2010年05月15日

東京バレエ団『オネーギン』初日(5/14)

東京バレエ団『オネーギン』初日の公演に行ってまいりました(5/14)。前日に同じキャストでゲネプロを見たとはいえ、やはり初日の幕が開くのはドキドキしました。好きなバレエ団の全幕初演の舞台は、いつも特別なドキドキ感があります。しかも今回は『オネーギン』。「E.O.」の幕の向こうにユルゲン・ローゼの世界が広がった瞬間、「あぁ、始まった」という高揚感と、不思議と落ち着いた感慨に襲われました。始まってしまえば、あとはもう東京バレエ団の『オネーギン』の世界に身を委ねるだけ。前日に見て、その完成度の高さはわかっていたので、わりと雑念なく楽しむことができました。それが良いか悪いかは別として、たまにはこういう企画もいいなと思いました。

初日に気になった細部の調整はきちんと図られていたと思います。ところどころ初日のほうがよかったところもあったけど、それはちょっとした踊りの部分で、各人の調子の問題もあるから仕方がない、という程度の話。終幕に向けてグーっと物語を持って行ってくれたのは、やはり本番の舞台でした。会場の熱気も違いますしね〜。吉岡さんと高岸さんに関して言えば、やはり本番のこの日にすべてを高めて持ってきたんだなという感じでした。


オネーギンが最初にタチヤーナをリフトするところが、とても好きなんですが(後ろからスッと持ち上げるところです)、もう吉岡さんが絶品! タチヤーナの心のざわめきが聞こえてくるようでした。あの瞬間だけで泣きそうになった…。音楽と振付と踊り手と、見事に結晶した瞬間とでも言いますか、すべてが結晶してすべてが消え去り、タチヤーナの心が浮かび上がる瞬間でした。
吉岡さんが本当に美しかった〜。黒髪を結わいた、内気で大人しい少女の1幕。内に情熱を秘めた夢見る少女は、本のページを開けばすぐに物語の世界に入っていくことができる感情豊かな少女でもあります。体育座り(って言いますよね?)をして本を読む姿、ベッドに寄りかかりオネーギンを思う様子、机に座って頬杖をつき、オネーギンへの恋文を頭の中に走らせる姿。どんな姿も可愛らしく、ウットリでした。

高岸さんは、自身の踊りになると不安な部分もあったんですが、サポートやリフトは流石。慇懃無礼に振舞う1幕よりも、2幕でタチヤーナに苛立つ姿や、退屈しのぎに(というか苛立ち紛れに)レンスキーをからかう姿のほうがよかった。もうね〜、小さなことで小さくイライラしてるんですよ。小さいな〜(笑)、と(褒めてます)。今のオネーギンにはタチヤーナの美しさや強さは見えないのだと思います。さぞかし「空気の読めない夢見る乙女チック」に映っただろうな、と。実際そうでもあるし、そうではないとも言えるわけですが。手紙の遣り取りが見ていてもハラハラします。手紙を返そうとするオネーギンの意がわからず、「ええ、私が書いた手紙よ」と頷くタチヤーナ。それでもつき返すオネーギン、「いいえ、違うわ。それはあなたのものよ」と言うタチヤーナ。空気の読めなさに苛立つオネーギンと、事態を飲み込めず困惑するタチヤーナ、、、。泣いている彼女の手の平に手紙を破って握らせるオネーギンには、微塵も「申し訳ない…」などという気持ちはありません。あぁ、清々しいほどに、今は駄目になている人…。

長瀬さんのレンスキーも最高♪ いかにも長瀬さんのレンスキー。決闘前の嘆きのソロも、長瀬さんらしいナルシスティックな部分とナイーブな様子が相まって素晴らしかったです。長瀬さんらしすぎて大丈夫か?(笑)と思ったりもしたんですが、長瀬さんのレンスキーだけが2日間キャスティングされていることからも考えて、きちんと評価されてのことだろう、と。オネーギンとオリガが踊る様子を見てアワアワしている姿から、スッと意を決したときの移り変わりがよかったです。ああいうところの、ちょっとした暗さ(褒めてます)が好き。それにしても、手袋(って言うんですか?)でオネーギンをはたくときの威勢のよさ。そして、対するオネーギンの気持ちの良いはたかれっぷり。この場面に限らす、オネーギンもタチヤーナも、レンスキーもオリガも、みんな見事な演技で緊張感のある場面をいくつも作り上げていました。

オリガの小出さんが可愛い〜♪ 無邪気で愛らしくて女の子っぽくて、とっても魅力的な少女。悪気なくオネーギンと一緒にレンスキーをからかってしまいます。決闘という事態になってから、つまりレンスキーを失うかもしれないとわかってから、急に少女から少しだけ女性になるのがいい。それにしても、あんなに雰囲気の違う踊り手の吉岡さんと小出さんが、本当に姉妹のように見えてくるから不思議。しかも、すごくいい姉妹なんですよね〜。
『シルヴィア』で舞台復帰、『ザ・カブキ』で完全復帰を果たした小出さんですが、この『オネーギン』でさらに超完全復帰をしたような印象でした。やっぱり小出さんはすごいなぁ、と。実は、出産をして、もしかして戻ってこなかったらどうしようと不安になったこともありました。でも、やはり彼女は舞台で踊るべき人なんだなと、何より彼女自身がそれを捨てることは選ばない人なんだな、と。何故か私は、彼女が『田園の出来事』で見事にギエムと渡り合ったときのことを思い出していました。

いや〜、武尊さんのグレーミン公爵が本当にいいんですよ〜。今からあんなに老け役が似合っちゃって大丈夫かってくらい、素敵。自身の踊りはほとんどない役なんですが、少し心配だったサポートもまったく問題ありませんでした。とにかく優しい。少し年の離れた愛しい妻を、なんて優しく愛しているのだろう、と。「グレーミンと結婚して正解だったよ」と思わせることができれば、グレーミンとしては成功だと思うんですよね。手紙のパ・ド・ドゥの直前、「行かないで」と懇願するタチヤーナとグレーミンの場面も素敵。ヒシっと抱きついたタチヤーナを、少し間を置いてからゆっくりと抱きしめるのがいいんですよ〜。タチヤーナが情熱的にキスをすると、「光栄の至り」とでも言いたげに控えめにウットリとするのが印象的でした。
『マラーホフの贈り物』で吉岡さんと武尊さんが踊る「春」が、さらに楽しみになりました。

1幕の田舎の人々。コサック風のダンスを繰り広げる男性陣は、高橋、氷室、松下、宮本、小笠原、中川、青木、岡崎という、ちょっと小柄のかなり踊れるメンバーで固めていました。最初に勢いよく飛び出してくるのは高橋さん。『ジゼル』の村人たちを思い出しましたよ〜。こういうところは高橋さんが演じてくれると、本当に締まる。
最初のオリガと少女たちの踊りは、やはり正面から見るものなんだな〜と思ってしまいました。前日のゲネプロでは2階のサイド席から見たので、全然印象が違いました。
確かどの場面でも、吉川さんと宮本さんが組んで踊っていたんですが、この2人の組み合わせが妙に好きなんですよね〜♪ ベジャールの『くるみ割り人形』の2幕の冒頭でも組んでいたことがあって、そのときから好きなのかもしれません。西村さんと松下さんのペアもすごくよかったです。


東京バレエ団『オネーギン』全3幕
2010年5月14日(金)19:00 東京文化会館

ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
振付指導:リード・アンダーソン、ジェーン・ボーン
コピーライト:ディータ・グラーフェ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト

◆主な配役◆
オネーギン:高岸直樹
レンスキー:長瀬直義
ラーリナ夫人:矢島まい
タチヤーナ:吉岡美佳
オリガ:小出領子
乳母:坂井直子
グレーミン公爵:柄本武尊

親類、田舎の人々、サンクトペテルブルクの貴族たち:
チャイコフスキー記念東京バレエ団

指揮: ジェームズ・タグル
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
posted by uno at 14:07| Comment(2) | バレエ公演2010 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする