2010年11月18日

BBL『アリア/火の鳥/3人のソナタ』2日目(11/14)

東京公演の最終日、BBL『アリア/火の鳥/3人のソナタ』の2日目の公演に行ってまいりました。恒例の「SAYONARA」と「See You Again」(これ、前からありましたっけ?)の電光掲示板と、大量のキラキラ紙吹雪。最後の幕が下り切る間際、こっそり握っていた紙吹雪をぱらっとばら撒いたジュリアンがお茶目でした。
この日も「メフィスト・ワルツ」を上演してくれました。クピンスキーが火の鳥だったので、休憩を挟んで「メフィスト・ワルツ」「アリア」の順で上演されました。やっぱり一番ワクワクしたな〜。この胸躍る感じ、これこそがベジャール作品を見る醍醐味の一つではないかと思いました。ガッと胸掴まれて夢中で見ているときの高揚感は、何ものにも代え難い喜びです。

「3人のソナタ」は、ジャン=ポール・サルトルの『出口なし』からインスピレーションを得て創られた作品だそうです。3人がいるのは、死んだ直後の出口のない部屋らしい。最初、まだ彼らは自分が死んだことに気が付いていないのかもしれません。何故ここにいるのか、ここがどこなのか、わからないことによる焦り。いや、心のどこかで感じているからこその焦りなのかも。途中でドアが開くんですが、3人ともそこから出ようとはしません。出られないというのもあるけど、出られないのを知っているから出ないのではないでしょうか。出口のない部屋、それは生きていれば終わることのない他人との関わりを表しているのかなぁ、と。生きていれば必ずと言っていいほど他者との関わりは生まれるし、それがなければ生きていくのは困難です。でも、本当に他者と理解し合えるなんてことはないし、理解し合おうとすれば非常に膨大なエネルギーを要する。生きている限り終わらないかと思うと、ときどき途方に暮れることもあります。3人の関係は変化し、終わることなく続いていきます。それはまるで、出口を探しているようでした。始まらなければ終わらないですから、出口を見つける為には関わりを続けなければならない。でも、出口なんてないんですよね、、。ドアの向こうは、それらからの開放を表しているのかもしれないけど、やはりそこへ行くことなどできないのかもしれない。もしかしたら、扉の向こうにはまた別の部屋があるだけなのかも、、、。最後には、「振り出しに戻る」という感じで、3人は再び3箇所の椅子に腰掛けます。ただ、出だしとは座る位置が違うのが面白い。とまぁ、これは私が勝手に感じたことで、作品やベジャールの意図とは違うかもしれませんが。原作を読んでいればもっと楽しめたのかなぁと思ったりもしたんですが、それがなくても十二分に惹きつけられるのは、ベジャールのすごさだろうな、と。
3人の生み出す様々な関係が途切れることなく展開され、約30分間の作品中、緊張の糸が緩むことはありません。緊張感のある面白い作品でした。2キャストありましたが、どちらもとてもよかったです。グッと若返った感のある2日目のキャスト、ジュリアン−ゴンザレス−イワノワは、美しくてスタイリッシュ。黒のスーツを着たジュリアンがとにかく素敵。濃厚で、作品がよりシャープに感じられたのは初日のルヴレ−シャルキナ−ロス。2人の女性、シャルキナとロス間に年齢差があったのも、面白かったのかも。

「火の鳥」はクピンスキー。パルチザンの衣裳が似合わない(笑)。「もう絶対に後で脱ぐよね、その衣裳」というくらい浮いてます。土臭いリーダーではなく、性別をも超越したような美しい火の鳥でした。いや、超越していたのは性別ではなく人間か?という気がしなくもない。スレンダーな身体と長い手足。決して隆々ではなく、綺麗についた筋肉。そこから繰り出されるのは、柔らかさと俊敏さの同居した踊り。ブルーの瞳と揺れるブロンドの髪とくれば、王子が似合いそうなものなのに、そうはさせないのはあの目です。ときには狂気と紙一重、ときには猟奇的に輝くあの目が、クピンスキーがまとうピリピリとした空気を生み出しています。前回の日本公演のときの自分の感想を読み返してみたら、クピンスキーのことを「猟奇的」「取って食いそう」と書いてました。2年前から取って食いそうだったんですね、彼は。“あの”クピンスキーが若干お疲れか?と思わせたのは、それだけ火の鳥はシンドイということでしょうか。しかし、次の「メフィスト・ワルツ」では、お疲れの色は一切なく。
パルチザンのメンバーが少し変わりました。ヒゲのムルドッコと、ボワっと前髪を立てている(立っちゃってるのかな?)プリドを確認。ヴァリエーションは変わらず、サンチェス、メレンダ、タルタグリョーネ。
闘いに倒れたリーダー。横たわり、息も絶え絶えにもがく姿も、クピンスキーだと妙に色気があるな、と。背後からフェニックスが登場。決して大柄ではないけど、シャコンの存在感は大きい。手で顔を隠して登場し、スーッ表情が見えただけで高揚感を覚えます。着地が柔らかで音がしない。シャコンは前回の日本公演では踊らなかったんですよね。今のシャコンで「バレエ・フォー・ライフ」が見たいな〜と思いました。

休憩を挟んで「メフィスト・ワルツ」。リストの「愛の夢」に乗って、ストレッチャーを押して登場するメフィスト=クピンスキー。黒尽くめの衣裳に白い手袋。ブロンドの髪を逆立てています。ストレッチャーには女性の死体=ティエルヘルムが横たわっています。助手が2人(ムルドッコとプリドだったかな?)。ティエルヘルムにキスをし、その身体に頬ずりをするクピンスキー。しかも、頬ずりしつつこちらに向けた視線が妖しすぎる…(♪)。彼女の腕を持ち上げる。手を放すとポトリと落ちそうになります。それを誤魔化すかのように、自分の腕をサッと絡ませるクピンスキー。彼女の身体をゆっくりとストレッチャーの上に立たせます。メフィストの言いなりに動くティエルヘルムの身体が、柔らかくてとても綺麗でした。彼女をストレッチャーから下ろし、舞台の中央に立たせる。そこから音楽は「メフィスト・ワルツ」へ。メフィストが死体を蘇らせ、メフィストと死体のパ・ド・ドゥが始まります。しかも、軽快な前奏に合わせて魔法をかけるような仕種をしたクピンスキーは、おもむろにシャツのボタンを三つほど外して踊り始めるんですが、そのボタンを外すときの顔(笑)。イッちゃってるな〜、本当(褒めてます)。手袋を外すときも同様。クピンスキーがとにかく最高なんですが、ティエルヘルムもすごく上手いんだなと思いました。意志がなさそうでいて、実は密かな意志を感じる身体。言いなりになっているようだけど、気付かれないように相手の様子を窺っているような目の動き。彼女は意志がないんじゃなくて、それを隠しているように見えるのが面白いんです。だからこそ、最後の立場の逆転もいい味を出してくる。ティエルヘルムの身体(存在感)は、どちらかというと楚々としていて脂っ気がないんだけど、それが不思議な色気を醸し出しているような気がします。ロスもちょっとそういう感じなんですよね。いわゆる色気のある身体ではないけど、不思議なエロスがある。
作品はどことなく切なさを感じさせます。コッペリウスとコッペリアだったり、フランケンシュタインと人造人間だったり、そういった物語を思い起こさせました。ミッチイ、アトム、ピノキオ…。命のないものに命を吹き込む物語がやがて漂着する切なさ。そう感じたのは、最初と中盤に「愛の夢」が使われていたからかもしれません。
この作品をクピンスキーとティエルヘルムで復活上演させたジルもすごいなと思ってしまいました。
しかしなんと言っても、猟奇的でさえあるクピンスキーのメフィストが最高。この一言に尽きます。
過去の作品だとわかっていても、このダンサーのために振付けたんじゃないか、そう思わせることができたら最高ですよね。ジルが踊っている写真が見たくていろいろ探したんですが、世界バレエフェスティバルの写真集の中に白黒の写真を1枚見つけることができただけでした。ジルの目も結構危なかったです(笑)。

ジルの「アリア」。2回目のほうが楽しめました。初日で少し様子がわかったので、落ち着いて見ることができたというのもあると思います。意欲作だというのはわかったし(当たり前か、、)、ダンサーたちがジルの要求に応えて懸命に表現している姿にも感じるものがありました。最初はちょっと難解な作品かな〜と思ったんですが、むしろジルの表現はとても真っ直ぐだなという気がしてきました。一見難解に思えたり、初日に消化不良に感じたのは、音楽が関係しているかもしれない。いや、音楽が良くなかったという意味ではないんです。音楽はとても面白いと思いました。ただ、わかりやすい音楽でわかりやすく盛り上げてはくれないんですよね。ワーッと迫ってくるというよりは、フムフムと感心しながら見てしまうというか(もちろん、ワーッとくるところもあります)。さらに、「ここでこう来てほしい」というこちらの期待とは違う方向へ行くこともあります。例えば、アロザレーナとタルタグリョーネのパ・ド・ドゥのラスト、群舞の男女がザーッと舞台に侵入してきます。このパ・ド・ドゥは音楽も格好良いし、非常に緊迫感のあるすごくいい場面なんです。赤いワンピースの使い方も印象的だし。そこへ群舞がザーッと入ってくると、私としては力強い群舞で盛り上がりのある場面を期待してしまうんですが、実際には音楽はフッと止み、無音の中(確か)ダンサーたちがゆっくりと崩れていく場面が展開されるんです。いや、それがジルのやり方なわけだから、それが悪いと言いたいんではないんです。ただ、単純な私はワーッときたらそのままドワーッと盛り上がりたくなってしまうんですよね。
出だしは結構好きでした。舞台中央に腰かけたジュリアンの背後に、ピッタリと寄り添うアロザレーナ。影のようなアロザレーナが、ゆっくりとジュリアンから分離していきます。でも、アロザレーナが「彼」でジュリアンが「他者」なんですよね。それを知らずに見ていたら、ジュリアンが「彼」でアロザレーナが「他者」だと思ったかもしれません。「自らの内なる魔物」(プログラムより)こそ、彼自身だということでしょうか。
ブランコに揺られて登場する、セクシーな3人のアリアドネたち。アロザレーナの弾くピアノに合わせて(もちろん実際には弾いてません)、最初にロスが、続いてイワノワと2人で、最後はシャルキナも加わって3人で踊ります。アリアドネたちの踊りもとてもよかった。しかしなんと言っても、アロザレーナが弾いていたピアノが自転車になっていて、実際にペダルをこいで移動したときには感激しましたよ〜。
群舞になると音楽がミニマルだったり現代的だったりして、群舞でドワーッと盛り上がれなかったことに、私は消化不良を感じたのかもしれません。ジルの振付ける動きは嫌いではなかったです。

モーリス・ベジャール・バレエ団『アリア/火の鳥/3人のソナタ』
2010年11月14日(日)15:00 東京文化会館

「3人のソナタ」
ジャン=ポール・サルトル「出口なし」に基づく
振付:モーリス・ベジャール 
音楽:ベラ・バルトーク (2台のピアノとパーカッションのためのソナタ第1楽章、第2楽章)

ジュリアン・ファヴロー
ルイザ・ディアス=ゴンザレス
ダリア・イワノワ

「火の鳥」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

火の鳥:ダヴィッド・クピンスキー
フェニックス:オスカー・シャコン
パルチザン:
シモナ・タルタグリョーネ、フロランス・ルルー=コルノ、リザ・カノ、ホアン・サンチェス
マルコ・メレンダ、アンジェロ・ムルドッコ、ホアン・プリド、エクトール・ナヴァロ
小さな鳥たち:
アドリアン・シセロン、ローレンス・ダグラス・リグ、ヘベルス・リアスコス
ファブリス・ガララーギュ、サンドリン・モニク・カッシーニ、オアナ・コジョカル
キアラ・パペリーニ、コジマ・ムノス

「メフィスト・ワルツ」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:フランツ・リスト

ダヴィッド・クピンスキー、キャサリーン・ティエルヘルム

「アリア」
振付、演出:ジル・ロマン
音楽:J.S.バッハ、ナイン・インチ・ネイルズ、メルポネム、イヌイットの歌から抜粋
オリジナル音楽:チェリ・オシュタテール&ジャン=ブリュノ・メイエ(シティ・パーカッション)

彼:フリオ・アロザレーナ
他者:ジュリアン・ファヴロー
アリアドネたち: エリザベット・ロス、ダリア・イワノワ、カテリーナ・シャルキナ
若い娘:シモナ・タルタグリョーネ
闘牛士:ヴァランタン・ルヴラン
若者たち:
マルコ・メレンダ、ホアン・サンチェス、ヴァランタン・ルヴラン、ホアン・プリド
ガブリエル・アレナス・ルイーズ、アドリアン・シセロン、大貫真幹
ファブリス・ガララーギュ、ヘベルス・リアスコス、シモナ・タルタグリョーネ、リザ・カノ
オアナ・コジョカル、サンドリン・モニク・カッシーニ、ポリーヌ・ヴォワザール
フロランス・ルルー=コルノ、コジマ・ムノス、キアラ・パペリーニ
posted by uno at 02:11| Comment(4) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久しぶりに書き込みさせていただきました。

BBLの東京公演が終わってしまいましたが、色々な方のブログを読ませてもらいながら余韻に浸っています。
今回は「奇跡の饗宴」もあり、色々な演目を見られ楽しかったです。イスラエル・フィルで踊った「春の祭典」はゾクゾクしましたし、「愛が私に語りかけるもの」は息をのんで見入りました。

単独公演ではやはり「メフィスト・ワルツ」が本当の意味でもサプライズでした。unoさんが書かれているように、“このダンサーのために振りつけられた”という言葉がぴったり当てはまるような舞台でしたね。13日・14日と続けて見ましたが、14日はオペラグラスで表情のみを追ってしまったくらいです(すみません)。クピンスキーは次の来日でどのような面を見せてくれるのか楽しみになってきました。

最後のカーテンコールでジュリアンが撒いた紙吹雪、あれってジルに向けて撒いたように見えたのですが、確かにおちゃめでしたね。
西宮・岩国公演も楽しんできてください。
Posted by kimi at 2010年11月18日 23:37
クピンスキーの火の鳥、見たかったです〜。2日目は見に行こうと思えば行けたのですが、全くその気がなくて、後になってキャスト表を見て悔やみました(泣)。
「3人のソナタ」のベースのお芝居「出口なし」は、まさに書かれている通りのような感じでしたよ。終始3人が、バレエのあの緊迫感そのままに、いろんなことでケンカのように言い合っていて、男性の「さあ、はじめよう」みたいなセリフで終わるので、バレエで3人が椅子に座って終わるのは、まさにそう!って感じでした。女性2人はセリフからすると、多少年齢差があるような感じで、私が見た2人も10歳以上は離れているような感じでした。2人は途中ちょっとレズっぽくなるのですが、バレエでもそんな雰囲気がちょっとあったのでニヤニヤしちゃいました。扉の向こうにはまた別の部屋があるんでしょうね。
アリアは私もよくわからないながらも嫌いじゃないかもと思いました。見るたびになじんできそうな気がします。私にその機会はなさそうですが。
Posted by にわく at 2010年11月19日 00:39
kimiさん、こんばんは♪
東京公演、終わってしまいましたね、、。私も、誰か何か書いていないだろうかと、あちこち検索しては感想を読んで、余韻に浸っています。
「奇跡の響演」のおかげでプログラムが一つ増えたようで、よりも多くの作品を見ることができ、私も嬉しかったです。「愛が私に語りかけるもの」、素晴らしかったですね、、、。

「メフィスト・ワルツ」は正にジルからのプレゼントでした♪ 本当に、過去の作品だとわかっているのに、クピンスキーのために振付けられた作品なんじゃないかと思ってしまうほど素晴らしかったです。こうやって作品は生き続けるんだなぁ、と。実は私も、オペラグラスでクピンスキーの表情ばかり見てしまいました〜(笑)。気が付くともう目が離せなくなってました。次は何を踊ってくれるのか、本当に楽しみです。

ジュリアンが撒いた紙吹雪、そういえばジルの方向でしたよね。ジルに悪戯したのかしら(♪)。お茶目でしたよね〜。

ありがとうございます。あと2公演、楽しんでまいります♪
Posted by uno at 2010年11月19日 00:59
にわくさん、こんばんは!
クピンスキーは火の鳥もよかったです〜。BBLはいつも当日キャスト発表なので、私もよく地団太を踏んでいました。そうこうするうちに、連日通うようになってしまったのかも、、(苦笑)。

ベースとなった「出口なし」のお芝居も、終始3人の遣り取りが交わされるんですね。ベジャールの振付も明確な台詞があるかのように饒舌で、息を吐く間もありませんでした。女性2人がちょっと怪しい雰囲気になるのが気になっていたんですが、元からそうなんですね〜。すっきりしました。やっぱり、知ってると面白そうですね〜。お芝居でも女性2人に年齢差があったとのこと。2日目のキャストもよかったんですが、年齢差があったほうが面白かったように思います。

ジルの「アリア」は2回目でかなり馴染んだような気がします。本当は1回で感動できるのがいい作品なのかもしれないけど、ジワジワくるのもありかなと最近は思うようになりました。ジルの他の作品も見てみたいなと思ったんですが、忙しいですよね、きっと、、、。
Posted by uno at 2010年11月19日 01:30
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