2007年12月17日

井上バレエ団『くるみ割人形』12月16日(日)

井上バレエ団の『くるみ割人形』を見てまいりました。今年は金平糖の精を初役の2人が務めました。1996年以来、金平糖の精はずっと島田衣子さんと藤井直子さんが踊ってこられたんだそうです(島田さんのデンマーク研修中を除く)。今日の金平糖の精は田中りなさん。ほっそりとした身体でメリハリのある踊りをする、とても可愛らしい人でした。そしてゲストはオーストラリア・バレエ団の藤野暢央さん。藤野さんは、香港バレエ団プリンシパル時代の2005年に、井上バレエ団の『くるみ割人形』にゲスト出演をしたのが日本デビューなんだそうです。藤野さん、良いダンサーじゃないですか〜♪ なんと言っても色気がある!暗い色気じゃなくて、明るい色気。適度に男臭くて、十二分に爽やかで、ダイナミックな踊りと柔らかなポーズ。そして、色気(しつこい…)。日本人であの色気は、なかなかいないですね〜。アダージオで田中さんを支える姿は頼りがいがあり、とても素敵でした。


井上バレエ団 12月公演 『くるみ割人形』
2007年12月16日(日)15:00 文京シビックホール

【主なキャスト】

金平糖の精:田中りな
王子:藤野暢央
雪の女王:西川知佳子
雪の王子:井上陽集
ドロッセルマイヤー:堀登
ねずみの王様:大倉現生
クララ:飯塚瑞月
フリッツ:アクリ瑠嘉
おとうさん:原田秀彦
おかあさん:福沢真理江
兵隊人形:荒井成也
コロンビーヌ:越智ふじの
ハレーキン:桑原智昭

スペイン:大島夏希、瀬木陽香、加藤健一
アラビア:小絵美子
中国:田川裕梨、中武啓吾
トレパック:吉本奈緒子、市川玲、石丸美奈、桑原智昭、近藤徹志、荒井成也
あし笛の踊り:嶋田涼子、仲秋亜実、野澤夏奈
ギゴーニュおばさん:馬渕唯史
花のワルツ:鈴木直美、中尾充宏

振付:関直人
美術・衣裳:ピーター・ファーマー
指揮:堤俊作
演奏:ロイヤルメトロポリタン管弦楽団
合唱:ゆりがおか児童合唱団

  【プロローグ】
緞帳が上がると、ピーター・ファーマーのデザインによる幕。道行きはドロッセルマイヤーのみです。手にはくるみ割人形。プルッと寒そうに歩いてきて、「お前も寒かろう」とでも言うように、自分のコートにくるみ割人形を入れてあげるのが心憎い。ドロッセルマイヤーが消えると、幕が開いてシュタルバウム家のクリスマスパーティーの場面に。

フリッツ役のアクリ瑠嘉くんという男の子が、ちょっとすごかった。他の男の子役は、全て女の子が演じていたようです。そのアクリ瑠嘉くんですが、跳躍は高くて綺麗だし、ちょっと目を離した隙にピルエットを何回転もしてるしで、目が離せない。そして、踊りの綺麗さ上手さは然ることながら、なんと言っても表情豊かで役者でした。目が生き生きしてて、思わず追いかけてしまう。クララの飯塚瑞月さんは、ちょっとルース・ミロのような印象的なお顔立ちで、可愛かった。

11月に見た小林紀子バレエシアターの『ジゼル』で、ヒラリオンを踊っていた中尾充宏さんがボーイを演じていたんですが、ピシッとしていてエレガントで素敵でした。ハレーキンを踊った桑原智昭さんは、バレエTAMAの公演で気になったダンサーです。今回も、ハッキリした力強い踊りが好かったです。

堀登さんのドロッセルマイヤーが格好良かった。どこか陰のあるダンディな中年。マント捌きもバッサバッサと格好良かったです。大人たちが踊っている中、舞台の上手に一人佇み、グラスを傾けて物思いに耽るドロッセルマイヤー。何故彼はどこか寂しそうにしていたんでしょうか…?ドロッセルマイヤーの過去が気になってしまいました。あらすじを読んでも、「クララとフリッツの名付け親」としか書かれていません。向こうからクララが手を振ると、自分に振っていると勘違いして、思わず嬉しそうに手を振り返しそうになる。しかしクララはフリッツに手を振っていて、ドロッセルマイヤーはまた寂しそうに手を引っ込めるんです。何、何?どんな過去があるのよ〜。彼には何か、少女と人形にまつわる悲しい思い出でもあるのではなかろうかと勘ぐってしまいました。

  【1幕1場】
井上バレエ団は、全体的におっとりしていて上品な印象があります。優雅で好きなんだけど、迫力がなくなってしまうときもある。プロローグの兵隊人形とか、2幕のディベルティスマンとか。でも、ねずみと兵隊の戦いは、これぐらいおっとりしていても、ファンタジーだから良いかな〜と和みながら見ていました。子役が演じている子ねずみが2匹出てくるんですが、彼らが可愛くて可愛くて。ねずみと兵隊が戦っている最中に、ウロチョロしてるの。後ろを回ってクララのところまで来て、「えいっ、えいっ」ってちょっかいを出してるんです。で、ドロッセルマイヤーに簡単に追っ払われちゃう。なんか全体的に可愛かったです。最初にズドーンと一発(火薬は使わず、演奏で表現していました)ねずみが撃たれるんだけど、倒れた一匹に「大丈夫か〜」とねずみがワラワラ集まる姿は妙に笑える。
ドロッセルマイヤーのマントから、魔法のようにパッと登場したくるみ割人形の王子は中武啓吾さん。彼もシャープで良い踊りでした。2幕で中国も踊っていて、なんか見覚えのある顔だなぁと思っていたら、彼もバレエTAMAの公演で踊っていました。桑原さんと同様、バレエTAMAのときに好いなと思ったダンサーの一人です。

クララが投げたスリッパで、ねずみの王様が弱っている隙に、くるみ割人形の王子が剣でブスリ。クララを残して、全てが消えていきます。

  【1幕2場】
藤野さんの王子の登場。くるみ割人形が王子に姿を変える、とても好きなシーンです。井上バレエ団は、王子が舞台の中央にうつ伏せているバージョン。真っ暗な舞台の中央に照明が当たると、そこには王子がうつ伏せています。下手にクララ。上体を起こし、ゆっくりと立ち上がるまでの藤野さんのセクシーなこと!そこから続くポーズの一つ一つが大きく綺麗で、艶がある。いや、こんなに色気のあるダンサーだとは思いませんでした。そればっかり言ってると、それだけみたいに聞こえてしまっては困るんですが、踊りはとてもしっかりしているし、雰囲気もあるし、本当に素敵なダンサーでした。

雪の女王は、今回が初役の西川知佳子さん。とっても可愛らしくて、優しい雰囲気と、まろやかな華やかさのある女性でした。可憐な笑顔がとても可愛い。ちょっと緊張していたかなという感じもしましたが、踊りも丁寧で柔らかい空気感がありとても好かったです。雪の王子は井上陽集さん。前回の井上の公演でとても気になった人。やっぱり素敵でした〜。踊りは今日はちょっとバランスを崩す場面もあり勿体無かったんですが、あのソフトな空気は得難い。「ノーブル」とか「エレガント」でもいいんだけど、一番しっくり来るのは「ソフト」。あぁ、素敵だった…。

雪の場面は合唱付。とても素敵でした。

  【第2幕】

紗幕の向こうに、2幕の登場人物たち。その中央にリフトされた金平糖の精がいます。リフトしているのは花のワルツの中尾充宏さん。2幕の最後も、紗幕の向こうに中尾さんが金平糖の精をリフトする姿が浮かび上がり、終わります。

ディベルティスマンは、やっぱり全体的におっとりと上品な感じ。アラビアの小絵美子さんは、ゆったりとした動きも破綻がなくて、とても綺麗。4人の女性が薄絹を持って一緒に踊ります。トレパックの桑原智昭さんは爽快な踊り。回転で会場を沸かせました。彼が一番拍手を受けていたのは、最後かも。グラン・パ・ド・ドゥも終わって、最後に登場人物たちが順番に出てきて踊るところで、インターバルを入れない見事な開脚ジャンプを披露。何回跳んだか覚えられないくらい、綺麗な200度の開脚で跳んでくれました。あし笛の踊りの女性3人は、みんな背が高くてスレンダー。あし笛は衣裳が可愛かったです。ブルーのクラシックチュチュで、チュチュの裏と髪飾りがゴールド、袖は紗の生地の長袖です。黒のチョーカーがアクセントになっていて◎。ギゴーニュおばさんは、大きなスカートの中に子どもたちをたくさん入れて登場。スカートの下は台車のようになっていて、中で一人動かしている人がいたようです。カラフルな衣裳の子どもたちが、可愛さを振りまいていきました。花のワルツの中尾充宏さんは、11月に小林紀子バレエ・シアターの『ジゼル』でヒラリオンを踊る姿を見たばかり。あのときとは全く雰囲気が違うのでびっくり。笑顔がキラキラと輝いて、とってもエレガントでした。身体がというよりは、着地が柔らかい。軽やかにポンっと下りるので、その足取りは終始軽やか。とても素敵でした。花のワルツは衣裳が可愛かった。メインの鈴木直美さんはクラシックチュチュ、コール・ドは膝丈くらいのロマンチック・チュチュです。色はエメラルドグリーンで、スカートの部分がチューリップみたいになっているのが可愛いんです。

金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥ。田中りなさんは、小柄で華奢な女性。でも、その踊りはテキパキとしてとても力強いです。指先まで神経の行き届いた優雅な踊りと、シャープでスピード感のある踊りは、メリハリがあって好かったです。そこはもうちょっと丁寧に踊ってほしい…と思う部分もあったけど、、、。キラキラしたオーラもあるし、舞台の空気をギュッと引き締める吸引力もある。何より、気合の感じられる、ピシッと筋の通った雰囲気は好感が持てました。
そして、藤野さんがとにかく支える。傾きそうになる田中さんを、スッと引き寄せる場面も何度か見られました。サポートも上手だったと思います。ちゃんと女性を引き立たせて、その影で正確にサポートをし、自分の存在感も感じさせる。2人が空気を合わせて踊っているのが伝わってくる好いアダージオでした。終盤には徐々に情熱的になる藤野さんが印象的。情熱的というか、音楽の高まりとともに感情を高まらせていくのが感じられて、とても好かった。そこがまたちょっと色気があるんですけどね。アダージオの最後のポーズでは、2人の顔が近い。ドキドキしました〜。
跳躍は高くて着地も決めるし、大きな空間を使った回転も、とてもダイナミック。マネージュもゆったりと大きくて、音楽にピッタリ合っているのが好かった。日本人には珍しく、迫力のある踊りをします。ダイナミックだけど、指先から足の先まで丁寧で綺麗だし、ポーズも優雅で華がある。そして、しつこいけど好い具合に艶もある。最後まで女性をしっかりと支え、支えつつもリードしているようなところもあり、とても頼もしくて素敵でした。

  【エピローグ】
応接間のソファーで眠っているクララを両親が抱き上げ、くるみ割人形をソファーに置いて出て行くと、舞台中央にドロッセルマイヤーが浮かび上がります。マントをバッサバッサと思い切り翻しながら前進してくるのが格好良い。そして、最後に白い蜘蛛の糸(歌舞伎で使うあれです)をバッと出して、終わり。ドロッセルマイヤーがやっぱり格好良かったなぁと思う幕切れでした。

カーテンコールの後、オーケストラがクリスマス・ソングを演奏する中、ダンサーたちが全員キャンドルを手に持って再び舞台に登場。キャンドルと言っても、本物ではなくライトですけど。藤野さんが最後に登場して、思い切りテクニックを披露して踊ってくれました。着地でオットットとヨロけてしまったのはご愛嬌。ダンサーがグルッと囲んでいたので、あの狭さであれだけ踊るのは大変だったと思います。ヨロけた瞬間には、リラックスした素の笑顔が見られて、ちょっと得した気分。藤野さんには、また是非日本で踊ってほしいなと思いました。
posted by uno at 02:13| Comment(0) | TrackBack(0) | バレエ公演2007 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする