2010年12月20日

『M』を少し。

『M』、美しい海の幕開きと幕切れが素晴らしかったです。海に始まり、海に帰るのは覚えていたんですが、こんなに美しかったとは。『バレエ・フォー・ライフ』の幕開き&幕切れも、比類ない美しさだと思っているんですが、『M』もそれに負けないくらい美しいです。純粋に構成・演出の美しさもあるんですが、それだけでなく、そこに漂う心も込みの美しさです。亡き者を偲ぶ、だけどその前向きさが優しくて美しい、『バレエ・フォー・ライフ』の幕開き。それに対して『M』は、どこか白昼夢のような、ほんの少しの怖さを孕んでいます。意志を持っているかのように揺れる波のまにまを、老婆に手を引かれた少年が歩く、真昼の白昼夢。海の女性たちが歌う童謡の、無機質に揃った声。彼女たちの甲高い笑い声は、どこか遠くから聞こえてくるよう、、。不思議で、何故だかわからないけど少し怖い夢のような、あるいは少年の夢想を垣間見るような場面です。あれは、ミシマ少年の見ている夢だったのでしょうか、、、。女性たちの海は、『ザ・カブキ』のラストシーンと重なりました。浄化された魂となって、一人、また一人と昇天していく四十七士たち。彼女たちもまた、人間の魂を預かって昇っていく泡のように見えたんです。四十七士と海の女性たち、その存在は対極かもしれないけど、なんとなく2つのシーンが重なって思い出されました。

真っ暗闇の中に響く、朗々とした男性の声。やがて海の女性たちの姿が静かに現れます。波の音が響く…。青緑色の衣裳を着て、童子のような前髪をしたヘアスタイルの女性たち。とても不思議なスタイルなんだけど、それが冒頭の世界観を演出する手助けにもなっているような気がします。海のセンターを務めたのは矢島まいさん。とても美しかったです。彼女の少し個性的な美しさが活きていたなぁ、と。矢島さんはすごく好きなんですよね〜。彼女のオデットが見てみたいと、常々思ってるんですが、、。
ミシマ少年の切腹シーン。ピアノ伴奏によるワーグナー「トリスタンとイゾルデ 愛の死」が流れる中、楯の会の制服の男性群舞が登場します。そして、それに混じって海の女性たちが現れる。こちら側とあちら側が重なるような瞬間です。
最後、ピョンと起き上がったミシマ少年が、桜の花びらが絨毯のように敷き詰められた舞台を、冒頭と同じように元気に飛び跳ねます。やがて海が舞台を満たし、再びミシマ少年は祖母に手を引かれ歩いていく。散った桜の花びらが水面をいっぱいに満たしているような、美しい海のラストでした。
posted by uno at 13:11| Comment(0) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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