2008年12月01日

『オネーギン』3日目!

『オネーギン』の東京最終日に行ってまいりました。終わっちゃって寂しいです〜。はぁ、、、大阪と兵庫も見に行きたい…。

今日の舞台もすごくよかったです。なんとも幸せな3日間でした。それにしても充実してるなぁ、と。3人のオネーギン、3人のタチヤーナ、そしてレンスキーの3人も。ついでにグレーミン公爵の2人も(♪)。前回ルグリがゲスト出演した『オネーギン』もよかったけど、今回はカンパニーのダンサーで見ることができて本当に幸せでした。

バランキエヴィッチのオネーギンは、とくかくまず格好良い!!格好良いっていうか、麗しい。バランキエヴィッチって、舞台メイクでかなり変わりますよね。もともとハンサムだけど、王子ってキャラじゃないよな〜と思ってたんですが、『眠り』のデジレもちゃんと王子だったし、オネーギンの憂いを帯びた風情も素晴らしかったです。
バランキエヴィッチは、登場から都会の空気をまとったスマートで洗練された存在感。レイリーのように“できた”男という感じではなく、どこか薄っぺらいというか(褒めてます)、表面的に取り繕って礼儀正しく振舞っている感じ。でも、彼が取り繕っているだけだというのは、片方の眉をあげた表情にちゃんと出ちゃってるのがいい。軽やかで美しい立ち居振る舞いは、田舎の少女の目には現実感のない男性に映ったかもしれません。
結構単純で、決して悪い人じゃないんだけど、良い人にも見えないかもね〜というオネーギン。結局、彼が好きなのは自分だけ、というか。いや、少なくとも今の彼は傲慢で、他人を思いやるという心がない。思いやったとしても、それは自己の満足のため、という感じがするんです。あ、もちろんこれは褒めてるんですよ。
タチヤーナの振る舞いに苛立ったオネーギンは、まるで憂さ晴らしのようにオリガを誘ってレンスキーをからかうわけですが、その「よし、からかってやろう」という悪戯っぽい表情には、彼の若さが感じられました。
そしてバランキエヴィッチは踊りが綺麗です〜。シャープなのに柔らかい踊り。ダイナミックだけど、エレガント。ジャンプがフワッと軽くて高い。そして、着地が柔らかです。回転もすごかった。決闘の前、ピルエットして腿を拳で叩くのを3回繰り返すところがあるんだけど、ものすごい速くて綺麗な回転でした。
レンスキーを決闘で殺してしまったオネーギンが、マントを羽織ってタチヤーナたちの前に戻ってきます。しばし俯いていたアイシュヴァルトがゆっくりと顔を上げる。悲しみを湛えた厳しい表情。そんなタチヤーナを見て、初めて悔恨の念に苛まれるオネーギン。あんな顔を見せられたら、自分はなんて愚かなことをしてしまったんだろうと思い知らされずにはいられません。レイリーの場合、友人を死なせてしまったことで苦しんでいるように見えるんだけど、バランキエヴィッチはそんな自分の身を憂いているように見えるんです。スー・ジン・カンはもっと悲しげというか、やりきれない思いを噛み締めるような苦渋の表情を浮かべていました。スッと顔をあげ、凛とした表情を見せていたアマトリアンは、下手をするとちょっと無表情というか、冷たい感じがしなくもなかったです。

3幕のバランキエヴィッチは、他の2人に比べると少し若い感じ。まだまだ素敵で、やつれた感じは控えめでした。よかったのは、タチヤーナに気が付いてからのバランキエヴィッチ。必要以上にウロウロ&コソコソを繰り返さずに、客人たちの後ろに回って身を隠し、間からジッとタチヤーナを見ているんです。上手に移動してからも同様に、客人たちの後ろからジッとタチヤーナを見ている。設定上は人垣に隠れているので(もちろん観客には姿は丸見えだけど)、顔を背けたり身を隠したりという芝居をほとんどしません。その様子はもう、半ば呆然。タチヤーナの美しさに見とれちゃうわ、その年月を思い知らされちゃうわ、さまざまな想いが過ぎるわで、もうオネーギンの頭の中は大変です…。

アイシュヴァルトのタチヤーナは美しすぎ!もう1幕から既に輝かんばかりでした。おしとやかで上品なアイシュヴァルトのタチヤーナは、田舎娘どころか、そんじょそこらにはいないような美しいお嬢さん。確かにちょっと内気というか気が弱そうで、本ばかり読んでいるせいか夢見がちなところもあるにはあるけど、賢くて美しい、とっても魅力的な少女でした。これを見抜けないなんて、やっぱり今はオネーギンは駄目な人になっちゃってるんだな〜と思ってしまった。で、ジェイソン・レイリーのグレーミン公爵が相当格好良くてですね、風格と余裕のある素敵な男性だったので、タチヤーナに恋しているなんて流石です、公爵!と思ってしまいました。
アイシュヴァルトはポワントの安定感がすごい。スッと片方のポワントで立ち、綺麗なバランスをキープして、ゆっくり踵を下ろすまでの時間の、なんとも心地良いこと。ステップは柔らかくて丁寧で、踊りは澱みなく流れるようでした。

オネーギンの手紙を見ながら、困惑しつつも、込み上げてくる喜びに一瞬胸を焦がし、高揚した表情を見せるアイシュヴァルトが美しかった。今もこんなに愛しいと思うのに、受け入れることはできない。でも、それなら自分はこの先どうやって生きていけばいいのかという、タチヤーナの悲痛な叫びが辛かったです。「お願いだからもうやめて…」という泣き出しそうな表情と、それでもその胸に飛び込んでいってしまう抗いがたい愛しさが入り混じるタチヤーナ。手紙を破り、思わずオネーギンの髪を撫でようとしたその手で扉を指差したタチヤーナは、一体どんな気持ちだったんだろうかと、想わずにはいられませんでした。最後、舞台の中央まできたアイシュヴァルトは、胸の辺りで両方の拳をギュッと握りしめ、しばし俯いたまま。ゆっくりと天を仰ぐアイシュヴァルトを残して幕は下ります。彼女は大きく顔を歪めて泣くことはしませんでした。

レンスキーのアレクサンドル・ザイツェフがとっても好かったです〜。1幕ではやや印象がノーマルで、ラドメイカーより踊りは安定しているけど、これはそつなくこなしてしまうタイプか?と思ったんですが、彼は2幕からが最高でした。一番野暮ったくて、鈍臭いレンスキー(褒めてます)。意気地がなくて、踊るオネーギンとオリガを見ながらただタジタジ。周りの老人たちに、「ほれ、何やってんだ、お前さんの彼女だろ?言ってやれ言ってやれ」(想像)と励まされるも、挑みかかれず…。「あ、でも…、でも…」とタジタジするばかり。か、可愛い…(♪)。しまいには、口をややヘの字にして泣き出しそうな顔。いや〜、可愛くて最高でした。そのくせ、怒っちゃったら怒っちゃったで、もう言うこと気かなくて、引っ込みがつかなくなっちゃてるのよね。レンスキー…。幕切れも、自分は何てことをしてしまったんだという、ちょっと泣きそうな表情で呆然としておりました。
そして、決闘前の苦悩のソロがまた好かった。踊りの安定感では、フォーゲル以下、ラドメイカー以上というところでしょうか。ややバランスが危ないところは根性で持ち堪える。このソロが一番ナルシスティックだったのはザイツェフかも。あんなに朴訥な青年だったのに。フォーゲルが緩急のある踊りだったのに対して、ザイツェフはどちらかというと粘りのある踊り。その辺もナルシスティックと思わせる所以かも。土壇場に来て、急に色気が出る男、レンスキー。ひざまずいて上体を反らし、ブリッジしながら横たわるところで、2回目のザイツェフのブリッジの長いこと、長いこと。いや〜、面白かった(褒めてます)。
オリガにキスをしたあと、ザイツェフのレンスキーはタチヤーナの手をまともに握ることができません。手を握りかけ、顔を背けるように頭を下げると、すり抜けるように立ち去るレンスキー。今彼女の手を取ってその顔を見てしまったら、決心が鈍って泣き崩れてしまうかもしれない…。『眠り』のアリ・ババには性格描写がないのでわからなかったけど、ザイツェフくんもなかなかのやり手かもしれません。

そして、まさかレパートリーに入っているとは思いもしなかった、ラッキーなお土産、ジェイソン・レイリーのグレーミン公爵。素っ敵でした〜♪ 2幕で登場したレイリーのグレーミン公爵は、落ち着きのある大人の男で、ぜんぜんつまらない中年には見えません。色気も貫禄もあって、オネーギンも太刀打ちできなさそうな雰囲気でした。
さらに、年齢を重ねた3幕のグレーミン公爵も格好良い。歳をとってもまだ色気があり、風格の漂う紳士になっていました。3幕のレイリーのグレーミン公爵なら、まだまだ恋愛できそうな雰囲気。。こんな素敵な旦那様を裏切るなんて、やめたほうがいい、と思ってしまいました。とっても大事そうに、愛しそうにタチヤーナを抱きしめる様子がまた、とても素敵でした。

すみません、ダラダラと思いついたことだけ書いてみました、、、。キャストを載せておきます〜。

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』
2008年11月30日(日)15:00 東京文化会館

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

オネーギン:フィリップ・バランキエヴィッチ
レンスキー:アレクサンドル・ザイツェフ
ラーリナ夫人:メリンダ・ウィサム
タチヤーナ:マリア・アイシュヴァルト
オリガ:エリザベス・メイソン
乳母:ルドミラ・ボガード
グレーミン公爵:ジェイソン・レイリー

指揮:ジェームズ・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
posted by uno at 02:16| Comment(4) | TrackBack(0) | バレエ公演2008 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ジェイソンは本当に役者でしたね!それぞれの解釈でいろんなオネーギンが観られて幸せな日々でした…。
Posted by さとみっち at 2008年12月01日 16:55
ジェイソンは本当にいいダンサーでしたね〜。今回見るまで知らなかったので、またいいダンサーを知ることができて嬉しいです♪ 日本でもまた踊ってくれるといいですね。
こんなにそれぞれ違うオネーギンを見られて、本当に幸せでした。まだシュツットガルト・バレエの余韻が続いてます♪
Posted by uno at 2008年12月02日 21:23
はじめまして
いつも楽しく拝見しています。
unoさんの 感想を読むと誠実な目線で書かれていて
見にいけなかった公演も、まるで見て来たかのような気持ちになります。自分で見るよりも誠実に愛おしい公演に感じられます。
これからも、感想を沢山書いてください。
楽しみにしております。
Posted by cotoco at 2008年12月11日 23:44
cotocoさん、はじめまして。
コメントをいただき、ありがとうございます!
>まるで見て来たかのような気持ちになります
素人目線で勝手なことばかり書いてしまっているので、お一人でもそう言っていただけると、頑張って書いてよかった〜と励まされる気持ちです。「誠実な目線」というお言葉もすごく嬉しいです!(そんな大したこと書けてないのでお恥ずかしくもあるんですが、、、)
これからもよろしくお願い致します。頑張って感想書きます♪
Posted by uno at 2008年12月12日 23:13
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/110476623

この記事へのトラックバック