2017年06月02日

東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』4月29日

4月に<上野の森バレエホリデイ>の一環として上演された、東京バレエ団の子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の感想を書きました。

東京バレエ団 子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』
2017年4月29日(土・祝)13:30 東京文化会館

キトリ/ドゥルシネア姫:川島麻実子
バジル:秋元康臣
ドン・キホーテ:木村和夫
サンチョ・パンサ:中村瑛人
ガマーシュ:岡崎隼也
ロレンツォ:永田雄大
エスパーダ:岸本秀雄
キューピッド:足立真里亜

ロシナンテ(馬):山田眞央、樋口祐輝
お嫁さん馬:山本達史、井福俊太郎
キトリの二人の友人:吉川留衣、岸本夏未
闘牛士:
  森川茉央、入戸野伊織、ブラウリオ・アルバレス、吉田蓮
  和田康佑、宮崎大樹、安楽葵、岡崎司

特別出演(ロシナンテの声):ウラジーミル・ワシーリエフ

東京バレエ団 子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の公演に行ってまいりました。4月29日の川島&秋元のみ鑑賞。子どものためのバレエが東京文化会館で上演されるのは初めてだったんですが、会場はしっかりと埋まっていました。子どものためのバレエでは、カーテンコールでダンサーが客席に下りてきます。めぐろパーシモンホールをはじめ、これまで上演してきたホールは2階席までのホールが多かったので、今回はどうするんだろう?と思ったら、ちゃんと3階以上の上階席までダンサーが出向いていました。ちょっとしたことだけど、嬉しいですよね。

公演はとっても楽しかったです♪ 今回はウラジーミル・ワシーリエフが来日してリハーサルを行ったそうで、いくつか変更点もありました。まずは、群舞のダンサーたちが掛け声を出していたこと。主演の登場やヴァリエーションを踊るときなどに、掛け声で場面を盛り上げてくれます。こういうときは森川さんが頑張ってくれる。流石にラストのグラン・パ・ド・ドゥでは掛け声はありませんでした。そして、ロシナンテの声をワシーリエフが担当してくれました。これまでロシナンテは、同意のときは「ピンポーン」、否定のときは「ブッブー」という効果音で意思表示をしていました。「ブヒヒ〜ン」「ブルンブルン」といった感じで、ワシーリエフが馬の鳴き声を真似ているんですが、これが上手いんです♪ ときどき鳴き声と見せかけて何か台詞を喋っていたような気がしたんですが、「え?え?今なんて?」みたいな、聞き取れなさがまた可笑しかったです。あと、お嫁さん馬のヴェールがピンクのヴェールに新調されていました♪ 白馬なので、確かにピンクのほうが映えますね。

そしてこれも変更点と言っていいのか、ラストでサンチョ・パンサがドン・キホーテに、「これで我々も家に帰れるってことですよね?」と問いかけると、木村キホーテが「Noー!!」と叫んだんです。ビックリするやら可笑しいやらで、思わず噴出しそうになりました。木村さんは相変わらず楽しそうで、冒頭で書物に没頭して「わーーー!」と崩壊するところも、トランポリンから転げ落ちてきたサンチョを守るために本気で剣を振り回すところも、ドリアードたちとロシナンテに挟まれて混乱するところも、何度見ても楽しいです。今回もカーテンコールで踊りまくるのかと思いきや、サンチョと2人で客席に下りてきて、通路をダッシュする木村キホーテ。どうしたのかと思ったら、ワシーリエフを連れてステージに帰ってきました。ワシーリエフが舞台の中央で軽やかにステップを踏み、ポーズを決めたところで緞帳が下りてくるという流れ。ワシーリエフ、やっぱり素敵ですね〜♪ 体型は少し重たそうにもなっていますが、ステップは軽やかだし、佇まいというかオーラというか、やはり素敵でした。

川島さんと秋元さんは、今回もとっても素敵でした。2人ともすべての動きがクリアで無駄がなく、丁寧で正確な踊りは見ていて本当に気持ちが良かったです。ドン・キらしい溌剌さもあり、2人の息もピッタリ。そろそろ、というか早く2人の通常版の『ドン・キホーテ』が見たいです。ガラリと雰囲気の変わる、川島さんのドリアードも大好き。キトリの赤いクラシックチュチュも素敵なんですが、白系のクラシックチュチュで優雅に踊る川島さんが結構好きです。カラボスもいいけど、リラの精も似合うと思うんですよね〜。

今回もサンチョ・パンサで大活躍の中村瑛人さん。彼は台詞回しも上手だし、滑舌もよく、声も可愛らしくて、とても聞きやすい。子どもうけもしそうな、素敵な愛らしいサンチョ・パンサなんですが、なんとこれを最後に退団するとのこと、、、。4月の最初に入退団が発表されたので油断してました・・・。勝手にビム候補(ベジャール版『くるみ』)かな〜なんて楽しみにしていたこともあり、とても残念です。そいういえば、もう一人のサンチョ・パンサ、竹下虎志さんも退団してしまいましたね。いや、サンチョ=ビムというわけではないんですが、そういう流れが多かったので、つい、、、。

エスパーダの岸本さんがパワーアップしてて楽しかったです〜♪ 
前回よりも、なにやら只ならぬ雰囲気で登場。さらに踊り出すと目の色が変わって、人が変わったように踊り狂う(褒めてます)。踊りはキレキレのキメキメ。より伸びやかでより大きな踊りで、存在感を放っていました。あんなに溜めてナルシスティックに踊ってくれるとは。異様なまでの(褒めてます)集中力と佇まい。楽しませてもらいました♪  彼はやっぱり「目」がいいですよね〜。
キューピッドの足立さんは、前回見たときも「いいな」と思ったんですが、やっぱりいいですね〜。テクニックもあると思うけど、きっと彼女くらい踊れる人は他にもいて、じゃあ何がいいかと言ったら、何か惹きつけるものがある。そして、嫌味がない。彼女の踊りをもっといろいろ見てみたいなと思いました。
あと、闘牛士のアルバレス。あれはズルイです、格好いいです〜♪ 30日の公演ではエスパーダを踊ったようで、見られなかったことに地団太を踏みました。
岡崎さんのガマーシュは、またステージを上がったというか、もはや至芸の域に感じてしまいました。完璧に計算されているんだけどナチュラルで、際物なんだけど邪魔はしない。そして動きが滑らかで綺麗で、変な奴だけど下品じゃない。あの動きの安定感というか、軸のぶれなさというか、踊らない役だけど、「踊れる人だな」という空気感も出ていました。
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2017年05月15日

フィンランド国立バレエ団『たのしいムーミン一家』<北欧バレエ・ガラ>4月25日

4月に初来日公演を行った、フィンランド国立バレエ団の感想を書きました。

2作目にして日本初演となったバレエ『たのしいムーミン一家〜ムーミンと魔法使いの帽子〜』と<北欧バレエ・ガラ>というプログラムです。いろいろ面白かったです〜♪ 長身の男性が多いな〜という印象。プログラムによると、芸術監督のケネス・グレーヴも身長が196cmあるそうです。大きいんですね〜。カーテンコールに出てきてくれるかと思って期待してたんだけど、出てきませんでした。ちょっと見てみたかったです。
第1部が<北欧バレエ・ガラ>、第2部がムーミンでした。

フィンランド国立バレエ団2017年日本公演
バレエ『たのしいムーミン一家〜ムーミと魔法使いの帽子〜』<北欧バレエ・ガラ>
2017年4月25日(火)13:00 Bunkamuraオーチャードホール

第1部 <北欧バレエ・ガラ>

『白鳥の湖』第3幕より
振付:ケネス・グレーヴ(レフ・イワーノフ、マリウス・プティパ版に基づく)
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー

オディール:アリーナ・ナヌ
ジークフリード王子:デニス・ニェダク
ロットバルト:ガブリエル・ダビッドソン
スペインの躍り:レベッカ・キング
ハンガリーの躍り:イーガ・クラタ、ニショラス・ツィーグラー
ロシアの躍り:松根花子

各国の踊りと、王子とオディールのグラン・パ・ド・ドゥという構成。幕が上がると全身黒づくめの衣裳の男性と王子が登場。最初わからなかったんですが、黒い衣裳の彼がロットバルトでした。ロットバルトが王子に「この中から結婚相手を選ぶように」と左手の薬指を指差すんですが、そこにいるのは民族舞踊のダンサーたち。クレーヴ版は花嫁候補は出てこないんでしょうか? なので、各国のソリストたちは王子を誘惑するように踊ります。スペインのソリストはクラシックチュチュ。最後にグラン・フェッテを披露します(ダブルも織り交ぜてました)。ハンガリーの女性が王子に言い寄ろうとすると、パートナーの男性が手を引っ張ってやめさせようとするという具合に、2人の間でちょっとした小競り合い。2人は男女の関係なの? ロシアの踊りは日本人ダンサーの松根さん。ロシアなんだけど、衣装がセパレートのハーレムパンツで意外でした。ロシアの彼女も思い切り王子を誘惑します。王子も彼女のサポートをしたり、リフトに加わったりと、踊りに参加。ロシアの音楽を聴いてたら、マーフィー版『白鳥』でルシンダ・ダンが踊る伯爵夫人が思い出されてしまいました。
GPDDでのロットバルトは、オディールに耳打ちしたり、王子を制したりと、ときどき絡む程度で踊ることはありませんでしたが、ガブリエル・ダビッドソンがちょっと素敵でした(オディールのヴァリエーションのときだけマントをつけてきました)。アリーナ・ナヌもデニス・ニェダクも初めて見たんですが、とてもいいダンサーだったと思います。オディールのグラン・フェッテはすべてシングルでしたが、きっちり32回転していました。

公演の前に、グレーヴ版『白鳥の湖』の意外な設定をTwitterのほうで知りました。王子の友人ベンノは、王子が結婚をしたら、自分が王子を失うことを恐れていて、王子とオデットが恋に落ちると、ロットバルトと手を組むことに決めたというのです。そして、ロットバルトがベンノをオディールへと変身させます。ロットバルトに利用されていたことに気付いたベンノは、自らが犠牲となって湖に飛び込み王子を助け、王子とオデットはハッピーエンドを迎えるとのこと。衝撃でした〜。ベンノが友人として王子を失うのが怖いのか、恋心を抱いているのかまではわからないんですが、まだその解釈が残ってたか、と。『白鳥の湖』、懐深すぎです。
このオディールはベンノなのか〜と思いながら見ると、なんだか妙に切なくなってきました。全幕で見たらもっと面白いのかもしれませんね。

『レンミンカイネン組曲』より”トゥオネラの白鳥”
振付:イムレ・エック
音楽:ジャン・シベリウス

トゥオネラの白鳥:ティーナ・ミュッリュマキ
レンミンカイネン:ヤニ・タロ

シベリウスはフィンランドの作曲家とのこと。単独で上演されることが多い「トゥオネラの白鳥」は、『レンミンカイネン組曲』の第2曲なんだそうです(全4曲)。『レンミンカイネン組曲』はフィンランドの民族叙事詩『カレワラ』を題材に作曲された楽曲で、今度その『カレワラ』をケネス・グレーヴがバレエ作品化することが決定していて、フィンランドの独立を祝う記念作品になるとのこと。『カレワラ』全幕、ちょっと気になります。暗く幻想的で、美しい音楽に乗せて、男女が踊るパ・ド・ドゥ。白鳥と英雄レンミンカイネンのパ・ド・ドゥなんですが、女性の衣裳が真っ黒なのは死をイメージしているのでしょうか。幻想的で美しいパ・ド・ドゥでした。

『シェヘラザード』よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付:ケネス・グレーヴ
音楽:ニコライ・リムスキー=コルサコフ

シャリアール王:ジョナタン・ロドリゲス
シェヘラザード:ハ・ウンジ

ゾベイダと奴隷ではなく、シェヘラザードとシャリアール王とのパ・ド・ドゥでした。シェヘラザードを踊ったハ・ウンジがとっても素敵。優しげな笑顔が印象的な、とても美しい人でした。キラキラしたゴールドの衣裳も下品にならず、美しかったです。官能的な雰囲気はなく、なんだかとても愛のあるパ・ド・ドゥ。と思ったら、グレーヴ版はフォーキン版のその後の物語を描いているんだそうです。愛する女性に裏切られた怒りから、若い娘と結婚しては初夜の夜明けに娘を殺害するということを繰り返していたシャリアール王。繰り返される悲劇に胸を痛めたシェヘラザードが自ら志願して王と結婚し、毎夜シャリアール王に心躍る物語を語り聞かせ、やがて王は穏やかな心を取り戻していくというストーリーの方に焦点を当てているそうです。どうりで、穏やかな空気に包まれた愛あるパ・ド・ドゥでした。シャリアール王のジョナタン・ロドルゲスも、褐色の肌の素敵なダンサーでした。男女の群舞付き。群舞の女性の衣裳が、クラシックチュチュの下にハーレムパンツをはいていて、ちょっと面白かったです。

バレエ『悲愴』より
振付:ヨルマ・ウオティネン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(交響曲第6番 作品74「悲愴」)

ソロ:アンティ・ケイナネン

スキンヘッドの男性がロマンチックチュチュのようなスカートで踊るソロ。肩を丸めて、周囲の視線を気にするようにオドオドと踊る男性は、ユーモラスなんだけど、どこか切ない。全編では7人の男性ダンサーが踊る作品らしく、全体像が気になりました。

『ドン・キホーテ』第3幕より
振付:パトリス・バール、ホセ・デ・ウダエータ(ファンダンゴ)
音楽:レオン・ミンクス

キトリ:サッラ・エーロラ
バジル:ミハル・クルチュマーシュ
メルセデス:小守麻衣
エスパーダ:ニショラス・ツィーグラー
キトリの友人:レベッカ・キング、松根花子

ファンダンゴまであって、華やかでした。『白鳥』のときも思ったんだけど、背景の照明の色が変わるだけで、舞台装置が何もないのが少し寂しかったかも。ちょっとした袖幕とか、シャンデリアとか、少しでも何かあるともっと華やかだったと思うんですが、ガラなので仕方がないか、、。でも、そういえば『シェヘラザード』のときは背景があったんですよ。あれは背景幕ではなくて、映像だったのかもしれません。楽しく見たんですが、キトリのサッラ・エーロラがちょっと太めなのが気になっちゃって気になっちゃって、そればかり考えてしまって、ちょっと集中できませんでした。太いというか、「しっかり」しているというか。でも、バジルのミハル・クルチュマーシュはまったく重そうにはしていなくて、プロフェッショナルだなと。いや、重くないのかもしれないけど、、。
エスパーダの人を見て、「あ、さっきのハンガリーの人だ」と。ニショラス・ツィーグラーは大人の男の色気があって、なんだか素敵。気になる存在でした。

第2部 『たのしいムーミン一家〜ムーミと魔法使いの帽子〜』

原作:トーベ・ヤンソン
振付:ケネス・グレーヴ
音楽:トゥオマス・カンテリネン

ムーミントロール:フローリアン・モーダン
スノークのおじょうさん:小守麻衣
ムーミンパパ:キンモ・サンデル
ムーミンママ:イラ・リンダール
スニフ:ルアン・クリグフトン
スナフキン:ジュゼッペ・マルティーノ
ちびのミイ:エミリア・カルミッツァ
モラン:ヴィッレ・マキ
黒豹:イェヴゲニア・プレシュコヴァ
飛行おに(魔法使い):ニショラス・ツィーグラー
ルビー:松根花子

楽しかったです〜♪ のほほんとしてたな〜。ちょっとだけ話が伝わりにくいというか、プログラムを読んでいなくてもここまでわかったかな〜と思う部分はあったかもしれません(ムーミンのバレエに限ったことじゃないか)。先にプログラムでストーリーを読んでおいてよかったなと思いました。

オープニングは映像。遠くの眼下に見えるムーミンの家に、カメラ(我々の視点)がどんどん寄っていきます。舞台にはダンサーがスタンバイしているのがわかる。徐々に大きくなるムーミンの家。やがてその窓にミーがいるのが見えてきます。ミーがアップになったところで映像が終わり、舞台上のミーが踊り始めるという感じのオープニングで、このオープニングは結構好きでした。
春の群舞たちの、緑とピンクのグラデーションの衣装が素敵でした。全員同じじゃなくて、少しずつ色合いが違うんです。緑が多い衣装もあれば、ピンクが多めの衣装もあるし、ピンクの濃さや色合いが違ったり。開きかけた蕾のような衣装で、とても素敵でした。ルビーの衣装も好き。宝石のカットのようなチュチュ部分が可愛かったです。
ルビーを踊った松根さんは、エレガントで情感があり、ルビーらしい情熱的な雰囲気も感じさせて、とても素敵でした。魔法使いが素敵だな〜思ったら、またしてもニショラス・ツィーグラーでした。

ムーミン谷に春が来て、冬の眠りから覚めたムーミンたちが活動を始める。不思議な帽子を見つけて、ルビーをめぐる騒動があり、やがて帽子は持ち主の魔法使いの元に戻って、めでたしめでたし。ものすごく大雑把に言うとこんな感じかな、と。

エンディングもよかったです。客席に背を向けて、ベンチに腰かけるムーミンとスノークのおじょうさん。互いに寄り添う2人の手には、大きな大きなピンクのハートの風船が揺れています。寄り添う2人を夕闇が包んで幕。とっても素敵な幕切れでした。


ケネス・グレーヴ版『白鳥』全幕と、同じくグレーヴが手掛ける『カレワラ』がとっても気になります。
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2017年05月02日

ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団『カーネーション−NELKEN』3月16日

一ヶ月以上経ちますが、ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団『カーネーション−NELKEN』の感想を書きました。ピナの感想を書くことほど緊張することはない、、。

ピナ・バウシュ・ヴッパタール舞踊団『カーネーション−NELKEN』
2017年3月16日(木)19:00 彩の国さいたま芸術劇場大ホール

さいたま芸術劇場にて、日本では28年ぶりの上演となる『カーネーション−NELKEN』を見てまいりました。
舞台が始まって、その心地良さに気付きました。目の前で繰り広げられる場面は優しいだけでも美しいだけでもなくて、時に悲痛で暴力的で、その表現は痛切に心に響きます。でも目を覆いたくなるようなものは一切なくて、なんて人は愚かで虚しくて、そして優しくて美しいんだろうと、一体ピナの目にはどんな風に人間が映っていたのか、その深い眼差しと愛を感じずにはいられません。そのピナの眼差しが、舞台だけでなく劇場全体を満たしているようで、その空間に心を浸していられる心地良さを、見ている間ずっと感じていました。あの空間にいられる幸せ、それに尽きるかな、と。ずっと見ていたくて、「終らないで」と思わずにはいられませんでした。

いろいろな形の暴力が出てきました。いろいろな立場や関係。それは直接だったり、時に間接だったり。身体的、あるいは精神的な苦痛。さらに状況という暴力。人は様々な痛みを受けます。様々な断片が、時にヒステリックに、執拗に、残酷に、そして美しく哀しく、ユーモアを伴って描かれます。それがあの信じられないくらい綺麗な一面のカーネーションの中で描かれる。そのカーネーションは最後にはほとんどなぎ倒され、舞台の両袖には強引に押しやられたダンボールの山の残骸が残ります。あの荒涼とした、それでもどこか清々しい舞台。それはそのまま、舞台を見終えた私の心のようでした。
山海塾の舞台でも常に意識されていると思うんですが、最初と最後で舞台が変化しているのがとても印象的でした。人がそこで生きていた証、感情が存在した証が残された舞台は、約2時間を供に生きていたからこそ感じる美しさがありました。あんなに優しくて懐かしい、美しい荒野はないかもしれません。

子どもを叱る親。泣き喚く子どもに、「外に聞こえる。恥ずかしい。」とまた叱る。別の親は、「これはズボンを汚した分」と子どもを叩きます。叱られた子どもの、「ママー!」という叫びが堪えました、、。それでも子供は親を嫌えない。理不尽に叱る親も、子どもを愛していないから叱るのではないかもしれない。上手に愛せない自分に苛立っているのかもしれません。不器用で哀しい。
男性が女性を肩車してスカートを被せると、巨大な女性になります。あの不自然さ、違和感。ちょっとユーモラスで笑ってしまうんですが、でもなんだか滑稽で哀しくもある。あれを肥大した自己意識と捉えるのは考えすぎでしょうか。
後半には、一人の男性が男女に命令をして、同じように肩車をします。そして、もう一人の男性に、動物の真似をするよう指示を出させる。肩車をされた女性は、男性に言われてしぶしぶもう一人の男性に命令をする。自分は強要したくないことを、人に命令されて仕方なく強要する。それもまた苦痛という暴力だな、と。
相手の頬を平手打ちしては、その頬に優しくキスをするのを繰り返す、2人の男性。交互に「平手打ち→キス」を何度も何度も繰り返すうちに、2人の頬は真っ赤になります。
テーブルに上り、直立のままバタッと倒れる男性たち。それを椅子に座って見ている女性。女性に威圧的な視線を向けたままテーブルにバタバタと倒れるのを4・5人の男性が順に繰り返します。徐々に女性のほうにテーブルを近付けながら。女性は恐怖して悲鳴を上げる。お構いなしにどんどん女性のほうへテーブルを近づけ、彼女に視線を向けながらテーブルに強く身体を打ち付ける。近付くほどに女性の恐怖は強くなります。もう身動きも取れないほど女性にピッタリとテーブルが近づく。まるで「これで許して」と言わんばかりに、バッグの中からお菓子を出してテーブルに並べるも、男性たちは意に介しません。
舞台の左右に足場が設置され、その前に組み立てられた空のダンボールが次々に積まれていきます。ダンサーたちは椅子を持って移動しては踊る。一人の女性がその状況に混乱して悲鳴を上げながら、カーネーションの中を右往左往するも、ダンボールはどんどん積まれていきます。最後にダンボールの周囲をガムテープでぐるぐる巻いて固定すると、左右の足場に男性が上っていきダンボールにダイブ! ダンボールは強引に袖に押し込まれ、舞台の左右に崩れたダンボールの山が残ります。

一つだけ辛かったのは、最後に観客も立ち上がって一緒にジェスチャーをする場面です。舞台上のダンサーに「立って下さい」と促され、ダンサーのレクチャーに従ってある動きを全員で行います。腕を順に広げて自分を抱きしめるという簡単な動きなんですが、参加型の舞台がひどく苦手な私には辛かったです、、。でも、一人だけ座ってて周囲の人に不快な思いをさせるのは申し訳ないので、ちゃんとやるんですが、、。その後は「座ってください」のアナウンスがないまま舞台が進むので観客は立ったまま。やがて、ダンサーたちが踊る春夏秋冬の手話を、多くの観客たちが自発的に一緒に繰り返します。参加型の舞台を提供する側の意図とはなんでしょうか? 座ることを促さなかったのも「敢えて」ですよね、きっと。一緒に体験することが純粋に楽しいという方も大勢いるとは思うんですが、私のように苦手な人間も少なからずいるはず(そっちのほうが多かったりして)。もしかしたら、むしろ私が感じているような苦痛や疎外感が狙いなのでしょうか。そこまでいかなくても、座っていいかどうかわからない状況や、春夏秋冬の手話を自分も行うか迷うといった、ちょっとしたモヤモヤを起こさせることが狙いなのかも?と思ってしまいました。

4匹のシェパードが登場したんですが、彼らが可愛くて可愛くて♪ 1匹ずつスーツの男性がリードを持って常に付き添っています。とにかく可愛い、、、(♪)。ただ、ダンサーたちの動きに驚いたのか、落ち着きがなくなって吠えちゃってる子もいて、怖がっていたのなら可哀相だなぁと心配にもなりました。とっても頑張っていたと思います。ご褒美とかもらえるのかなぁ、、。

終盤の玉ねぎのシーンも印象的でした。ひたすら玉ねぎをみじん切りする男性。そこへ一人ずつ男性がやって来てテーブルに腰かけると、山となったみじん切りにズボっと顔を埋めます。辛そうに顔を歪めて舞台に立つ。次の男性も、また次の男性も同じようにして、玉ねぎが顔に少し付いたまましんどい顔した男性が並びます。なんか、変な感想かもしれないけど、そこが一種の逃げ場のように見えました。しんどいことがあるとここへ来て、玉ねぎにズボっと顔を埋めてリセットする、みたいな。男性は、ひっきりなしに訪れるそんな彼らのために、延々と玉ねぎをみじん切りしているようでした。

ラスト、男性も女性もワンピースを着て、一人ずつ登場し、バレエを始めたきっかけを語ります。きっかけは様々です。兄弟に着いて行ったとか、とにかく動く子どもだったとか、ダンサーあるあるじゃないけど、きっかけは些細なことだったり意外なことだったりして。でも、なんだかそこにはダンスへの愛が溢れていて、思わず涙ぐんでしまいました。

ピナの舞台には、とても不器用だけど真剣に生きている人たちがいて、そこには人間やダンサーや、ダンスへの愛が溢れています。それは、ピナがなくなった今も変わることはありませんでした。もう彼女はいないけど、彼女の残した舞台はまったくその力を失ってはいませんでした。

今回の公演では、開演前と終演後の撮影が許可されていました。

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2017年03月28日

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>2017年2月25日 【神奈川】

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>、神奈川公演の感想です。

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>
2017年2月25日(土)15:00 神奈川県民ホール 大ホール

「中国の不思議な役人」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ベラ・バルトーク  

無頼漢の首領:柄本弾
第二の無頼漢―娘:宮川新大
ジークフリート:森川茉央
若い男:伝田陽美
中国の不思議な役人:木村和夫

「イン・ザ・ナイト」 
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:フレデリック・ショパン  

沖香菜子−秋元康臣
崔美実−ブラウリオ・アルバレス
川島麻実子−柄本弾

ピアノ:松木慶子

 「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

上野水香

杉山優一、岸本秀雄、森川茉央、永田雄大

「中国の不思議な役人」

木村さん最後の『中国の不思議な役人』ということで、すみません、この日はもう木村さんしか見ていませんでした。これが最後と決めるのは惜しいと思えるような、すごい役人でした。ただ、次の上演が何年後になるかわからないわけで、そのとき納得のいくパフォーマンスができるかどうかは、本人にもわからないのではないでしょうか。2013年に役人を踊ったときも、まったく同じことを思いました。でも、4年後の今回、木村さんは衰えるどころか深化したんじゃないかと思えるような役人を見せてくれました。もしかして1年後、2年後、上演が決定したとき、「踊れそうだな」と思ったら、復活してほしいなと思ってしまいました。今はまだ、木村さんの他に役人を踊れそうな人が思い浮かびません。どこまでが木村さんで、どこからが役人なのかわからなくなる、渾身の舞台だったと思います。

「イン・ザ・ナイト」

なんと言ってもこの日の衝撃は、「イン・ザ・ナイト」の川島さんでした。やっぱり川島さんて、すごい人かも。「あれ?なんだろ、これ。なんだ、なんだ?」と思っているうちにぐいぐい引き込まれて、終盤の膝を折って手のひらを差し出すところで、もう堪えきれず涙が溢れてしまいました。あの場面が本当に素敵なんです。2人が向かい合って立ち、女性が右手で男性の右肩に触れ、左手で左肩に触れ、腰、脚と同様に触れていき、最後に膝を折って頭を垂れ、両方の手のひらを見せて腕を差し出します。もうそこで滂沱。そして、男性がその手を取り、女性をポワントのまま立たせます。ノイマイヤーの振付にも登場する、この手のひらを差し出すという行為(さらにそこに頬を寄せたりする)は、心打たれるものがあります。
水香さんは華やかでよかったんだけど、少し手の動きなどか好みじゃないな〜という部分もあって、川島さんはそのあたりも抑えられていたので、私にとっては気になる部分がなかったのもよかったんだと思います。抑制の効いた大人のドラマチックというか、ロビンズの枠をはみ出さずにここまで心揺さぶる踊りを見せ、自分の世界観を築いた川島さんに本当に驚かされました。
川島さんのすごいところは、見る度に「やっぱりすごい人かも」と思わせてくれるところかもしれません。それが、マラーホフの『眠り』を踊ったときからずっと続いているような気がします。

第2パ・ド・ドゥの崔さんもとても素敵でした。艶やかで気品があり、キリリとした美しさを見せてくれました。アルバレスとの雰囲気はもちろん素敵♪ 大人っぽい人だなぁと思っていた崔さんですが、やはり川島さんの大人っぽさには敵わないんだな〜と。大人のエレガンスを見せてくれた川島さんも、年頃の娘さんのような眩い美しさを見せてくれた崔さんも、どちらも素敵でした。崔さんは、ちょっと気の強そうなところも可愛いです(♪)。

この神奈川公演では水香さんが『ボレロ』を踊るので、東京とは違うキャストが組まれたわけですが、川島さんが2つのパ・ド・ドゥを踊ると知って、楽しみではあるけど、よほど友佳理さんに気に入られているんだな〜と思っていました。しかし、実際に彼女の踊りを見て、これは川島さんに踊らせるべきだったと深く納得しました。他のキャストも見てみたいですが、この川島さんが見られたことは本当によかったと思います。

「ボレロ」

私としてはどちらかと言うと好みではないほうの水香さんのメロディだったかもしれません〜。ちょっとだけやり過ぎというか、装飾的に感じてしまう瞬間がありました。例えば、腕で髪をかき上げながら1回転するところとか、何を感じていいのか迷うところもあったりして、、。もっとシンプルな彼女ほうが好きです。とても熱演だったし、会場の反応はとてもよかったです。前髪を少し分けて、おでこを見せていたのはよかったな〜と思いました。って、普通はそんなとこどうでもいいのかな(苦笑)。
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2017年03月16日

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>2017年2月23日

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>2日目の感想です。世間ではもうパリ・オペの公演が終わり、まもなく次の公演ラッシュが来るというのに、まだ東バの感想を書いてます、、。
2日目のこの日も、とっても楽しかったです。3演目とも思う存分堪能しました。

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>
2017年2月23日(木)19:00 Bunkamuraオーチャードホール

「中国の不思議な役人」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ベラ・バルトーク  

無頼漢の首領:森川茉央
第二の無頼漢―娘:入戸野伊織
ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス
若い男:二瓶加奈子
中国の不思議な役人:木村和夫

「イン・ザ・ナイト」
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:フレデリック・ショパン  

沖 香菜子−秋元康臣
川島麻実子−ブラウリオ・アルバレス
上野水香−柄本 弾

ピアノ:松木慶子
  
「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

オレリー・デュポン

杉山優一  岸本秀雄 森川茉央 永田雄大


『中国の不思議な役人』

木村さんの役人がますます怪しい(最上級に褒めてます)。大好きすぎてやっぱり目が離せませんでした。これが最後だなんて言わずに、役人のように何度でも復活してほしいです、、、。
やっぱり絶対に深化してる気がします。当たり役だとは思ってたし、毎回すごいとは思ってたけど、今回も本当にすごかった(「すごい」しか出てこなくてすみません、、)。今回は以前にも増して心で踊っていたような気がするんです。それはもしかしたら、身体的な変化や衰えを感じるからこそ得られた境地なのかもしれません。今の自分に何ができて、何ができないか。できることを使って、どこまで表現できるのか。真摯に向き合い、本番ではすべてを捨て去る。出せるものはすべて出して、何も残っていない。そんな魂の踊りのような気がしました。
感情を感じさせない不気味な役人の娘への執着は、何かが弾けて恋する役人に変わり、異形と成り果てても復活を繰り返し、最後はピュアな存在になって果てていく、、、。カーテンコールでは乱れた髪をオールバックにし、抜け殻のような木村さんが、一歩前に出た瞬間に笑顔に戻ったのが印象的でした。

入戸野さんの娘がすごくよかったです〜。とにかく美しくて倒錯的。あんまり普通に綺麗で、異質さがもっとあってもよかったかもしれないけど、私的には久々に「お〜♪」って感じでした。自分の美しさを知っている若さゆえの傲慢さと、男たちを翻弄しながらもどこか背伸びをしているような危うさと、その両方が共存していて、未完成な青年っぽさがよかったです。宮川さんの娘よりも若い感じがしました。さらに、首領と「できてる」なと思わせるのも、入戸野さんと森川さんのペアでした。また森川さんの首領が、娘を道具として使っているだけという悪い奴で、いいんですよ〜。入戸野さんの娘は首領のためにやっているような雰囲気もあって、やや切ない。入戸野さんと弾さんだったらどんな感じになるのか、見てみたくなりました。神奈川は宮川さんの娘なので、入戸野さんはこの1回だけなんですよね。できればまた見たいです。
入戸野さんは髪型もよかった。マレーネ・デートリッヒじゃないけど、昔のドイツ映画に出てくる女性のような、ウェーブのあるボブというか(語彙力なくて申し訳ない)。確か、首藤さんが娘を踊ったときもそんな髪型をしてたと思います。

この日は群舞も印象的でした。初日が悪かったわけではないんですが、ソリストたちの作り出す場面と群舞がよりシンクロしていたのは、2日目だったような気がします。

『イン・ザ・ナイト』

2日目もやっぱりとても素敵でした。沖さんの、リフトされたときの(だけじゃないけど)空中でのアームスの美しさ。それだけでウットリです。沖さんはリフトされ上手だと思っていて、空中でのフォルムがとても綺麗なんです。最初のほうで、上手から下手に走ってきて、沖さんをスッとリフトする場面。両足と両腕を前方にスーっと伸ばした沖さんが本当に綺麗で、それを安定感のあるリフトでふんわりと見せる秋元さんが爪先立ちをしていることで更に浮遊感を感じさせます。そのときの秋元さんの、ガッツリ引き締まったお尻もすごい。両腕・両足を伸ばした沖さんの前方への力と、爪先立ちをする秋元さんの上方への力の、完璧なタイミングが生み出す極上の浮遊感でした。まるで、風に乗って飛んでいこうとする沖さんをスッと捕まえたみたいなリフトで、とても印象的でした。その後も常にふんわりと沖さんを運ぶ秋元さん。沖さんの体重をまったく感じさせないリフトでした。瑞々しくて爽やかな、始まりのパ・ド・ドゥでした。

川島さんとアルバレスは、気品ある大人のパ・ド・ドゥ。初々しい最初の2人に比べ、より関係性は深まり、愛は成熟し、穏やかな中にも情熱を感じさせます。エレガントで温かみのある空気を作り出す2人のパ・ド・ドゥは、本当に素敵でした。川島さんは自分の世界を作り出すのが本当に上手い。こう書くと技巧的な巧みさに聞こえてしまうかもしれないんですが、そうではなくて、本当に世界観を作れる人なんです。しかも、意外とこちらは構えていなかったりして、急にスッと持っていかれて心を掴まれてしまうことがあります。そんな川島さんの世界観に、優しく寄り添うようなアルバレスがまた素敵でした。カーテンコールで、6人全員で前に出てくる場面では、パートナーの女性の手をスッと離して送り出した後、アルバレスが一番後ろまで下がっていたのも印象的でした。この日のカーテンコールでは、川島さんの手にキスをする場面も♪ パ・ド・ドゥの中盤、2人がカウントをずらしながら同じ振りをするところがちょっと好きです。

最後の2人は、愛のすれ違いを、あるいはやがて来る愛の終わりを感じさせるパ・ド・ドゥ。決心をしながらも揺れ動く心の女性と、まだ決心できない男性、そんな感じがしました。水香さんはとてもドラマチックに踊っていて、もしかしたら彼女も、こういう表現をもっとしたいと思ってるんじゃないかな〜などと、勝手に思いながら見ていました。神奈川公演で川島さんがどんな風に踊るのか、とても楽しみになりました。

『ボレロ』

2日目もオレリーの『ボレロ』はとてもよかったです。カーテンコールでリズムと並ぶオレリーを見て、彼女って思ったより小柄なんだなぁと思ってしまった。孤独な円卓の上は頼るものが何もなくて、拠りどころになるのは自分自身だけ。そんな寄る辺なさと闘っている少女のようでもありました。でも、弱い部分も含めありのままの自分を見せるって、ある意味強さだよなと。だからやっぱり、一心に踊るオレリーの姿に、この日も感動してしまいました。
格好つけないことって、すごく難しいと思うんです。でも、円卓の上では格好つけても何も格好つかない。自分自身が出るとは言うけど、自分自身を出すのってすごく難しいことですよね。円卓の上で等身大の姿を見せるオレリーは何も格好つけてなくて、私はそんな彼女を格好いいと思いました。

最初の4人のリズムが円卓を囲んだとき、私の見間違いでなければ、一人(確か岸本さん)と目が合ったオレリーが微笑んだんです。これまでにも笑みを浮かべたメロディはいたけど、それは「対、誰か」ではなく、自然に沸き上がる笑みだったと思います。リズムと視線を交わした瞬間に自然と笑みが浮かんだオレリーが印象的でした。
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2017年03月08日

東京バレエ団『ウィンター・ガラ』2017年2月22日

2月の東京バレエ団<ウィンター・ガラ>、初日の感想です。

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>
2017年2月22日(水)19:00 Bunkamuraオーチャードホール

「中国の不思議な役人」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ベラ・バルトーク  

無頼漢の首領:柄本弾
第二の無頼漢―娘:宮川新大
ジークフリート:森川茉央
若い男:伝田陽美
中国の不思議な役人:木村和夫

「イン・ザ・ナイト」 
振付:ジェローム・ロビンズ
音楽:フレデリック・ショパン  

沖香菜子−秋元康臣
川島麻実子−ブラウリオ・アルバレス
上野水香−柄本弾

ピアノ:松木慶子

 「ボレロ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

オレリー・デュポン

杉山優一、岸本秀雄、森川茉央、永田雄大

東京バレエ団<ウィンター・ガラ>へ行ってまいりました。
とっても楽しかったです♪ 東バのレパートリーとして定着した感のある「中国の不思議な役人」はタイトルロールの木村さんがやはり別次元に素晴らしく、初演の「イン・ザ・ナイト」も今だからこそ上演できたであろう文句なしのメンバー。そして、様々な思いを呼び起こしてくれたオレリーの「ボレロ」。私にとっては本当に贅沢なトリプル・ビルで、どの演目も堪能しました。

『中国の不思議な役人』

私の確認に間違いがなければ、、木村さんの役人以外は全員初役というフレッシュなキャストでしたが、みんな役にハマっていて、とてもよかったです。弾さんは首領のスーツがよく似合ってとても素敵。踊りも力強くて格好よかったです。あまり「悪」の部分が強くなかったのは、宮川さんの娘が自立している感じがしたからかも。2人の関係は、翌日の森川ー入戸野よりも対等に見えました。ジークフリートの森川さんは髪を明るいブラウンに染めて。これまでのジークフリートはブロンドに染めてた気がするんだけど、違ったかな。背も高いし逞しくて似合ってました。宮川さんの娘は、コート類を脱いでから正面を見据えて歩み出てくるところがあるんですが、女性らしい柔らかな歩き方がまず印象的でした。でも、とても男性的でもあって、男性性と女性性が捉え難く顔を出す、そんな印象がありました。企みのために女装はしてるけど、彼自身の性は男性だったように思います。そのせいか退廃的な感じはそれほどしませんでしたが、異質な感じはよく出ていて、宮川さんの娘もいいなと思いました。

木村さんの役人から本当に目が離せませんでした。あの、人ならざるもの感。派手に狂気を演じるわけではなく、徹底して抑制した表現による「人ならざるもの感」が、終盤の解放と相まって印象的です。爆発的に解放されてからの壊れっぷりは鬼気迫るものがあり、確実に前回の上演よりもパワーアップしているような気がしました。普通に考えれば身体条件的にはダウンしていると思うんですが、役人としては深化している、そんな感じがしました。とにかく危ない人(笑)。まさに渾身の役人だったと思います。

『イン・ザ・ナイト』

東京バレエにとっては初めてとなるロビンズ作品でした。とっても素敵でした! どのペアも三者三様で本当に素敵だった。今だからこそできた上演かもしれません。女性陣の成長、成熟、そして女性をあれだけ綺麗に踊らせることができる男性が揃ったこと。この2つが大きかったように思います。友佳理さんが上演を切望していたというのがわかる気がしました。東京バレエ団のレベルを引き上げる目標になるような作品。そして、得るものの大きい作品。その一つが「イン・ザ・ナイト」だったのかもしれません。
個々のダンサーのテクニックはもちろんですが、パートナリングや個々のパーソナリティが重要で、ただ踊れればいいだけではないのが難しいところなのかなと思いました。3組(6人)全員がそこをクリアしていたと思います。いや、もっと高みは目指せると思いますが、期待以上の素敵な上演に私はただただ感激してしまいました。

沖−秋元ペアが踊り始めた瞬間、「あ、これは成功かも」と思い、最後までその期待が裏切られることはありませんでした。
沖さんと秋元さんは、まさに心地良い「音楽」。非の打ち所のない陶酔感を味わうことができました。川島さんとアルバレスは、気品あるパ・ド・ドゥ。エレガントで知的なだけでなく、温かみがあって素敵でした。水香さんと弾さんは華があって情感豊か。それにしても、あのリフトをスピード感を失わずに、かつ滑らかにこなす弾さんてすごいなぁ、と。そんな弾さんも含め、男性3人が本当にサポート、リフトに不安がなく、かつ女性を綺麗に踊らせてくれて、そこの不安がなく見られるというのは大きいなと思いました。

今だからこそ上演できたと書きましたが、私は東バのファンなので、きっといつの時代に上演しても感激していたと思います。ただ、この安心感で見ることはできなかったかもしれません。今回この『イン・ザ・ナイト』を見て、友佳理さんたちの時代にも上演してほしかったと思ってしまいました。最初のパ・ド・ドゥは吉岡さん、2番目は井脇さん、最後は友佳理さん。きっと素敵だっただろうな〜、と。男性陣を考えるのが難しかったんですが、吉岡ー後藤、井脇ー高岸、斎藤ー木村という結論で落ち着きました。首藤さんがいたら、最初か最後のパ・ド・ドゥかな〜とか。まだまだ妄想が止まりません(苦笑)。

『ボレロ』

オレリーのメロディはシンプルで、清潔感があって、私は好きだなと思いました。突き抜けた感じはないかもしれないけど、余計な装飾がないのが私にとってはよかったです。「ボレロ」のメロディに関しては、演技や計算みたいなものが見えてしまうと私はダメなんです、、。それが実際に演技なのかどうかは、本人ではないのでわからないです。ただ、私がそう感じてしまうと、もう入り込めなくなってしまうという、誠に勝手な話なんですが、、、。それに、演技や計算があったっていいじゃないかという考え方も思います。結局は、私の好みに因るところが大きいのかもしれません。
オレリーはそれほど身体が柔らかいほうではないのかもしれません。年齢からしても体力的なピークは過ぎていると思います。でも、それだけが「ボレロ」ではないし、それだけが踊りではないということを感じさせてくれたような気がします。とは言え、若さや高い身体能力でバリバリ踊るボレロもカッコよくて好きなんですけどね。
いつもは宝石のようなオレリーですが、円卓の上には懸命に踊る飾らない一人の女性の姿があって、最後はなんだか感動してしまいました。彼女の踊るピナ・バウシュの『春の祭典』が見てみたくなるような、そんな舞台でした。
因みに、髪型が引っ詰めのポニーテールなところも潔いというか、シンプルに攻めてる感じが、私の中の彼女のイメージに合っていました。
posted by uno at 15:41| Comment(0) | バレエ公演2017 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする