2020年01月15日

東京バレエ団 新制作『くるみ割り人形』12月13日

東京バレエ団 新制作『くるみ割り人形』全2幕
2019年12月13日(金)19:00 東京文化会館

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:マリウス・プティパ(E.T.Aホフマンの童話に基づく)
改定演出/振付:斎藤友佳理
    (レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
装置・衣装コンセプト:ニコライ・フョードロフ
装置:セルゲイ・グーセヴ、ナタリア・コズコ
照明デザイン:アレクサンドル・ナウーモフ
衣装デザイン画制作:オリガ・コロステリョーワ
衣装技術:ユリヤ・ベルリャーエワ

マーシャ:川島麻実子
くるみ割り王子:柄本弾
ドロッセルマイヤー:森川茉央
ピエロ:鳥海創
コロンビーヌ:金子仁美
ムーア人:海田一成

【第1幕】
マーシャの父:永田雄大
マーシャの母:奈良春夏
弟のフリッツ:加藤くるみ
ねずみの王様:杉山優一

【第2幕】
スペイン:伝田陽美、宮川新大
アラビア:三雲友里加、ブラウリオ・アルバレス
ロシア:加藤くるみ、池本祥真、昂師吏功
中国:岸本夏未、岡崎隼也
フランス:中川美雪、工桃子、樋口祐輝
花のワルツ(ソリスト):
  政本絵美−岡ア 司、上田実歩−杉山優一
  浦由美子−南江祐生、菊池彩美−和田康佑

昨年の12月、東京バレエ団の新制作『くるみ割り人形』を3日間、見てまいりました。
振付のクレジット問題を未来に残さないという意味合いもあったらしい今回の新制作。主演のダンサーが1幕の少女から最後のグラン・パ・ド・ドゥまでを一貫して踊るという大好きなワイノーネン版をベースに、新たな演出を加え、衣装・装置は全て一新。なくなってしまって残念な演出部分もありましたが、見ごたえのある舞台に仕上がっていました。今年の12月には既に再演も決定しているので、もしかしたら更にブラッシュアップする可能性もあるのかな〜と。今回の新制作では、団員の岡崎隼也さんとブラウリオ・アルバレスも振付に加わったらしく、コレオグラフィック・プロジェクトでも作品を発表している2人が、こういう形で活躍できるのはとても素敵だなと思いました。

初日を踊ったのは川島さんと弾さんでした。念願の2人の舞台♪ アクロバティックなリフトも完璧。踊りも、交わす視線も、愛情と信頼感に溢れていて、とっても素敵でした。よく考えたら、「スプリング・アンド・フォール」や「イン・ザ・ナイト」で一緒に踊る姿は見ていますが、古典全幕って何気に初共演ですよね。これからも一緒に踊ってほしいな〜と思ってしまいました。

川島さんは1幕の少女マーシャもとっても自然。決してやりすぎず、それでいてちゃんと少女らしさも感じさせる役作り。心優しく、少し大人びた美しい少女もとても素敵だったけど、圧巻なのはグラン・パ・ド・ドゥでした。特にヴァリエーションでは、丁寧で繊細、キラキラした踊りはもちろん、視線の使い方や繊細に移り変わる表情まで本当に素晴らしかった。伸ばした指先へ投げる視線や、ふと落とした眼差しの美しさ。音楽や踊りの綾に乗せて移り変わる表情は、実に繊細で美しく、決して一言では言い表せない様々な機微を表現していました。微笑み一つをとっても決して1種類ではなく、時おり見せる憂いを帯びた表情もまた美しく、、、。あのヴァリエーションの時間は、なんて言うか、もう「川島劇場」でした。
弾さんとの息の合ったアダージオやコーダは幸福感に溢れ、自然と心が高揚するのを何とも心地よく感じました。
弾さんも伸び伸び、生き生き、そしてキラッキラの笑顔でとってもよかった♪ そして何と言っても頼りがいがある。サポートやリフトが安心なのはもちろん、その存在自体が頼りがいがあるというか。「そうそう! こういう弾さんが見たいのよ〜♪」という、まさにそんな弾さんでした。

奈良さんの母は美しいし、永田さんの父もジェントルで優しげ。金子さんの人形っぷりも可愛かった♪ 伝田さんと宮川さんのスペインはキレッキレ。こういう組み合わせもあったのか〜と。というか、宮川さんの幅が広がったのかもしれない。入団当初よりも、「対相手」の踊りがとてもよくなったので(偉そうですみません)。三雲さんとアルバレスのアラビアも美しい。アラビアは、新たに4人の女性ソリスト付きになっていました。メインの2人はエメラルド、4人の女性はトパーズの色合い。そして、ロシアの池本さんがすごい。もう笑っちゃうくらいすごかったです(♪)。連続開脚ジャンプとか、腕と脚の残像で何がどうなってるんだか、という(褒めてます)。そんな池本さんに飲まれていない昂師さんもすごいな、と。加藤さんも可愛いし、明るい3人で楽しかったです。中国は岸本さんと岡崎さんという鉄板の2人。フランスの中川ー工は、2人ともポーズが美しく、安定した踊り。そして可愛くて眼福♪ 樋口さんもよかったです〜。

新しい装置は、奥行きが印象的でした。雪の場面の両サイド幕は、木と木の間がくり貫かれていて、出捌けする雪の精たちの姿が木立の合間に見え隠れするのがとてもよかった。クリスマスツリーが大きくなる場面では、既にツリーのてっぺんが天井に届いているので、どうやってこれ以上大きくなるのだろう?と思ったら、部屋全体がニューっと伸びた! ツリーは確かに大きくなっているのに、いつまでも天井に着かなくて、「あれ?おかしいな?おかしいな?」と思って見ていたら、部屋も伸びていたという。ちょっと不思議な感覚に襲われて、面白かったです。

あとは簡単に、新しくなった演出を中心に場面進行などを。

【第1幕】

道行きの場面は幕前ではなく、紗幕の向こうに変更。紗幕には、降りしきる雪が映し出されています。新たに下手にマーシャの家の門があり、メイドの女性が出てきて掃き掃除を始めます。やがて、パーティーの客たちが上手から登場。遠くから駆け寄りメイドに抱き着く少女などもいて、「ああ、こうして毎年集まっているのだなぁ」などと、何気なく背景を感じさせるのが上手いな、と。
パーティーの場面では、新品の(?)靴を披露して踊る女性あり。伝田さんと奈良さんが担当。そのパートナーは腰の悪い老人。踊りすぎて「おっとっと、腰が、、、」という場面は健在。演じていたのは山田さん(♪)。
ドッロセルマイヤーは以前のジェントルマンな感じから、ややコミカルな演出に。替え玉を使って、あちこちから登場するという演出あり。今ツリーの後ろから顔を出したかと思ったら、上手から替え玉が後ろ姿で登場したり、という感じ。
人形たちは以前と変わらず。以前はドッロセルマイヤーが運んでいたムーア人が、自分で人形劇のBOXに戻る姿にちょっと笑った。

片づけをしていたドッロセルマイヤーが、くるみ割り人形とネズミの王様の人形を、何気なく人形劇のBOXの表に飾ります。誰だったか忘れてしまったんですが、何気なさを装いつつ、マーシャに気づいてほしくて置いたような演技をしたドッロセルマイヤーがいたんですよね。ドロッセルマイヤーが仕掛けたんだな〜ということがわかる。あれ、よかったな〜と。アルバレスだったかな〜。
くるみ割り人形に惹かれたマーシャは、「これが欲しい」とドッロセルマイヤーに訴えます。でも、「君は女の子の人形を持っているでしょ?」とドッロセルマイヤー。迷うマーシャを横目に見ながら、実はワクワクしながら待っているドッロセルマイヤー。女の子の人形ではなく、くるみ割り人形を選ぶマーシャ。
くるみ割り人形をダンサーが演じる演出はなくなってしまいました。あれ、結構好きだったんだけどな、、、。誰が演じるかも楽しみだったし、壊れた部分が直ったかと思ったら「グニャリ」と崩れてしまう演出とか好きでした。あと、人間が演じているせいか、クララ(当時)の優しさがより心に沁みた気がします。

パーティーが終わると再び道行きの場面のセットに戻り、マーシャの家の門を出て帰路につく人々の様子が描かれます。

場面が変わってマーシャの寝室。ちょっとだけ『ペトルーシュカ』のセットみたいと言うか、くの字型の天井の高いセットです。まだパーティーの余韻が覚めぬマーシャ。しかし、窓の外は何やら不穏な天候に、、。マーシャが眠りにつくと、ベッドの下から子ネズミが登場。マーシャがきちんと揃えて脱いだスリッパをポーンと蹴飛ばすいたずらっ子。しかも、片方のスリッパを持って行ってしまいます。この子ネズミが可愛かった♪ 目を覚ましたマーシャは、子ネズミの後を追ってリビングへ。

リビングに降りると、昼間の人形たちが現れ、ドロッセルマイヤーが登場し、という全体的な流れは同じ。クリスマスツリーが大きくなる場面では、ツリーと一緒に背景幕の部屋も上に伸びる演出が。暖炉や柱時計も上に伸びる形で大きくなります。イスも巨大化。昼間、乱暴なフリッツたちから逃げるように椅子に飛び乗って身を縮めたマーシャが、ネズミたちから逃げるときにも同じように椅子に飛び乗るという、演出が繋がっているのがよかった。イスは巨大化したけど、クッションはそのまま(笑)。クッションが大きくなっちゃったら、マーシャがブン回せないですもんね。
ネズミたちは暖炉から登場。兵隊たちは柱時計から登場。くるみ割り人形とネズミの王様の戦いが佳境を迎える中、さっきの子ネズミがスリッパを持って下手のほうから登場。舞台の前を横切って上手に抜けようとしたところを、上手にいたドロッセルマイヤーに「こら!」と怒られ、思わずスリッパを落としていきます。そのスリッパを使って、ネズミの王様をやっまつけるマーシャ。あの子ネズミに、ここで大事な役割があるとは。
くるみ割り人形が王子として顔を見せるシーンは、前のほうが感動的だったような気が。続くパ・ド・ドゥは相変わらず感動的で素敵。パ・ド・ドゥの最後、マーシャを頭上高くリフトして下手に退場するのも変わらず。力持ちな弾さんは、肘を曲げて少し低めにリフトした状態から、スーッと腕を伸ばしてゆっくりと最高到達点までリフト。まるで、マーシャの川島さんがそのまま上空へ昇っていくようで素敵でした。因みに秋元さんは一気にグッと頭上高くリフトして退場。宮川さんは、弾さんよりももっと低く、一旦自分の胸の前あたりにマーシャのを持ち上げます。つまり脇は締まっている状態。そこからスーッと持ち上げるパターン。弾さんのように中途半端な位置から持ち上げるよりは、力が要らないかも。あのやり方は上手いなと思いました。

雪の場面では雪は降らず。後半、背景幕の奥にだけ雪が降り始めます(ダンサーは踊らない部分です)。そして、ほとんどの踊りが終わったラスト、舞台上にも雪が舞い降り始めます。たくさんの雪が降るのも素敵だけど、ダンサーが滑らないかと心配になるので、これはこれでいいと思いました。雪がこんもり積もった木々が描かれたセットは、奥行きがあってとてもよかった。最初にも書いたんですが、サイド幕の木の間が切り取られていて、その隙間から雪の精たちが出捌けするのが見えるんです。妖精たちが森の中で戯れている様子を垣間見るようで、とても素敵でした。

【第2幕】

お菓子の国へ向かう船は、立派なゴンドラになっていました。マーシャとくるみ割り王子、コロンビーヌ、ピエロ、ムーア人が一つのゴンドラに。後からネズミたちの船が追ってきます。ネズミの王様が子分たちの頭を望遠鏡でポカスカ叩くのが好きだったんですが、ちょっと控えめなポカスカになってました。でも、急かしてた(笑)。紗幕の上手上空にお菓子の国が小さく描かれていて、これから向かうお菓子の国が遠くに見えている感じになっていました。マーシャたちを乗せたゴンドラは、袖の少し手前から上昇し始め、そのまま昇っていくように袖に消えます。ただ、下手サイドから見ていると、袖に入ったところで止まる様子が見えてしまいましたが(苦笑)。

各国の踊り手たちが、背景幕いっぱいに描かれたクリスマスツリーの小窓から顔を覗かせます。小窓もオーナメントの一部のよう。披露する順番に上に登っていきます。友佳理さんのイメージの中にあった、「クリスマスツリーの中を登っていく」というのは、これだったのか〜と。窓からマーシャに挨拶するのは、各国の踊り手の「替え玉」たちです。踊る順番が来ると窓から消え、すぐに舞台上に登場するという、替え玉を活かした演出になっていました。

お菓子の国まで追ってきたネズミたち。ネズミの王様を追って消える王子。以前の演出では、クララ一人を残して全員が捌けてしまいます。舞台にポツンと取り残され、泣き出すクララ。あの、途方もないポツン感。世界にたった一人取り残されたような切ないほどの孤独感がとても好きだったんですが、新制作ではコロンビーヌ、ピエロ、ムーア人が残り、マーシャを励まし続けます。あの「ポツン」がなくなってしまったのは残念。ネズミの王様を倒し、その証に王冠を剣に刺して戻ってくる王子。恭しくマーシャのスカートにキスをするのは変わらず。
各国の踊りの最中、マーシャと王子は上手で見守っています。捌けるときはマーシャたちに挨拶して上手に退場。

花のワルツになると、クリスマスツリーの背景が上がっていき、宮殿のバルコニー(庭園?)を描いたような背景幕が登場。わざわざ花のワルツでセットを変えるとは、手が掛かってるな〜と。終盤の、男女が交互に並んで前進しつつ、女性がポンっとジャンプするあの振付は、なくなっていました。いや、あの動き、ちょっと印象的だったもので。

そしてGPDDの後の大団円。最後に後ろ姿だけ見せたマーシャは替え玉(本人はエピローグのための着替えへ)。4人の男性にリフトされた王子にピンスポットが当たって、幕。2日目だか3日目だか、ピンスポットがずれて王子に当たらず、慌てて合わせるというプチ・ハプニングがありました。『ボレロ』の冒頭、毎回間違いなく片方の手の先にだけスポットを当てられる東バにしては、珍しいな〜と思ってしまいました。

エピローグ。目覚めたマーシャが、ベッドに置いてあったくるみ割り人形を手に取り、舞台中央で愛おしそうに抱きしめる姿で幕が下ります。



【ツイッターより】
東バ新制作『くるみ』初日終了。たのしかったー♪ 念願の川島さんと弾さんの全幕。アクロバティックなリフトも完璧。踊りも、交わす視線も、愛と信頼感に溢れていて、とっても素敵でした。
あれ? もしかして、川島さんと弾さんの古典全幕って、何気に初?
東バ新制作『くるみ』。印象的なのは奥行き。雪の場面のサイド幕は、木と木の間がくり貫かれていて、出捌けする雪の精たちの姿が木立の合間に見え隠れするのがとてもいい。
東バ新制作『くるみ』。クリスマスツリーが大きくなる場面。セットのサイズ的に、あまり大きくならなそうだなぁと思って見てたら、家全体(のセット幕)もニューっと伸びた!
東バ新制作『くるみ』。GPDD、川島さんのヴァリは、丁寧で繊細、キラキラした踊りはもちろん、視線の使い方や繊細に移り変わる表情まで、本当に素敵で、もう何て言うか、「川島劇場」だった。
弾さんも伸び伸び、生き生き、キラッキラの笑顔でとってもよかった♪ そしてなんと言っても頼りがいがある。サポート・リフトが安心なのはもちろん、その存在自体が頼りがいがあるというか。「そうそう! こういう弾さんが見たいのよね〜♪」という弾さんでした。
東バ新制作『くるみ』。ちょっと残念なのは、ダンサーが演じるくるみ割り人形が出てこなくなっちゃったこと。あの役、結構愛着があったんですよね、、、。でもあれ、珍しい演出だったのかな〜と。
posted by uno at 14:35| Comment(0) | バレエ公演2019 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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