2011年02月02日

ベルリン国立バレエ団『マラーホフ・ガラ』1月18日

ベルリン国立バレエ団『マラーホフ・ガラ』に行ってまいりました(1/18)。とっても楽しかったです〜♪。超絶技巧満載のお祭騒ぎではありませんでしたが(そうならないのは始めからわかっていたけど)、全体的に品が良く、バレエ団のカラーが感じられるいいガラ公演だったと思います。今の私にはすごくしっくりきた。黒鳥やドン・キなど、ガラの定番パ・ド・ドゥはないけれど、『アルレキナード』、『騎兵隊の休息』、サタラネなど、可愛らしく明るい気分になれるパ・ド・ドゥが多くて、私的には楽しかったです。彼らのキャラクターに合っていたんだろうな、きっと(特に男性陣)。「可愛らしい」と感じたのは、ダンサーたちのキャラクターもあるけど、ヨルディ・ロイクの衣装もあったのではないか、と。いわゆる「マラーホフ趣味」の衣裳はときどきビックリするものもあるけど、マラーホフが信頼を寄せていると思われるロイクの衣裳も含め、嫌いじゃないなぁ、と。これが一番好きかというと、そうではないと思うんですが、なんか気持ちはわかるな〜という感じなんです。マラーホフ版『眠り』の衣裳とかも、これが好きなんだな〜という気持ちは、なんかすごくわかる気がするんですよね。

ベルリン国立バレエ団<マラーホフ・ガラ>
2011年1月18日(火)18:30 東京文化会館

【第1部】
「騎兵隊の休息」よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/音楽:イワン・アルムスヘイメル

セブネム・ギュルゼッカー、マリアン・ヴァルター

「ショータイム」よりデュエット
振付:エリック・ゴーティエ/音楽:フィリップ・カニヒト、ジョルジュ・ビゼー

エリサ・カリッロ・カブレラ、ミハイル・カニスキン

「せむしの仔馬」より "フレスコ" パ・ド・カトル
振付: アルテュール・サン=レオン/音楽:チェーザレ・プーニ

ヤーナ・バローヴァ、サラ・メストロヴィック
クラジィーナ・パヴロワ、アナスタシア・クルコワ

「アルレキナード」よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ

ヤーナ・サレンコ、ライナー・クレンシュテッター

「これが死か」
振付:モーリス・ベジャール/音楽:リヒャルト・シュトラウス

ウラジーミル・マラーホフ
ベアトリス・クノップ
エレーナ・プリス
ナディア・サイダコワ
ポリーナ・セミオノワ

【第2部】

「スピリット」
振付:ウラジーミル・マラーホフ/音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ

セブネム・ギュルゼッカー、イブラヒム・ウェーナル

「ヴェニスの謝肉祭」"サタネラ"パ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ/音楽:チェーザレ・プーニ

クラジィーナ・パヴロワ、ディヌ・タマズラカル

「ブルッフ・ヴァイオリン協奏曲第1番」
振付:クラーク・ティペット/音楽:マックス・ブルッフ

ポリーナ・セミオノワ - ヴィスラウ・デュデク
エレーナ・プリス - ミハイル・カニスキン
ヤーナ・サレンコ - ライナー・クレンシュテッター
ステファニー・グリーンワルド - マリアン・ヴァルター

マリア・ボムポウリ、マリア・ジャンボナ、エリナー・ヤゴドニク、菅野茉里奈、
ニコレッタ・マンニ、クリスティアーネ・ペガド、巣山 葵、ヴェレーナ・サーム

タラス・ビレンコ、ミハエル・ファトゥラ、クリスティアン・クレール
エイメリック・モッセルマンズ、アレクセイ・オルレンコ、ハビエ・ペーニャ・バスケス
アレンサクドル・シュパク、フェデリコ・スパリッタ


たぶん初見のマリアン・ヴァルター(「騎兵隊の休息」)は、踊りも存在感も「柔らか」という印象の人。身体能力が高く、フォルムの一つ一つに柔らかさを感じさせる踊り。着地も柔らかいので、フワッとした幸福感があります。見た目は可愛らしいけど、雰囲気は意外と男らしいかも。
そういう意味では、チャーミングなのはやっぱりディヌ・タマズラカル(「ヴェニスの謝肉祭」よりサタラネ)。比較的小柄で身体能力の高いヴァルターとタマズラカル。男らしいというよりは可愛いという印象の2人だけど、個性はまったく違っていてよかった。タマズラカルはバネのある踊り。クリアで弾む踊りは、見ていて気持ちが良い。

同じく小柄なほうに入ると思われるライナー・クレンシュテッター(「アルレキナード」)。今回のガラで言うなら、カニスキン、デュデク、ウェーナルは大人の男組、ヴァルター、タマズラカル、クレンシュテッターは小柄組に入るのではないか、と。
今回はクレンシュテッターがすごくよかったです。クレンシュテッターは、ヴァルターやタマズラカルに比べると、テクニックよりもその演劇性が印象的でした。いやぁ役者だな〜、と感心。「アルレキナード」という演目のせいもあるのかもしれないけど、初期からマラーホフとダブル・キャストで『指環』のローゲなどを踊っていたことを考えれば、演目のせいばかりではないと思います。『シンデレラ』でマラーホフと同じ甘いモノ好きのバレリーナも踊ってますしね(見たかったぁ、、)。以前『マラーホフの贈り物』で見たときも、クラシックのパ・ド・ドゥよりも現代物のほうが印象的だったんですが、彼に合う演目というのがあるんだなと思いました(当たり前か)。「アルレキナード」のクレンシュテッターはとっても素敵。しかも、こういう演目が似合うダンサーが結構好きなんですよね〜、自分。

「アルレキナード」のサレンコも、とても可愛かったです。コロンビーヌの衣裳は小柄な彼女にピッタリ。踊りは相変わらずの安定感で、安心して見ていられます。最後はトリプルを入れたフェッテで盛り上げてくれました。

なんとなく、女性陣よりも男性陣のほうが印象に残ったかもしれません。皆よかったんだけど、突出した感じがもう一歩欲しいというか。もちろん、サイダコワやクノップ、ポリーナやサレンコは別です。さすがプリンシパルということなのかな〜やっぱり、と。ソリストの中では、やはりカブレラが印象的だなと思いました。

そのカブレラとカニスキンの『ショータイム』がとっても楽しかった。前半は、本番直前のダンサーの様子を表現し、「ショータイム!」のかけ声を合図に本番のステージが幕を開けるという構成です。衣裳の上にジャージを羽織り(しかも胸には「東京」の文字・笑)、ウォーミングアップをするカニスキン。遅れて現れたカブレラと、踊りや演技の確認します。ダンサーに指示を出すのは、日本語で話すマラーホフの声。そのサービス精神、流石です(笑)。緞帳が上がる前、ダンサーたちはああやって舞台上ですごしているんじゃないだろうかと思わせるワクワク感がありました。衣裳を整えて、さあ本番。これがまた格好良かった〜。さっきまで確認していた踊りがちゃんと出てくるのが、また楽しいんですよね。健康的で美しいカブレラと、表情豊かに生き生きと踊っていたカニスキン。スピーディーな振付を踊る2人は、本当に息が合っていて素敵でした。

マラーホフの「これが死か」は、ずっと見たかった作品です。2008年の『マラーホフの贈り物』で上演が予定されていたんですが、上演許可の問題でプログラムから外れてしまいました。でも、今回このタイミングで見られたのは、すごくよかったんじゃないかと思いました。因みに、当時予定されていたキャストは、マラーホフ、ポリーナ、サレンコ、吉岡美佳、上野水香です。私としては吉岡さんの「これが死か」を見てみたかったという思いもあるんですが、サイダコワやクノップに存在はやはり大きかったです(もしかしたら、本来なら祥子さんも入っていたのかな?)。彼女たちの身体が持つ揺るがない存在感が、この作品を支えている気がしました。さらに、今見ることができてよかったと思ったのは、単にメンバーの問題ではなく、マラーホフ自身のここ数年での深化と、ポリーナの成熟も大きかったのではないかと思います。今回のポリーナは、すべての演目で目を見張るほどの輝きを放っていました。この数年で、下手したら数ヶ月で、グッと進化したような気がします。彼女はまだまだ先があるんだなと思ったら、楽しみで仕方がなくなりました。
このプログラムの中で、「これが死か」はとても異質な感じがしました。決して悪い意味ではなく。そこだけ空気が別世界だったんです。BBLの公演の中で見たときは、他もベジャール作品だし何とも思わなかったんですが、こういうガラ公演の中で見ると、やはり独特の存在感があるなぁ、と。あらためてすごくいい作品だと思いました。そう思ったのは、マラーホフ始めベルリンのダンサーが、愛情をもってこの作品を踊っていたからだと思います。上演されるとわかっていたにもかかわらず、思わぬところで突然ベジャールの世界に出会って、懐かしさに心打たれるような、不思議な気持ちになりました。こうしてダンサーが愛情を持って踊ってくれる限り、ベジャールの作品は様々なところで生き続けることができるんだと思います。

プログラムの最後は「ブルッフ・ヴァイオリン協奏曲第1番」。4組のカップルと8組のコール・ドで踊られる、ストーリーのないクラシックの優れた中品です。ガラの最後にこういう作品があるのっていいよね〜と思わせる作品、そしてパフォーマンスでした。いわゆるストーリーはないけど、音楽が物語を持っている。特に、ブルーの衣装のポリーナとデュデクが踊る場面は、グッと心を掴まれるドラマティックな時間が流れます。コール・ドのダンサーが一人ずつ左右に分かれていくと、最後にポリーナが姿を現します。その瞬間の、説明し難い胸の高鳴り。この作品は彼女のこの瞬間のためにあるのではないかと思うほどでした。

カーテンコールには、私服に着替えたマラーホフが芸術監督として登場。舞台の端でダンサーたちを見守る姿は、間違いなく芸術監督のそれでした。
posted by uno at 00:45| Comment(0) | バレエ公演2011 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする