2010年10月22日

オーストラリア・バレエ団『くるみ割り人形』【2幕】

1幕のラスト、ロシアでの子ども時代は当然、雪のクリスマス。母親からトウシューズをもらい、それを愛しそうに抱きしめるクララ。バレエ人生の始まりを感じさせる印象的なシーンです。そうしてずっと真冬のクリスマスを過ごしていたクララが、人生の終わり、冒頭の現代のシーンでは真夏のクリスマスを過ごしているのが、彼女の人生の旅路を感じさせて印象的です。
雪の場面では、大量の粉雪が降ってきます(紙)。最後には、舞台に薄っすらと雪が積もったように見えるくらい。幕切れ、母親とクララが連れ立って舞台の後方に歩いていくと、本当に雪の道を歩いたように彼女たちの通った跡ができたのが印象的でした。


2幕。帝室バレエ学校時代のレッスン風景から始まります。子ども時代の生徒たちを演じたのは、東京バレエ学校の子どもたち。正面には一面の鏡。ダンサーたちは皆、客席側に背を向けて踊ります。ピルエットに失敗して転んでしまう少女時代のクララ。バレエ教師に叱責されます。クララが挫けそうになると、鏡の向こうに未来の自分が現れる(ダン、ローリンズ)。中央の鏡は、照明を当てると透けるようになっています。少女のクララと未来のクララが、鏡越しに手を合わせる。そして愛しげに、頬ずりをするように、互いに鏡に寄り添います。子供たちと入れ替わりに、成長したダンサーたちが現れる。鏡が一枚一枚回転して、ダンサーたちは順々に入れ替わります。成長したクララもまた、鏡越しに未来の自分を見る。そして同じように鏡越しに寄り添う2人のクララ。彼女はそうやって、挫けそうになるといつも未来の自分に励まされていたのかもしれない。いや、もしかしたら逆かもしれないと思いました。辛いことがあったり、挫けそうになると、頑張っていた自分を思い出して、自らを奮い立たせていたのかもしれません。鏡越しに未来の自分を見ていたのではなく、鏡の向こうから未来の彼女がこちらを見ていたのかもしれない。

客席に背を向ける演出は、物語のラストにも登場します。クララが最後のステージを踊る場面を、私たち観客は背後から見ることになります。群舞もクララも、舞台の奥を正面にして踊るように構成されている。この、客席に背を向けるというのは、演出効果の一つだと思うんですが、マーフィーはそれを物語を豊かにするために巧みに取り入れたなと思いました。鏡越しのレッスン風景の場面では、過去と現在が交錯し、どちらとも取れるように演出されています。そして最後の場面では、それまでクララの物語を見つめてきた私たちを、スッと物語の中にまで引き込んでしまう。観客はクララの最後のステージを見ているのではなく、彼女の人生を見ているのだという感覚に変えてしまいます。

クララたちのレッスンを、なんだかお偉方が見にやってきます。女性たちがピルエットを披露する。回れなくなったものから端に避けて〜という感じでやっていくと、クララが最後まで残り、美しいピルエットを見せる。本人もちょっと「驚いたわ」という様子。ちょっと内気な(想像)クララは、誰よりも回れたのに、スッと皆の後ろのほうに引っ込んでしまいます。優秀なもの3人にメダルが贈られることになり、3人目に後ろのほうに引っ込んでいたクララが呼ばれます。メダルを掲げ、愛しそうにキスをするクララ。希望に満ち、キラキラと目を輝かせたダンが印象的です。『白鳥』で男爵夫人を踊ったとは思えないほど、純粋で希望に満ちた少女を演じるダン。オーロラを見たときも思ったけど、両極端と思える役を踊りこなすダンはすごいなぁ、と。クララはこのときもらったメダルを、ずっと大事に持っているんですよね。「バレリーナとして有名になったクララ」(プログラムより)は、その後もたくさんの賞をもらったかもしれない。でも、初めてもらった(想像)この小さなメダルは、何よりも嬉しく、大切だったのかもしれません。それを、ささやかなクリスマスツリーのてっぺんに飾ったクララが、思い出される場面です。

舞台は一転して、ピクニックの場面に。音楽はギゴーニュおばさんの場面です(スカートの中にいっぱい子供たちが入ってるやつ)。舞台には紗幕。下手寄りに木立のセットがあります。将校と友人たち3人がやってくると、木の下で休んでいた貧しい親子はコソコソと逃げてしまう。クララと友人たち3人も現れて、3×3のピクニックに。ピクニックの最中に貧しい親子が通りかかると、フッと暗い空気が立ち込める。男性陣は女性陣を守るように背後に隠し、女性陣は目を背け、彼らが通り過ぎるのを待ちます。クララの友人2人の踊りは、グラン・パ・ド・ドゥの男性のヴァリエーション。クララと将校のパ・ド・ドゥは葦笛の踊りです。バレエフェスで披露された、ピクニックのパ・ド・ドゥは、やっぱり物語の中で見たほうが素敵だな〜、と。木立のセット越しにキスをしようとすると、突然の雷鳴。急いでワイングラスなどをバスケットに入れ、敷いてあったシートで雨を避けながら退場します。2人でシートの両端をそれぞれ持って、走って退場する様子は、恋人となら雨降りもワクワクする、そんな空気感があって印象的でした。拍手をしようかな〜と思うと、先程の貧しい親子がコソコソと足早に戻ってきて、クララたちが落としていった果物(?)を半分に分け合い、むさぼるように食べる姿に、思わず拍手がフッと止む、、、。雨の音が不穏に響きます。貧富の差が描かれているわけだけど、雨降りさえ幸福な恋人たちのパ・ド・ドゥの締めくくりを、拍手も止むほどの重たい空気で覆うとは。マーフィーって(苦笑)、と思ったのでした。

続く帝室舞踏会は花のワルツの音楽。何故クララと将校は遅刻してきてんでしょう? よくわかりませんが、皇后は彼女のことを良く思っていない様子。ニコライ皇帝やご老人たちは、美しいクララをチヤホヤします。クララはといえば、そんな扱いにも至って謙虚。というか、こういう場にも慣れていないし、人を惹きつける自分の美しさにまだ気付いていないという感じ。皇后の冷たい態度にも戸惑います(ちょっと嫉妬も入ってるのかなぁ、と)。
この舞踏会でクララは、『くるみ割り人形』の金平糖の精を披露します。後方から『くるみ』のコール・ドがザーッと入ってきて、舞踏会から『くるみ』の舞台に一変。左右にバルコニー席が設置され、上手に皇帝と皇后、下手に将校と友人が座ります。コール・ドのいかにもバレエ・リュスっぽい衣裳にワクワクしました。踊りもどことなく昔っぽい。プログラムの表紙にも使われている、締めのフォーメーションの美しいこと。ここまでは確か、花のワルツだったと思います。続くクララと王子のパ・ド・ドゥは、グラン・パ・ド・ドゥのアダージオ。見せ場の一つであるパ・ド・ドゥを、主演の2人が踊らないというのが面白いな、と(将校はこのとき観客なので)。ただ、サポートの安定感を欠いてしまうのが惜しいと言えば惜しいところです。心なしか、初日はダンの安定感も揺らいだようでした。あの、抱え込みからのフィッシュダイブのポーズが面白い。面白い動きがたくさあって、感心することしきりでした。退場間際、バルコニー席から将校がクララに花束を投げます。

公演後の舞台裏。ちょっとスター気取りというか、ウットリと余韻に浸る様子の王子役が面白い。クララはチュチュを脱ぎ、ガウンを羽織ります。年老いたクララのクローゼットにも大事に仕舞われていたガウンです。老人たちがクララへの面会を今か今かと待ちわびている。クララに言い寄り、あれやこれやと宝石をプレゼントする老人たち。隙あらば手にキスしたり、脚に触れたり(笑)。拒むクララと、言い寄る3人の老人たちの場面は、グラン・パ・ド・ドゥの女性ヴァリエーション。
老人たちを追いやると、今度は将校が面会に来ます。舞台を対角線上に駆け、カランに全力で飛び込むダンがすごい。ここの飛び込みっぷりは、2日目のローリンズとジャクソンの比じゃありませんでした。思わず会場がどよめくほど。幸福の絶頂にある2人のパ・ド・ドゥは、グラン・パ・ド・ドゥのコーダの音楽だったと思います。

ロシア革命が起こり、戦場へ赴く将校。幸福の絶頂のようなパ・ド・ドゥから、シーンは重なるようにして戦場へと移行します。音楽は、ディベルテスマンのロシア。最後のキスを交わすと、クララを振り切るように戦場(紗幕の向こう)へと向かう将校。下手で成り行きを見つめるクララ。兵士たちがピラミッド状に足場を組み、その頂点に駆け上がった将校は、銃弾に倒れます。ズダーンという銃声が響く、、、。

とりあえずここまで。音楽などは記憶違いのところもあるかもしれませんので、何卒ご了承を。2幕の後半は書けたら書きます〜。
posted by uno at 23:31| Comment(0) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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