2010年01月03日

【感想】 『聖なる怪物たち』2009年12月18日

『聖なる怪物たち』の感想をUPしました。3日間もお休みだったのに、レポはこれしか書き終わらなかった、、。ま、いっか…。

球面三角/Stage
シルヴィ・ギエム&アクラム・カーン・カンパニー『聖なる怪物たち』
2009年12月18日(金)19:00 東京文化会館



明日から仕事です。3連休、あっという間だったな〜、、、。
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2009年12月11日

東バ『くるみ』マイ・キャスト1幕だけ/他

東バの『くるみ』、マイ・キャストの感想を1幕だけUPしました。とりあえず、岩国公演に向かう前に書いた文だけでもUPしておきたかったので。

東京バレエ団『くるみ割り人形』<マイ・キャスト シリーズ1>
2009年11月21日(土)13:30 東京文化会館


【12月12日(土)一般発売】

■ K-BALLET COMPANY 『海賊』
電子チケットぴあ
eプラス

■ 新国立劇場バレエ団 デヴィッド・ビントレーの『カルミナ・ブラーナ』
電子チケットぴあ
eプラス

『カルミナ・ブラーナ』には、古川和則さんもキャスティングされてますね。
新国立劇場

では明日、東バの岩国公演に向けて出かけてまいります(公演は明後日12日)。久々の遠征なので楽しみです♪
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2009年12月10日

マリインスキー・バレエ『イワンと仔馬』12月9日

やっと行ってきました〜、マリインスキー・バレエ。今回のは『イワンと仔馬』しか見に行かないので、私のマリインスキーはこれで終わり…。仕方がないとはいえ、やはりどうしても寂しさは込み上げます。いや〜、でもこの『イワンと仔馬』は見ておいてよかった。とっても楽しかったです(最後の皇帝の場面を除いて)。あまり多くは見ていないんですが、ラトマンスキーはわりと好きなんです。彼の作品の中でもこれは、『明るい小川』と同じ系統なのかな、やっぱり。

マリインスキー・バレエ 『イワンと仔馬』 全2幕
2009年12月9日(水)19:00 東京文化会館

音楽:ロジオン・シチェドリン
振付:アレクセイ・ラトマンスキー(2009年)
台本:マクシム・イサーエフ
音楽監督:ワレリー・ゲルギエフ
装置・衣裳:マクシム・イサーエフ
照明:ダミール・イスマギロフ
四季:アレクセイ・レプニコフ
管弦楽:マリインスキー歌劇場管弦楽団

姫君:ヴィクトリア・テリョーシキナ
イワン/皇子:ミハイル・ロブーヒン
仔馬:イリヤ・ペトロフ
侍従:イスロム・バイムラードフ
皇帝:アンドレイ・イワーノフ
父親:ロマン・スクリプキン
雌馬/海の女王:エカテリーナ・コンダウーロワ
大きな馬たち:アンドレイ・エルマコフ、カミーリ・ヤングラゾフ
ダニーロ:ソスラン・クラーエフ
ガヴリーロ:マクシム・ジュージン
娘たち:
  ヤナ・セーリナ、エカテリーナ・イワンニコワ、クセーニャ・ロマショワ
  ヴァレーリヤ・マルトゥイニュク、エリザヴェータ・チェプラソワ、オリガ・ミーニナ
ジプシーたち:
  ラファエル・ムーシン、フョードル・ムラショーフ、カレン・ヨアンニシアン
  エレーナ・バジェーノワ、アナスタシア・ペトゥシコーワ、ポリーナ・ラッサーディナ
  リュー・チヨン、アリサ・ソコロワ

とにかく芝居も踊りも、盛り込む盛り込む。あれやこれやと考える間もないほど、向こうのペースでどんどん進みます。どこまでが芝居でどこからが踊りなのかっていうくらい、皆よく動く。見てるほうは楽しいけど、演じるほうは大変なのかな?と思ったり。最後まで飽きさせない舞台でした。
とっても愉快でちょっぴりシュールな絵本を、そのまま再現しました、という感じの舞台。絵本から飛び出してきたようなカラフルな衣裳や装置で、とても好きでした。
ダンサーたちも個性豊かなキャラクターを生き生きと演じていたし、踊りも文句なく、とっても楽しかったんですが、やっぱり最後に皇帝が亡くなるっているのが悲しかったです、、、。いや、元の物語があるから仕方ないんですが、あの演出がちょっとな〜。とってもキュートで憎めない皇帝だったので尚更、あの姿は笑えなかったです。それとも、それが意図だったんでしょうか。グラグラと湯の煮え立つ大釜をガラス張りにして、表面だけ水を入れるっていう演出の、コントのようなチープさ(褒めてます)は面白かったと思います。ただ、もがき苦しんだ皇帝がガラスにへばりついて息絶えるっていうのは、ちと残酷だったと思うんですが、私が考えすぎなのかなぁ。まあ、昔話とかって結構残酷だったりすると思うんですが、それを舞台に乗せる際にどうするかっていう問題なのかな、と。それを受け取るほうが、どこまでなら後味を損ねないかというのも、人それぞれ違いますからね〜。そこを除けば本当に楽しい舞台でした。

テリョーシキナはいいダンサーですね〜♪ あんなにキュートだとは思わなかった。ロブーヒンもとってもよかったです。私の中でロブーヒンて、過去に何度かオスモールキナと踊っているのを見た記憶しかないんですが、そのときよりも全然よかったかも。小さなイリヤ・ペトロフの仔馬は可愛かったし、同じく小さなアンドレイ・イワーノフの皇帝もとってもお茶目。皇帝の人、小っちゃいな〜と思ったら、『白鳥』で道化を演じてたダンサーなんですね(私が見たのは前回です)。イスロム・バイムラードフの侍従も面白かった。あんなに渋くて格好良いバイムラードフが、あそこまで壊れるとは(♪)。雌馬のコンダウーロワはとっても美人。今回の『白鳥』は見られなかったので、ここで彼女を見られたのは嬉しかったです。そして、大きな馬たちは舞台にいるだけで、なんか楽しい(♪)。

イワンと姫君の出会いの場面が好きでした。2人の心の遣り取りが丁寧に描かれていて微笑ましく、そしてなんだか優しい。でも、イワンと姫君のパ・ド・ドゥも素敵だったんだけど、そこに仔馬が加わってパ・ド・トロワになるのが、何とも言えず心温まりました。トロワってほど3人で踊るわけじゃないんだけど、3人が仲良さそうに楽しげにしているのが、なんかすごくよかったんです。

物語とカーテンコールの境界線が曖昧なのがよかった。まだ物語が続いてるんだと思って見ていたら、いつの間にかカーテンコールだったんです。もちろん、その後に緞帳が一旦下がって、通常のカーテンコールもあるんですが。大団円に死んだはずの皇帝が出てきたので、「え!? もしかして、実は生きてましたっていうオチ?」と思ったら、全員が登場して手を振るカーテンコールに繋がっていきました。そういえば、同じラトマンスキーの『明るい小川』も、そんな終わり方じゃなかったっけ。全員が登場して終わるって、いいですよね。

え〜っと、すみません、極く簡単ですがこの辺で。
明日仕事をしたら、明後日には東バの岩国公演に向けて出発します。東バのblogも更新されました。乾さんと木村さんのスペインの写真、いいわ〜。名古屋がスペインということは、やはり岩国はドロッセルマイヤーでしょうか。気になるー。
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2009年11月21日

東京バレエ団『くるみ割り人形』11月20日

東京バレエ団、5年ぶりのワイノーネン版『くるみ割り人形』です。初日の公演に行ってまいりました。当初予定されていたスティーブン・マックレーは英国ロイヤル・バレエ団の公演の都合により降板(チケット売場に貼ってあったポスターは、マックレーのものだったけど、、、)。代わりにヨハン・コボーがコジョカルのパートナーを務めたわけですが、もちろん2人のパートナーシップが悪いはずはなく、見つめ合う視線に愛を感じる素敵な舞台でした。

いや〜、それにしても楽しかった。流石に5年ぶりとなると、多くが初役だったと思うんですが、どの役もみんなよかったです。そしてやっぱり、『くるみ』の音楽はいいなぁ〜、と。時折りベジャール版の場面が思い出されるという、ちょっと不思議な『くるみ』体験となりました。私の中で、『くるみ』の音楽とベジャール版が分かち難く結びついているのを感じたと言いますか。もちろん、目の前のワイノーネン版に集中できなかったというわけではなく、通常の『くるみ』も大好きなんです。ただ、ベジャール版も経験することによって、両方の引き出し共有することができるというか、どちらもより強く心を揺さぶられるような気がしました。

東京バレエ団創立45周年記念公演[ 『くるみ割り人形』
2009年11月20日(金)19:00 東京文化会館

クララ:アリーナ・コジョカル
くるみ割り王子:ヨハン・コボー

【第1幕】
クララの父:柄本武尊
クララの母:井脇幸江
兄フリッツ:青木淳一
くるみ割り人形:氷室友
ドロッセルマイヤー:後藤晴雄
ピエロ:平野玲
コロンビーヌ:高村順子
ムーア人:小笠原亮
ねずみの王様:梅澤紘貴

【第2幕】
スペイン:乾友子-木村和夫
アラビア:西村真由美-柄本弾
中国:佐伯知香-高橋竜太
ロシア:田中結子-松下裕次
フランス:高村順子-吉川留衣-長瀬直義
花のワルツ(ソリスト):
   矢島まい、渡辺理恵、川島麻実子、日比マリア
   宮本祐宜、梅澤紘貴、安田峻介、柄本武尊

指揮:デヴィッド・ガーフォース
演奏:東京ニューシティ管弦楽団
児童合唱:東京少年少女合唱隊

【第1幕】
5年ぶりともなると、道行きの場面すらなんだか妙に懐かしい。最後に登場したドロッセルマイヤーの手には、くるみ割り人形。東バblogで高橋さんが、くるみ割り人形目線のレポを書いてくれたおかげで、妙な愛着が生まれてしまい、既に他人とは思えないくるみ割り人形さん(笑)。
久々の井脇さんの晴れやかな笑顔がとっても綺麗。武尊さんの父も素敵でした。というか、あんなに父役が似合うとは。コジョカルが小柄だからか、東バに馴染んでいたからなのか、すぐにはコジョカルの存在に気付かず、、、。それにしてもコジョカルは可愛い。ちょっとした首の角度だけで、その愛らしさは一際目を引きます。幼さを残しているかのような、無邪気に弾む軽やかなステップ。彼女はステップだけじゃなく、指先までも歌っているかのようです。心優しいコジョカルのクララは、すべてのものをキラキラと見つめます。彼女にキラキラと見つめられたから、人形たちは心を持ったのではないかと思ってしまうほど。壊れてしまったくるみ割り人形を男の子たちから守ろうと、自分のスカートの裾を広げてくるみ割り人形を隠す姿がとても印象的でした。そういう無垢な心優しさは、彼女のいいところだな、と。コジョカルのジゼルが、スカートでコップの底を水を拭ったのを思い出しました。

氷室さんのくるみ割り人形が上手い♪ なんていうか、人形のはずなのに実に愛嬌があって、心くすぐられる人形っぷりでした。そのくるみ割り人形の腕に愛しそうに寄り添って踊るコジョカルが、また印象的。
平野さんのピエロもよかったです。ビヨヨヨヨ〜ンというバネの動きに、人形の軽さが出ているのが上手いな、と。対してネジを巻いて動いているらしい小笠原さんのムーア人は、力強い動きながら、やはり人間の重さを感じさせない踊りがとてもよかったです。

後藤さんのドロッセルマイヤーは、雰囲気、存在感はバッチリ。ああいう黒の扮装は、やっぱりよく似合う。踊りはもうちょっとシャープだとよかったかもな〜とは思いましたが、調子は悪くはなさそうでした。怪しいおじさんというよりは、目隠しを取ったら実は気の良い知り合いのお兄さんという感じでした。

クララの夢の中に登場するピエロとコロンビーヌとムーア人。夢の中で彼女と踊り、彼女を助け、元気付け、応援する彼らは、クララの「味方」という感じがして、その優しい存在感がとても好きです。「そっちに行っちゃ駄目だよ〜」とか言ってそうな平野さんのピエロが面白い。
東バのワイノーネン版に登場するねずみたちが、妙に好きなんです。まるでぬいぐるみみたいな、グレーのねずみたちが可愛い。ねずみの王様は梅澤さん。そう思うからなのか、ちょっとエレガントなねずみの王様でした。

くるみ割り人形(ここでは既にコボーが演じています)が、人形のマスクを取って王子に姿を変える場面は、いつ見ても得も言われぬ感動に襲われます。人形が王子になるというメタモルフォーゼの高揚感だけでなく、孤独からの解放をも感じさせる。
コジョカルとコボーのパ・ド・ドゥは、もちろん鉄壁のパートナーシップ。少しサポートがぐらついたとしても、それほど不安を感じさせないというか、この2人なら大丈夫と思ってしまいます。コジョカルが絶対的にコボーを信頼しているのが伝わってくるようなパ・ド・ドゥでした。コジョカルの踊りは、とても伸びやか。彼女がフワッとフォルムを描き出す様は、伸びやかで幸福感に溢れています。そして、やはりコジョカルは、その可憐な容姿とは裏腹に、とても情熱的な踊りをする人だなと思いました。音楽とともに感情が高まっていく、その頂点で感情が迸るような表現を見せる。そしてそれは、パートナーのコボーときちんと意思の疎通が図れているのが感じられました。

【第2幕】
東バの『くるみ』の装置がちょっと古いな〜というのは薄々(?)感じていたけれども、何が一番酷いって、クララと王子が乗る船についている得体の知れない葉っぱですよ!! いや、船も褒められたものじゃないけど、あのしなびた葉っぱ、何なんだろう? 何か意味のある葉っぱなんでしょうか。なんていうの、花言葉じゃないけど、葉っぱ言葉みたいなものがあるのかな〜なんて思ったんですけど、そんなわけないか…。

クララと王子の船の後ろに、コロンビーヌたちが乗った船。それを追いかけるねずみの王様たちの船が続きます。ねずみの王様が腕に包帯を巻いてるのが、お約束だけど笑えるよなぁ、と。手下のねずみをポカスカ叩くのが笑いを誘う場面なんですが、今日の梅澤さんは捌け際に2匹の頭を交互に連打するという演技で、更なる笑いを獲得していました。

ここのねずみは、不思議の国まで追いかけてくるんですよね。もう一悶着あるという。ねずみを追いかけて王子が行ってしまい、コロンビーヌや不思議の国の住人たちも消えてしまう。舞台に一人ぼっちになったクララは、寂しさに泣き出してしまいます。見ている私までどうしようもない寂しさと不安に襲われて、この場面はすごく印象的でした。なんか、ウワーと寂しさが込み上げてきたんです。でも、すぐにコロンビーヌたちと住人たちが戻ってきて、クララの安堵感が伝わってくると、私まで温かい気持ちになりました。王子は、ねずみの王様から奪った王冠をクララに捧げます(あのねずみ、あんなに立派な王冠は被ってなかったけど)。クララのスカートに恭しくキスをするコボーが素敵でした。

スペインの木村さんが素っ敵でした〜♪♪ 晴れやかな表情と、キレのある踊り。シャープで美しい爪先と、大きな手。ジャンプはキレがあるのに浮遊感もあって高いし、回転も安定していて綺麗。そして、何と言っても楽しそう♪ はぁ〜もう、最高でした。乾さんもとってもよかったです。落ち着きのある安定した踊りと佇まい。大人っぽくて上品な艶があって、とても素敵でした。
西村さんのアラビアは当たり役。柄本弾さんのサポートだけが心配だったんですが、大丈夫だったみたいです。余裕とまではいかないみたいだけど、いつも丁寧に頑張っているし、わりとサポートも上手なのかもしれません。
佐伯さんの中国は文句なくキュート。そして高橋さんは文句なく格好良い! 高橋さんって本当、高橋さんにしかないオーラを持っているというか、独特の存在感がある人だなと思いました。退場するときに、客席のほうに顔をジ〜ッと向けたりして、遊び心満点。笑わせてくれました。
ロシアの田中さんと松下さんは、2人とも踊りも存在感も安定しているので、安心して見ていられました。田中さんは透明感と華やかさがあり、明るくて、とてもよかったです。松下さんも、いつもながら清々しい、元気の出るような踊りで、やっぱり好きだな〜と思ってしまいました。
フランスの長瀬さんは、憂いを帯びたエレガントな物腰。楽しいのかな〜、楽しくないのかな〜と思いながら見てしまいました。いや、ほんのり笑ってはいるんですけど、例えば『ギリシャの踊り』を楽しそうに踊る長瀬さんではないんですよね。まあ、作品が違うから比べても仕方がないんですが。もっとこう、「俺、長瀬!」っていう長瀬さんを見たいなぁ、と。と言いつつ、今日の長瀬さんもよかったんですけどね〜。
花のワルツは、こうして見るとやっぱり長身の男子が増えたよな〜、と。弾さんも梅さんも、急いで着替えてソリストとして踊っていました。やっぱり、矢島まいさん好きだな〜。

グラン・パ・ド・ドゥの終盤には、ややコジョカルのテキパキした踊りが好みではないなぁと思う瞬間もあったんですが、そでもやはり素敵なパ・ド・ドゥだったと思います。なんていうか、2人の作り出す空気が、余計なことを考えさせないんです。それが、コジョカルとコボーの舞台のいいところだなと思いました。
コボーの踊りって、なんか好きなんです。大人の男が踊ってるっていう感じがするんですよね。音にピッタリ合わせるマネージュも、シンプルだけど綺麗で、とても好きです。
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2009年11月10日

維新派『ろじ式〜とおくから、呼び声が、きこえる〜』10月31日

フェスティバル/トーキョー09秋
維新派 『ろじ式〜とおくから、呼び声が、きこえる〜』
2009年10月31日(土)14:00 にしすがも創造舎

作・演出:松本雄吉
音楽:内橋和久

出演:維新派

シーンタイトル
M1 「標本迷路」
M2 「地図」
M3 「可笑シテタマラン」
M4 「海図」
M5 「おかえり」
M6 「鍍金工」
M7 「金魚」
M8 「地球は回る、眼が回る」
M9 「木製機械」
M10 「かか・とこ」

維新派の『ろじ式』を見ました。維新派を見るのは初めて。野外に特設の劇場を設置して上演するのが話題の維新派ですが、今回の舞台は「にしすがも創造舎」。閉校になった中学校の体育館を利用した劇場です。高い天上と奥行きのある舞台を想像していたんですが、中に入ってみると意外に普通の小劇場という感じの、こじんまりとした空間が作られていました。最初はちょっと残念に思ったんですが、後から思うに、それも維新派の一つの表現だったのかもしれません。「路地」という一つの小さな宇宙が広がっていました。

路地という、懐かしくて温かい、それでいて非日常と紙一重で繋がっているような、どこか恐ろしい存在。一歩足を踏み入れるには勇気が必要な、非日常への入口のような空間です。複雑に入り組んだ路地は、ちょっと覗くとすぐそこが行き止まりのようであるのに、その向こうにどんな世界が広がっているのだろうかという、想像を駆り立てます。舞台に路地を出現させるのは、固定のものと可動のものと合わせて600個の標本。出演者たち自らが標本を移動し、積み上げ、様々な場面を作り出します。木枠のみで作られた標本は、高く積み上げても向こう側を垣間見ることができ、圧迫感はなく、独特の閉鎖感を生み出していました。それはまるで、他者を拒絶するようでいて、招き入れざるを得ない路地の、魅力的な閉鎖感と通ずるようでした。

野外以外の劇場で上演するなら、是非とも維新派には新国立劇場の中劇場を使ってほしいな〜と思いながら見ていたんですが、2003年に『ノクターン』という作品で既に中劇場を使って上演をしていました。

舞台は無音で始まりました。客入れの音楽もなく、無音のままスッと暗転して暗闇に。一瞬の暗闇には緊張感があり、それは一気に舞台空間に引き込まれるのを感じた私の高揚感だったのかもしれません。暗闇の舞台に、出演者たちの白い影が移動するのが見え、スッスッスッと足が舞台を擦る音が聞こえる。何度経験してもワクワクする瞬間です。
作品が始まって感じたのは、如何にこれまでの自分がダンスの、身体の魅力に取りつかれていたかということです。登場したパフォーマーたちは、普段見慣れているダンサーたちの鍛錬された身体とは違い、様々な体型を持った人たち。ちょっとガッカリしかけたんですが、彼らが一斉に言葉を発したとき、ゾワッと心地良い感覚に襲われたんです。あぁ、声の力だ、と。それは、歌でも台詞でもない、言葉の力。リズムを得た言葉の不思議な連鎖は、始めこそ意味を考えてしまって作品の世界に入り込めていなかったんですが、次第にそれは心地良く、ずっと浸っていた世界に変わっていきました。意味を探ろうとして気を取られてしまったら、勿体無いかもしれません。その世界に浸ることができれば、意味は自ずと付いてくるような気がします。それは、意味というよりは、世界観というか、もう少し獏としたものです。もちろん、感じ方や楽しみ方は人それぞれですから、何とも言えませんが、私はあの「維新派」という世界観を楽しむことができたので、それでいいのかなという気がしています。帰り道、あの不思議なリズムが頭から離れずに鳴り続ける。それだけでいいんじゃないかな、って。

いわゆる台詞らしい台詞というのではなく、ほとんどの言葉・文章がリズムを得て、連なり重なって、イメージを紡いでいきます。1人、数人、全員。様々な言葉のリズムが押し寄せてくる。それは、歌でも台詞でもなく、言葉が新しい生命を与えられたかのようです。演劇でもダンスでもない。維新派は維新派という種類のものでしかないという所以かもしれません。

それでもダンス好きの私としては、ちょっとダンスっぽいシーンになると、どうしてもワクワクしてしまいます。終盤、可動式の標本がすべて取り払われ、急にガランとした舞台をパフォーマーたちが埋め尽くします。全員がこちらを向いて地面を踏み鳴らすようにして踊り、言葉を発する場面では、とりわけワクワクしました。少し腰を落として、足で地面を踏むような踊り。地を踏み鳴らすことによって魂を鼓舞し、あるいは鎮静する、ダンスの根源的な高揚感を受け取るような思いがしました。

初見で、しかも全員白塗りをしているので、名前と顔はほとんど一致しません。それでもやはり見ているうちに、印象的な人が何人が目に付くようになります。何が違うのだろうと思いながら見ていたんですが、「目」かもしれないなと思いました。「いい目」をしている人って、いますよね。もちろん、見る側の好みもあります。私にとって好みの、響く目を持っている人たちがいるわけで、あのキラキラした真っ直ぐな目、あるいは静かに見据えた遠い目、それらを見ているとついつい吸い寄せられてしまいます。目がいいと、その人の声まで届いてくるような気がしてくるんです。グッと心を掴まれる、声や目。もちろん調和を乱しているわけではなく、でも引き寄せられてしまう、私にとって印象的な存在のパフォーマーたちがいました。


維新派は、「<彼>と旅をする20世紀三部作」として、2007年に南米篇『nostalgia』、2008年に東欧篇『呼吸機械』を上演していて、今回の『ろじ式』は第三部のアジア篇に向けた実験作なんだそうです。アジア篇は2010年に日本で、2011年にはエジンバラ演劇祭での上演が予定されているとのこと。2010年の日本公演では、是非関東でも上演してくれるといいんですが、どうでしょう、、、。今回のように劇場公演だと可能性もありますが、野外での上演だと厳しいかな…と。
今週末から始まる『ろじ式』の大阪公演では、追加公演が決定したようです。やはり、拠点である大阪での人気のほうが高いんですね。
posted by uno at 23:34| Comment(2) | バレエ公演2009 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月11日

横須賀ラバヤ。

『ラ・バヤデール』の最終日、横須賀の公演に行ってまいりました〜。東京の最終日と微妙にキャストが違いましたので、載せておきますね。

東京バレエ団『ラ・バヤデール』全3幕
2009年10月10日(土)15:00 よこすか芸術劇場

◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫):斎藤友佳理
ソロル(戦士):後藤晴雄
ガムザッティ(ラジャの娘): 高木綾
ハイ・ブラーミン(大僧正): 柄本武尊
ラジャ(国王):木村和夫
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):高橋竜太
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像: 松下裕次

【第2幕】
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
  佐伯知香、森志織、福田ゆかり、村上美香
  吉川留衣、矢島まい、川島麻実子、小川ふみ
  平野玲、横内国弘

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1):岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2):奈良春夏
影の王国(ヴァリエーション3):乾友子

今日もよかったですよ〜。なんとなく、全体の調子は東京のほうがよかったような気がしますが、そんな中でも調子の変わらない友佳理さんって、やっぱりすごいなぁと。そういうところも含めて「ベテラン」と言うのかもしれないなと思いました。後藤さんは東京のほうが踊りが安定してたかな〜(いや、役自体は馴染んだ気がするんですが、単純に踊りが)。ガムザッティとのパ・ド・ドゥでは、サポートがヒヤヒヤ。まあ、これに関しては、どちらの調子が悪いのかわかりませんが。でもやっぱり、こうして2回見ると、後藤さんのソロル像がより伝わってくるような気がします。木村さんのソロルも、もう1回見たかったよなぁ…。初回はやっぱり、こちらのテンションも高くなってるので、できれば2回見たいです。まあ、それはいいとして、、。友佳理さんと後藤さんは今日もいい雰囲気。最初は意外だったけど、結構いいペアかもしれません。意外と後藤さんは、どんなパートナーにも反応できる人かもしれないと思いました。もちろん、友佳理さんの力も大きいとは思いますが。
それにしても、後藤さんのソロルのあの駄目っぷりがいいですね〜(褒めてます)。駄目っていうか優柔不断っていうか、結局どっちの態度にも徹することができない感じが、いいなぁ、と。ガムザッティを紹介されるときに、そっぽを向いている顔が「心動かされるもんか!」と言っているようで、「あぁ、この人きっと心動かされるな」と思わせる妙な説得力があると言いますか(笑)。案の定、ガムザッティの美しさに、必死に動揺を隠そうとしているのが、微妙な二度見に表れてるし。ニキヤが蛇の毒に倒れる瞬間も、この男が駆け寄るだろうことはラジャにはお見通しで、むしろ駆け寄るのを待ち構えていたように彼を遮る木村ラジャ。反対に、娘に駆け寄ってきたニキヤに対しては、慌てて間に入る木村ラジャ。ニキヤの身体がラジャに衝突せんばかりで、緊迫感があってよかったです。

今日初めて気が付いたんですが、あの解毒剤はマグダヴェーヤが大僧正に渡していたんですね〜。東京で3日間見たのに気が付きませんでした…。だって、あっちもこっちも気になる場面で、それどころじゃなかったから、、。ということは、大僧正はラジャの企みを知っていたということですよね。ラジャから聞かされたのか、マグダヴェーヤあたりに探らせたのか、「殺すなら毒だろう」と予測していたのか。解毒剤を渡すくらいなら、それを飲まずに済むような策略は思いつかなかったのだろうかと思ったんですが、大僧正的には助けることによってニキヤの愛を得られないかと思ったのかもしれないですね。みんな、自分のことしか考えてないよなぁ〜。

1幕1場の友佳理さんは、神の使いというよりは、神か!?と思わせるような、神聖で凛とした強さの漂うニキヤ。巫女的な雰囲気が一番強かったのは友佳理さんかもしれません。手を合わせて拝む仕草が一番印象的だったのも友佳理さんでした。ソロルとの逢引の場面では、打って変わって情熱的な一人の女性になる。それが、ガムザッティに刃を向け、最後には死を選んだ彼女は、一人の人間になっていました。
ガムザッティの部屋に呼ばれる2場では、そのピュアさが印象的。またそのピュアさが眩しくて、ガムザッティの同様を一層掻き立てのではないか、と。ガムザッティが彼女を呼んだ意図など知らないニキヤには、思惑も策略もありません。身分の違いや眩しい宝石に流されることなく、ソロルと自分の愛を信じ貫こうとするニキヤ。まさか反論されるとは思っていなかっただろうから、ガムザッティも動揺したはず。思わずガムザッティに剣を向けるニキヤ。「自分の中にこんな感情があったなんて」という、困惑と恐怖。
婚約式の場面では、よく見かけるニキヤの花篭の踊りがなくて寂しいなと最初は思ったんですが、何度か見ているうちにマカロワ版の花篭の踊りと音楽もいいなぁと思ってきました。去り際、ニキヤのほうを少し振り返る素振りを見せながら、最終的には走って逃げるようにして袖に姿を消すソロル。解毒剤を手から落としたニキヤの身体を、見ているこちらまで苦しくなるような、最後の苦しみが貫きます。友佳理さんの熱演でした。
東京の3日目のときも書きましたが、やっぱり友佳理さんのクラシックチュチュ姿に感動してしまいました。なんて言うんでしょう、こちらまで背筋が伸びるような、美しくて威厳のある佇まい。友佳理さんのクラシックチュチュは久しぶり、しかも今後ないかもしれないという、気持ちも込みの感動なんでしょうか。自分でもよくわからなくなっちゃってます(苦笑)。

ブロンズアイドルは、八木さんだと思ってたら松下さんでした。3幕の幕開き、会場がどよめいたのが面白かった(笑)。ちょっと舞台が狭そうでしたね〜。マグダヴェーヤは高橋さん。時折り見せる鋭い目が格好良くて♪ あんなに格好良い苦行僧、いないですよね〜(いや、苦行僧を見たことはないんですけど、、)。「ほら、吸って、吸って」と、ソロルにアヘンを勧めるのが、相手が後藤さんだと悪いことを勧めているように見えるのは気のせいだろうか(笑)。
1幕1場で大僧正の武尊さんが、自分の衣裳の裾を自分で踏んでしまって、ビリッと破けてしまったんですね(実際に音がした)。パックリ裂けてるのが気になって仕方がなかったんですが(また踏みそうだし)、3幕に登場したときにはちゃんと補修されていました。なんか自分、そういうところが一度気になると、止まらなくなっちゃうんですよね、、、。やや集中力を欠くという…。武尊さんの大僧正も、さらに馴染んでよくなったと思います。最初にニキヤのヴェールを取るときに、一瞬躊躇って手を止めるという細かい演技がよかった。

今日は寺院の崩壊の場面で、瓦礫が描かれた幕が床まで下りきらなくて、舞台の手前に瓦礫が積まれてる感じに残ってたんです。これくらい瓦礫が残ってたほうが、崩壊後って感じがしていいかもと思いました。
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2009年09月27日

東京バレエ団『ラ・バヤデール』9月26日【前半】

東京バレエ団『ラ・バヤデール』2日目の公演に行ってまいりました。はぁ〜、すごくよかったです〜。幕が下りたときには、なんだか長い物語を旅してきたような気分になりました。吉岡さんと木村さんのペアはもちろん、ガムザッティの田中さんもとてもよかったです。彼女も物語を紡ぎだせる人だな〜と、嬉しくなりました。

東京バレエ団創立45周年記念公演Z
東京バレエ団初演 マカロワ版『ラ・バヤデール』全3幕
2009年9月26日(土)15:00

振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント

◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫): 吉岡美佳
ソロル(戦士):木村和夫
ガムザッティ(ラジャの娘): 田中結子
ハイ・ブラーミン(大僧正): 後藤晴雄
ラジャ(国王): 高岸直樹
マグダヴェーヤ(苦行僧の長): 高橋竜太
アヤ(ガムザッティの召使): 松浦真理絵
ソロルの友人: 柄本弾
ブロンズ像: 松下裕次

【第1幕】

侍女たちの踊り(ジャンベの踊り): 西村真由美、乾友子
パ・ダクシオン:
   佐伯知香、森志織、福田ゆかり、村上美香
   吉川留衣、矢島まい、川島麻実子、小川ふみ
   平野玲、横内国広

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1): 岸本夏未
影の王国(ヴァリエーション2): 奈良春夏
影の王国(ヴァリエーション3): 乾友子

指揮: ベンジャミン・ポープ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

楽しみにしていた吉岡さんと木村さんの『ラ・バヤデール』が終わってしまいました、、、。舞台が素晴らしかっただけに、今はひたすら寂しい気持ちでいっぱいです。「吉岡さんと木村さんなら、ガムザッティは田中さんで!」と切望していた彼女も、期待以上のガムザッティで、一緒に物語を紡ぎだしてくれました。

木村さんのソロルは、男らしく勇壮。時折り近寄りがたい空気を醸し出す物静かな佇まいは、強さも感じさせて素敵でした。ニキヤと逢引をする場面でも、愛情たっぷりで情熱的ではあるんだけど、デレデレではない。彼女を守るかのような大きさを感じさせて、いつにも増して男らしかったです。話は前後しますが、狩の獲物のトラが登場したところで、自分が「えい!」と一突きに仕留めたのだというマイムをするんですが、なんかあれが格好良いような可愛いようなで、私も軽く一突きにされました(結局それか、、)。
踊りは、序盤は絶好調ではなかったかも。2幕以降から、脂が乗ってきて、最終的にはやっぱりすごくよかったです。なんていうんですかね〜。高い跳躍が、ただの高い跳躍ではないというか。徐々に高くなっていく跳躍には、ソロルの感情が表れているようで、心情を踊る場面の跳躍ほど美しく、グッとくるんです。いや、踊りの見せ場での跳躍も、やっぱり綺麗なんですけどね〜。

高橋さんのマグダヴェーヤも最高でした。なんていか、独特。どこがどうとは言えないんだけど、彼にしかできないマグダヴェーヤだよな〜という、強烈な存在感がありました。最初の踊りが終わって一旦退場するときに、ターザンみたいに拳で胸をウホウホと叩いていたんだけど(笑)、あれって横内さんもやってたっけ〜。楽しかったです。

吉岡さんのニキヤが美しかったです〜。相変わらずの透明感。さらに、人でありながら神に仕える者の神聖さがあり、それは恋をしてもなお薄れることがありませんでした。だからこそなのか、ほんのりとほのかな色気を湛えている。彼女に悪気はないけれど、大僧正がニキヤに言い寄りたくなるのもむべなるかな、という。
今日の吉岡さんは、かなり痩せてきていました。もともと華奢な人だけど、ときどき今日みたいに痩せちゃうときがあるんですよね、、。でも、一瞬心配したほど踊りには響いていなかったようです。クリアな踊りと美しいフォルム。視線まで大事にする、詩情のある佇まい。そんな吉岡さんが木村さんに寄り添ったり、もたれ掛かったりする瞬間が、また何とも言えず綺麗なんです。繊細で儚いイメージの吉岡さんですが、それだけではない秘めた情熱とパワフルさがあり、2幕の白いバレエも、1幕や3幕の強い感情を必要とする場面も、どちらもとてもよかったです。友佳理さんもそうですが、美佳さんも自然に物語の中を生きられる人だと思うので、その演技には押し付けがましさがなく、繊細さと情熱が絶妙なバランスで内在している人だなと思いました。
1場のパ・ド・ドゥではリフトに失敗する場面もあり、吉岡さんと木村さんでリフトの失敗ってあまり見たことがないと思うので、なんだか意外でした。ニキヤを頭上高く持ち上げるところで、タイミングが合わなかったのか、まったく吉岡さんが持ち上がらずヒヤッとしましたが、合わなかったのはそこだけした。

田中さんがガムザッティがよかった〜。田中さんは、育ちの良さや美しさだけでなく、とても知性を感じさせるガムザッティでした。おそらく世間知らずで、たぶん恋をするのも初めてだったから、ニキヤに対してあのような行動に出てしまったわけで、本来は賢い娘さんなんだろうな〜、と。きっと会話も面白くて、チェスの名手でもある。1幕2場のジャンペの踊りの最中、下手に腰かけているガムザッティとソロルが、しきりに何かお喋りをしているのが印象的でした。ソロルは彼女の美しさだけじゃなく、知的なお喋りにも感心したんじゃないかしら、と。そして、チェスを始めた2人。腕を組んでは時折り考え込んでいるのはソロルのほうで、ガムザッティは悠然とした佇まい。ついに彼女の一手に、「これはやられました〜(苦笑)」というソロル。ヴェールを脱いだガムザッティの「あまりの美しさに打ちのめされてしまう」(プログラムより)ソロルですが、彼女が内面的にも素敵な女性であればあるほど、その迷いや苦悩は増したのではないでしょうか。
ガムザッティがヴェールを脱いだ瞬間、目をシバシバとさせて、ヨロヨロと本当によろめいた木村ソロルが面白かったです。わかりやすい男だな〜(笑)。

ニキヤを待つ間、田中さんのガムザッティの悲しげな表情がとても綺麗でした。親が決めたからというのではなく、彼女もソロルに恋をし始めていたからではないか、と。ニキヤが表れると一変、毅然とした態度に変わります。それは、自分を奮い立たせるかのごとく。威圧的に振舞ったり、ニキヤに取りすがって倒れこんだり、人を想っているときのあの自分でもコントロールできない感情って、いいよな〜、と。
ニキヤの死を決心する幕切れ、初日の奈良さんが怒りに燃える目をしていたのに対し、田中さんの眼が冷たく据わっているのが印象的でした。奈良さんが赤い炎なら、田中さんは内なる怒りに静かに燃える青く冷たい炎。どちらも怖い…。

【第1幕】で力尽きました…。全部書いてからUPしようとすると、そのままお蔵入りということが多いので、ちょっとモヤモヤするけどとりあえず出してみました。

昨日書き忘れたんですが、初日の昨日はマカロワと振付指導のオルガ・エブレイノフさんがカーテンコールに出て来てくれました。飯田さんからお2人に花束を贈呈。初めて見るマカロワは、とても美しかったです。オルガさんは陽気な人、という感じ。ブロンズ像の松下さんの隣に入ったんですが、「オゥ、アナタハ手ツナゲナイノネ〜」という感じが面白かった。

さて、明日はもう最終日。早いですね、、、。まだ私は横須賀があるけど(兵庫は諦めました)、なんだか寂しいな〜、と。しつこいけど、今日の組合せをもう一回見たかったです。
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2009年09月26日

東京バレエ団『ラ・バヤデール』9月25日

東京バレエ団初演『ラ・バヤデール』、初日の公演に行ってまいりました。とっても楽しかったです〜♪ 好きなバレエ団の全幕初演というのは、なんともワクワクしますね。よく思うけど、好きなバレエ団があるというのは本当に幸せです。こんなにワクワクと、温かい気持ちで全幕初演を見守れることに、感謝したい気持ちになりました。みんな本当によかったよ〜。立派な初演だったと思います。

東京バレエ団創立45周年記念公演Z
東京バレエ団初演 マカロワ版『ラ・バヤデール』全3幕
2009年9月25日(金)18:30 東京文化会館

振付・演出:ナタリア・マカロワ(マリウス・プティパ版による)
振付指導:オルガ・エヴレイノフ
装置:ピエール・ルイジ・サマリターニ
衣裳:ヨランダ・ソナベント

◆主な配役◆

ニキヤ(神殿の舞姫):上野水香
ソロル(戦士):高岸直樹
ガムザッティ(ラジャの娘): 奈良春夏
ハイ・ブラーミン(大僧正): 後藤晴雄
ラジャ(国王):木村和夫
マグダヴェーヤ(苦行僧の長):横内国弘
アヤ(ガムザッティの召使):松浦真理絵
ソロルの友人:柄本弾
ブロンズ像:松下裕次

【第1幕】
侍女たちの踊り(ジャンベの踊り):矢島まい、川島麻実子
パ・ダクシオン:
   高村順子、佐伯知香、岸本夏未、阪井麻美
   西村真由美、乾友子、高木綾、渡辺理恵
   柄本武尊、柄本弾

【第2幕】
影の王国(ヴァリエーション1):田中結子
影の王国(ヴァリエーション2):佐伯知香
影の王国(ヴァリエーション3):高木綾

指揮: ベンジャミン・ポープ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


ミラノ・スカラ座の衣裳、装置は流石に豪華でした。1幕2場のガムザッティの衣裳は、豪華とは言っても踊ることを考えて作られている衣裳とは違い、踊ることは考えられていないと思われ、歩くたびに装飾が重たそうに感じられるほど豪華で、とっても綺麗でした。ラジャもやっぱり踊る必要がないので、すごい。あの豪華で立派な衣裳に着られてしまうことなく、悠々と演技していた木村さんが素敵でした。3幕で、ラジャの衣裳の装飾がポロポロと取れて落ちていたのが、ちょっと気になってしまった、、、。ああいうのって、返すときに補修するのかな〜とか。
仏像はやっぱり崩壊しませんでした。神殿が崩壊していく中、台座が割れて下りてきた仏像は、背後にスーッと消えていったようです。

横内さんのマグダヴェーヤがよかったです〜。あれほどハマるとは思わなかった。マグダヴェーヤにしてはスタイルが良いなぁという感じだったけど(笑)。それにしても、随分とロン毛だったな〜。1幕1場のソロもすごくよかったです。空中で身体を斜めにする跳躍は、ちょっといっぱいいっぱいな感じもしたけど、シェネしながら回るところ(っていうのか?)は、スピードも勢いもあってよかったです。踊りきったときにはホッとしてしまったよ〜。
後藤さんの大僧正もすごくよかった。スキンヘッドが似合う、美しい大僧正でした。ニキヤに思いを告げるネチっこい駄目っぷり、2人が逢引するのをカーテンの隙間からちょこちょこ覗く小物さ、ラジャに告げ口をしたところ、「ニキヤを殺す」と言われてしまいアワアワしてるところや、ニキヤが毒蛇に噛まれたのを見てアワアワしてるところなど、どれも熱演でよかったです(どれも褒めてるんですよ〜)。でも、何と言ってもよかったのは、1幕1場の幕切れ。ソロルを殺すと決意する場面が格好良かったです。
そして1幕2場の幕切れ、今度はニキヤの死を決心するガムザッティ。奈良さんがすごく良い表情をしてました。もうとにかく怖い、怖い。奈良さんのガムザッティもとてもよかったです。やっぱり彼女は目に力があるなぁ、と。何不自由なく育った育ちの良さと、それゆえの我儘さや強引さが出ていてよかった。1幕3場、ニキヤとソロルの婚約を祝う祝宴での踊りは、余裕とまではいかなかったけど、綺麗に踊りきったと思います。
その1幕3場。ワルツの男性陣の先頭は、高橋さんと松下さん。あとは長瀬、宮本、小笠原〜くらいまではわかったんだけど、全ては把握できず。ブロンズに抜擢された八木さんもいたような気がするんだけど、違ったかな、、。高橋さんが格好良かったです〜♪ というか、今日ブロンズ像を踊る松下さんが、ここで出てくるとは思いませんでした。2幕の間に塗るんですね。
パダクシオンの西村さんが絶好調な踊り。音楽に遅れない、そして誤魔化さない彼女の踊りが冴え渡っていました。ピタッとポーズを止めたときの、あの揺るぎなさ。とっても綺麗で、そして格好良かったです。
パダクシオンの男性陣は、今日は柄本兄弟。2人とも体格が良いな〜、と。団さんは、やっぱりちょっと脚が太め。武尊さんがなかなか良い踊りしてました。

木村さんのラジャが格好良くてね〜♪ ラジャなんで、3幕でちょっとガムザッティをサポートするだけで、当然まったく踊りません。それでもあの存在感というか、威圧感。台詞のないバレエでも、饒舌な役とそうでない役があると思うんですが、後藤さんの大僧正の饒舌さと、そうでない木村さんのラジャが、対照的で面白かったです。言葉少なな佇まいの木村さんのラジャは、威厳と風格があって、本当に格好良かったです。でもやっぱり娘には甘いというか、1幕3場では、踊り終わった娘のガムザッティを見て、胸に手を当ててウットリしてました。ちょっとだけだったけど、3幕でガムザッティをサポートする姿も格好良かったな〜。

松下さんのブロンズ像が最高でした! いや〜本当に、期待に応える男だな〜。大きな役にも気負わずに、最大限の努力で臨み、清々しいほど期待に応える姿は、最初に大役に抜擢されたときから変わらない姿ですね。踊りは完璧。ノーミスだったんじゃないかな?見ているうちに沸々と感動が込み上げてきました。しなやかで無駄のない踊りは、躍動的でありながら、重厚な静寂さも感じさせます。黄金の身体が力強く、だけど静かに舞うたびに、装飾品がシャラシャラと音をたてるのが聞こえるのが心地良かったです。
3幕の板付きは予習しておいたので、心して幕が開くのを待つことができました。最後に、急いで元いた場所に戻るのが、ちょっと可愛いな〜、と。大僧正のマントに姿が隠れたところで、後方にスッと姿を消します。

2幕のコール・ドもとってもよかったです。東京バレエ団でこの影の王国を見る日が来るとは、思ってもみなかったな〜と。いや、影の王国の場面だけレパートリーには入っていたようだけど、私は見たことがなかったし、まさか全幕がレパートリーに入るとは思いませんでした。もちろん、入ってくれたら嬉しいとは思っていたけど。24人のコール・ドは、アラベスクの上げた脚の高さも全員ぴったり一緒。アラベスクの行進が終わって全員が舞台上に並んでからも、タイミングから角度まで、全ての動きが本当に綺麗に揃っていて、感動的ですらありました。
3つのヴァリエーションは、どれも難しそうだな〜という印象。3人とも、いつになく身長に踊っているように見えました。ヴァリエーション3の高木さんが一番伸び伸びと踊っていたかな。佐伯さんがちょっとミスをしてしまったのは珍しかったです。だから尚更、難しい踊りなのかなと思ってしまったのかも。ポワントで立つたびに後ろに重心が傾いていて危ないな〜と思っていたんですが、ついに3回目(だったかな?)にグラっとバランスを崩してしまって、急いで立て直した場面がありました。でも、すぐにいつものチャーミングな笑顔を見せてくれたので、ホッとしました。

唐突ですが、この辺で〜。そろそろ今日の支度をしなくては。前半は昨日、後半は今書いた感想です。ニキヤとソロルの感想を書いていないって、どうかと思うけど…。水香さんのニキヤは、意外なことに1幕3場がよかったです。ニキヤとソロルの婚約の祝宴の場で踊る、赤い衣裳の場面です。そういえば彼女は、『ジゼル』でも予想に反して狂乱の場面がよかったりして、まだ私的には読めないところがあって面白いです。
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2009年08月31日

小林紀子バレエ・シアター第94回公演「The Invitation/他」

バレエフェスの余韻も覚めやらぬ中、小林紀子バレエ・シアターの公演に行ってまいりました。お目当ては一応「The Invitation」ですが、小林さんの公演はいつもどの演目楽しみです。「The Invitation」は初演も再演も見逃しているので、今度こそはどうしても見たかった演目。今まで見たバレエ作品の中でも、かなり衝撃的だったかもしれません。この演目に取り組み、そして余すところなく表現したカンパニーとダンサーたちの熱意に感動しました。

小林紀子バレエ・シアター 第94回公演 ケネス・マクミラン生誕80周年記念
「レ・ランデヴー」「The Invitation」「エリート・シンコペーションズ」
2009年8月19日(水)19:00 ゆうぽうとホール

「レ・ランデヴー」
振付:フレデリック・アシュトン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:ダニエル・オーベール
編曲:コンスタント・ランバート
美術:ウィリアム・チャペル

プリンシパル・ガール:小野絢子
プリンシパル・ボール:中村誠

ヴァリエーションT:中村誠
アダージオ:小野絢子、中村誠
パ・ド・トロワ:真野琴絵、佐々木淳史、八幡顕光
ヴァリエーションU:小野絢子
パ・ド・シス:中尾充宏、佐藤禎徳、澤田展生、冨川直樹、土方一生、アンダーシュ・ハンマル
ソルティエ:全員

明るい青空。公園の白いゲートがとても綺麗です。男女とも衣裳は白。女性はピンクのリボン、男性は水色がアクセントになっています。裾をピンクのリボンで縁取ったロマンチックチュチュがとっても可愛い。彼らは、新しく社交界にデビューする若者たちなんだそうです。期待に膨らむ気持ちを表すかのような、弾むステップ。これから訪れる自分の将来に希望を見る、なんとも華やぎに満ちた舞台でした。
プリンシパルダンサーの2人を中心に、全員が入れ代り立ち代りで踊りを披露します。物語とまでは言わないけど設定はあるので、若者たちの華やいだ会話が聞こえてくるような、とても楽しい作品でした。

小野絢子さんがいいですね〜。彼女は新国立劇場バレエでも最近主役を踊る機会が増えてますよね。その彼女自身の勢いと、社交界にデビューする少女の希望に満ちた雰囲気が、まるで重なるようでした。踊りはとてもクリアで、スッと目に入ってくる気持ちの良い踊りでした。
女性一人を挟んだパ・ド・トロワも、チャーミングでとてもよかったです。

「The Invitation」

振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:マティアス・セイバー
美術:ニコラス・ジョージディス
照明:ジョン・B・リード

少女:島添亮子
少年:後藤和雄
母:大森結城
姉妹:小野絢子、萱嶋みゆき
住み込みの家庭教師:楠元郁子
妻:大和雅美
夫:ロバート・テューズリー

幕が上がると少年が一人、地面に両肘をついて寝そべっている。そのポーズだけで少年がまだ少し幼さを残していることが窺えます。裸体の彫像に興味を示し歩み寄ると、その胸に触れようと手を伸ばす。しかし、大人に気付かれ、慌ててその場を後にします。
少年には好意を抱く少女がいます。手を握りたい、髪に触れたい、抱きしめたい、そしてキスをしたい。芽生え始めた恋心と異性への興味が素直に共存していて、少女への真っ直ぐな感情が印象的です。仲良く戯れながらも、少年の積極的な接近には身をかわしてしまう少女。しかし少女もまた、少年に好意を抱いているのがわかります。別れ際、少女から少年に軽いキスをします。少年の中を淡い喜びが走り抜けるのがわかる。踊り、表情、それこそ全身で繊細な感情まで表現する島添さんと後藤さんは、ハマり役としか思えないくらい素晴らしかったです。パ・ド・ドゥの最後、少年は少女を抱きしめ、髪を抱きキスをします。そこにはいやらしさはなく、ずっと欲しかったものをやっと貰えたような、嬉しくて仕方がないという感情が迸っていて印象的でした。少女も素直にそれを受け止めます。それに対して、夫役のテューズリーが少女の首筋にしたキスは、見ているこちらまでちょっとゾッとするような、何かいや〜な気持ちにされられるキスです。それは、大人の思惑に気付いてはいるけど本当の意味で理解はしていない、島添さんの少女にも説得力があったからかもしれません。

同年代の友人たちや大人たちの視線の前では、躊躇いがちな2人。特に少女のほうが、友人たちの冷やかしに対して過剰に反応します。少年はどこかおっとりとしていて、少女ほどは気にしてはいない様子。性への目覚めを他人に悟られることを恐れるのは、やはり女性のほうなのでしょうね〜。そんな少女ですが、自分の性には嫌悪感を覚えても、他人に性的な存在として見られることには不思議な心地良さを覚える。しかしそんな幼い感情は、大人の暴力の前に脆くも打ち砕かれるわけですが…。

少女と少年の前に現れたのは、愛の冷めている一組の夫婦。妻のほうはそうではなさそうだけど、夫のほうは冷え切っている様子。夫役のテューズリーが格好良かったです。というか、周りに比べてあまりに衣裳が似合いすぎていて、本当に英国紳士。いや、小林の男性陣も結構素敵なんですけどね〜。人前では何の問題もない夫婦を装いますが、2人きりになると妻の手を振り解く夫…。夫にすがり、こちらを向かせようとする妻を、何度も突き離します、、、。ノーブルでエレガント、いつもいい人そうなテューズリーですが、今回は大人の仮面の中に隠した冷酷さや欲望、そして弱さなどが表現されていてとてもよかったです。正直、テューズリーがあんないやらしさや脆さを見せてくれるとは思いませんでした。

多くの同年代の少女たちの中から、島添さん演じる一人の少女を見出す夫。少女の姿を追う視線がコワイ…。その様子に妻も気付きます。夫の視線を意識し始める少女。そして「少女は初めて気づき始めるのです。…自分には男性を惹き付ける女性としての魅力があることを」(プログラムより)。自分が女性として見られることへのほのかな喜びと、大人の男性が自分の魅力に抗えないという奇妙な優越感が、少女を少し大胆な行動へと向かわせます。夫を意識しながら踊るバリエーションは、子供っぽい無邪気さを残しながらも、逆にそれがとても魅力的に映ります。そして、少女から夫の手を取って踊りへ誘う。テューズリーにサポートされて踊る島添さんは、少女と大人の女性の中間地点にいるようで、とても綺麗でした。もちろん少女は、万が一男性が一線を越えた場合に起こりうる事態までは想像はできません。今の時代の女の子たちなら想像はできるかもしれないけど、どんなに自分が傷つくかということまでは、やはり理解できないのではないでしょうか。もちろん、ここで私は、「少女にも非があったのだ」などと言っているわけでは決してありません。

夫に対する怒りや焦りから、妻は少年を誘惑します。それは衝動的というほどではなく、半ば計算的。まだ女性を知らないであろう少年を誘惑し、少年が自分の女の魅力に夢中になることで、自分の欲望が満たされる。最初は驚いて戸惑う少年ですが、彼もまた大人の女性に興味を持たれたことに気をよくし、女性と触れ合うことに喜びを覚えます。感情の迸るままに踊る2人。でも、2人が見ているのは互いのことではなく、自分の欲望なわけで、その利害がこの一瞬、一致しただけのこと。最後には妻の膝に顔を埋め歓喜する少年ですが、やがて2人は我に返り、それぞれの場所へ戻っていきます。元に戻らなかったのは、少女と夫です…。

夜。昼間のクリーム色の清楚なワンピースとは違い、肩を出した透け感のあるグリーンのドレスを着た少女。華奢な少女らしいラインが時折り透けて見え、なんだか本当に危なっかしい…。少女と踊っていた夫が、突然豹変します。怯えて逃げようとする少女を、力ずくで引き戻す。掴んだ腕を何度も乱暴に引き戻すので、少女の身体がまるで力ない人形のように揺さぶられます。そこからはもう凄絶…。少女を暴行する夫。男性の力の前には、少女がどんなに抵抗してもあまりにも無力で、なんだかやり場のない憤りを覚えました。正直、ここまで直接的な表現もあるとは想像していなかったので、驚きました。あまりの出来事に、なんだかバレエを見ているということを一瞬忘れた…。
夫に乱暴された後、なんとか立ち上がり歩いていく少女。その動きはぎこちなく、彼女の身体を貫く痛みがヒシヒシと伝わってきます。下腹部を押さえるような仕草し、ポワントで小刻みに歩く姿が痛ましい。
我に返った夫は激しく後悔し、少女の足元に身を投げ出して何度も詫びます。しかし、彼女とてあのような出来事のあとで、許すとか許さないとか、そんな状況ではないわけで。ただただ混乱し怯えた彼女は、夫を拒絶するだけです。その状況を妻が見ている。少女の様子、詫びる夫の姿から、事態を悟ったらしい妻は、泣き崩れている夫を立ち上がらせ、肩を抱いてその場を後にします。「許すんだ!?」と、一瞬心の中で突っ込んでしまいました。この夫婦はこの先、どうなるでしょうか。そちらの成り行きも気になってしまいました。

幕切れ。それまで混乱していた少女が、スッと背筋を伸ばして、指を胸の下辺りで組み、正面を見据えてゆっくりと前進してくる姿で幕は下ります(オペラ歌手が歌うときに、指を胸の前で組む、あの感じです)。まるで、大人たちに教えられた正しい姿勢をなぞるかのような少女。しかし、彼女が以前の彼女に戻ることは決してありません。例え彼女が以前の元気を取り戻し、一見何事もなかったかのように見えても、昔と同じ彼女ではない、、、。「何ひとつ同じであることは永遠に無いのです」というプログラムの最後の言葉が、ひどく胸に響きました。

「エリート・シンコペーションズ」

振付:ケネス・マクミラン
ステイジド・バイ:ジュリー・リンコン
作曲:スコット・ジョップリン 他
衣裳:イアン・スパーリング

The Cascade:畑きずな、萱嶋みゆき、楠元郁子
Hot-House Rag:中尾充宏、中村誠、冨川直樹、佐々木淳史
Calliope Rag:畑きずな
Ragtime Nightingale:全員
The Golden Hours:萱嶋みゆき、中尾充宏
Stop-Time Rag:高橋怜子、冨川祐樹、中尾充宏、中村誠、冨川直樹、佐々木淳史
The Alaskan Rag:楠元郁子、佐々木淳史
Bethena-a Concert Waltz:高橋怜子、冨川祐樹
Fridey Night:冨川直樹
Cataract Rag:全員

私がこの作品を見るのは2回目。初めて小林紀子バレエ・シアターを見に行ったときにも、最後に上演されました。とにかく楽しくて、幸せな気分になるので、大好きな作品です。洋服のイラストを描いたカラフルな全身タイツの衣裳も、なんかすごく好きなんですよね〜。舞台上の奏者の皆さんもちょっとカラフルな衣裳。ピアニストの中野孝紀さんは2台のピアノを弾き、時にはタクトを振ります。ダンサーたちは踊っていないときも舞台上にいて、椅子に腰掛けてダンスを見ていたり、あっちにウロウロ、こっちにウロウロ、お喋りをしたり、絶えず動いて雰囲気を作ります。舞台は「裸」という感じ。背景幕も、袖の暗幕も外されているので、舞台の素が露出しています。袖の奥には、さっきまで使っていた装置が立てかけられているのが見えたりして、それさえもなんだか雰囲気作りに一役買っているようでした。

ちょっとバカップルな(褒めてます)熱々の萱嶋&中尾のThe Golden Hoursは、モジモジした感じもいじらしく、とても可愛い甘やかなデュエットです。中尾さんは、これまでのイメージとはまた違った雰囲気を見せてくれて面白かった。本当にいろいろな顔を持っている人だなぁと思います。Calliope Ragでソロを踊った畑さんもとっても素敵でした。畑さんは、世界を創るのが上手い人という印象があります。彼女が踊ると、舞台が華やかな空気に包まれました。凸凹コンビのThe Alaskan Ragも好き。楠本さん演じるエレガントな大人の女性と、いつもあぶれてしまう「みそっかす」的存在の佐々木さん演じる男性。女性のほうが背が高くて、サポートしているというよりは、踊る楠元さんの周りをウロチョロしているみたいな佐々木さん。だけど、なんか上手いこと成り立っているのが面白い。実際には楠元さんのほうが背が高いわけではなさそうだけど、彼女がポワントで立って、佐々木さんが屈んで、凸凹感を上手く出しています。
今回ちょっと印象的だったのは、中村誠さんは色気があるな〜ということ。踊っているときというよりも、後ろでウロウロしているときです。小林紀子バレエシアターの公演ではノーブルな役が多い中村さんですが、もう少し一歩はみ出した役とかも見てみたいなぁと思ってしまいました。
スレンダーな高橋怜子さんは、全身タイツの衣裳も着こなしていてとっても素敵。そして、パートナーの冨川祐樹さんがやっぱり素敵でした。初めて冨川さんを見たのもこの作品だったんですが、そのときから妙に好きなんですよね〜。なかなか日本人のダンサーであの雰囲気を出せる人って、いないと思うんですよね。ちょっとナルシスト入ったエレガントな雰囲気というか、嫌味のない自信過剰な佇まいというか。ダンスホールのようなあの場所で、間違いなくナンバーワンの貫禄とオーラを感じさせてくれました。
とにかく楽しくて大好きなので、また是非上演してほしいです。
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2009年08月20日

特別プロ『オマージュ・ア・ベジャール』8月17日

『オマージュ・ア・ベジャール』の2日目の感想です。2日目もすごくいい公演でした。でも、初日の自分が盛り上がりすぎたせいか、それに比べるともう少し落ち着いて見ていたような気がします。オープニングやエンディング、第1部の構成もわかっていたので動揺はしなかったし。それでもやっぱり、沁み沁みといい公演だなぁと思ったし、やっぱり涙がこぼれてしまう瞬間もありました。
この日はなんと言っても『バクチV』です(ジルとロスは置いといて)。“吉岡さんの”でも“木村さんの”でもない、“2人の”『バクチV』でした。

第12回世界バレエフェスティバル 特別プロ 『オマージュ・ア・ベジャール』
2009年8月17日(月)18:30 東京文化会館

振付:モーリス・ベジャール
構成:ジル・ロマン
振付指導:小林十市、那須野圭右

<第一部>
「ルーミー」
音楽:クドシ・エルグネル

高橋竜太、平野玲、松下裕次、氷室友、長瀬直義、横内国弘
小笠原亮、宮本祐宜、梅澤紘貴、中谷広貴、安田峻介
柄本弾、佐々木源蔵、杉山優一、岡崎準也、八木進

「ザ・カブキ」より由良之助のソロ
音楽:黛敏郎

後藤晴雄

「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」
音楽:クイーン

エリザベット・ロス

「鳥」
音楽:マノス・ハジダキス

高岸直樹

「アダージェット」
音楽:グスタフ・マーラー

ジル・ロマン

<第二部>
「バクチV」
音楽:インドの伝統音楽

シャクティ:吉岡美佳 / シヴァ:木村和夫

「さすら若者の歌」
音楽:グスタフ・マーラー

ローラン・イレール/マニュエル・ルグリ

「ボレロ」
音楽:モーリス・ラヴェル

上野水香
平野玲、松下裕次、長瀬直義、横内国弘

<第1部>

「ルーミー」
初演の初日という硬さががいい具合に解け、気合は持続しているという、いい舞台だったと思います。あちらの緊張が解けたせいなのか、見る側の私に余裕ができたからなのか、全体を見ながらもそれぞれの個性も見えてきて、とても面白かった。最初の短いソロは両日とも松下さんでした。あれくらい気合を入れてくれると気持ちが良いな、と。もう高橋さんはすーごい格好良いし、宮本さんはやっぱり目を引く踊りをするし、ついつい平野さんの踊りと目に引き寄せられるし(目力すごすぎ)、伏し目がちな長瀬さんのちょっとウェットな雰囲気も気になるし、横内さんは男らしくなったし、梅澤さんは色気のあるいい踊りしてたし、弾さんも頑張ってたし、源蔵くんもいたし、最近気になる岡崎さんもチェックしたし。みんなよかったです。

「ザ・カブキ」より由良之助のソロ
この由良之助のソロは、全幕の中では1幕の最後に踊られるので、体力的には厳しいだろうなぁといつも思います。ただ、このシーンだけを取り出してガラで踊るのは、気持ちを持っていくのに大変だろうとも思われるわけで。見るほうとしても、普段とは違う気持ちで入っていく感じがしました。ルーミーの群舞たちが四十七士になって舞台上にいたのはいい効果だったかもしれません。単純に演出としても面白かったし。
初日の高岸さんよりも、後藤さんのほうが後半いっぱいいっぱいな感じ。でも、なんかそのいっぱいいっぱいな感じが、またよかったりしました。「生まれたときからリーダー」然とした高岸さんと違い、ナイーブな空気が漂う後藤さんの由良之助も好きです。それがまた、後半のいっぱいいっぱいな感じと合ってるんですよね(褒めてます)。

初日に書き忘れたんですが、由良之助がラストのポーズをしたところで、白地に血痕の幕が下りてきます。それが外されると、横たわる由良之助の後ろにジルが立っている。ジルが由良之助をまたいで越えてくると、由良之助はむっくりと立ち上がり退場していきます。

「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」
フレディ・マーキュリーとジョルジュ・ドンの名前を読み上げたジルが、少し間をおいて「モーリス!」と名を呼ぶのが切ない…。
この日のロスの踊りもすごかったです。腕や脚、指先からポワントの先まで叫んでいるような踊り。ポワントでグッとバランスを取るたび、たった一点で立っている寄る辺無さがとても印象的でした。この日は席が近かったせいか、まるで彼女の肌までヒリヒリと訴えているようでした。

「鳥」
初日よりも群舞や全体を見ることができました。初日は木村さんを焼き付けようと追いかけるのに必死だったので、、。木村さんだと眩しい日差しだったのが、高岸さんだと明るい日差しという感じ(同じですか?いや、微妙に違うんですよ)。ソロのダンサーが、最初に客席に背中を向けて座るところがあります。片膝を立てて、片手を着き、少し腰がうねる感じが色っぽいんですが、これは初日の木村さんが断然格好良かったです(好みの問題かもしれないけど、、)。高岸さんの場合は色気とかじゃなくて、もっと大きな温かい感じのする背中でした。木村さんの背中はどこかウェットで、まだ踊ってないのに汗が光っていると錯覚するほどに、なんだか輝いていました。というか、あの木村さんの背中は異様に魅力的だったな〜、と。いやしかし、ベジャールの白パンツ系を踊る高岸さんの、明るくて大きな存在感も好きなので、やっぱり格好良かったです。

「アダージェット」
ゆっくりと椅子を持って歩いてくるジル。所定の位置に椅子を置いて腰を下ろすと、瞳を伏せたジルの下向き加減の表情がとても綺麗で、見入ってしまいます。そして、遠くを見るようにスッと視線を上げたジルの目が、また綺麗で…。今回の「アダージェット」のジルは、とてもピュアという印象でした。なんていうか、余計なものを取り除いて、純粋に踊っている感じ(今までが純粋ではなかったというわけではないんですが)。飾り気のない、裸の心になって、ベジャールに捧げる踊り。ジルが入れ物になって私たちの気持ちも一緒に届けてくれるような、そんな踊りでした。余計なものを取り除けば取り除くほど、ジル自身の叫んでいる心が見えてくるようで、静かな中にも痛みを感じました。
今回はジルの踊り自体も、本当に美しいなぁと思いながら見ていました。腕も手も、脚も爪先も、そしてあの美しい胸も全部好きだなぁと思いながら。美しいフォルムと、よどみない踊り。舞台の空気がとても澄んでいて、その中で踊るジルの一挙手一投足が本当に美しかったです。

手に掴んだものを解き放ち、それを見送りながらゆっくりと腰を下ろすラスト。この日のジルは、腰を下ろそうとしたとき、思わずもう一度手を伸ばしかけたんです。本当にほんの少し、両手がフッと動いた。期待していたわけではないけど、手放したものが一瞬戻ってきたように見えて、反射的に手が動いた……そんな感じで、とても切なかったです。

<第2部>

「バクチV」
吉岡さんと木村さんのペアで見るのは初めて。す〜ごくよかったです。木村さんのシヴァは気迫。最初から静かな気迫に満ちた表情をしていました。木村さんのシヴァは深いところから突き上げるような激しさがありながらも、それが表面的な激しさとしては表現されていない感じがします。その内側から発散されるエネルギーに、見ているとどんどん引き込まれていく。それは見ている私だけじゃなくて、シャクティも群舞も同様で、シヴァにどんどん絡め取られていくというか、むしろもともとどちらもシヴァから発散されたものに思えてくるんです。
吉岡さんのシャクティは、シャープな踊りが格好良いんだけど、思っていたよりも柔らかな印象というか、とても女性らしい存在のシャクティでした。表情と踊りが気持ちよくシンクロしているのも印象的。こちらを見据えてスッと笑う表情は妖艶で、ドキッとしました。いやらしさではなくて、とても艶めかしいシャクティだったと思います。それは、木村さんのシヴァとの繋がりだったのかもしれません。
今回一番印象的だったのは、2人が繋がって踊っているということです。一緒に踊っているときも、離れているときも、繋がっているのをすごく感じました。何がどうだから、とは上手く言えないんですが…。吉岡さんのシャクティがどこか艶めかしかったのは、シヴァと繋がっていることから発せられていたのではないか、と。そこで私はまたベジャールさんの言葉を思い出すんですが、「その妻シャクティは、シヴァが発散しシヴァへと戻っていく生命エネルギーに過ぎない」という言葉です。吉岡さんの艶めかしさは、シヴァが発した生命のエネルギーが身体中を駆け巡っている、そんな輝きだったんです。

「さすらう若者の歌」
細かな感想は省略させてください〜。そうでもしないと書き上げられそうにないので、、。イレールとルグリが一緒に踊っている、もしかしたら最後かもしれない幸福な時間を、忘れないようにしておこうと思いながら見ていました。

「ボレロ」
水香さんのメロディは、やはり前半のほうが印象が良いです。どうしても後半は「盛り上げよう」という意志を感じてしまうというか、頭で考えて踊っているような気がしてしまうんです。いや、彼女の「ボレロ」も決して悪くないと思うんですけど、もう1歩の何かがほしいというか、、。もっと開き直るじゃないけど、自分をさらけ出してみてほしいなと思ってしまうんです。必死になってほしい。いや、私の見方が悪いだけかもしれないんですが、、。
「ボレロ」に限らず、水香さんはゆったりした踊りのほうが合っていると思うときがあるので、単に私が前半の踊りのほうが好きなのかもしれません。でも、後半の中でも本当に終盤近くはよかったかも。両手でテーブルをバンバン叩くところとか、最後の両腕を差し出すところとか、真っ直ぐに訴えかける力があってよかったです。問題は(あくまで私にとって)中盤かぁ〜。彼女の「ボレロ」人生、まだまだこれから先のほうが長いので、わりと気長に見守っております。
posted by uno at 22:39| Comment(4) | バレエ公演2009 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする