高岸さんへの敬いがあるというか、とても謙虚で好印象でした。で、笑顔がちょっと可愛いな、と。
若い男の那須野さんがすーごく格好良かった! すごく綺麗で力強い踊り。あの正確さというか美しさは、日本人ならではなのかな〜と思ったり。那須野さんの「春の祭典」を通しで見ることができてよかったと思いました。カーテンコールで那須野さんを立てている氷室さんも印象的でした。
BBLと東バのミックス群舞は、思ったより違和感はありませんでした。そりゃ、違いはあったと思います。でも、すごく面白かったから、それでいいや、と。こうして本家と東バが同じ作品を混合で踊れるなんて、素晴らしいじゃないか、と。ベジャールが生きていたら、なんて言ってくれただろうかとか、このアイディアを喜んでくれただろうかとか、ちょっと考えてシンミリしてしまいました。混合の「春の祭典」なんて今後見られるかどうかわからないし、しかもそれを生のオーケストラで見られるなんて、本当に奇跡だよなぁ、と。これで私が、ズービン・メータとイスラエル・フィルのすごさを知っていたら、もっと感動できたんだろうなと思うと、ちょっと悔しい(苦笑)。
シャルキナと長瀬さんのリフトもすべて上手くいってホッ、と。シャルキナは可愛いな〜、やっぱり。見るたびに美しくなりますねぇ。長瀬さんの生贄も板についてきた。あの、全身全霊で踊ってる感がいいですよね、彼は。ラスト、中央で抱き合う2人。先にシャルキナが長瀬さんの胸に頬を預けるようにすると、長瀬さんが彼女の温かみを確かめるようにゆっくりと背中を抱いたのが印象的でした。カーテンコールで幕前に登場したとき、シャルキナが長瀬さんにギュッと抱きついたのが可愛かった(♪)。長瀬さんの反応が薄かったのが残念だったけど(笑)。日本人はそういうの得意じゃないからで、嬉しくなかったわけじゃないと思いますが。シャルキナ的にとりあえず納得できるパートナーシップが築けたのかなぁと思って、私としては嬉しかったです。

