2010年12月20日

とりあえず本当に雑感。

東京バレエ団『M』、2日目の公演が終了しました。幕が下りても、会場を出ても、そして今も、予想以上に余韻が続いております。5年前にも見ているんだけど、情けないことにほとんど忘れてました、、。いや、大雑把なことは覚えてるし、見ればいろいろ思い出したけど、改めて思ったのは「こんなにいい作品だったんだ〜」ということです。美しくて鮮やかで、そして哀しくて優しい。『ザ・カブキ』も見る度にいい作品だなぁと思うんですが、『M』もしみじみといい。日本がテーマという意味では『ザ・カブキ』と並べられるかもしれないけど、視線的には『くるみ割り人形』(ベジャール版)に近いなぁ、と。一人の少年に向けられる、限りない優しさ。ベジャールの愛情の深さに改めて心打たれます。
それにしても『M』は、「間」のバレエだなぁ、と。作品全体を心地良い緊張感で結ぶ「間」。その美しい「間」が、この作品のぴんと張り詰めて澄んだ空気に繋がっているのかもしれません。

十市さんは本当に素敵でした。まずもって、7年のブランクがあるとは思えない踊り。そりゃあ、初演の1993年や、現役で踊っていた頃に比べたら、変化はあるのだろうと思います。現役で踊り続けているダンサーだって、それだけ月日が流れれば肉体的な衰えは避けられないはず。それなのに、7年のブランクがある十市さんがあれだけ踊れるって、どんだけすごいんだ、と。おそらく、基礎的なレッスンは日課的にやっていたのだろうとは思いますが、それにしたって驚異的なことだと思います。現役のダンサーと一緒に踊っても違和感がないなんて。ザンレールの着地が毎回寸分違わず綺麗な5番に納まる様子に、惚れ惚れしました。
場が進むにつれ、十市さんの顔が若返っていくような気がしました。最初こそ、あぁやっぱり今の十市さんだなと思ったんですが(当たり前ですが)、その印象が次第に消えていったんです。涼やかな顔立ちが生き生きと輝きはじめ、年齢不詳な精悍さを増していった。肉体的には辛くなるはずなのに、その顔はどんどん若返っていくのが印象的でした。

自決した三島少年を、そっと肩を押して横たえる場面で、十市さんが何とも言えない表情をしていたのが忘れられません。もちろん、自ら命を絶った詩人を見送るわけですから、物語的にも感情を揺さぶられる場面ではあります。でもなんだか、そこにはシの感情だけでなく、十市さんの感情も入っていたのではないかと思えてなりませんでした。もうすぐ物語が終わる。この舞台が終わってしまうという思いが、、、。もちろん、これは私の勝手な想像ですが。
これまでに、いくつかの引退公演を見ました。でも私にとっては、今回の十市さんの引退公演のほうが胸に迫るものがありました。舞台を見ている回数は、圧倒的に少ないのにも関わらず、です。それは、十市さんのベジャールに対する思いが少なからず私にも理解できるからかもしれません(おこがましいですが、、)。もちろん、これが引退公演だからといって、十市さんがバレエやベジャールさんとお別れをするわけではありません。私にしても同じこと。それでも、もう一度ベジャール作品を踊るという喜びと、同時にベジャールの作品を踊るのはこれが最後という思いは、一体如何ばかりであろうかと思うと、複雑な思いが込み上げずにはいられませんでした。

初演キャストのイチ、ニ、サン、シを見るのは、おそらくこれが最後だろうと思います。なんかもう、このキャストで見られたら、これが最後でもいいかもしれないと一瞬思ってしまいました。でも、「いやそうじゃない」と、思い直しました。確かに、これはこれで最後です。このメンバーのこの『M』は、私の中で終わりました。次に『M』を見るときは、それは新しい『M』です。もちろん、ベジャールの意志を引き継いだ『M』。私はそれを楽しみに待ちたいと思いました。なーんて、案外もう一回くらいイチ、ニ、サンは見られたりして。そうなってくれたら、そんなに嬉しいことはないんですけどね、、(結局やっぱりもう一回見たいと思っている…)。
posted by uno at 02:31| Comment(4) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私はMは初めてでしたが本当に感動しました。
昨日の方がより濃度が濃くダンサーのテンションも高かった気がします。

十市さん、渾身の舞台でしたね。
長いブランクのあとでこんなふうに引退するなんてなかなかできることではないと思います。
そういう場を与えられ、踊りきるということは。

あとやっぱりベジャールってすごい。。。と思いました。
舞台美術や衣装コンセプトもベジャールさんなんですよね。
あの弓道の間の後のセバスチャンの登場のメリハリとか、海の中で踊っているようにしか見えない演出とか。。
あとなんといっても美しすぎる花吹雪。。

音楽の使い方も感動しました。黛さんの音楽とシャンソンがこんなにも綺麗にひとつになるなんて

言葉で表しきれなくて纏まらずすみません。

Posted by kiki at 2010年12月20日 12:27
kikiさん、こんばんは。
『M』、本当にいい舞台でしたね。もっと頻繁に上演してくれればいいのに〜と思ってしまいました。
十市さんは本当に渾身の舞台でした。7年ものブランクを挟んでバレエダンサーとして復帰するなんて、他に経験したダンサーはいないのではないでしょうか。十市さんの踊りというか、その渾身の舞台姿のすべてに、何とも言えない感動が込み上げました。
私も、やっぱりベジャールってすごいと思いながら見ていました。
あの世界観は絶対に誰にも創造できないですよね。
花吹雪も本当に美しかったです。あの、ドサーッとすごい量で落ちてくるのがいいんですよね〜。見ている私の感情も、バーっと弾けるような感じがして。
また次の上演は5年後になってしまうんでしょうか。もっと早く見たいです〜、、、。
Posted by uno at 2010年12月21日 22:49
たびたび失礼します。

そう、桜は吹雪というより滝みたいでしたね。私はどーっと流れ出る血を連想しました。
美しいけれどショックでしたね。
でもほんとに綺麗でした。。

血といえば少年から流れ出る赤い血を
シやセバスチャンや他キャラクターたちが順々に手繰り寄せてひとつになって消えてゆく・・・
あの感じはなんともいえない切なさでした。
シャンソンが場面にこれ以上なくマッチしてましたね。
ほんとにベジャールっていいな、と思いました。

長瀬さんのセバスチャンは長い手足が気持ちよさそうに伸びていたし、
鹿鳴館の佐伯さん、竜太さんも珍しい組み合わせで佐伯さんファンとしてはちょっとおっと思いました。よかったです。
2日目キャストでは梅澤さんがよかったです。
梅澤さんは今回のMではところどころ光っていて嬉しかったです。
あと渡辺さんの海上の月も素敵でした。
渡辺さんの清楚な感じが好きなのです。

まだまだ書きたいことはありますがキリがないのでこのへんで(笑



Posted by kiki at 2010年12月22日 15:40
確かに! タイミングといい、あの桜の散り方は流れ出る血のようでもるかも。
ハラハラと散るよりも、あの場面では鮮烈な印象を残しますよね。
最後の赤いリボンを使った場面は、本当に何とも言えず切ないですよね、、、。黒子がリボンの端を少年の手にちょこんと結んでいくのが、なんだか妙に切ないんですよね〜。少年のなんとも小さな手が印象的で、、。登場人物がゆっくりと消えていくときには、置いて行かないでー、、、と思わずにはいられませんでした。
高橋さんが鹿鳴館で活躍してくれて、嬉しかったです。佐伯さんとの並びもよかったですよね。他にも見てみたいな〜、と。
梅澤さんもよかったです〜♪ 最近、どんどんよくなってますよね!
渡辺さんの海上の月は、彼女の雰囲気にピッタリでとても素敵でした。ラインも美しかった〜。
全員が『M』の感覚を強く覚えているうちに、再演してほしいなぁと思います。
Posted by uno at 2010年12月23日 23:06
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