2010年11月25日

BBL『80分間世界一周』【西宮】(11/19)

先週の金曜日(19日)、BBL『80分間世界一周』兵庫公演を見てまいりました。言うまでもなく、楽しかったです〜。ベジャールの作品、特に全幕もの(オムニバス的ではあるけれども)は、とにかく途中から「終わらないでー」と思わずにはいられません。『80分間世界一周』も、しばらく見ることはないんだろうなぁ、、、。

西宮のキャストは東京のファースト・キャストと同じ。唯一違ったのが、セネガルのソロです。東京のリズ・ロペスではなく、アランナ・アーキバルドが踊りました。

<イントロダクション>
無音のまま、静かに幕が上がると、レッスンの準備をしているメレンダ=旅人と、こちらに背を向けて立っているジル。ベジャールの声が響きます。あぁ、これから旅が始まるんだなぁと思う瞬間。レッスンの始まり、一つの作品の始まりは、いつでも旅の始まりのようなものなのかもしれない、と思ったり。「春の祭典」冒頭の男性群舞のリハーサル。この日ジルは、誰の手直しもすることはありませんでした。

<セネガル>
東京公演でちょっと気になっていたアランナ・アーキバルドがセネガルを踊りました(東京は3日間ともリズ・ロペス)。ルードラ出身のアーキバルドは、1992年生まれの18歳! 若い〜。もうすーごく可愛かったです♪ 出身地は書いてなかったんですが、彼女も少し肌が褐色っぽかったので、セネガルのソロを踊っても違和感はありませんでした。ちょっとポチャッとしていたロペスに比べ、アーキバルドはスレンダー。アフリカンなリズム感(韻を踏みたかったわけではありません)はロペスのほうがあったかもしれません。ちょっと上品なセネガルではありましたが、いきなり異国の女神が光臨したかのごとく雰囲気はアーキバルドのほうがありました。とにかくピッチピチの若い女神(♪)。可愛かった〜。
そのセネガルの女性と男性が腰を絡めるシーンがあるんですが、ルヴランが気合入りすぎで面白かった。「フォーッ!!」という雄叫びが聞こえてきました。周囲の男性陣もちょっと素で笑ってたような気がする(笑)。

<サハラ>
<エジプト>
鮮やかの緑のハーレムパンツに、同じくマントを羽織ったジュリアンが登場すると、空気が変わります。思わず「きたー!」と心の中で叫んでしまう。羽織っていたマントを取り、丁寧に折りたたんでメレンダに渡します。きちんと整えてから渡すのが、なんか面白いなぁと思ってしまうのは、私だけでしょうか。ジュリアンのエジプトは、陶酔感のあるソロ。音楽の含めそういう空気のある場面だとは思うんですが、あの陶酔感の一番の要因は、やはりジュリアンの存在ではないか、と。ずっと見ていたくなる場面です。

<ギリシャ>
イワノワのギリシャにあまり母性を感じないと言い続けてきたわけですが、この日は少し感じることができました。何が違ったのかはわかりません。でも、あぁこれなのかもしれないと思えたような気がするんです。「少し感じた」、それでいいんじゃないか、と。ここに登場する女性は、幼い頃の母の記憶なのではないかと思いました。まだ若く、美しく、母であり理想の女性でもある、その人。自分が幼ければ、当然母親の母親歴も短いわけで、その母性はまだ芽生えたばかりで、若さや美しさとない交ぜになった薫るような母性だったのかもしれない。しかも、ベジャールの中ではその姿で記憶が止まっているんですよね、、。
ギリシャの最後だったと思うんですが、レッスンウェア姿のダンサーたちが出てきて、スローモーションで踊る場面があります。旅人は舞台の下手に横たわっていて、波の音が響いている。あれは、スタジオのざわめきが彼に見せた、波間の夢だったのではないでしょうか。

<ヴェネチア>
ジルが「ヴェネチア!」と叫ぶと、ヴェネチアのシーンが始まるんですが、そのジルの声がやっぱり素敵なんですよね〜。大きな道化はムルドッコ、小さな道化はコジョカルだと思います。戯れる2人の道化と旅人。そして、カラフルなレオタードを着た男性たちの明るい踊り。ヴェネチアは本当に楽しいです。
一転してロスのソロは、魅惑的な陰を持った踊り。大っきな道化と小っちゃな道化が見守っているのが、やっぱり面白い。ちょっと不思議な動きも、ロスが踊ると変じゃない。それどころが、あぁベジャールっぽいな〜と思います。
「恋する兵士」では、ソロの那須野さんはもちろんだけど、楽しそうにしている周囲の面々もついつい見てしまいます。ここでも楽しげなルヴランが気になる(♪)。シャルキナどこにいても何をしてても可愛い。今回でシャルキナのイメージが少し変わりました。これまでも可愛いとは思ってたけど、普段はちょっとクールな女の子なのかな思ってたんです。でも、素の彼女はどこか無邪気で、とても可愛らしい振る舞いをするんだな〜、と。『アリア』のカーテンコールでジルを呼びに行くシャルキナが、なんだか妙に可愛いんですよね。あと、「恋する兵士」の場面でシャルキナが着ている緑のレオタードが可愛い。

<ウィーン>
ルヴレのウィーンは素敵です〜。以前の勢いは少しなくなったとは思いますが、あの大人の男の軽やかな余裕は、まだ誰にも負けません。脂っ気も少し抜けちゃったけど、やっぱり若い子たちに比べると脂っぽい。ティエルヘルムも、「メフィスト・ワルツ」もあってすっかり好きになったので、見ていて楽しかったです。
最後、紫の衣裳を着たダンサーもレッスンウェアのダンサーも、全員が並んで踊る群舞の場面が好きです。

<パルジファル>
シャルキナは、可愛い中にも凄みがついたなぁ、と。シャコンが彼女をフワッと頭上高くリフトするところで、いつもこちらまでフワッとします。そして、リフトしたままスーッと移動する。まるで全然重たくなどないように見えるのがすごい。
旅人の前にあった小さなスクリーンを畳むと、その向こうにジルが立っています。いつからスタンバっていたのか全然わからないんですよね〜。退場するときに、スクリーンを片付けていくのがちょっと面白いです。

<インド>
<アレポ>
2組のカップルが、同じ振付を同時進行で踊る場面。軽快で小気味いいパ・ド・ドゥは、見ていて気持ちが良いです。結構難しそうなパ・ド・ドゥに思えるんですが、彼らは簡単に踊っているように見えるのがすごいな、と。やはりロシャを見てしまう私。

<中国>
<北極>
ペンギンの中身が男性陣かと思うと、なんか可笑しい(笑)。あんな可愛らしい動きができるのね、と。一人がコケルと、それにつまずいて次から次へと転んでいくペンギンたち。全員が転んだところで、サッと一斉に顔を旅人のほうへ向けるのが、また可愛い。お別れのとき、「撫でて撫でて〜」とでも言うように、一人ずつ旅人のもとへ寄ってくるのが可愛くも切ない。

<サンフランシスコ>
旅人が踊るタップはどれくらい練習したもんなんだろうか? 詳しくないのでよくわからないんですが、かなり様になっていると思うんだけど。東京で3日間連続で踊ったアロザレーナは、最終日には流石にお疲れか?という気もしたんですが、この日は疲れも見えず。相変わらず格好良かったです。よどみなく柔らかな踊りが美しい。

<パ・ド・シス>
『眠り』の音楽で6人が華やかに登場します。すぐに緩やかな音楽に変わり、優しい時間が流れる。レッスンウェア姿の6人が仲良く戯れるように踊る、フィナーレの前の穏やかな一瞬です。この、怒涛のフィナーレの前に訪れる、フワッと時間が緩むような場面が結構好き。シャルキナとルヴレのカップルが、なんか可愛いんですよね〜。地べたに座り、砂に指で文字を書くようにして、見つめ合っては何かを書きあう2人が可愛い。シャルキナとルヴレって、あまりペアで何かを踊るのを見たことがないような気がするんですが、案外いいかもしれません。
結局、西宮のキャスト表もロシャのところがクノブロックになったままでした。

<アンデス>
6人+旅人の時間に飛び込んでくるのが、クピンスキーのアンデス。クピンスキーが「ヘイ!」と呼びかけるだけで、なんか面白い(褒めてます)。細くて長い手足が印象的なソロ。クピンスキーを好きなのは、踊っている彼自身が楽しそうだというのもあると思います。それってすごく大事なことなのではないか、と。

<ブラジル>
何度見ても楽しい、そして終わるのが寂しい場面です。この日は席が近かったせいか、ダンサーたちのかけ声が聞こえました。ルヴレが気合のかけ声を出していたのも格好良かった。東京で見ていたときには聞こえなかっただけなのか、ラストの『80分間』だから気合が入っていたのか。どちらかはわからないんですが、かなり気合を入れて踊っている様子が伝わってきて、見ているほうもテンションが上がりました。

カーテンコールでペンギンが出てくるという演出が可愛い。ペンギンに導かれて、ダンサーたちは緩やかな列を作り、舞台袖へと消えていきます。一度はお別れを告げたペンギンに導かれ、手に手を取り、肩に肩を抱き、こちらに背を向けて歩いていくダンサーたち。この先、彼らにはこうして手を取り同じ方向を向いて歩いていってほしいと思わずにはいられないラストでした。
因みに、カーテンコールにコジョカルの姿がなかったようなので、ペンギンの中身はコジョカルだと思います。

モーリス・ベジャール・バレエ団『80分間世界一周』
2010年11月19日(金)19:00 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

I. イントロダクション
男性全員
旅人 :マルコ・メレンダ
パ・ド・ドゥ :ダリア・イワノワ、ダヴィッド・クピンスキー

II. セネガル
ソロ :アランナ・アーキバルド

III. サハラ
パ・ド・シス :
ジュアン・プリド、ヴァランタン・ルヴラン、ホアン・サンチェス、
ダニエル・サラビア・オケンド、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ

IV. エジプト
ジュリアン・ファヴロー

V. ギリシャ
女性全員
マヌーラ・ムウ :ダリア・イワノワ

VI. ヴェネツィア
七つの色 :
大貫真幹、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、エクトール・ナヴァロ、ヘベルス・リアスコス
ローレンス・ダグラス・リグ、ダニエル・サラビア・オケンド、ヴァランタン・ルヴラン
ライト :エリザベット・ロス
恋する兵士 :那須野圭右

VII. ウィーン
美しく青きドナウ :キャサリーン・ティエルヘルム、ドメニコ・ルヴレ、カンパニー全員
エジプト王タモス :ジル・ロマン

VIII. パルジファル
カテリーナ・シャルキナ、オスカー・シャコン

IX. インド
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ヴァランタン・ルヴラン
男性全員

X. アレポ
ルイザ・ディアス=ゴンザレス、ポール・クノブロック
ダリア・イワノワ、フェリペ・ロシャ

XI. 中国 
ソロ :オアナ・コジョカル
パ・ド・ドゥ :エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー

XII. 北極
男性全員

XIII. サンフランシスコ
タップ・ダンス :
ダリア・イワノワ、カテリーナ・シャルキナ、リザ・カノ、女性全員
ハムレット(デューク・エリントン) :ジュリオ・アロザレーナ

XIV. パ・ド・シス
エリザベット・ロス、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
ジュリアン・ファヴロー、ドメニコ・ルヴレ、フェリペ・ロシャ

XV. アンデス
ソロ :ダヴィッド・クピンスキー

XVI. ブラジルバトゥカーダ :
那須野圭右、ガブリエル・アレナス・ルイーズ、ダヴィッド・クピンスキー
フェリペ・ロシャ、オスカー・シャコン、カテリーナ・シャルキナ、ダリア・イワノワ
エリザベット・ロス、ジュリアン・ファヴロー、カンパニー全員


【演奏】
パーカッション:チェリ・オシュタテール&ジャン=ブリュノ・メイエ(シティ・パーカッション)
キーボード&トランペット:イリア・シュコルニク
posted by uno at 03:03| Comment(8) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
西宮のレポートありがとうございます。
追体験できてうれしかったです。

セネガルでヴァランティンが雄たけびっておかしい!
ヴァランティンは今回の公演でかなりお気に入りになったんですよ。
アリアでもつい彼に目がいっちゃって。

ダリアは女性ダンサーの中で特にお気に入りなので母性を少し感じたってくだり、興味深かったです。

dvdでさんざん見ていたけれど実際の公演を観て特に気に入ったのが意外にパドシスでした。
なんか音楽といい天上で戯れているようにみえませんか??
わ〜っと6人が倒れてジルが肩をすくめるところも好きです。

他にも書きたいことは沢山ありますが字数がないのでこのへんで(笑
Posted by kiki at 2010年11月25日 12:15
東京公演の印象を思い出しながら読みました〜。
シャルキナは私も今回の公演からいいな〜と思うようになりました。かっこいいところとかわいくてキュートなところのメリハリが以前よりついてきたような気がするのですが、今後どうなっていくのか楽しみです。
クピンスキーは、ほんと楽しそうですよね。踊るのが好き演じるのが好き光線をバシバシ感じました。ずっといてくれるといいですねえ。
Posted by にわく at 2010年11月25日 20:53
 西宮、楽しかったんですね〜!
 東京でも、セネガルの別キャストが見たかったです。
 ギリシャの後のスタジオ風景、私は、「スタジオには光がある」というベジャールさんの言葉を思い出しながら見ていました。
Posted by andy at 2010年11月25日 21:50
kikiさん、こんばんは!
読んでいただきありがとうございます〜。

予想外のヴァランティンの雄叫びに、思わず顔が笑ってしまいましたよー♪
私も今回でお気に入りになりました。前回は大人しい印象だったような気がするんですが、今回は随所で楽しそうにやってたな〜、と。群舞で踊っていても、結構スッと目が行くんですよね。

イワノワのソロ、美しいですよね〜。イワノワはまだ若いし、それに美しぎる〜と思っていたんですが、それこそ幼いベジャール少年の中の母親像だったのかなと思ったら、なんだかとても切ない気持ちになりました。

確かに、パ・ド・シスの面はDVDで見ていたときよりも、実際の舞台で見たほうが素敵でした。天上の雰囲気、ありますよね! ちょっとふわっとしていて、すごく幸せな空気感があります。ジルが肩をすくめるところ、私も好きです。「何やってるんだか」っていう仕種の中に、すごく愛情があるんですよね〜。

あれもこれも思い出すと、きりがないですね(笑)。
Posted by uno at 2010年11月25日 23:33
にわくさん、こんばんは♪

私も今回ですごくシャルキナが好きになりました。これまでも好きだったんですが、より親しみを感じることができたように思います。可愛いだけでなく、無邪気なくらい愛らしかったり、かと思えばクールだったり、いろいろな表情を見せてくれるようになりましたよね。本当に、これからのシャルキナも楽しみです。
クピンスキーにはずっといてほしいです〜。「踊ることが好き、楽しい」というダンスは、見ていて気持ちが良いですよね。
みんな来日の度にいろいろな表情を見せてくれて、ますます好きになると、次の日本公演が待ち遠しくて困ります(笑)。
Posted by uno at 2010年11月25日 23:56
andyさん、こんばんは♪

西宮もいい公演でした〜。セネガルのアーキバルド、東京でも見てほしかったです。
「スタジオには光がある」というベジャールさんの言葉を思い出されていたとのこと。素敵な言葉ですよね。だから彼らはずっとレッスン着の姿で出ていたのかもしれないですね。ダンスを愛し、ダンサーを愛したベジャールは、スタジオに生き、すべての幸福はスタジオから始まっていたのかもしれません。
Posted by uno at 2010年11月26日 00:29
たびたび失礼します。

私もリュミエールのdvdで見たベジャールさんの「ダンススタジオには光がある」って言葉がすごく好きで
”そこには苦しみも老いもない。スタジオには純粋な光がある”っていう。。いつもそのセリフを言う場面にじんとします。

シャルキナ、私もすごく好きになりました。
3人のソナタもかっこよかったし、
パルジファルのオスカーとのpddは本当に凄みを
感じてなんかおもいがけず涙さえでました。
オスカーも本当に素敵ですよね。それによく見るとすごい美形ですよね♪

ダビッドも大好きです!
あの強くて綺麗な脚!そしてメフィストみたいな演技性あるのもよかったですよね。
出だしのあのふわっと腕を包むところ、てっきり死んだ恋人を生き返らせようとする恋人に見えたんですよ(笑

母性の話ですが、なにかのdvdでベジャールさんが「こんな大人になっても母の死を受け入れられない自分がいる」という言葉があった気がします。それを聞いて幼いときになくなった母親の姿があんなに頻繁に作品の中に投影されているわけがわかりました。
写真を見ると本当に綺麗な女性ですよね。。
Posted by kiki at 2010年11月26日 18:41
kikiさん

久しぶりに「ベジャール、バレエ、リュミエール」のDVDを見返しています。ベジャールの言葉って、本当に素敵ですよね。
「鏡に 何もない空間 練習着」
スタジオを舞台にレッスンウェアのダンサーたちが登場する「80分間〜」は、まさにその世界だったんだなぁ、と。
あれこれ映像を出してきて見てしまいそうです。

今回はシャルキナのいろいろな表情を見ることができたのが、大きな収穫でした。可愛いどころの役もいいけど、格好良かったり凄みがある役もすごくいいですよね〜。
オスカーも素敵です♪ 身体も綺麗で見入ってしまうけど、お顔も本当に綺麗ですよね〜。

クピンスキーのメフィスト、私も死んでしまった恋人を生き返らせようとしているように見えました! だからなんとなく切ない感じがしたのかも。力なく崩れてしまう彼女の腕を、そうは見せないように誤魔化しているようで、切なかったです。

ベジャールさんのお母さん、本当に綺麗な人ですよね。「こんな大人になっても〜」というベジャールさんの言葉、なんだか辛いですね。記憶の中で止まったままの母親の姿を思い出すとき、彼自身も少年のままなのかなと思いました。
Posted by uno at 2010年11月26日 22:44
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