2007年12月07日

フィリップ・ジャンティ・カンパニー『世界の涯て LANDS END』11月26日

フィリップ・ジャンティ・カンパニー『世界の涯てLANDS END』を見てまいりました。パルコ劇場、久しぶりだった〜。バレエで大きな会場に慣れてしまうと、あのこじんまり感は久々で心地良い。「こじんまり」というか、凝縮感がありますよね。なんだろう?上手く言えないけど、後方の傾斜角度と絨毯や客席の赤い色のせいでしょうか?

フィリップ・ジャンティ・カンパニーを見るのは初めて。1988年の来日以来、2004年までに11回もの来日公演を行っています。ん〜、今まで知らなかった自分を恥ずかしく思いました。きっとどこかでチラシを目にしたこともあったんだろうなぁ…。

フィリップ・ジャンティ・カンパニー『世界の涯てLANDS END』
2007年11月26日(月)19:00 パルコ劇場

作:フィリップ・ジャンティ
演出:フィリップ・ジャンティ、メアリー・アンダーウッド

キャスト:
アマンダ・バルテール
マージョリー・カレンティ
セバスチャン・レンテリック
ピエリック・マルブランシュ
ローラン・ロール
ナンシー・ルセック
サイモン・T・ラン

とても不思議で面白いものを見てしまいました。言葉で言えばキリがないくらいの、様々な表現方法と豊かなイメージ。そして、プロフェッショナルな仕事にも感心しました。最前列で見ても幻滅しないトリックの数々、小道具・中道具・大道具に至るまで丁寧に作られた質感。マジックだけど、マジックじゃない。それは観客をアッと驚かせるためにあるのではなくて、摩訶不思議な世界に連れて行ってくれるための入口なのだと思います。

冒頭、オフィスデスクで受け取った手紙を読む男性。コートに帽子、トランクを持って旅に出る。全てはそこから始まります。ブルーグレーのコートに、手紙は白。出会うのは赤い服の女…。赤、青、白、黒(シルエット)の4色で統一された舞台は、とても美しく幻想的でした。

舞台は、手前1メートルくらいを残して、一段高く作られています。そこにも様々な仕掛けや種が仕込まれているようでしたが、最前列で見ていた私には、その一段高い舞台面は見えませんでした。赤いワンピースの女が、男からトランクを奪う(トランクをめぐる遣り取りはダンスになっています)。そのトランクを舞台に置くと、トランクの蓋が開いて男が出てきます。仕組みはすぐにわかるけど、目に飛び込んでくる景色の何とも不思議なこと。床に置かれたトランクから、男の上半身が出てきているんですから。トリックは他愛もないものなんですが、その不思議な景色が面白いんです。

上手く全体の世界観を書けそうにないので、印象的だった場面を書いていこうと思います。

なんと言っても素晴らしいのは、人形の造型と質感、そしてその動きの面白さです。可愛いものもあれば、ちょっとグロテスクだけど可笑しくて仕方がないものまで、リアルとはちょっと違うけど生き生きとした人形たちが最高。人形を操るのは出演者たちなんですが、これがまた上手いんです。完璧な連係プレーで笑わせてくれるんだけど、もちろん彼らの顔は真剣そのもの。
最初に登場したのは、巨大な男の子と女の子の人形。柔らかそうなムチムチした質感のが妙に可愛いです。男の子は男性が4人で、女の子は女性が3人で操ります。ここはちょっとセクシャルなユーモアがあって、会場からは最初はクスクスと抑えた笑いが起こっていたんですが、最後にはドカッと笑いを取っていました。女の子に圧し掛かって、その脚を乱暴にもぎ取ってしまう男の子。すると女の子の下半身は巨大なハサミに変身。男の子の股間から覗いていたアヒルをハサミでチョッキーンと切り落とします(ここでドカッと笑い)。股間にアヒルって…発祥の地は何処なんでしょうか?ここでお目にかかるとは思ってもみませんでしたよ…。
もう一つ面白かったのは、おじさんの顔をした蚊のような虫の人形です。水色のモスキートは、何故か顔だけリアルなおじさん。暗闇に飛ぶ水色のモスキート…。長い棒で4人の男性が操ります。そして、赤ワンピースの女とダンス。妙に下心のあるモスキートでした。その動きと、かしげた首の無表情がなんとも言えず可笑しい。そして、一番面白かったのは羽です。電動で小刻みにブーンと振動するんですが、そのタイミングが何とも上手い。会場はもちろん大笑い。あまり笑わない私も、流石にニヤリとしました。

やはり一番印象的だったのは、巨大な半透明のバルーンです。ときにはそのバルーンが舞台空間を全部埋め尽くしたり、中に人が入ってパフォーマンスしたり。ビニールがガサガサいう音がするのがちょっと残念でしたが、そのイメージはとても幻想的。大きなバルーンを上空にフワッと上げると、まるで生き物のように空中でゆったりと揺らめきます。水の中を浮遊するクラゲみたいな動きをするんです。ゆっくり下りてきて、コートの男にポスっと落ちる。中に空気が入っているだけで、あんなに幻想的な動きをするんでしょうか?もしかしたら、床下か舞台袖から空気を送っていたのかなぁ?

真っ赤な照明の中、赤いワンピースの女が手に持っていた白い便箋が、扇風機の風に煽られてバーっと舞い上がる。大小の白いミニチュアの家が、舞台をスルスルと移動して、床に吸い込まれていく。床はまるで生きているみたいに、白い家を飲み込みます。青く光る不思議な植物の群生が、舞台に出現する。舞台が青くキラキラしているな〜と思ったら、ニョキニョキ、ニョキニョキと不思議な青く光るものが生えてきました。不思議な夢を見ているような、とても綺麗な場面。豊かなイメージと、鮮やかで美しい色彩を堪能しました。

私はバレエ/ダンスのファンなので、期待していたほどダンスのシーンはなくて少し残念だったんですが、それをわかった上で見に行けばダンスシーンが物足りないと思うこともなかったと思います。摩訶不思議で幻想的で、ときにはニヤリとするユーモアと、徹底した色彩の世界観に浸ることができる舞台でした。
posted by uno at 23:07| Comment(2) | TrackBack(0) | バレエ公演2007 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする