2010年06月23日

『うたかたの恋』初日(6/22)

昨日はロイヤルの『うたかたの恋』初日の公演に行ってまいりました。日本での上演は23年ぶりとのことなので、当然、全幕で見るのは始めて(ルドルフとステファニーのパ・ド・ドゥだけ、小林紀子バレエ・シアターで見たことがあります)。あまりに強烈(に好み)だったので、久しぶりに会場でリピーター券を購入。今日も見に行くことにしました。これを好みだと言ったら、人間性を疑われるような気もするが、、、。
ドラマチックな作品は数多くあれど、『うたかたの恋』は「演劇的」なんてものは通り越していたような気がします。演劇的という言葉だけでは、あの舞台を表現しきれない。マクミランの、人間を覗き込む眼差しの恐ろしさを感じずにはいられませんでした。あそこに渦巻いていたものは何だったんだろうと、しばし思いをめぐらせる舞台でした。
もう、前奏からして暗い…。あんなに暗く陰鬱な前奏で始まる作品、今まであっただろうか、、。

まるでそれが必然だったかのように、死に突き進んでいく2人の姿が、痛々しくも恐ろしかった。死の意思を確認した後、マイヤーリングの狩猟小屋での2人は特に印象的でした。互いに互いしか理解し合える相手がいない。互いだけが唯一の味方で世界の全てであるとでも言いたげに、まるで子どものように心を寄り添わせ離れない2人。死に向かう人間を純粋だと言ったら間違いでしょうか。そこには恐ろしく純粋で、しかし恐ろしく重々しい空気が漂っていました。
死に至るまでの最後の場面を純粋に感じさせたのは、ロホのマリー・ヴェッツェラの描き方かもしれません。2幕では官能的だったロホのマリーは、3幕では憑き物が落ちたように純粋な少女だったんです。それがマクミランの演出なのか、ロホの演出なのかはわかりませんが(後者のような気もする)、その魔性から天使へという描き方がとてもよかった。
2幕のパ・ド・ドゥでのロホの官能性は、とにかくすごかった。それは17歳のマリーの、幼いままの無邪気な官能性。あんな官能性が表現できるのか、と。マリーという役には、ロホの少しポッチャリとした身体つきが合っていたと思います。柔らかな胸、温かい身体。ロホの透き通るような白い肌は、冷たさを感じさせません。
ルドルフが主役のこの舞台で、そのアコスタは当然ながら、やはりロホのマリーが特別な存在感を確立しているのがすごかった。彼女なくしてはルドルフの物語は成り立たなかったのではないかと思うほど。
しかし本当にルドルフの背中を見ていたのは、ラリッシュ伯爵夫人だけだったのかもしれません。彼の後姿に気付いていた彼女だけが、本当にルドルフを愛していたのかもしれない。とくに終盤の献身的な姿は心打たれるものがありました。モルヒネを打ち、朦朧と椅子に身をもたせたルドルフを前に、ラリッシュ夫人に「出て行け」と激怒するエリザベート。エリザベートの服に必死に掴みかかったラリッシュ夫人は、自分の身を訴えるのではなく、「お願いだからルドルフのほうを向いてくれ」と訴えているようで切なかった。自分ではルドルフを救えないと思ったラリッシュ夫人は、部屋の外で待っていたマリーを招き入れ、自分はそっと姿を消していきます。それが、彼女がこの舞台で見せる最後の姿…。あまりに切ない後姿でした。
ルドルフのアコスタも、とってもよかったですー。アコスタは初めて見たんですが、とてもいいダンサーでした。なんていうか、大人だなぁと思ったというか。踊りもサポート/リフトも文句ないし、徐々に追い詰められていくルドルフを繊細かつパワフルに表現していくのも見事。しかも、時折り見せる幼い子どものような表情に泣かされた、、、。あの大きな身体の、外見はどう見ても大人のアコスタの中に、小さな少年がうずくまって泣いているのが見えるようでした。

ミッツィ・カスパーのラウラ・モレーラ、ブラットフィッシュのリカルド・セルヴェラ、ステファニー王女のイオーナ・ルーツ、“ベイ”ミドルトン大佐のギャリー・エイヴィスなど、脇を固めるダンサーたちも皆とってもよかったです(まとめちゃってすみません、、)。ブラットフィッシュのセルヴェラが可愛い。きっとコーラスもよかっただろうなぁ、と。最後にルドルフがブラットフィッシュを抱きしめる場面もよかったです。きっと本当に可愛がっていたんだろうなと思うと、2人の間にも他人にはわからない関係が築けていたのが窺えるようで切なくもあり、、、。

ルドルフに、オーストリア=ハンガリー帝国からのハンガリーの分離を述べ立てるハンガリーの高官たちが面白かった。場面転換の役割もありつつ、執拗にルドルフにまとわり付き耳打ちする姿は、狙っているかどうかはわからないけど、ちょっと笑える。口ひげを付けて、眉間にしわを寄せた蔵健太さんが素敵でした(そしてちょっと面白い)。
同じく日本人の高田茜さんが、2幕の娼婦の中にいたと思います。東洋人らしい幼さがちょっとエロくもあり、とても可愛らしかったです。

フランツ・ヨーゼフ(ルドルフの父)の愛人であり、舞台女優であったカタリーナ・シュラットが、ピアノの独奏に合わせて歌う場面があります。聴き入る登場人物たち。様々な思いが交錯する、印象的な場面でした。

英国ロイヤルバレエ団『うたかたの恋』全3幕
2010年6月22日(火)18:30 東京文化会館

ルドルフ:カルロス・アコスタ
(オーストリア=ハンガリー帝国皇太子)

男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ:タマラ・ロホ
(ルドルフの愛人)

ステファニー王女:イオーナ・ルーツ
(ルドルフの妻)

オーストリア=ハンガリー帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ:クリストファー・サウンダース
(ルドルフの父)

エリザベート皇后:クリステン・マクナリー
(ルドルフの母)

伯爵夫人マリー・ラリッシュ:マーラ・ガレアッツィ
(皇后付きの女官、ルドルフの元愛人)

男爵夫人ヘレナ・ヴェッツェラ:エリザベス・マクゴリアン
(マリー・ヴェッツェラの母)

ブラットフィッシュ:リカルド・セルヴェラ
(ルドルフの個人付き御者、人気者の芸人)

ゾフィー大公妃:ウルスラ・ハジェリ
(フランツ・ヨーゼフの母)

ミッツィ・カスパー:ラウラ・モレーラ
(ルドルフの馴染みの高級娼婦)

ベイミードルトン大佐:ギャリー・エイヴィス
(エリザベートの愛人)

四人のハンガリー高官:
ベネット・ガートサイド、ヴァレリー・ヒリストフ、蔵健太、トーマス・ホワイトヘッド
(ルドルフの友人)

カタリーナ・シュラット:エリザベス・シコラ
(独唱)

アルフレート・グリュンフェルト:ポール・ストバート
(ピアノ独奏)

エドゥアルド・ターフェ伯爵:アラステア・マリオット
(オーストリア=ハンガリー帝国の首相)

ホイオス伯爵:エリック・アンダーウッド
(ルドルフの友人)

ルイーズ公女:エマ=ジェーン・マグワイア
(ステファニーの妹)

コーブルグ公フィリップ:デヴィッド・ピカリング
(ルイーズの夫、ルドルフの友人)

ギーゼラ公女:サイアン・マーフィー
(ルドルフの姉)

ヴァレリー公女:フランチェスカ・フィルピ
(ルドルフの妹)

ヴァレリー公女の子供時代:リャーン・コープ

マリー・ヴェッツェラの子供時代:タマラ・ロホ

ロシュック:ミハイル・ストイコ
(ルドルフの従者)

ラリッシュ伯爵:ヨハネス・ステパネク

その他、来客、メイド、娼婦、紳士、使用人、侍女など:英国ロイヤル・バレエ団

指揮:バリー・ワーズワース
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
posted by uno at 13:09| Comment(2) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
unoさん、こんばんは。
うらやましいです(ノ_・。)
『うたかたの恋』すごくすごく見たかったんですが、どうしても無理で…
もう一度ゆっくり感想拝見します。
Posted by みゆ at 2010年06月23日 19:15
みゆさん、こんばんは。
『うたかたの恋』は都合が合わなかったのですね、、、。見たい公演を断念するのは、なんとも辛いですよね…。今回の反応がよかったようなので、もしかしたらまた上演が実現するんじゃないかと、密かに期待しております。
Posted by uno at 2010年06月24日 00:45
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