しかしなんと言っても、「愛が私に語りかけるもの」がすごくよかったです。真っ白なレオタードのロスとジュリアンの美しいパ・ド・ドゥに、美しい音と藤村実穂子さんの美しい歌声。もう感涙でした…。舞台の下手(オーケストラピットの横辺り)に大人の合唱隊、上手に少年少女の合唱隊。 藤村さんは、下手の合唱隊の一番舞台寄りに登場して歌います。その登場する姿、退場する姿にまで、ただならぬ存在感。語りかけるような優しい歌声は、なんとも威厳がありました。
この作品を見ることができただけでも感激なのに、しかもそれを生のオーケストラと生の声で見られるなんて、幸せすぎて身震いしました。大好きな両カンパニーの、大好きなベジャールの作品を、奇跡と呼ぶに相応しい条件で見ている。あぁ、私が藤村さんとメータとイスラエル・フィルのすごさを知っていればもっと、、、。
第4楽章のジュリアンとロスのパ・ド・ドゥの美しさったら…。大袈裟ではなく、完璧な世界観を見せられているようでした。ロスはやっぱり特別な存在だし、何を踊っても素敵だけど、この作品はかなり好きなほうに入るかも。ジュリアンがさらに美しくなっていました。あのキラッキラしていた若い頃から、大人の男になったな〜という時代を経て、昨日のジュリアンの美しさはさらに一皮剥けた感がありました。実は前回は、ちょっと老けたなぁと思った瞬間もあったんですが、今回の彼には後から追いかけてくる若い子たちのキラキラに負けない重厚な輝きがあり、圧倒的だと感じました。もしかしたら、前回の来日の時にはベジャールの死から間もないこともあり、様々な重圧があったのかもしれないなんて想像してしまいました。
第5楽章は「子供たち」が登場する明るく美しい場面。黄色のレオタード(穴開き)の男の子たちと、ピンクのレオタード(穴開き)の女の子たちは、無垢な存在感。彼らが楽しそうに戯れる世界は、なんだか幸福で、現世ではないでした。新入団の大貫真幹さんが子ども役で登場。いや〜、堂々とした舞台姿でした。今年の9月のシーズンから入団したばかりとは思えない、安定した踊りと佇まい。若いけど、既に海外のいくつかのカンパニーで踊っているんですよね、彼は。テクニックが優れているのは、服部有吉くんの『ラプソディ・イン・ブルー』でわかっていたんですが、BBLの雰囲気にも馴染んでいたし、東洋人という個性も活きていて、これから何を踊るのか楽しみになりました。
第6楽章に登場するのは「大人たち」。最初にジュリアンと一組のカップル。その後は一人、また一人とダンサーが登場してきます。第5楽章よりも知っている顔が多くてワクワク。肌色のレオタード(男性はショートパンツ)の男女がパートナーやフォーメーションを変えてゆったりと踊る美しい場面です。男のジュリアンも、様々に相手を変えて交わっていきます。イワノワもさらに美しくなったような。少し細くなったかな〜と思ったのは気のせいかな。女性らしさが増したような気がして、格好良すぎるイワノワもいいけど、柔らかさの増したイワノワも素敵。そして出ました、クピンスキー〜♪ 相変わらず柔らか〜い身体。しなやかで美しい踊り。そして、そこはかとなく漂う色気…。踊りが進むにつれ、ブロンド髪がサラサラと顔にかかる様子まで美しい。髪も個性の一つというか、踊りの一部にもなり得ますものね。那須野さん、シャルキナ、デバルなどが次々に登場して、久々のBBLの面々に感激しきりでした。そして最後に(確か)オスカー・シャコンが登場。綺麗な褐色の肌に、カールしたフワフワの黒髪。4年前より身体がしっかりしたかな〜。やっぱり美しいダンサーです。
そして、再び子ども役の大貫さんが登場して、胸が震えるような美しく荘厳なラストが訪れます。その少し手前、大人たちに周囲を囲まれたジュリアンが、耳、目、口を左右の手で順々に塞ぎながら回転する場面がすごく好きでした。回転を止め正面を向いた男は、鳥の羽ばたきのように何度か大きく腕を回します。彼は現世でもがく男。そこへ、無垢の象徴のような、天使のごとき子どもが登場します。彼は愛そのもの。地に手を着いた男の傍らに女が立ち、少年のほうを毅然と指差す。男も大人たちも一斉に子どものほうへ向きます。ゆっくりと女と大人たちが消えると、舞台には男と子どもだけになる。背後には太陽のような真っ赤な円。やがて男と子どもは一つに重なり踊り始めます。2人が重なり、繰り返される一連の動きの、神秘的な響き…。やがて何か吹っ切れたような男は、子どもと2人、戯れるように向かい合って踊り続けます。そこへ女が現れる。舞台をパ・ド・ブレで一周するように移動して、重なり合う男と子どもの背後から、さらに彼女が重なり、言葉にならない美しい終幕を迎えます。舞台の冒頭にも登場した豪華な衣裳を着けた人物たちが、後ろから彼らをジッと見つめています。

『ペトルーシュカ』は、なんと言っても木村さんが楽しそうでした! この一言に尽きると言ってもいいくらい、本当に楽しそうだったんですよ〜。最初の演目『ペトルーシュカ』が始まった瞬間から、何度もオーケストラの音に鳥肌が立ちそうになりました。その音楽を誰よりも全身で楽しんでいたのは、木村さんだったんではないでしょうか。「嬉しい、嬉しい、嬉しい」、身体がそう叫んでいる、そんな踊りだったんです。少し髪も伸びていて、踊るたびに揺れる、揺れる(笑)。この日の木村さんの踊りには、あの揺れる髪が合っていました。踊りもキレッキレでした〜。生真面目なロボットマイムにも笑った(♪)。吉岡さんも軽やかで本当に可愛かったです。相変わらず、揺れる前髪にはやれれます(笑)。武尊さんの魔術師が素敵でした〜。ヒゲがよく似合う。目力もついてきたなぁ、と。後藤さんの青年は当たり役の一つ。昨日もよかったですよ〜。

最後になりましたが、やはりオーケストラがすごかったです。クラシックには相当に疎い私ですが、すごいと素直に思いました。厚みがあって豊かな音色。何度も鳥肌が立ちそうになりました。音が豊かだと、舞台の色彩まで鮮やかに感じる。それがすごく印象的でした。ズービン・メータがバレエの指揮を振るのは初めてなんですよね(イスラエル・フィルもかな?)。素人の私から見て、ダンスとの違和感はなかったと思います。とくに「愛が私に語りかけるもの」のマーラーでは、見事にすべてが一致していたように思いました。「春の祭典」の迫力もすごかった。改めてベジャールの「春の祭典」のすごさを見たような気がします。「ペトルーシュカ」を素晴らしい演奏で聴けたのも嬉しかったです。

<奇跡の響演 2010>
2010年11月3日(水・祝)15:00 東京文化会館

振付:モーリス・ベジャール

『ペトルーシュカ』
東京バレエ団
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

青年:後藤晴雄
若い娘:吉岡美佳
友人:木村和夫
魔術師: 柄本武尊
3つの影: 高橋竜太、氷室友、小笠原亮
4人の男: 松下裕次、梅澤紘貴、井上良太、岡崎隼也
4人の若い娘: 高村順子、佐伯知香、森志織、村上美香


『愛が私に語りかけるもの』
モーリス・ベジャール・バレエ団
音楽:グスタフ・マーラー(「交響曲第3番」より第4,5,6楽章)

彼:ジュリアン・ファヴロー
彼女:エリザベット・ロス
子ども:大貫真幹
子どもたち:ローレンス・ダグラス・リグ、ウィンテン・ギリアムス、ヘベルス・リアスコス、
ダニエル・サラビア・オケンド、エクトール・ナヴァロ、アドリアン・シセロン
オアナ・コジョカル、フロランス・ルルー=コルノ、キアラ・パペリーニ、
ジャスミン・カマロタ、コジマ・ムノス
大人たち: ダリア・イワノワ、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ヴァランタン・ルヴラン
マルコ・メレンダ、キャサリーン・ティエルヘルム、那須野圭右
ダヴィッド・クピンスキー、カテリーナ・シャルキナ、ティエリー・デバル、
ポール・クノブロック、ポリーヌ・ヴォワザール、オスカー・シャコン


『春の祭典』
モーリス・ベジャール・バレエ団、東京バレエ団
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

生贄:長瀬直義
2人のリーダー: 高岸直樹、フェリペ・ロシャ
2人の若い男:那須野圭右、氷室友
生贄:カテリーナ・シャルキナ
4人の若い娘:
キャサリーン・ティエルヘルム、フロランス・ルルー=コルノ、小出領子、吉川留衣

指揮:ズービン・メータ
演奏:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノ:ラハヴ・シャニ(「ペトルーシュカ」)
メゾ・ソプラノ: 藤村実穂子(「愛が私に語りかけるもの」)
合唱:栗友会合唱団(「愛が私に語りかけるもの」)
児童合唱:東京少年少女合唱隊(「愛が私に語りかけるもの」)
posted by uno at 14:37| Comment(6) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月22日

オーストラリア・バレエ団『くるみ割り人形』【2幕】

1幕のラスト、ロシアでの子ども時代は当然、雪のクリスマス。母親からトウシューズをもらい、それを愛しそうに抱きしめるクララ。バレエ人生の始まりを感じさせる印象的なシーンです。そうしてずっと真冬のクリスマスを過ごしていたクララが、人生の終わり、冒頭の現代のシーンでは真夏のクリスマスを過ごしているのが、彼女の人生の旅路を感じさせて印象的です。
雪の場面では、大量の粉雪が降ってきます(紙)。最後には、舞台に薄っすらと雪が積もったように見えるくらい。幕切れ、母親とクララが連れ立って舞台の後方に歩いていくと、本当に雪の道を歩いたように彼女たちの通った跡ができたのが印象的でした。


2幕。帝室バレエ学校時代のレッスン風景から始まります。子ども時代の生徒たちを演じたのは、東京バレエ学校の子どもたち。正面には一面の鏡。ダンサーたちは皆、客席側に背を向けて踊ります。ピルエットに失敗して転んでしまう少女時代のクララ。バレエ教師に叱責されます。クララが挫けそうになると、鏡の向こうに未来の自分が現れる(ダン、ローリンズ)。中央の鏡は、照明を当てると透けるようになっています。少女のクララと未来のクララが、鏡越しに手を合わせる。そして愛しげに、頬ずりをするように、互いに鏡に寄り添います。子供たちと入れ替わりに、成長したダンサーたちが現れる。鏡が一枚一枚回転して、ダンサーたちは順々に入れ替わります。成長したクララもまた、鏡越しに未来の自分を見る。そして同じように鏡越しに寄り添う2人のクララ。彼女はそうやって、挫けそうになるといつも未来の自分に励まされていたのかもしれない。いや、もしかしたら逆かもしれないと思いました。辛いことがあったり、挫けそうになると、頑張っていた自分を思い出して、自らを奮い立たせていたのかもしれません。鏡越しに未来の自分を見ていたのではなく、鏡の向こうから未来の彼女がこちらを見ていたのかもしれない。

客席に背を向ける演出は、物語のラストにも登場します。クララが最後のステージを踊る場面を、私たち観客は背後から見ることになります。群舞もクララも、舞台の奥を正面にして踊るように構成されている。この、客席に背を向けるというのは、演出効果の一つだと思うんですが、マーフィーはそれを物語を豊かにするために巧みに取り入れたなと思いました。鏡越しのレッスン風景の場面では、過去と現在が交錯し、どちらとも取れるように演出されています。そして最後の場面では、それまでクララの物語を見つめてきた私たちを、スッと物語の中にまで引き込んでしまう。観客はクララの最後のステージを見ているのではなく、彼女の人生を見ているのだという感覚に変えてしまいます。

クララたちのレッスンを、なんだかお偉方が見にやってきます。女性たちがピルエットを披露する。回れなくなったものから端に避けて〜という感じでやっていくと、クララが最後まで残り、美しいピルエットを見せる。本人もちょっと「驚いたわ」という様子。ちょっと内気な(想像)クララは、誰よりも回れたのに、スッと皆の後ろのほうに引っ込んでしまいます。優秀なもの3人にメダルが贈られることになり、3人目に後ろのほうに引っ込んでいたクララが呼ばれます。メダルを掲げ、愛しそうにキスをするクララ。希望に満ち、キラキラと目を輝かせたダンが印象的です。『白鳥』で男爵夫人を踊ったとは思えないほど、純粋で希望に満ちた少女を演じるダン。オーロラを見たときも思ったけど、両極端と思える役を踊りこなすダンはすごいなぁ、と。クララはこのときもらったメダルを、ずっと大事に持っているんですよね。「バレリーナとして有名になったクララ」(プログラムより)は、その後もたくさんの賞をもらったかもしれない。でも、初めてもらった(想像)この小さなメダルは、何よりも嬉しく、大切だったのかもしれません。それを、ささやかなクリスマスツリーのてっぺんに飾ったクララが、思い出される場面です。

舞台は一転して、ピクニックの場面に。音楽はギゴーニュおばさんの場面です(スカートの中にいっぱい子供たちが入ってるやつ)。舞台には紗幕。下手寄りに木立のセットがあります。将校と友人たち3人がやってくると、木の下で休んでいた貧しい親子はコソコソと逃げてしまう。クララと友人たち3人も現れて、3×3のピクニックに。ピクニックの最中に貧しい親子が通りかかると、フッと暗い空気が立ち込める。男性陣は女性陣を守るように背後に隠し、女性陣は目を背け、彼らが通り過ぎるのを待ちます。クララの友人2人の踊りは、グラン・パ・ド・ドゥの男性のヴァリエーション。クララと将校のパ・ド・ドゥは葦笛の踊りです。バレエフェスで披露された、ピクニックのパ・ド・ドゥは、やっぱり物語の中で見たほうが素敵だな〜、と。木立のセット越しにキスをしようとすると、突然の雷鳴。急いでワイングラスなどをバスケットに入れ、敷いてあったシートで雨を避けながら退場します。2人でシートの両端をそれぞれ持って、走って退場する様子は、恋人となら雨降りもワクワクする、そんな空気感があって印象的でした。拍手をしようかな〜と思うと、先程の貧しい親子がコソコソと足早に戻ってきて、クララたちが落としていった果物(?)を半分に分け合い、むさぼるように食べる姿に、思わず拍手がフッと止む、、、。雨の音が不穏に響きます。貧富の差が描かれているわけだけど、雨降りさえ幸福な恋人たちのパ・ド・ドゥの締めくくりを、拍手も止むほどの重たい空気で覆うとは。マーフィーって(苦笑)、と思ったのでした。

続く帝室舞踏会は花のワルツの音楽。何故クララと将校は遅刻してきてんでしょう? よくわかりませんが、皇后は彼女のことを良く思っていない様子。ニコライ皇帝やご老人たちは、美しいクララをチヤホヤします。クララはといえば、そんな扱いにも至って謙虚。というか、こういう場にも慣れていないし、人を惹きつける自分の美しさにまだ気付いていないという感じ。皇后の冷たい態度にも戸惑います(ちょっと嫉妬も入ってるのかなぁ、と)。
この舞踏会でクララは、『くるみ割り人形』の金平糖の精を披露します。後方から『くるみ』のコール・ドがザーッと入ってきて、舞踏会から『くるみ』の舞台に一変。左右にバルコニー席が設置され、上手に皇帝と皇后、下手に将校と友人が座ります。コール・ドのいかにもバレエ・リュスっぽい衣裳にワクワクしました。踊りもどことなく昔っぽい。プログラムの表紙にも使われている、締めのフォーメーションの美しいこと。ここまでは確か、花のワルツだったと思います。続くクララと王子のパ・ド・ドゥは、グラン・パ・ド・ドゥのアダージオ。見せ場の一つであるパ・ド・ドゥを、主演の2人が踊らないというのが面白いな、と(将校はこのとき観客なので)。ただ、サポートの安定感を欠いてしまうのが惜しいと言えば惜しいところです。心なしか、初日はダンの安定感も揺らいだようでした。あの、抱え込みからのフィッシュダイブのポーズが面白い。面白い動きがたくさあって、感心することしきりでした。退場間際、バルコニー席から将校がクララに花束を投げます。

公演後の舞台裏。ちょっとスター気取りというか、ウットリと余韻に浸る様子の王子役が面白い。クララはチュチュを脱ぎ、ガウンを羽織ります。年老いたクララのクローゼットにも大事に仕舞われていたガウンです。老人たちがクララへの面会を今か今かと待ちわびている。クララに言い寄り、あれやこれやと宝石をプレゼントする老人たち。隙あらば手にキスしたり、脚に触れたり(笑)。拒むクララと、言い寄る3人の老人たちの場面は、グラン・パ・ド・ドゥの女性ヴァリエーション。
老人たちを追いやると、今度は将校が面会に来ます。舞台を対角線上に駆け、カランに全力で飛び込むダンがすごい。ここの飛び込みっぷりは、2日目のローリンズとジャクソンの比じゃありませんでした。思わず会場がどよめくほど。幸福の絶頂にある2人のパ・ド・ドゥは、グラン・パ・ド・ドゥのコーダの音楽だったと思います。

ロシア革命が起こり、戦場へ赴く将校。幸福の絶頂のようなパ・ド・ドゥから、シーンは重なるようにして戦場へと移行します。音楽は、ディベルテスマンのロシア。最後のキスを交わすと、クララを振り切るように戦場(紗幕の向こう)へと向かう将校。下手で成り行きを見つめるクララ。兵士たちがピラミッド状に足場を組み、その頂点に駆け上がった将校は、銃弾に倒れます。ズダーンという銃声が響く、、、。

とりあえずここまで。音楽などは記憶違いのところもあるかもしれませんので、何卒ご了承を。2幕の後半は書けたら書きます〜。
posted by uno at 23:31| Comment(0) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする