2009年06月06日

【感想】東京バレエ団『ジゼル』2008年9月13日

去年の水香さんのジゼルの感想をアップしました。来週の公演までに、どーしても書き残しておきたかったので。印象的だったところをちょこちょこっと書いただけなので、まぁ本当、簡単な感想です。

→球面三角Stage
 東京バレエ団『ジゼル』
 2008年9月13日(土)13:00 ゆうぽうとホール
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2009年04月16日

【感想】東京バレエ団『ジゼル』2008年9月

今更な感想をUPしました。去年の東バの『ジゼル』です。6月の『ジゼル』までには水香さんの日の感想も書き上げたいんだけど、どうかな〜、、、。

東京バレエ団『ジゼル』2008年9月11日(木)
東京バレエ団『ジゼル』2008年9月12日(金)・14日(日)
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2008年12月16日

カブキ2日目でした。

昨日はカブキ2日目の感想を書きながら、途中で爆睡。起きたら、いつも起きる時間の30分前でした。もちろん、あと30分寝た(もう起きたらいいのにね…)。

で、『ザ・カブキ』の2日目です。とっても楽しかったです〜♪ 昨日はセンターの席で見ていたので、視界は良好、死角もなく。初日に見られなかった切腹のシーンも、ちゃんと見ることができました。やっぱり平野さんの塩冶判官、好きだな〜。切腹のときの気迫がすごいです。そして、目尻の赤が妙にセクシー。あのシーンは衣裳が真っ白だし、照明もかなり明るいので、目尻の赤がポンっと映えるんですよね。四方をむんずと掴むと、グワっと後方に回して自分の身体を支えます。そこからの勢いと気迫は尋常でなく、このたった数十秒間のためにすべてがあったのではないかと思うほどのエネルギー。衣裳と照明のせいもあるだろうけど、まるで平野さんの周囲だけ発光しているかのようで、脳裏に焼きついています。平野さんの気迫と形相があまりにすごいので、判官の無念を託された青年が、これを境に由良之助と重なっていくように、見ている私のほうまで判官と由良之助の想いに支配されていくような感覚に襲われるんです。
因みに2日目の力弥は井上良太さん。初々しかったです〜♪ なんか一生懸命な力弥で好かった。でも、切腹の場面ではどうしても判官を見てしまうので、なかなか力弥に集中できないんですよね。力弥だけ抜いた映像とかあったら見てみたい(絶対にないけど)。しかし、切腹場面での妙な存在感(褒めてます)と一力茶屋での踊りのキレは、初日の大槻さんに一票でした。いや本当、格好良かったんです。

冒頭の「現代の東京」、2日目も最初のソロは氷室さんでした。舞台中央でこちらを見据える後藤さんは、やはり高岸さんよりもナイーブなイメージ。彼が無気力に振舞っているのは、何も心を沸かすものがないから…。どこか、若さ特有の諦観のようなものが漂っていて、後藤さんの青年役は好きなんです。後藤さんは、終幕に向けてだんだん調子が良くなっていった感じ。胸の血痕が消えた後のソロが、一番よかったかもしれません。後藤さんは、もっと何かが降りているときがあるので、昨日はそれほど降りていなかったような気がします。太鼓を叩きながら前進してくるところとか、もっとゾクゾクするほど空気が総毛立っているときもあるんですよね、、、。いや、由良之助は間違いなく後藤さんの辺り役の一つだし、この日もすごく好かったんですよ〜。

勘平の長瀬さんは、初日よりさらに好かったです。踊りがというよりは、演技が馴染んだように感じました。演技が馴染めば、当然踊りにも良い影響をもたらすわけで、勘平というキャラクターがこちらに届きやすくなります。「殿中松の間」で、上手から走りこんできて中央で踊る長瀬さんが好かった。やっぱり、苦悩する姿が似合うかも〜。「山崎街道」での進退きわまる長瀬さんも好かった。なんかもう、駄目な人なのよね…。でも憎めないというか、可哀相になってしまいます。自分の空っぽの手の平を虚しく見つめる姿は、なんかもう悲壮。おかるがその手を取るんですが、いたたまれなくて走って行ってしまいます…。
そしてやっぱり猪は可愛い。

松下さんの定九郎もすごく好かったです〜。あの不敵な顔つきがいい。2年前の初役のときも好かったけど、さらに踊りの安定感が増したし(討ち入りの場面なども含め)、何より存在感が格段に増しました。さらに六法が似合う男になったなぁ、と感激。たんかもう頼もしくて、嬉しくなってしまいました。

コロコロコロと、由良之助の足元まで転がる血判状。あれって、曲がっちゃうことはないんでしょうか?由良之助の足元から大きく外れたらどうしよう…と、一人でヒヤヒヤしてます。
切腹した勘平の手を取って、由良之助が血判を押してあげるのがいいですよね。初日の高岸さんは、わかりやすくギュッギュッギュッと押していました。その後、由良之助の1幕ラストのソロに入ります。それまで舞台にいた登場人物たちが、薄暗がりの中、ゆっくりと左右の袖にハケていく。この、登場人物がゆっくり退場したり登場したりする場面転換って、ベジャール作品に多いですよね?ベジャールが最初に始めたやり方かどうかはわからないんですが、私にとってはベジャールらしいと思う瞬間の一つです。暗転や入退場がただの場面転換に留まらず、世界や次元がスーッと入れ替わる瞬間だったり、人々が消えた後もその想いが舞台に残ったりする。その中で、ゆっくりとソロの出だしの地点に歩いていく由良之助の後藤さん。そこには心地良い緊張感が漂っていました。
1幕ラストの由良之助のソロは、ここに来てそこまでやるか、、、という長いソロ。しかも後半に爆発的なエネルギーを発しなくてはなりません。初日の高岸さんもでしたが、やはり後藤さんも終盤には疲れが見え始めます。極限状態まで踊って、スパンっと暗転して1幕が終わるところが結構好きです。

初日に気になった赤ふん部隊をチェックしてきました。下手から、宮本祐宜、森川茉央(今回の由良之助のアンダースタディ)、柄本武尊、安田峻介(自信ない…)、中谷広貴、周藤壱、不明…、梅澤紘貴、だったと思います。「ア゛ー」という顔も好きなんだけど、さいごの「ふんぬ」という顔を作るところも面白い。「ア゛ー」は中谷さん、「ふんぬ」は梅澤さんが好かった。って、なんの感想なんだ、、、。武尊さんは背も高いし、良い身体だなぁ、と。しかも、目が色気があって好いんです。11月の『くるみ』でも目が好いなぁと思ったんだけど、今回も由良之助の首に手を伸ばすところで同じように感じました。とは言っても、ここでは平野さんの目がすごいんですけどね(〜♪)。

討ち入りのシーン。ピラミッドの左右には、松下さん(下手)と高橋さん(上手)。というわけで、上手は伴内のダブルキャストが入っていました。高橋さんは見事なバク宙を披露。格好良かったです〜♪ 両日バク転を披露していたのが誰だかわからなくて気になりました。初日、由良之助以下6人と書いたんですが、ソリストは5人でした。2日目は、平野、松下、長瀬、野辺、宮本。横内さんのヴァリエーション2もとても好かったです。何かのインタビューで、初めて一人でヴァリエーションを踊るので緊張したと語っていたんですが、この日の横内さんはそんな不安は感じさせませんでした。

というわけで、2日目の雑感も中途半端にぶった切ります〜。キャストを載せておきます。

東京バレエ団 モーリス・ベジャール振付『ザ・カブキ』全2幕
2008年12月14日(日)15:00 東京文化会館

由良之助:後藤晴雄
直義:横内国弘
塩冶判官:平野玲
顔世御前:吉岡美佳
力弥:井上良太
高師直:木村和夫
伴内:中島周
勘平:長瀬直義
おかる:佐伯知香
現代の勘平:梅澤紘貴
現代のおかる:高村順子
石堂:宮本祐宜
薬師寺:野辺誠治
定九郎:松下裕次
遊女:井脇幸江
与市兵衛:横内国弘
おかや:坂井直子
お才:西村真由美
ヴァリエーション1:松下裕次
ヴァリエーション2:横内国弘
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2008年12月14日

カブキ初日。

『ザ・カブキ』初日に行ってまいりました。やっぱりカブキ好きだな〜。ちょっと時代を感じさせてしまう衣裳とかは、既に気にならなくなってます。気にならないどころか、80年代の空気が漂う幕開きなんて、もうワクワクしちゃいますよ。因みに冒頭のソロは氷室友さんでした。毎年上演してくれとは言わないまでも、2年に1回くらい上演してくれても嬉しいです。

会場でもらったチラシに新しい情報がありました。4月の『創立45周年記念スペシャル・プロ』の「エチュード」は、フリーデマン・フォーゲルとレオニード・サラファーノフがゲスト出演するそうです。そうなんだ〜、、、。いや、サラファーノフは嫌いじゃないし、フォーゲルに至っては大好きですけど、ここはゲスト無しでくると思ってました。40周年のときはゲスト無しだったし。高岸さんや木村さん、そして2月の新潟の『ニューイヤー・ガラ』で「エチュード」を踊る中島さんも、東京でデビューしてくれるんじゃないかと思っていたので、ちょっぴり残念です。いやしかし、4月にまたフォーゲルが見られるのはやっぱり嬉しくもあるんだけど。

プログラムを読んで「へぇ〜」と思ったのは、森川茉央さんが今回由良之助のアンダースタディについていたということ。ということは、将来彼が由良之助を踊る日が来るということかしら?そういうわけでもないのかな?森川さんはちょっと印象的なお顔立ちなので印象に残っています。確か、結構背も高かったような気がする。

で、公演です。すごく楽しかったんだけど、一つだけどうしても納得できないことが、、、。塩冶判官の切腹の終盤で、両サイドに群舞がザーッと出てくるんですね。1階席の端っこで見ていた私には、肝心のところがまったく見えなかったんですよーーー!! 判官が由良之助に耳打ちするところが、本当にまったく見えなくなっちゃったのよ、トホホ…。最後の、おそらく最後の首藤さんの判官なのに〜!! はぅ、、、仕方ないと納得するまでにはまだ時間がかかりそうです。シクシク・・・。

今日は高校生らしき団体が見に来てました。彼らは冒頭の80年代な雰囲気をどう思ったんだろうか?私も初めて見たときはビックリしたけど、今は結構好きなシーンです。舞台中央で椅子に腰掛けている高岸さんがやっぱり格好良い。踊り始めると、その柔らかな腕にウットリしました。前にも思ったけど、高岸さんは始めから完全にリーダーの風格を備えています。だって、高岸さんだもんな〜(笑)。
青年が刀を手にした瞬間から、現代と物語の境界が消えていく、直義を筆頭に主要登場人物が摺り足で登場する場面も好きです。摺り足で歩き回る彼らが、ちょっと不気味でいいんですよね。横内さんの直義の成長を感じて嬉しかったです。存在感も増してきたし、踊りの溜めも気持ち良かった。考えてみたら、横内さん以外の面子がすごいですよね。埋もれずに演じるのは大変だろうな、と。師直の木村さんは相変わらずキレのある踊り。袴をはいた足が、スパッと上がるのが気持ちが良いんです。今日は、顔世を見てハッとする瞬間がなかったような気がするんですが、私が見逃しただけでしょうか?「殿中松の間」で、刀に手をかけた判官に対して、大袈裟に「オヨヨヨヨ〜」と怯えてみせるところが面白くて好き。「ワッハッハッハ」と笑うのもいい。隈取が表情を消すどころか、上手く表情と融合しているのが上手いなと思いました。首藤さんと木村さんが踊っている場面で、無意識に木村さんを追っている自分に気が付いてしまいました…。首藤さんは大好きだけど、私にとって「キャ〜」という存在は今や首藤さんではないのかもしれないと思うと、どこか寂しくもありました。こうして不在を受け入れていくのね…と。塩冶判官の首藤さんはもちろん素敵でした。ちょっとした瞬間にも、青いバレエシューズを履いた爪先が綺麗。相変わらずナイーブで若々しい雰囲気を漂わせていて、それが切腹のシーン辺りになると何とも言えない色気を発し始めます。
切腹のシーンはやっぱり緊張感がすごい。舞台中央に白装束を着た判官。下手に駆け込んできた力弥との視線の遣り取り。何かに追い立てられるように走る続ける青年。そして、桜の枝を持って背後を横切る顔世の、真っ白で異様な存在感。あぁ、耳打ちする場面が見られれば文句なかったのに…。
特別出演の大槻政徳さんの若々しさに驚きました。切腹の場面では存在感があって格好良かった。若い男の子が力弥を演じるのしか見たことがなくて、それはそれで好きなんだけど(だって年齢的には正しい)、大槻さんの存在感はやはり格好良かったです。そして、一力茶屋で少しだけ踊るんですが、全然踊れると思ってまたビックリ。と思ってプログラムを見たら、現在もフリーのダンサーとして活動されてるんですね。納得の踊りでした。
そしてなんと言っても友佳理さんの顔世がやっぱりすごい〜。強烈で、どこか異様な(褒めてます)存在感。登場しただけで空気が変わります。踊りもそうだけど、ちょっとした仕草でも思わず目が離せませんでした。

勘平の長瀬さんも好かったです。リフトもそれほど不安がなく。ナイーブな雰囲気は勘平に合っていたけど、「春の祭典」の生贄で見せた演技に比べると、やや硬さがあったかも。いや、すごく好かったんだけど、もうちょっと生々しさとか色気があってもよかったかな、と。勘平の切腹の場面に関してはですね、未だに後藤和雄さんの演技を引きずっておりまして…。なかなか拭い去ることができません。好きだったんですよ、後藤さんの勘平が…。
で、勘平と言えば猪です。忘れてました、あの猪を。か、可愛い。なんてチープで可愛いんだ(♪)。しかも、勘平が切腹した瞬間に、関連人物が周囲に登場するんですが、猪もいるのよ(笑)。前足上げて、ちゃんとストップモーションしてるんですよ〜。君がいると笑っちゃうから! しかし可愛かった。
そして、定九郎の飯田さんが格好良いです(「格好良い」ばっかりですみません…)。流石にちょっと片足での安定感が不安になってきてはいましたが、やっぱりそのインパクトは強烈です。
おかるは初役の佐伯さん。案の定おかっぱ頭が可愛いかったんだけど、思っていたよりも色気があったことのほうが印象的でした。長谷川智佳子さんほどではないけど、小出さんのおかるより色気があったような気がします。不思議なもんだな〜。

血判状の場面で由良之助のソロ。その後、切腹した勘平の手を取って、血判を押してあげた由良之助が、1幕ラストの長いソロを踊ります。高岸さんの衰えない踊りに、また驚かされてしまった。終盤には少し疲れが見え始めるところが、逆に切迫感があっていいんです。それにしてもあのスタミナはすごい。そして、次第に余計なものが削ぎ落とされていくような、研ぎ澄まされた静けさを湛え始めます。すると、高岸さんが驚くほど若々しく見えてくる。怖いくらいの静けさと同時に、元来の高岸さんの持ち味である圧倒的な存在感とプラスのオーラも相まって、素晴らしいソロだったと思います。

赤ふん部隊が結構好きなんです、私。手を前に出して、口を「ア゛ー」って開ける振付とか、すごく好き。今回は比較的長身の男子で揃えてきましたね。本日の赤ふん部隊でわかったのは、宮本さん、梅澤さん、柄本武尊さん、周藤さん、中谷さん、それくらいかな。明日もう一度チェックしてこなくちゃ。そうそう、梅澤さんの現代の勘平も好かったです。高村さんの現代のおかるも可愛い。私的には、高村さんに現代じゃないほうのおかるを踊ってみてほしかったです。

顔世が摺り足で上手にスススススーっと退場する辺りで、私の緊張もドドドドドーっと上がっていきます。「討ち入りのシーンがくる〜」と思って、ドキドキしました。そこからはもう男子の見せ場。音楽もいいし、とても好きな場面です。昔見たときは、塩冶判官の首藤さんも四十七士の中にいたんだけど、今日はいませんでした。木村さんもいなかった。なので、私の目は主に平野さんに集中。四十七士がピラミッド型に整列したとき、ピラミッドの外に左右に一人ずつ配置されるんですが、今日は上手に中島さん、下手に松下さんでした。これって、ヴァリエーションを踊るダンサーが立つんじゃなかったんですね。メインの6人は、中島、平野、松下、長瀬、野辺、宮本だったと思います。ヴァリエーション1は両日とも松下さん。ヴァリエーション1って、モサッと見せずに綺麗に踊るのが難しそうな踊りだなと思いました。松下さんはとても好かったです。既に貫禄すら感じる。松下ファンとしては嬉しい限りです。ヴァリエーション2の長瀬さんも好かった。彼の、スパッとキレのある跳躍が活かされていました。長瀬さんは、こういうところで気迫のある雰囲気を作り出すのが上手いと思います。

本懐を遂げ、胸の血痕の消えた由良之助が、四十七士に囲まれた中央でソロを踊ります。一人、また一人と踊りに加わる。最初にスッと手で目隠しをする振付がすごく好き。まるで、魂が一つ、また一つと浄化していくようで、とても綺麗なシーンです。

最後にちょこっと気になったことを。
山口優さんの姿を確認できなかったんですが、出ていなかったのかしら。プログラムには写真が載っているんですが、この前の『くるみ』でも見かけなかった気がするので、少し心配です。山口さんが前回演じていた与市兵衛は、横内さん。なんでわざわざ横内さんにしたんだろ。衣裳やメイクを変えるの大変じゃん、と思ってしまいました。
石堂と薬師寺は、前回と同じく宮本さんと野辺さん。何故かちょっと笑っちゃうんですよね。

中途半端な雑感ですみません。キャストを載せておきます〜。

東京バレエ団 モーリス・ベジャール振付『ザ・カブキ』全2幕
2008年12月13日(土)15:00 東京文化会館

由良之助:高岸直樹
直義:横内国弘
塩冶判官:首藤康之
顔世御前:斎藤友佳理
力弥:大槻政徳
高師直:木村和夫
伴内:高橋竜太
勘平:長瀬直義
おかる:佐伯知香
現代の勘平:梅澤紘貴
現代のおかる:高村順子
石堂:宮本祐宜
薬師寺:野辺誠治
定九郎:飯田宗孝
遊女:井脇幸江
与市兵衛:横内国弘
おかや:坂井直子
お才:西村真由美
ヴァリエーション1:松下裕次
ヴァリエーション2:長瀬直義
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2008年12月11日

ボリショイ・バレエ団『明るい小川』12月9日

昨日、『明るい小川』東京初日の公演に行ってまいりました。いや〜、楽しかったです♪ プレトークには岩田守弘さんが登場。そして、帰宅してすぐに「プロフェッショナル〜仕事の流儀」を見ました。見てきたばかりのアコーディオン奏者(初日はデニス・サーヴィンでした)を、作り上げていく岩田さん。やっぱり、岩田さんのアコーディオン奏者も見たかったな…。

舞台はとっても楽しかったです。設定は細かいけど、話は単純。何も考えずに、ひたすら楽しく見ることができました。とにかく退屈しないんです。芝居の部分も実にリズミカルでスピーディー。踊っていなくても音楽が身体に、そして舞台全体に流れているようで、物語の流れは最後まで止まることはありませんでした。
前にも思ったんですが、ラトマンスキーの振付って結構好きかもしれない。作品全体というよりは、個々の動き、振付そのものが見ていて気持ちが良いんです。もちろん、作品自体も嫌いじゃないですけど。パ・ド・ドゥや群舞など、それぞれに面白いけど、やはり気になるのはそれらを構成している個々の身体の動きです。と言っても、「ラトマンスキーの振付が大好き!」と積極的に思うわけではないんですが、見るとやっぱり好いなぁと思っちゃうんですよね。

一応、主役はジーナとピョートルです。配役表も、カーテンコールの登場順も。でも、“おいしい”役ということもあると思うけど、昨日の主役はアレクサンドロワとフィーリンだったかも。クリサノワとメルクリエフもとっても好かったんだけど、日本で見るおそらく最後のアレクサンドロワとフィーリンの舞台だという想いが、こちら側にあったからかもしれません。2人のパートナーシップはやっぱり最高で、踊っているときも踊っていないときも、そしてカーテンコールでも、なんとも楽しそうに仲良さ気な2人の姿に、本当に幸せな気持ちにさせてもらいました。他のダンサーが踊っているときも、下手のベンチに座っている2人が楽しそうで、ついついそちらを見てしまいました。2人の舞台が本当にもう見られないなんて、悲しすぎます…。

やっぱりアレクサンドロワは最高です♪ 踊りはもう言うこと無し。とにかく楽しそうで、バレリーナの声が聞こえてきそうなほど生き生きと演じていました。「プロフェッショナル〜仕事の流儀」で岩田さんも仰っていたけど、舞台って本当にその人のすべてが出ると私も思うんです。アレクサンドロワの舞台がたくさんの人を惹きつけるのは、彼女の人間性をその舞台から感じることができるからではないか、と。舞台で踊る彼女を見たい、そしてあの幸福感を味わいたい、そう欲せずにはいられないんです。女友達を大事にしそうなアレクサンドロワだからこそ、ジーナとバレリーナの関係もとっても素敵でした。

フィーリンの相変わらずの若々しさは、何度見てもその度にビックリさせられます。膝丈のパンツにハイソックス、そしてベレー帽が似合うんですよ〜♪ 男気たっぷりのアレクサンドロワに対して、フィーリンのバレエ・ダンサーはちょっと頼りない感じで、それがまた可愛い。男たちの勇ましい踊りにビクビクするバレエ・ダンサーの隣で、バレリーナのアレクサンドロワは血湧き肉躍っちゃって躍っちゃって、もう大変(笑)。ついに興奮して踊りに加わっちゃいます。
アレクサンドロワがコメディエンヌの才能があるのはわかるんだけど、フィーリンもかなり上手いと思いました。一見コメディが似合いそうにないところを、上手く利用しているな、と。「あのフィーリンがそんなことを(笑)!!」とか「真面目な顔してあんなことを!!」という状況が生まれることを、本人が一番理解しているんだなぁ、と。一見コメディとは縁のなさそうな人が真面目な顔してコメディする面白さって、ありますよね〜。まあ、バレリーナの扮装で踊るフィーリンは、もう真面目も何も関係なく、思い切り突き抜けてくれて最高でしたけど♪♪

コメディと縁のなさそうな人がもう一人(笑)。メルクリエフはフィーリンとはまた違って、真面目にコメディを頑張る人という感じで、これがまた可愛いんですよね〜(♪)。メルクリエフはあの生真面目さがいいな、と。ある意味洗練されていないコメディ加減が(褒めてます)、ピョートルという役には合っているなと思いました。変な柄シャツも着こなしてたし(♪)。それにしても、よく見ると、田舎にはいないような爽やか好青年(美青年)だよな〜、と。もう本当に、キラキラしてました。今回の日本公演では、無事にメルクリエフのエスパーダとピョートルを見られて本当によかったです。できれば『白鳥』で王子も踊ってほしかったけど、、、。

クリサノワもとっても好かったです。快活なバレリーナと好対照のジーナを好演。大人しくて控えめでありながら、夫のピョートルのことをとっても愛している情熱家でもあり、芯が強く、気の強い一面も持ちあわせている。とても人間的で、説得力のある人物を好演していました。
クリサノワは、清潔感のあるスラッとした手足がとっても綺麗。華奢で繊細なイメージもあるけど、踊りは安定していて、力強い面も見せます。仮面をつけて、夫のピョートルと踊る場面では、揺れ動く心を演技と踊りで実に上手く表現していたと思います。

他にも魅力的なキャラクターがいっぱい。みんな生き生きと演じていて、安っぽい言い方だけど、正に「みんなが主役」という感じでした。もちろん、コール・ドも含めて。誰でも自分の人生では自分が主役じゃないですか?昨日の舞台に登場した人物たちは、みんな自分の人生の主役だったんです。舞台の脇役ではなくて、それぞれに奥行きのある主役でした。プレトークでラトマンスキーが、「脇役」と言ったあとに、「脇役」という言葉は好きではないんですが、、、と付け足していたんです。そんなラトマンスキーだからこそ、あれだけ個性豊かで、誰も脇役ではない人物たちを描き出せたのかもしれないなと思いました。

アコーディオン奏者のデニス・サーヴィンは、『ドン・キ』でガマーシュを演じていたダンサー。ガマーシュではわからなかったけど、格好良かったんですね〜。踊りもキレがあって好かったし。格好つけてる役どころで面白かったです。
女学生のアナスタシア・スタシケーヴィチは、『ドン・キ』のキューピッド。やっぱり小さい。小さいけどパワフルで、とっても元気で可愛かったです。緑色の衣裳も可愛かったな〜。女学生に限らず、衣裳も結構好きでした。バレリーナのセーラーカラーのワンピースも可愛いし、ジーナの白地にブルーの花柄のワンピースも可愛い。群舞の女の子たちのワンピースのゴチャゴチャ柄も、不思議と大勢でもうるさくないんです。
初老の別荘住人とその若作りの妻も、搾乳婦とトラクター運転手(犬)も、みんな好かったですよ〜。

一応キャストを載せておきます。

ボリショイ・バレエ団『明るい小川』2幕4場
2008年12月9日(火)19:00 東京文化会館

音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
台本:アドリアン・ピオトロフスキー、フョードル・ロプホーフ
振付:アレクセイ・ラトマンスキー
指揮:パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

ジーナ(ピョートルの妻):エカテリーナ・クリサノワ
ピョートル(農業技師):アンドレイ・メルクーリエフ
バレリーナ:マリーヤ・アレクサンドロワ
バレエ・ダンサーバ(レリーナのパートナー):セルゲイ・フィーリン
アコーディオン奏者:デニス・サーヴィン
初老の別荘住人:アレクセイ・ロパレーヴィチ
その若作りの妻:アナスタシア・ヴィノクール
ガヴリールィチ(品質検査官):アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガーリャ(女学生):アナスタシア・スタシケーヴィチ
搾乳婦:アンナ・アントロポーワ
トラクター運転手:イワン・プラーズニコフ
高地の住人:アントン・サーヴィチェフ
クバンの作業員:バトゥール・アナドゥルジエフ
高地の住人たち:
   アントン・クズネツォーフ
   セルゲイ・ゼレンコ
   ロマン・シマチェフ
   ロマン・ツェリシチェフ
クバンの作業員たち:
   ユーリー・バラーノフ
   ワシーリー・ジドコフ
   セルゲイ・ミナコフ
   アンドレイ・ルィバコフ
ジーナの友人たち:
   アナスタシア・メシコーワ
   クセーニヤ・ソローキナ
   ヴィクトリア・オーシポワ
   アンナ・ニクーリナ
   アンナ・オークネワ
   チナラ・アリザデ
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2008年12月04日

ボリショイ・バレエ団『ドン・キホーテ』12月3日

ボリショイ・バレエ団『ドン・キホーテ』全3幕
2008年12月3日(水)18:30 東京文化会館

音楽:ルートヴィヒ・ミンクス
台本:マリウス・プティパ
振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキー
振付改訂:アレクセイ・ファジェーチェフ

指揮:パーヴェル・クリニチェフ
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団

キトリ/ドゥルシネア:マリーヤ・アレクサンドロワ
バジル(床屋):ドミートリー・ベロゴロフツェフ
ドン・キホーテ(さすらいの騎士):アレクセイ・ロパレーヴィチ
サンチョ・パンサ(ドン・キホーテの剣持ち):アレクサンドル・ペトゥホーフ
ガマーシュ(金持ちの貴族):デニス・サーヴィン
フアニータ(キトリの友人):ヴィクトリア・オーシポワ
ピッキリア(キトリの友人):オリガ・ステプレツォーワ
エスパーダ(闘牛士):アンドレイ・メルクーリエフ
ルチア(街の踊り子):アナスタシア・メシコーワ
メルセデス(踊り子):マリーヤ・イスプラトフスカヤ
ロレンソ(キトリの父):イーゴリ・シマチェフ
ロレンソの妻(キトリの母):アナスタシア・ヴィノクール
公爵:アレクサンドル・ファジェーチェフ
公爵夫人:エカテリーナ・バルィキナ
居酒屋の主人:イワン・プラーズニコフ
森の精の女王:アンナ・ニクーリナ
3人の森の精:ユーリヤ・グレベンシチコワ、ネッリ・コバヒーゼ、オリガ・マルチェンコワ
4人の森の精:アレーシャ・ボイコ、スヴェトラーナ・パヴロワ、チナラ・アリザデ、スヴェトラーナ・グネードワ
キューピッド:アナスタシア・スタシケーヴィチ
スペインの踊り:クリスチーナ・カラショーワ、アンナ・バルコワ、エカテリーナ・バルィキナ
ジプシーの踊り:アンナ・アントロポーワ
ボレロ:アンナ・バルコワ、エフゲーニー・ゴロヴィン
グラン・パの第1ヴァリエーション:エカテリーナ・クリサノワ
グラン・パの第2ヴァリエーション:チナラ・アリザデ

ボリショイ・バレエ団の東京公演初日、『ドン・キホーテ』の公演に行ってまいりました。とっても楽しかったです〜。もう、息つく間もないほどステージはジャンジャン進んで行きました。パワフルでスピーディーな音楽も、それに一役買っていたかも。特に各幕の前奏。プロローグの前奏が始まったときには、「ほえ〜」ってくらい早くてビックリしたんですが、やはり劇場のオケは流石です。音が豊かで、ワクワクしました。そして、舞台上のダンサーたちもとにかくパワフル。特にアレクサンドロワなんですけど(笑)。ボルテージは途切れることなく、最後まで一気に駆け抜けていきました。

なんと言ってもアレクサンドロワです。胸の空くようなとはこのことか、という踊り。バランスも回転も相変わらずすごいけど、舞台の流れや空気を壊すほどにはやらないところがいいです。強靭な脚、安定したテクニック、無駄のない踊り。そして、それらから来る余裕。踊りに余裕があるからこそ、踊り以外のパワーも伝わってくると思うんです。彼女の明るくて、親しみ深い雰囲気。嫌味のないサービス精神。踊ることが楽しいというのはもちろん、自分の踊りで楽しんでもらいたいという気持ちが溢れています。彼女のとてもオープンで屈託のない雰囲気が大好き。あんなに格好良いのに、やっぱりすごく可愛い。なんて魅力的な、男前の女の子なんだろうと、いつも思ってしまいます。

バジルはフィーリンからマトヴィエンコに、そしてベロゴロフツェフに変更になりました。ベロゴロフツェフは一見強面な印象だけど、どう見てもいい人なバジルで好感度大。すごく優しそうな人だな〜と思いながら見てました。若々しくはなかったかもしれないけど(思ってたよりは若々しかったけど)、すべてに行き届いた大人のサービス精神みたいなものを感じさせてくれました。

そして、アレクサンドロワもベロゴロも(略してごめん…)とても好かったんですが、エスパーダのメルクリエフがも〜のすごく格好良かったですーーー!!!よかった、今日踊ってくれて…。『ドン・キ』は今日しかチケットを取っていないので、事前にキャストが発表された段階で、ホッと胸を撫で下ろしておりました。本当に、本当に格好良かった。見られてよかった〜。マント捌きもバッチリ、気合十分のキメキメ・メルクリエフに、目がハートを通り越してお口ポカ〜ンでした。身体反りすぎで後ろに倒れるかと思ったよ〜♪(もちろんそんなわけないけど)。ぎゃあ、そんなふうに女の子に迫れるの!?というセクシー・メルクリエフ。でも、やっぱりどこか可愛くもあるんだけど。あのキラキラの目で見つめられたらどんなかな〜という妄想しばし…(変態)。街に現れたドン・キとサンチョに気を取られつつ、先に退場した女の子を追って退場する1幕も、下手に走って場する2幕の居酒屋のときも、なんか去り際だけエスパーダというよりはメルクリエフに戻っちゃってて可愛いんですよね。エスパーダは3幕の結婚式の場面には登場しないので、カーテンコールにいなくて残念でした。


ジプシーの野営地の前に、居酒屋で狂言自殺の場面があるバージョンでした。因みに狂言自殺は、前もってバジルがキトリに教えてあげるパターン。野営地にはキトリとバジルは登場しません。というわけで、
プロローグ(ドン・キとサンチョ)
第1幕:バルセロナの街
第2幕
  第1場:居酒屋(バジルの狂言自殺→結婚承諾)
  第2場:ジプシーの野営地(ジプシーの娘の踊りと人形劇有り)
  第3場:夢の場面
第3幕:結婚式

お恥かしながら、ルチア(街の踊り子)とメルセデス(踊り子)の区別が微妙につきません…。1幕に登場したのがルチア?居酒屋で黄色のドレスを着ていたのがメルセデス?いや、逆か?…とりあえず、居酒屋での2人の女の踊りが格好良かったです。エスパーダはどっちが好きなのよ〜。上手で真面目な顔してパンパンパンパン手を叩いているメルクリエフが面白かったです(♪)。
キューピッドのアナスタシア・スタシケーヴィチは、足音がしないので、着地がふんわり軽やか。3人も森の精にネッリ・コバヒーゼ。やっぱり可愛い〜!!楚々とした佇まいにウットリでした。
第1ヴァリエーションのクリサノワは、余裕すら感じられる安定したヴァリでした。溌剌として清潔感があって、とても好かったです。私としては第2ヴァリエーションのチナラ・アリザデが印象的でした。ポワントの音がまったくしないんです。それだけがすべてじゃないとは思うんですが、あそこまで音がしないと書かずにはいられなくて。女性らしい柔らかな存在感で好かったです。
キトリの2人の友人、ルチアにメルセデス、森の女王とキューピッド、そしてとっても美しくて格好良かったジプシーの娘、ヴァリエーションの2人、ボレロ等々。これだけの数のソリスト級の役を日替わりで上演できるなんて、女性陣が充実しているなと思いました。
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2008年12月01日

『オネーギン』3日目!

『オネーギン』の東京最終日に行ってまいりました。終わっちゃって寂しいです〜。はぁ、、、大阪と兵庫も見に行きたい…。

今日の舞台もすごくよかったです。なんとも幸せな3日間でした。それにしても充実してるなぁ、と。3人のオネーギン、3人のタチヤーナ、そしてレンスキーの3人も。ついでにグレーミン公爵の2人も(♪)。前回ルグリがゲスト出演した『オネーギン』もよかったけど、今回はカンパニーのダンサーで見ることができて本当に幸せでした。

バランキエヴィッチのオネーギンは、とくかくまず格好良い!!格好良いっていうか、麗しい。バランキエヴィッチって、舞台メイクでかなり変わりますよね。もともとハンサムだけど、王子ってキャラじゃないよな〜と思ってたんですが、『眠り』のデジレもちゃんと王子だったし、オネーギンの憂いを帯びた風情も素晴らしかったです。
バランキエヴィッチは、登場から都会の空気をまとったスマートで洗練された存在感。レイリーのように“できた”男という感じではなく、どこか薄っぺらいというか(褒めてます)、表面的に取り繕って礼儀正しく振舞っている感じ。でも、彼が取り繕っているだけだというのは、片方の眉をあげた表情にちゃんと出ちゃってるのがいい。軽やかで美しい立ち居振る舞いは、田舎の少女の目には現実感のない男性に映ったかもしれません。
結構単純で、決して悪い人じゃないんだけど、良い人にも見えないかもね〜というオネーギン。結局、彼が好きなのは自分だけ、というか。いや、少なくとも今の彼は傲慢で、他人を思いやるという心がない。思いやったとしても、それは自己の満足のため、という感じがするんです。あ、もちろんこれは褒めてるんですよ。
タチヤーナの振る舞いに苛立ったオネーギンは、まるで憂さ晴らしのようにオリガを誘ってレンスキーをからかうわけですが、その「よし、からかってやろう」という悪戯っぽい表情には、彼の若さが感じられました。
そしてバランキエヴィッチは踊りが綺麗です〜。シャープなのに柔らかい踊り。ダイナミックだけど、エレガント。ジャンプがフワッと軽くて高い。そして、着地が柔らかです。回転もすごかった。決闘の前、ピルエットして腿を拳で叩くのを3回繰り返すところがあるんだけど、ものすごい速くて綺麗な回転でした。
レンスキーを決闘で殺してしまったオネーギンが、マントを羽織ってタチヤーナたちの前に戻ってきます。しばし俯いていたアイシュヴァルトがゆっくりと顔を上げる。悲しみを湛えた厳しい表情。そんなタチヤーナを見て、初めて悔恨の念に苛まれるオネーギン。あんな顔を見せられたら、自分はなんて愚かなことをしてしまったんだろうと思い知らされずにはいられません。レイリーの場合、友人を死なせてしまったことで苦しんでいるように見えるんだけど、バランキエヴィッチはそんな自分の身を憂いているように見えるんです。スー・ジン・カンはもっと悲しげというか、やりきれない思いを噛み締めるような苦渋の表情を浮かべていました。スッと顔をあげ、凛とした表情を見せていたアマトリアンは、下手をするとちょっと無表情というか、冷たい感じがしなくもなかったです。

3幕のバランキエヴィッチは、他の2人に比べると少し若い感じ。まだまだ素敵で、やつれた感じは控えめでした。よかったのは、タチヤーナに気が付いてからのバランキエヴィッチ。必要以上にウロウロ&コソコソを繰り返さずに、客人たちの後ろに回って身を隠し、間からジッとタチヤーナを見ているんです。上手に移動してからも同様に、客人たちの後ろからジッとタチヤーナを見ている。設定上は人垣に隠れているので(もちろん観客には姿は丸見えだけど)、顔を背けたり身を隠したりという芝居をほとんどしません。その様子はもう、半ば呆然。タチヤーナの美しさに見とれちゃうわ、その年月を思い知らされちゃうわ、さまざまな想いが過ぎるわで、もうオネーギンの頭の中は大変です…。

アイシュヴァルトのタチヤーナは美しすぎ!もう1幕から既に輝かんばかりでした。おしとやかで上品なアイシュヴァルトのタチヤーナは、田舎娘どころか、そんじょそこらにはいないような美しいお嬢さん。確かにちょっと内気というか気が弱そうで、本ばかり読んでいるせいか夢見がちなところもあるにはあるけど、賢くて美しい、とっても魅力的な少女でした。これを見抜けないなんて、やっぱり今はオネーギンは駄目な人になっちゃってるんだな〜と思ってしまった。で、ジェイソン・レイリーのグレーミン公爵が相当格好良くてですね、風格と余裕のある素敵な男性だったので、タチヤーナに恋しているなんて流石です、公爵!と思ってしまいました。
アイシュヴァルトはポワントの安定感がすごい。スッと片方のポワントで立ち、綺麗なバランスをキープして、ゆっくり踵を下ろすまでの時間の、なんとも心地良いこと。ステップは柔らかくて丁寧で、踊りは澱みなく流れるようでした。

オネーギンの手紙を見ながら、困惑しつつも、込み上げてくる喜びに一瞬胸を焦がし、高揚した表情を見せるアイシュヴァルトが美しかった。今もこんなに愛しいと思うのに、受け入れることはできない。でも、それなら自分はこの先どうやって生きていけばいいのかという、タチヤーナの悲痛な叫びが辛かったです。「お願いだからもうやめて…」という泣き出しそうな表情と、それでもその胸に飛び込んでいってしまう抗いがたい愛しさが入り混じるタチヤーナ。手紙を破り、思わずオネーギンの髪を撫でようとしたその手で扉を指差したタチヤーナは、一体どんな気持ちだったんだろうかと、想わずにはいられませんでした。最後、舞台の中央まできたアイシュヴァルトは、胸の辺りで両方の拳をギュッと握りしめ、しばし俯いたまま。ゆっくりと天を仰ぐアイシュヴァルトを残して幕は下ります。彼女は大きく顔を歪めて泣くことはしませんでした。

レンスキーのアレクサンドル・ザイツェフがとっても好かったです〜。1幕ではやや印象がノーマルで、ラドメイカーより踊りは安定しているけど、これはそつなくこなしてしまうタイプか?と思ったんですが、彼は2幕からが最高でした。一番野暮ったくて、鈍臭いレンスキー(褒めてます)。意気地がなくて、踊るオネーギンとオリガを見ながらただタジタジ。周りの老人たちに、「ほれ、何やってんだ、お前さんの彼女だろ?言ってやれ言ってやれ」(想像)と励まされるも、挑みかかれず…。「あ、でも…、でも…」とタジタジするばかり。か、可愛い…(♪)。しまいには、口をややヘの字にして泣き出しそうな顔。いや〜、可愛くて最高でした。そのくせ、怒っちゃったら怒っちゃったで、もう言うこと気かなくて、引っ込みがつかなくなっちゃてるのよね。レンスキー…。幕切れも、自分は何てことをしてしまったんだという、ちょっと泣きそうな表情で呆然としておりました。
そして、決闘前の苦悩のソロがまた好かった。踊りの安定感では、フォーゲル以下、ラドメイカー以上というところでしょうか。ややバランスが危ないところは根性で持ち堪える。このソロが一番ナルシスティックだったのはザイツェフかも。あんなに朴訥な青年だったのに。フォーゲルが緩急のある踊りだったのに対して、ザイツェフはどちらかというと粘りのある踊り。その辺もナルシスティックと思わせる所以かも。土壇場に来て、急に色気が出る男、レンスキー。ひざまずいて上体を反らし、ブリッジしながら横たわるところで、2回目のザイツェフのブリッジの長いこと、長いこと。いや〜、面白かった(褒めてます)。
オリガにキスをしたあと、ザイツェフのレンスキーはタチヤーナの手をまともに握ることができません。手を握りかけ、顔を背けるように頭を下げると、すり抜けるように立ち去るレンスキー。今彼女の手を取ってその顔を見てしまったら、決心が鈍って泣き崩れてしまうかもしれない…。『眠り』のアリ・ババには性格描写がないのでわからなかったけど、ザイツェフくんもなかなかのやり手かもしれません。

そして、まさかレパートリーに入っているとは思いもしなかった、ラッキーなお土産、ジェイソン・レイリーのグレーミン公爵。素っ敵でした〜♪ 2幕で登場したレイリーのグレーミン公爵は、落ち着きのある大人の男で、ぜんぜんつまらない中年には見えません。色気も貫禄もあって、オネーギンも太刀打ちできなさそうな雰囲気でした。
さらに、年齢を重ねた3幕のグレーミン公爵も格好良い。歳をとってもまだ色気があり、風格の漂う紳士になっていました。3幕のレイリーのグレーミン公爵なら、まだまだ恋愛できそうな雰囲気。。こんな素敵な旦那様を裏切るなんて、やめたほうがいい、と思ってしまいました。とっても大事そうに、愛しそうにタチヤーナを抱きしめる様子がまた、とても素敵でした。

すみません、ダラダラと思いついたことだけ書いてみました、、、。キャストを載せておきます〜。

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』
2008年11月30日(日)15:00 東京文化会館

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

オネーギン:フィリップ・バランキエヴィッチ
レンスキー:アレクサンドル・ザイツェフ
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エリザベス・メイソン
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ジェイソン・レイリー

指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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2008年11月30日

『オネーギン』2日目〜。

『オネーギン』の2日目へ行ってまいりました。もともとこの日は行くつもりがなくて、初日と最終日だけチケットを取っていたんですが、『眠り』でカラボスを演じたジェイソン・レイリーがとても格好良かったので、これは是非オネーギンも見てみたいと思い、急いでチケットを追加して見てまいりました。スー・ジン・カンのタチヤーナも見たかったし。

無理して見に行ってよかった!!今日の2人も素晴らしかったです〜。ちょっと(かなり?)キワモノのカラボスを演じたジェイソン・レイリーですが、正統派の役どころもすごく好かったです(正確にはオネーギンは正統派ではないのかな?)。これならきっと、貸切公演のデジレ王子も素敵だっただろうな、と。

レイリーのオネーギンは、とても大人な印象。洗練されているんだけど、どこかニヒルな雰囲気もあって、これは本ばかり読んでいるような、恋に恋する女の子は好きになっちゃうだろうな〜という。ニヒルと言っても暗いニヒルではなくて、どちらかというと明るいニヒルなんです。イェリネクのオネーギンはもうちょっとナイーブで、そんな少女を相手にする余裕がない感じ(褒めてます)。NBSニュースのイェリネクのインタビューによると、クランコ版のオネーギンの年齢設定は35歳くらい、タチヤーナは17歳くらいだそうです。そうなんですよ、17歳から見たら35歳は大人の男かもしれないけど、30歳そこそこの人間なんて、思ったほど余裕なんかないと思うんですよね。いや、自分もオネーギンに近い年代なので言うんですが、30代前半なんてまだまだ子どもです(少なくとも私は)。だけど、レイリーのオネーギンは余裕があって、格好良いんです。昨日のイェリネクはタチヤーナに苛立つ以前に、既に何かやり場のない思いに苛まれていて、同時に自分自身に苛立っていたのではないかと書いたんですが、今日のレイリーはタチヤーナの振る舞いに苛立っているように見えました。もちろん、その背景には人生に対するもどかしさがあったんだと思いますが。なので、2幕のタチヤーナの誕生日で見せるオネーギンの苛立ちは、それほど神経質ではありません。「これほど言っているのにどうしてわからないんだ」という、しごく当然な苛立ち。トランプをもてあそびながら、その苛立ちを極力抑えようとする姿はむしろ大人な態度で立派と言いますか、レイリーは比較的、器の大きさを感じさせるオネーギンでした。イェリネクのオネーギンが器の小さい男だと言っているわけではなくて、彼の場合は、今は器が小さくなってしまっている男、そんな感じでした。イェリネクが両方の手の平でバンッと大きな音を立てて机を叩いたのに対して、レイリーは軽く握った拳でタンッと抑え気味に机を叩きました。「バンッ」と「タンッ」はだいぶ印象が違いました。でも、静かな怒りだからこそ、なおさら怖かった。感情的に怒ってくれたほうが、まだ取り入る隙があるような気がするんですが、あれほど冷たく静かに憤りを示されると、もうパニックというか、完全にどうしていいかわからなくなってしまいます…。とっさに両手で耳を塞ぎ、今にも泣き出しそうな顔で身をすくめたスー・ジン・カンのタチヤーナがもう可哀相で…。

3幕のレイリーがまた格好良い!!グレーミン公爵もそうですが、老け役の扮装が上手いですよね。若いダンサーが無理して老け役やってるな〜という感じがしない。グレーミン公爵にしろオネーギンにしろ、ちゃんと中年で、しかもとっても素敵。すっかり憔悴しきった様子だったイェリネクに比べると、レイリーのオネーギンはもう少し元気。この年月の間に、それなりに恋もしたし、さまざまなことがあったけれども、結局心を満たすものを見つけることができなかったという虚無感が漂っていました。イェリネクは頬もこけ、そのせいで目が異様な光を帯びていて、目を見開いて正面を見据える表情には絶望が滲んでいました。
グレーミンにエスコートされて美しく踊るタチヤーナ。オネーギンは彼女がこちらを向きそうになると背を向けて顔を隠すわけですが、イェリネクは少しオドオドとして、今のこんな惨めな自分を見られたくないという雰囲気が感じられたんですが、レイリーは、自分なんかが姿を表すわけにはいかないという、ある意味分別のある態度にも感じられました。

そして、スー・ジン・カンのタチヤーナが素晴らしかったです。怪我をしたエレーナ・テンチコワの代役として踊ってくれたわけで、手放しで喜ぶのは不謹慎かもしれないんですが、彼女のタチヤーナを見ることができて本当によかったと思います。
アマトリアンのタチヤーナは、夢見がちなホンワカした少女。印象としては13・4歳の、恋に恋する以前の幼い愛らしさがありましたが、スー・ジン・カンは正に17・8歳の恋に恋する年頃に感じられました。夢見がちというよりは、本が好きで、空想は空想とわかっていて耽っている感じ。確かに夢見がちな少女ではあるけれど、とても知的で思慮深い感じがしました。どちらの手紙がイラつくだろうかと考えると、おそらくスー・ジン・カンのタチヤーナのほうではないかと思います(褒めてます)。アマトリアンのタチヤーナだと、幼い恋文を想像させるんですが、スー・ジン・カンの場合、17・8歳なのでそれなりに成熟している部分もあるし、それでいて本ばかり読んでいる頭でっかちな恋文を想像させます。

スー・ジン・カンは、身体のキープ力というか、コントロール力がすごいなと思いました。鏡のパ・ド・ドゥで、レイリーにすごい勢いで振り回されてもビクともしない。グワンと振り回されて、フワッと着地。レイリーも非常にパワフルなんだけど、しなやかで、ここの男性陣の中では着地音が静かなほうかもしれません。この鏡のパ・ド・ドゥでも、終幕の手紙のパ・ド・ドゥでも、踊り・演技ともに、今日の2人のほうがパワーバランスが良かったと思います。アマトリアンのタチヤーナもとても好かったんだけど、スー・ジン・カンを見てしまうと、やはり少しソフトな感じがしてしまいます。手紙のパ・ド・ドゥのラスト、イェリネクのオネーギンが部屋を出て行ってしまい、アマトリアンのタチヤーナが舞台に一人になると、場のパワーみたいなものがフッと和らいでしまう気がしたんですが、スー・ジン・カンのタチヤーナが舞台に一人で残ると、2−1=1ではない強烈な存在感で舞台を支配しているのを感じました。いや、アマトリアンのタチヤーナもすごく好かったんですよ〜。でも、なんていうか、スー・ジン・カンは流石という感じでした。そしてやっぱり、2人のパワーバランスが拮抗しているというのは大事だなと思いました。

クランコの年齢設定では、3幕のタチヤーナは30代半ばだそうです。垢抜けない夢見がちな少女から、輝くように美しい女性へと変貌してみせたアマトリアンでしたが、30代半ばと呼ぶには少し若い気がしました。まあ、実際に若いんだから、そこをスー・ジン・カンと比べたら可哀相かもしれないけど、スー・ジン・カンは美しく洗練された大人の女性へと成長を遂げたタチヤーナで、そこには夢見る少女の欠片は残ってはいないようでした。

昨日はオネーギンに感情移入した私でしたが、今日は終幕のタチヤーナに持っていかれた感じでした。最後の最後、足元にしがみついたオネーギンの頭を愛しげに撫でようとして思いとどまる、あの場面がやはりたまらないです。オネーギンが出ていった扉まで駆け寄り、ヨロヨロと舞台中央に戻ってきたタチヤーナの、慟哭する姿を残して幕が下ります。感情が堰を切ったように溢れ出し、大きく口を歪めて叫ぶように泣くスー・ジン・カンのタチヤーナ。きっとあれは、タチヤーナが誰にも見せたことがない、これから先も誰にも見せることのない姿なんだろうなと思いました。

レンスキーのマリイン・ラドメイカーは初見。噂から想像していた以上にキラッキラでした。もう本当に、キラッキラ。踊りは少し安定感に欠けるところもあったけど、時間の問題かな、と。ブロンドのキラキラ王子にあまり入れ込まない私ですが、ラドメイカーはちょっぴり暗い感じがしなくもないので、気になる存在ではあります。プライドが高そうなレンスキーで、それが自分の足を引っ張っちゃてる感じが好かったです。
決闘の直前、ラドメイカーのレンスキーはオリガに熱いキスをして、一瞬の間の後、彼女を突き放します。その一瞬の間が切なかった。そして、タチヤーナの手を取り頭を垂れた姿には、昨日のフォーゲルの感謝とは違う、謝罪の念を感じました。
やっぱり、初日のフォーゲルがすごく好かったな〜と思ってしまいました。決してラドメイカーが悪かったわけではないんですが。細部の安定感は言うまでもなく、適度な溜めの気持ち良さ。その適度な溜めを生み出す余裕。感情が踊りに乗っていて、さらにそれが音楽に乗っているんです。だから、レンスキーの感情がスッ、スッ、スッと踊りとともに入ってくる。なんとも気持ちの良い踊りでした。

昨日のカーテンコールでイェリネクは、アマトリアンを抱き寄せるようにして頬にキスをしていました。とっても紳士で優しげなイェリネクが印象的。今日のスー・ジン・カンとレイリーは、讃え合うように2人でギュッと抱擁を交わしていました。抱き合ったレイリーの肩をポンポンポンと叩くスー・ジン・カンが印象的。そんな2人の姿に、後ろのダンサーたちからも拍手が起こったんです。舞台上のダンサーが指揮者やオケに対して拍手をするのはあるけど、主演の2人(しかもゲストではない)に対して拍手するのって珍しいような気がして、印象的な場面でした。

明日は『オネーギン』の最終日です。寂しいなぁ、もう終わっちゃうのね、、、。2日目のキャストも乗せておきます〜。

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』
2008年11月29日(土)15:00 東京文化会館

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

オネーギン:ジェイソン・レイリー
レンスキー:マリイン・ラドメイカー
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:スー・ジン・カン
オリガ:アンナ・オサチェンコ
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ

指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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2008年11月29日

『オネーギン』初日。

『オネーギン』の初日に行ってまいりました。すーごくよかったですー!!念願だったイリ・イェリネクのオネーギンが素晴らしくて、嬉しかったです。大袈裟な演技ではなく、あくまでナチュラル。あくびを噛み殺す仕草とかも、下手をすると見逃すくらい控えめなんです。心底腐った人間じゃないんですよね。元来、礼節はわきまえた人間のはずで、だから明らさまに無礼な態度はとらない。ただ、今はそれを少し守れない自分がいるというか。彼はタチヤーナに苛立ったわけではなく、既に苛立っていたんだと思います。それを爆発させてしまったのはタチヤーナだったけど、、、。既に人生に飽きていたオネーギンは、もうずっと満たされない思いを抱いていて、いつも何かに苛立っていたのではないでしょうか。でも、そんな彼が一番苛立っていたのは、自分に対してだったのではないかと思いました。遂に耐え切れず、机をバンッと叩いて憤りを露わにしたとき、タチヤーナに苛立ったのと同時に、そんな自分に対してもどうしようもなく苛立ったのではないかしら、、、。

イェリネクの丁寧で緻密な、それでいて自然なオネーギンの描写は、ジワジワと迫ってきて、気が付くとすっかりオネーギンにシンクロしている自分がいました。共感や同情とは違う、共鳴に近い感覚。私自身は女性なんですが、今日の舞台ではタチヤーナではなく、オネーギンに共鳴する部分が大きかったです。自分が駄目な人間になってしまっているときってないですか?それを自分でもわかっているのに、どうにもならない。その、どうにもならないことに、どうにもならない自分自身に苛立つ…。2幕でのオネーギンの苛立ちが、チリチリと迫ってきて、苦しかったです。もちろん、表面的にはオネーギンの苛立ちはタチヤーナに向けられているんだけど、それはもしかしたら本人も気付かないうちに自分自身にも向けられていたのではないかと、そんなふうに思えてなりませんでした。

そして、3幕でのイェリネクも素晴らしかったです。若かったときのオネーギンは人生に飽きていたけど、今の彼は人生に疲れ、絶望している…。すっかり覇気を無くし、疲れきったオネーギンの姿は、レンスキーを死なせてしまったことで彼がずっと自分を責め続けて生きてきたことを窺わせました。そんな様子からも、やはりオネーギンが心底腐った人間じゃないと思えるんです。例えそれが自業自得だったとしても、彼が苦しんできたことには間違いがない。オネーギンの愛を拒否したことでタチヤーナも苦しむかもしれないけど、でも彼女には優しい夫がいます。彼女の心は時間とともに癒えていくと思うんです。でも、じゃあオネーギンは?これから先、彼の心を埋めてくれるものが現れるでしょうか…。

ともすると控えめで、ナチュラルなイェリネクのオネーギンは、「オネーギンを演じている」という感じではなく、「オネーギンがそこにいる」と思わせるものがありました。それはすべてにおいて。場面が進むにつれ、一歩踏み出すその足さえも、オネーギンならこう歩くだろうと思わずにはいられませんでした。いや、見ているときは、むしろそんなことは考えないんです。“オネーギン”その人を見ている自分がいる。ただそれだけ。

アマトリアンのタチヤーナもすごく好かったです。『眠り』で感じた不調は、今日は一切ありませんでした。とにかく、伸びやかで柔らかな身体が綺麗。リフトされたときの空中での伸びやかなフォルムは、本当に美しかったです。イェリネクのリフトは、あれだけ振り回しているのに、振り回している感じがしないんです。アクロバティックでスピーディーな振付なのに、振り回しているとは感じさせず、非常に滑らかで美しいリフトとサポート。それを受けるアマトリアンの身体がまた綺麗でね〜。
アマトリアンは、とっても内気で夢見がちな少女にピッタリ。主体性がないようでいて、その半面非常に頑固というか、そんな少女の雰囲気がすごくよく出ていました。本の虫のような、大人しいタチヤーナは、オネーギンにとっては垢抜けない田舎娘に映ったかもしれないけど、アマトリアンのタチヤーナには最初から穏やかな品があったし、決闘後の幕切れで見せた凛とした佇まいにはドキッとさせられるものがありました。
それにしても、オーロラでも思ったんだけど、アマトリアンはなんて幸福そうに微笑むんでしょうね〜。オーロラではその微笑みでこちらまで幸せな気持ちになることができたし、一方タチヤーナではその夢見がちで幸福そうな笑顔が、オネーギンの苛立ちを増長させるようでハラハラもさせられました。手紙を書きながらウットリと頬杖をつく姿は、まだ幼ささえ感じさせ、恋に恋するよりもさらに現実味がない。3幕ではしっとりと輝くように美しい女性に変貌したアマトリアンでしたが、その無垢な笑顔は失われておらず、同じ年月の間にすっかり疲弊してしまったオネーギンとの落差が際立っていました。

フォーゲルのレンスキーも最高でした。踊りは申し分なし。NBSがアップした動画よりも、同じソロが格段に安定しておりました(因みにあの映像は2006年に収録されたものだそうです)。成長する男ですね〜♪ 今日のフォーゲルを見ていたら、レンスキーはもちろんピッタリだけど、オネーギンも悪くないんじゃないかと思ってしまいました。余計なお世話だけど、、、。でも、オネーギンを踊ることでレンスキーを踊らなくなるのは勿体無いほどピッタリではある。
フォーゲルとポリーナが日本で注目され始めた頃って、どちらかというとフォーゲルがポリーナのお相手役という扱いだったような気がするんですが(私だけか?)、もしかしてフォーゲルこそ将来のスターなのかもしれないと思い始めています。
決闘前のソロがすごく好かった。そして決闘の直前、オリガにギュッとキスをしてから突き放し、タチヤーナの手を静かに力強く握ります。オリガへの愛憎の入り混じった態度と、これまでの親愛に感謝するかのようなタチヤーナへの静かな握手。とてもいい場面でした。

雑感のつもりがちょっと長くなりましたので、この辺で、、、。オリガのカーチャ・ヴュンシュもグレーミン公爵のダミアーノ・ペテネッラも、とても好かったですよ〜。
予定を変更して、明日も見に行くことにしました。カラボスが格好良かったジェイソン・レイリーのオネーギンも、どうしても見たくなってしまったので。スー・ジン・カンも見られるし♪ 噂のラドメイカーくんも楽しみです〜。

キャストを書いておきます〜。

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』
2008年11月28日(金)18:30 東京文化会館

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

オネーギン:イリ・イェリネク
レンスキー:フリーデマン・フォーゲル
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:アリシア・アマトリアン
オリガ:カーチャ・ヴュンシュ
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ダミアーノ・ペテネッラ

指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

あ、『眠り』で釘付けになった指揮者のジェームズ・タグルさんは、今日も素晴らしかったです〜。って、その辺は素人なのでよくわからないんですが、素人なりに「なんかすごい」と思いました。
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2008年11月25日

ナチョ・ドゥアト『ロミジュリ』

今日はナチョ・ドゥアトの『ロミオとジュリエット』でした。しかし何度行ってもさいたま芸術劇場は遠い…。しかも雨だし。前に行ったときも雨だったんですよね〜。

舞台は最高でした!格好良かった〜。もう、ダンスの洪水です。踊っていないときがない。もっと抽象的なものを想像していたんですが、思っていたよりも『ロミオとジュリエット』でした。と言っても、芝居やマイムはほとんどなく、本当にダンス、ダンス、ダンスです。あれだけすべてをダンスで表現するというのは、相当の自信がないとできないのではないかと思いました。自信と言っても偉ぶったものではなくて、むしろ謙虚というか、音楽とダンスに対する深い尊敬と愛情を感じずにはいられません。そのドゥアトの自信というか信念が、全編に貫かれていました。
バルコニーのパ・ド・ドゥを見ながら、「キスはしないんだな〜」と思っていたら、休憩中に読んだプログラムにその答えがありました。
「この『ロミオとジュリエット』では、誰も舞台上でキスをしません。(中略)ダンスにおいてはその「キスの感情」をムーブメントに換言してみせる必要がある」
なるほど〜、と。確かに、普段はダンサーの表情を追いがちな私が、今日は表情はあまり見ていませんでした。何よりダンス、そのムーブメントから目が離せない。というか、もう何かを考えてる余裕なんてありませんでした。もうずっとダンスを浴びている、そんな感じ。それはすごく幸福な感覚です。

今回のプログラムのインタビューは、見開き1ページの短いものなんですが、このインタビューだけに限らず、私が言うのもおこがましいんだけど、ドゥアトは頭のいい人なんだなぁと思ってしまいました。私のような人間にも、彼の言っていることはすごくわかりやすいんです。答えはいつも明確で、自分や世界をしっかりと見つめる眼差しを感じます。

ダンサーたちはみんなパワフルでとっても元気。なんとも生命力に溢れた舞台でした。長いスカートを翻して大地を蹴上げる女性たちが印象的。「いい村は女が元気だ」というアシタカ(『もののけ姫』)の台詞を思い出してしまいました。すみません、変な感想で…。男性陣のパワフルな踊りも前回(『バッハへのオマージュ』)同様。ロミオもティボルトも好かったし、ついでにお父さんも格好良かったけど、やっぱりマキューシオですかね〜。酔っ払いベンヴォーリオも面白かったけど。
全員が全員、ここで踊ることが楽しい!というパワーに満ちています。ダンスをすること、ドゥアトを踊ること、今舞台で踊っていること、それが楽しいというパワーが、作品の持つ生命力にも結びついているようでした。

とりあえずキャストだけ書いておきます〜。キャスト表の表記を見ると、3日間同じキャストだったみたいですね。

ナチョ・ドゥアト スペイン国立ダンスカンパニー『ロミオとジュリエット』
2008年11月24日(月・祝) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
振付:ナチョ・ドゥアト

ジュリエット:ルイサ・マリア・アリアス
ロミオ:ゲンティアン・ドダ
キャピュレット夫人:アナ・テレザ・ゴンザガ
キャピュレット:ディモ・キリロフ
マキューシオ:フランシスコ・ロレンツォ
ティボルト:クライド・アーチャー
乳母:ステファニー・ダルフォン
パリス:アモリー・ルブラン
ベンヴォーリオ:マテュー・ルヴィエール
posted by uno at 01:12| Comment(6) | TrackBack(0) | バレエ公演2008 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする