7月21日(土)、井上バレエ団『眠りの森の美女』の公演に行ってまいりました。井上バレエ団の公演を見るのはこれが初めて。私のお目当ては、島田衣子さんのオーロラ姫です。バレエTAMAのガラ公演で見た島田さんのオーロラがとても素敵だったので(因みにそのときのパートナーは東バの平野玲さん)、是非一度全幕で見てみたかったんです。予想に違わぬ素晴らしいオーロラでした。
当初、王子役は英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、ティアゴ・ソアレスがゲストで踊るはずだったんですが、ティアゴは怪我のため降板。代役はパリ・オペラ座バレエ団のプルミエ、エマニュエル・ティボーが務めました。会場で配られた機関誌「あまりりす」によると、時期的にも代役を探すのは大変だったようです。海外ではバレエ団のシーズンが終わる時期で、ダンサーたちは各地のガラ公演に出演していたりヴァカンスに突入していたりするらしい。そんな中で、ティボーはご両親との旅行をキャンセルして今回の話を受けてくれたんだそうです。ティボー、良い人〜(♪)。
それ以外に当日の会場で発表されたのは、22日(日)にオーロラを踊るはずだった藤井直子さんの降板です。リハーサル中に負傷した彼女に代わって、島田さんが2日間オーロラを踊ることに。私が楽しみにしていた武石光嗣さんは青い鳥を降板。代役は新国立劇場バレエ団の江本拓さんでした。
井上バレエ団 7月公演
『眠りの森の美女』プロローグ・全3幕
2007年7月21日(土)18:00 ゆうぽうと簡易保険ホール
振付:関直人
美術・衣裳:ピーター・ファーマー
◆主な配役◆
オーロラ姫:島田衣子
王子:エマニュエル・ティボー
王:本多実男
王妃:佐藤深雪
式典長:大谷哲章
リラの精:鶴見未穂子
カラボッス:金田和洋
松の精:宮嵜万央里
桜の精:田川裕梨
カーネーションの精:綱島郁子
歌鳥の精:鈴木麻子
とねりこの精:鈴木直美
第1幕
ワルツ(村の娘と若者)ソリスト:宮嵜万央里、江本拓
嶋田涼子、大島夏希、加藤健一、堀口晃二朗
オーロラの友達:鈴木麻子、横山美樹、綱島郁子、吉本奈緒子
4人の王子:井上陽集、中尾充宏、原田秀彦、増田真也
第3幕
赤頭巾:長谷川園
狼:加藤健一
猫:宮嵜万央里、井上陽集
青い鳥に魅せられた王女:西川知佳子
青い鳥:江本拓
指揮:堤俊作
演奏:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
バレエ団の雰囲気も良く、とても楽しい公演でした。ダンサーの皆さんは男女とも、優雅でおっとりしているんです。踊りもとても丁寧で印象が良かった。指先まで丁寧で綺麗だし、女性陣のポワントも足音が気にならない。全体に、ほんわかと上品な感じのするバレエ団でした。ちょっと体型にバラつきがあるかなぁとは思いましたが、それは仕方がないか、、、。
なんと言っても、お目当ての島田さんが本当に素敵でした。舞台に姿を現したときの、あの輝きとオーラ。しかも、幕毎にその色合いを変えます。1幕のローズ・アダージオでの可憐さ、2幕の幻影の場でのしっとりとした美しさ、そして3幕のグラン・パ・ド・ドゥでの眩しいくらいの輝きと幸福感。どこに於いても共通するのは、彼女の持つ芯の強さ、凛として清潔感のある佇まいです。ほっそりとした華奢な方なんですが、その踊りも存在感もとても力強くて、「格好良いな〜」と思いながら見ていました。隣で踊っているティボーの方が「可愛いな〜」と思ってしまう感じ。
とても印象的だったのはローズ・アダージオでの彼女です。まず、ピーター・ファーマーのデザインという衣裳が可愛い。淡いピンクで、胸元とチュチュにパステルカラーの小花(刺繍だったかも)。そして、肩から手首までが透ける素材のふんわりした長袖で、手首でキュッと絞られているのがとっても可愛いんです。ローズ・アダージオでの島田さんは、とても情感豊かに踊っていました。16歳の誕生日を迎えた喜びと、まだ少女の面影を残した無邪気な可愛らしさ。彼女に結婚を申し込むためにやって来た4人の王子に対する、恥じらいと戸惑い。そしてそれ以上に、16歳のオーロラの胸のトキメキが抑えられないほどに溢れていて、それが終盤に向けてギュッと凝縮されて高まっていくのが見事でした。少女の胸の高鳴りが聞こえてきそうなほど感情豊かな表情に、見ているこちらまでジ〜ンと感激してしまいました。
2幕の幻影の場では、淡い水色の衣裳。こちらも胸元とチュチュの小花が可愛い。2幕の島田さんのオーロラは、1幕とガラリと違う、たおやかでしっとりとした、正に幻影の美しさ。そして、王子が一目惚れするのも頷けるような、ほんのり魅惑的な空気を漂わせていました。それは官能とか色気とかではなくて、幻影のはずのオーロラに意志が感じられたからだと思います。リラの精が見せた幻影というよりは、オーロラ自身の「私を助けに来て」という心が感じられたんです。
3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは、清々しいくらいの輝きを放っていました。衣裳は白。見た目の可憐さとは裏腹な、とても力強いすっきりとした踊りをする島田さん。安定したクリアなポワントワークと指先まで輝くような踊りにウットリしました。1幕とも2幕とも違う、女性として輝くばかりに成長したオーロラの姿を見せてくれた。そして、ティボーと2人で作り上げた幸福感が、舞台をいっぱいに満たしていたと思います。
王子役のティボーは2幕で登場。登場した途端「可愛いーーー!」と心で叫びましたよ。プログラムによると1974年生まれですから、既に33歳か34歳です。到底30過ぎには見えない若々しさとピュアな可愛らしさ。クルクルの黒髪に、大きな優しい瞳、裏表のなさそうな素直な笑顔。本当に可愛かったです。そして、柔らかな踊りは隅々まで丁寧で正確。均整のとれた身体が切り取る空間は広がりがあって、ラインにも独特の甘さがあり、良い踊り手だなと思いました。急遽決まった代役だった訳ですが、そんなことは一切感じさせず、島田さんとのパートナーシップにも不安はありませんでした。
ティボーの衣裳がとても素敵だったので、これは彼の持ち込みなのかなと一瞬思ったんですが、ピーター・ファーマーの美術・衣裳と大々的に冠しているくらいだから、井上バレエ団の衣裳なんでしょうね。グラン・パ・ド・ドゥの白の衣裳も好かったんですが、2幕で着ていた渋いブルーグレーの鈍い光沢のある衣裳がとても素敵でした。黒髪のティボーにも似合っていたし。
なんと言っても、大きな瞳がクルクルとする表情が本当に可愛い。そんな表情も、そして踊りもパートナーへの気配りも、全て一生懸命で真面目に取り組んでいるのが伝わってきて、好感度は非常に高かったです。
印象的だったのは、カラボッスの金田和洋さん(見た目はちょっと美輪明宏モードのカラボッス)。とても存在感があって、手が語る人です。
リラの精の鶴見未穂子さんは、やや回転系に不安定さがありましたが、リラの精としての大らかな雰囲気は十分で、とても素敵でした。
妖精たちの中で印象に残ったのは、松の精の宮嵜万央里さん。安定感のある踊りと、可愛らしい雰囲気。初めて見るバレエ団なので、誰が誰やら見分けるのが大変だったんですが、彼女はどこにいてもすぐに目が行くダンサーでした(私にとっては)。松の精の他に、1幕のワルツで江本拓さんとソリストを、3幕では猫を踊っていました。
その江本さんは、1幕のワルツでまず登場したんですが、流石に周りの男性陣よりもパッと目を引く力がありました。
4人の王子でちょっと気になったのが、おそらく井上陽集さん。確かインドっぽい装いの王子だったと思うんですが、ジェントルで優しいサポートと、ちょっと暗めの雰囲気が好きでした。余談ですが、4人の王子って、必ず一人ちょっと怪しい香りのする人がいません?そして私は必ずそういう人に惹かれてしまうんですよね、、、。井上さんは3幕で猫も踊っていて、これがまたジェントルで落ち着いた大人の猫でして、嫌いじゃなかったです。
会場では公演プログラムの他に、「井上バレエ団 35年のあゆみ」という2003年に発行されたパンフレットが売られていました。プログラムとセット価格になっていたので、思わず買ってしまいました。なかなか面白かったです。
創設者の井上博文さんは宣伝美術にもこだわる人だったそうで、雑誌などで気に入った作品を見つけると、作者を訪ねていってデザインを依頼したりもしたんだそうです。そこに名を連ねているのは、蕗谷紅児、宇野亜喜良、藤城清治、みつはしちかこ、東啓三郎、小島功など。
公演記録も写真が満載で見応え有り。海外からのゲストも一覧になっているんですが、なかなか興味深いゲスト陣でした。私が気になったのは、ヨラン・スヴォルベリとクーン・オンジア。確かベジャールのところで踊っていたダンサーですよね。それからデンマーク王立バレエ時代のロイド・リギンズ。リギンズがゲストで踊った『くるみ』の王子の写真が格好良いです。スティーブン・ヒースコートは、今年のオーストラリア・バレエ団の公演チラシで見覚えが。
次の井上バレエ団の公演は12月の『くるみ割り人形』。ゲストはオーストラリア・バレエ団の藤野暢央さんです。
■井上バレエ団 12月公演
ピーター・ファーマー美術による『くるみ割人形』
12月15日(土)17:00
12月16日(日)15:00
会場:文京シビックホール・大ホール
まだバレエ団のサイトにもぴあにも出ていませんが、プログラムの裏表紙にひっそり宣伝がありました。いつ発売なのか気になるところです。
2007年09月06日
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こういう感想が持てる舞台になかなか出会う事ができない私です。ガラ公演に行く事が多いからでしょうか??ダンサーの世界観が出ている感じでいいですね。
それにしてもヨラン・スヴォルベとクーン・オンジアの名前ですぐにベジャールが出てくるなんて、さすがunoさん!!ブログは2005年からなのに、いったいいつからバレエを見ているのかしら?とうなってしまいました。
明日(もう今日ですね)私は「ジゼル」を見に行きます。楽しみです。
どうやら台風は通り過ぎたみたいですね。よかった〜。
確かにガラと全幕は違う楽しみがありますよね〜。海外のダンサーが出演するガラ公演だと、思わず期待が高くなってしまうんですが、国内のバレエ団の全幕だと「これくらい見せてくれれば大満足よ〜♪」という感じで、少し見る目が甘くなっている部分もあるかも…。
ヨランもオンジアも、映像と写真でしか見たことないんですよ〜。まだバレエを見始めてから5・6年です、、、。2人とも実際に見てみたかったなぁ…。
私も今日は「ジゼル」です。まだ電車が通常通り動いていないみたいで、ちょっと不安です〜。